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日本発ルネサンスで、新たな美の価値基準創出を目指す「丹青社」(ICC KYOTO 2025)

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ICC KYOTO 2025 クラフテッド・カタパルトに登壇いただき2位に入賞した、丹青社 石上 賢さんのプレゼンテーション動画【日本発ルネサンスで、新たな美の価値基準創出を目指す「丹青社」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。

【速報】規格外食材や地域課題を美味しく詰めこんだ“現代ソーセージ“をつくる「ハヤリソーセージ」(流行)がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2025)


【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング

石上 賢
丹青社
事業開発センター B-OWND室 室長/プロデューサー
公式HP

1992年、愛知県にて、画家の父、画商の母の元に生まれる。10代からアート作品の販売をはじめる。国内芸術家の経済活動における困難さを目の当りにし、大学在学中よりアーティストのプロモーション活動を開始する。アート作品のコンセプト立案、WEB・映像制作そして150を超える展覧会の企画等に携わる。国外では、ヴェネチア、ニューヨーク、香港、マイアミなどでの個展やアートフェアの企画販売の実績を持つ。2016年、(株)丹青社に入社後、これまでの経験を活かしアート工芸を中心とした日本の美意識と現代要素を掛け算した新規事業の開発に従事する。2019年、アート・工芸×ブロックチェーンのプラットフォーム「B-OWND」を立ち上げ、プロデューサーに就任。アーティストのキュレーションをはじめとする本事業に関する戦略・企画を構想し、日本のアート・工芸作品の価値を高めることを目指している。2024年、Forbes Japanが選出する世界を動かす文化起業家30人に選出。


日本の工芸の付加価値をプロデュースする

石上 賢さん 「日本から新しいルネサンスを興す」、丹青社 B-OWNDの石上の発表を始めます。

よろしくお願いします。

B-OWNDとは、工芸領域における付加価値プロデュースに挑戦している、アート事業です。

アーティスト向けのマネジメント事業からB to CのアートギャラリーやECサイト、B to Bでは空間デザインやIPコラボをプロデュースする事業も行っています。

アートでは生活ができないという原体験

では、なぜアート事業をしているのか。

実は、父は売れない画家、母は売れない画商、そして兄もまだ売れないアーティストという意味の分からない家庭環境でして、月末になると千円札がないくらい、めちゃくちゃ貧乏でした。

そのため、学費を稼ぐために18歳、高校生の時に作品の販売を始めました。

イタリアやアメリカのニューヨーク、香港など世界中のギャラリーに飛び込み営業をし、机上ではなく生活のためにアートを売る仕事をしていました。

美やアートの価値は、誰がどう決めているのか?

ただ、ある時、大きな疑問を抱きました。

そもそも、美やアートの価値は、誰がどのように決めているのか?

その基準を深く探るために、西洋美術の根源であるルネサンスとキリスト教神学を大学時代に研究しました。

以上の経験から、15年間の実地と理論の両輪をもって、美の価値は誰がどのように決めているのかを解説していきます。

ルネサンスの巨匠と言えばダヴィンチですが、彼の作品は近年、510億円で落札されています。

一方、 中世の日本における作品の最高額は、運慶で12億円。

約50倍の価格差があります。

工芸領域の従事者は30万人から6万人になり、市場規模は5,400億円から800億円と、40年間で80%減少しています。

壊滅的な状況です。

なぜ、こんなにも差があるのか。

アートの付加価値形成プロセスに、そのヒントがあります。

アートの付加価値はこう決まる

これは、私がよく説明する付加価値形成プロセスの全体像です。

まず、アーティストが作品を制作します。

生み出された作品には、視覚的価値と、コンセプトのような文脈的価値があります。

時間経過とともに、美術史から価値を判断するクリエイターや美術館などが、もともとある作品の価値に対して芸術的価値を付加させていきます。

次に、ギャラリーやオークション会社がマーケット側の視点からの価値を付加します。

どうすれば価値がつくのかをまとめると、文脈化、芸術価値の権威化、市場価値の流行化の3つの視点によるものということです。

過去6年で年間売上を20倍、平均単価を15倍に

以上のノウハウを加味し、B-OWND式のプロデュースを過去6年間に渡り実施してきました。

例えば、B-OWND所属の陶芸家は過去5年間で、600万円だった年間売上を1.2億円に、平均単価2万円を30万円に、それぞれ20倍、15倍にすることができました。

具体的には、どのようにしたのか。

価格はこう決まる①作品を「文脈化」して伝える

まず、アーティストのコアである作品の文脈の整理を行います。

文脈化とは、歴史性と時代性と個人性の3つの交点を最大化することであると定義しています。

作品において、どのような歴史の流れを引用し、今の時代にどのような類似性があり、そしてそのアーティストがなぜそれを表現するのかという個人性の3つの交点を整理します。

それらのコンテクストが伝わる展示を行ったところ、工芸界で異例となる、1週間で3,000万円以上の売上を達成。

その中のあるシリーズの単価は357%成長。

この招き猫に至っては、現在200万円という価格で取引されています。

価格はこう決まる②コラボやSNSで市場価値を「流行化」

文脈化だけではなく、認知度向上施策として、漫画家の永井豪さんとのコラボレーションを発表したり、TRiECHOESという、琴とEDMのコラボレーション映像を発表したりしました。

たった3本の映像が10億回も再生され、YouTubeの登録者数は37万人を超えています。

また、ウルトラマンやGrand SEIKOとのコラボレーションなど、流行化の多様な事例を創出しています。

価格はこう決まる③世界のアートフェアで評価される

権威化については、世界最大級のアメリカ、マイアミで世界130以上のギャラリーが集まる展示において、No.1の評価を頂きました。

その結果として、茶会をパフォーマンスアートとして3,000万円で、アメリカで販売することができました。

海外の評価に一喜一憂は、美の隷属化ではないか?

文脈化、流行化、権威化の3つをさまざまな方法で実践してきましたが、個別のプロデュースだけでは超えられない壁があります。

自戒を込めてですが、日本のものが、例えばパリやニューヨークでこれが美だと評価されたとたん、僕たちはなぜかそこに価値を感じてしまいます。

つまり、日本は美の隷属化状態になっており、これは戦後80年間、私たちが価値の物差しを作ることを放棄した結果だと考えています。 

では、どうすればいいのか。

かつて西洋が行ったように、美の価値基準を変えられるルネサンスを日本から興す必要があるのです。

ルネサンスが西洋で起こった背景

500年前、西洋でなぜルネサンスが起きたのか歴史を遡ると、まずヨーロッパで新たな哲学が誕生し、その思想を活版印刷などのテクノロジーが拡散し、コミュニティで議論が加速し、最後に大資本が後押ししました。

つまり、哲学、テクノロジー、コミュニティ、資本が連携し、結果として偉大な芸術が誕生し、美の価値基準が生み出されたのです。

普遍的な価値形成には、OS構築に文化と産業の接続が重要

過去のルネサンスから学ぶと、OSとも言うべき様式と評価構造の構築を行い、文化と産業を接続させることが重要です。

文化構造を、3階建ての階層で図式化するとこうなります。

私たちが文化を思い浮かべる時、工芸や着物など目で捉えられる形態を思い浮かべます。

しかしそれはアプリケーションレイヤーだと思っており、その下には良し悪しを判断するOSレイヤーが存在します。

一番上にテクノロジーとブランドがあり、これが文化を広めていくという3階構造です。

一番根底にあるOSレイヤーを構築しなければ、誰かの評価に依存することになってしまいます。

つまり、今この場にいる皆さんと、文化と産業の新しい連携を通じて、日本からOSを創りたいと考えています。

新たなルネサンスの創造を皆様と!

ご清聴ありがとうございました。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成

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