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自己免疫疾患を、「ネオセルフ抗原」を応用した検査で治療に導く「AOI Biosciences」(ICC KYOTO 2025)

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ICC KYOTO 2025 リアルテック・カタパルトに登壇した、AOI Biosciences 末田 伸一さんのプレゼンテーション動画【自己免疫疾患を、「ネオセルフ抗原」を応用した検査で治療に導く「Aoi Biosciences」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは 慶應イノベーション・イニシアティブ です。

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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 7A
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by 慶應イノベーション・イニシアティブ

末田 伸一
AOI Biosciences
代表取締役社長
公式HP

2008年京都大学医学部を卒業し、その後腎臓内科医として臨床に従事。臨床現場では、自己免疫疾患、感染症、慢性腎不全などを中心に診療を経験した。2014年より京都大学大学院にて腎再生医療を学ぶ。2016年にiPS細胞から心筋細胞へ分化誘導する技術を持つバイオベンチャー企業の取締役最高技術責任者、最高経営責任者を経て、2019年11月にAOI Biosciences株式会社(旧株式会社Revorf)を創業。


末田 伸一さん こんにちは、Aoi Biosciences代表取締役の末田と申します。

早速ですが、皆さん、頭が痛くなることはありますでしょうか?

僕は結構あります。

皆さんも、おありだと思います。

あの日、頭痛を訴えた患者さん

こちらは、私が内科医だった時代に診た患者さんです。

30代の女性で、4カ月前から不調があったため、当時、私が勤める病院を受診し、精密検査後に、「SLE(全身性エリテマトーデス)」と診断され、入院していました。

それまでは、何の症状もなく健康な方でした。

「SLE」というのは「自己免疫疾患」の一種で、血管が傷む病気です。

入院中のある日、夕方から頭痛がすると、女性から相談がありました。

僕は「片頭痛ですね」と言って、鎮痛薬を処方しました。

しかし翌朝、女性は意識消失の状態で発見され、CT検査で脳出血と診断されました。

SLEは、血管が傷む病気だったからです。

治療による改善がなく、数カ月後に女性は永眠されました。

この時の無力感と後悔に、今もずっと苛まれています。

守ってくれるはずの免疫細胞が自分を攻撃する「自己免疫疾患」

話に出た、「自己免疫疾患」について説明します。

自己免疫疾患とは、普段はウイルスなどを攻撃する自己の免疫細胞が、間違えて自分を攻撃する疾患で、色々な疾患があります。

例えば、関節が痛くなる病気は「関節リウマチ」ですし、脳が攻撃される病気は「自己免疫性脳炎」といいます。

甲状腺が攻撃されると「バセドウ病」で、「糖尿病」なども該当します。

臨床症状による診断には限界

自己免疫疾患の診断と治療には、限界があります。

1つは、臨床症状によって診断するため、関節が痛くて頭も痛くて何かがあれば、「リウマチですね」といったように、確実な診断が難しいのです。

発症初期に病態を説明する検査も乏しく、特異的な治療もなく、症状が出てしまうと副作用の強い治療薬しかありません。

だからこそ大事なのが、早期診断、早期治療です。

よくわかっていない自己免疫疾患の原因

では、なぜ自己免疫疾患の早期診断は難しいのでしょうか?

結局のところ、自己免疫疾患の原因はわかっていないのです。

免疫細胞が自分の体を攻撃するという現象だけがわかっています。

2014年、大阪大学の荒瀬 尚先生が、自己免疫疾患の原因となる現象「ネオセルフ理論」を発表しました。

ネオセルフ: ミスフォールド蛋白質/MHCクラスII分子複合体による新たな自己免疫疾患発症機構(大阪大学)

この理論は、世界的に認められており、数多くの国際論文で発表されています。

「ネオセルフ理論」を図解

では、「ネオセルフ理論」について、簡単に説明いたします。

免疫細胞が自分と他者をどう区別するかというと、各細胞が「名札入れ」を持っています。

この名札入れが、「HLAクラスII」です。

ここにタンパク質が乗っかって、細胞の表面に出て、「私は味方ですよ」と言います。

しかし、この時、熱などが出ると、私たちの細胞は変なタンパク質を作ってしまうことがあります。

それが間違って名札入れの中に入り込むと、免疫細胞が「異物だ」と認識して攻撃を始めてしまいます。

これが自己免疫疾患の始まりです。

この異物を「ネオセルフ抗原」と名付けました。

ネオセルフ抗原は存在する

本当にそんな現象があるのか、いくつかの疾患を調べました。

左が血管を攻撃する病気「抗リン脂質抗体症候群」、中央が「関節リウマチ」、右が「バセドウ病」です。

赤く示された部分が、すべてネオセルフ抗原です。

疾患ごとに、それぞれのネオセルフ抗原が存在することがわかっています。

ネオセルフ抗原を応用した検査法を開発

ここで、革新的な新技術を開発しました。

細胞に4つの遺伝子を入れて混ぜるだけ、非常に簡単です。

これがリアルテックかどうかという議論もありますが、基本的に生命現象はシンプルなのです。

実は、これはiPS細胞の作り方です。

生命現象は実はシンプルで、我々はネオセルフ抗原に患者さん由来の細胞を付け、そこに患者さんの血液を混ぜて反応があれば、この病気を持っていると診断できる検査法を作りました。

不育症・不妊症となる疾患の検出力を向上

いくつもの疾患に対応可能ですが、現在は「抗リン脂質抗体症候群」に対して開発しています。

この疾患は、全身の血管が詰まってしまう病気で、赤ちゃんに栄養が届かず、「不妊症」や「不育症」を引き起こします。

抗リン脂質抗体症候群への治療法はあり、血液をサラサラにする薬を投与します。

ただ、既存の検査では検出力に課題があるため、我々は新しい検査を開発しました。

「不育症」とは、流産を繰り返す病気で、16組に1組が経験すると言われています。

「不妊症」は、妊娠しない状態で、6組に1組が経験すると言われています。

原因不明の割合は、「不育症」が65%、「不妊症」は11%で、どう治療すればよいのかわからない患者さんが多くいました。

そこに我々の検査を使ったところ、「不育症」の方で20%、「不妊症」の方で30%が抗リン脂質抗体症候群陽性となり、それぞれの方に血液をサラサラにする薬を使ったところ、胎児獲得率が「不育症」で90%、「不妊症」で50%まで上昇しました。

こうした臨床データが蓄積され、現在日本では250以上の医療機関の先生方に使用いただいており、先進医療にも認定されました。

海外でも、インドネシア、マレーシア、韓国など、アジアを中心に展開が進んでいます。

着実に増え続ける3つの数

では、こちらの数字をご説明します。

5,000、1,000、900。

まだ少ないですが、5,000はこれまで検査を実施した数、1,000は病態が判明した患者数、900はそこから生まれた命です。

これらの数字は、来年、再来年には10倍、100倍になっていくと思います。

先進医療として認められ、国際共同治験を通じて、検査の売上は上がっていきます。

すでに1つの疾患でもこれだけの売上になります。

検査もニーズがあれば、マーケットはあると考えています。

関節リウマチ向け診断薬を開発中

すでに他の自己免疫疾患に対する開発も進めており、関節が痛くなる「関節リウマチ」の診断薬を開発しています。

我々は、すべての自己免疫疾患の早期診断を確実にし、早期治療に導きたいと思っております。

こちらが慢性関節リウマチに対する抗体検査の現状ですけれども、世界で約2,000万人の患者がいる疾患です。

端的に言いますと、我々の診断薬は既存の検査と同じくらい正確です。

実は、既存の検査は陰性なのに陽性と捉えてしまうことが多いのですが、そのネガティブな部分も改善したという臨床研究の結果が出ております。

今から経営を構築して、来年(2026年)から進めていく予定です。

我々の検査は、すべての自己免疫疾患に対して開発が可能ですので、世界の3.5億人の健康を救うという目標で今、進めております。

世界中の人々の当たり前の健康と笑顔を守りたい

私個人はすごく小さな人間で、命を救えなかった一人の医師です。

でも今、最高の仲間たちと命を守り産み出す事業を展開しております。

おそらくこの会場にいる皆さんの中にも、何名か病気になる方がいらっしゃるでしょう。

その方々も含めて、いつの日か会社が成長し、世界中の皆様の当たり前の健康と笑顔を守りたいと思っております。

どうもありがとうございました。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成

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