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ICCサミット FUKUOKA 2019 スタートアップ・カタパルトに登壇し、見事優勝に輝いた、inaho・菱木豊さんのプレゼンテーション【「inaho」はAI×ロボットアームによる野菜の自動収穫で“農業の未来”を変える!】の文字起こし記事をぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プレミアム・スポンサーのラクスル様、プラチナ・スポンサーのIBM BlueHub様にサポート頂きました。
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2019年2月19日〜21日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 1B
STARTUP CATAPULT
スタートアップの登竜門
Supported by ラクスル & IBM BlueHub
(プレゼンター)
菱木 豊
inaho株式会社
代表取締役
公式HP|STARTUP DB|LinkedInページ
1983年生まれ。鎌倉育ちの鎌倉っ子。大船高校を卒業後、大学在学中にサンフランシスコに留学し、帰国後中退。東京調理師専門学校に転学し、卒業後に不動産投資コンサルタント会社に入社。4年後に独立。2014年に株式会社omoroを設立。音楽フェスの開催、不動産系Webサービスを開発運営後に売却し2017年に解散。2014年に人工知能の学習を開始し、2015年に地元鎌倉の農家との出会いから、農業AIロボットの開発を着想。全国の農家を回りニーズ調査を進め、2017年1月にinaho株式会社を設立。鎌倉を拠点に、世界初のアスパラガスやキュウリ等を汎用的に収穫できるロボットを開発。収穫ロボットを軸として、一次産業全般のAIロボティクス化を進めている。
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▶「ICC FUKUOKA 2019 スタートアップ・カタパルト」の配信済み記事一覧
菱木 豊 氏(以下、菱木) inahoの菱木です。よろしくお願いします。
わたしたちは、「テクノロジーで、農業の未来を変える。」ということを掲げています。
具体的にどのようなことをしているのかについて、まずは動画をご覧ください。
自社開発のロボットで収穫適期の野菜だけを自動収穫
こちらの動画では、農家の方が手で野菜を収穫しています。
なぜ手作業が必要かというと、「25センチ以上」というように、野菜の長さで収穫するか否かを決めているからです。
一方で、inahoが開発したロボットは、カメラやセンサーを使い、野菜が収穫適期かどうかをソフトウェアで判断します。
そして収穫適期の野菜だけをロボットアームで収穫します。
ロボットアームはすべて内製で制作しており、パーツを購入し自社ですべて組み上げをしています。
そして、圃場に見える白いラインを引くだけでロボットが自律走行できる仕組みになっています。
▶︎編集注:圃場(ほじょう)とは、作物を栽培する田畑・農場のこと。
ロボットが自動で圃場を探索し、収穫の必要がある野菜だけを採っています。
ビニールハウスからビニールハウスへの移動も、ロボットが自動で行います。
1台のロボットで色々な種類の野菜を収穫可能
inahoが実現したいことは、1つのロボットで色々な種類の野菜を収穫できるようにすることです。
こちら(動画 0:55頃)はロボットがキュウリの収穫をしているところです。先ほどアスパラガスを収穫していたものと全く同じロボットです。
ロボットのパーツは全く同じで、白い持ち手の部分が上を切るか下を切るか、という違いだけです。
持ち手を180度変えるだけで汎用的に色々な種類の野菜が収穫できるのです。
現在、農家で雇っているパートさんが4人で行っている作業に対し、ロボットを2台導入することで、パートさんを2人に減らし、収穫面積を2倍にできるような未来。
つまり雇用が半減しても、農家の所得が2倍になる未来を作っていきたいと思っています。
圃場移動・野菜探索・収穫・データ取得の自動化を実現
inahoのロボットは、圃場を移動しながら収穫適期の野菜を探索。そして収穫しデータを取っています。
まず、移動体の特長についてご説明します。
ロボットは圃場にラインを引くだけで設置可能です。
LEDライトを搭載しているので、夜間も圃場を移動・野菜収穫が可能です。
次に野菜の探索・認識方法についてご説明します。
ディープラーニングにより、周囲に緑の多い環境下で「どこにキュウリがあるか」といった認識が可能です。
また、太陽光下の環境でもきちんと野菜を認識できる、これがinaho独自の技術です。
センサは数万円台の安価なものを用いているので、後述するように開発コストを低く抑えることができます。
最後に、ロボットアームです。
ロボットアームは、モノタロウさんなどネットで購入したパーツを使用しています。
出来上がったロボットアームを購入するのに比べて3分の1くらいの価格で制作可能です。
野菜を優しく切り落とすことも可能です。
高汎用性ロボットの自社開発を実現する強力なチーム
inahoの強みは、ソフトウェアとハードウェアをすべて自社開発していることです。
農家ごと、野菜の品目ごとのカスタマイズ設計も不要です。
そういったシステムを、最速で開発しています。
次にチームの紹介です。
ハードウェア開発チームは、本田技研で約40年間にわたって農機具を作っていた方や、キヤノンで14年間レーザープリンター製作に携わった経験のある方々で構成されています。
ソフトウェア開発でも、画像処理回りのエンジニアリング経験者など、インフラ周りのエンジニアが在籍しています。
先日は佐賀に支店をオープンし、農家さんとコミュニケーションを取るスタッフや、ロボットのメンテナンスをするスタッフなど、農業関係の出身の人材も採用しています。
そして、役員2人のボードメンバーで構成されています。
ロボットの収穫高に対しマージン15%の従量課金型
inahoのビジネスモデルです。
ロボットアズアサービス(Robot as a Service:RaaS)と呼んでいます。
ロボットが野菜を収穫すると、その総重量がわかります。
野菜の総重量と、市場の取引価格を照らし合わせると、ロボットの収穫高を算出できます。
その収穫高に対し、inahoはマージン15%を頂戴するという従量課金型のビジネスモデルです。
収穫できたら収穫できた分だけ頂戴します。
現在、施設栽培の農家さんは平均で1,200万円程の売上なので、1農家さんにつき約150万円を頂ける計算です。
次に、既存の農機具メーカーさんとの違いです。
まず農家さんのメリットとして、inahoのシステムは導入費用がかかりません。
また、inahoの売上に関しても、既存メーカーさんの売り切りモデルに対し、inahoは従量課金のため、毎年売上が積み上がります。
さらに、カメラ、センサの目覚ましい進化にあわせパーツを交換することで、常に最新の部品にアップデートすることが可能です。
すると、最初はロボットで収穫できた割合が全体の60%だったとしても、半年程で70%、80%と収穫割合を上げていくことが可能になります。
そして私たちは、すでにそれを実証しています。
出荷額約8,200億円の「選択収穫市場」を狙う
次に、私たちが狙うターゲットです。
キュウリやピーマン、ナスやトマトなど、収穫判断の難易度が高い野菜は、いまだに農家さんが目視で収穫適期を判断し、手作業で収穫しています。
こういった選択収穫が必要な野菜(スライド右側、赤丸部分)を、今後は全てロボットで収穫できるようにしていきたいです。
選択収穫市場の20%にinahoのロボットが導入された場合、マージンで年間250億円の売上が立つ大きな市場があります。
選択収穫市場の野菜は関東と九州で多く生産されているため、この地域をターゲットとします。
今後10年で就労人口が半減する農業を、テクノロジーの力で支える
農業人口はあと10年で半減すると言われています。
しかし、その10年で日本の人口そのものが半減するわけではないので、将来に不安を感じています。
このスライドが示すように、すでに農業従事者の平均年齢は67歳。49歳以下はわずか10%です。
そんな中、私たちは「施設栽培」というビニールハウスでの栽培に注目しています。
施設栽培では、15年以上にわたって生産面積が横ばいです。
つまり、生産性が上がっていないということです。なぜかというと、収穫をすべて手作業で行っているからなのです。
そしてこのように、その手作業が農作業の5〜6割を占めているのです。
私たちは2018年10月にロボットでの収穫をスタートしました。その時はまだ50%くらいしか収穫できませんでした。
しかし、2019年2月時点では75%の収穫が可能になりました。
今後、更に進化させています。
「ロボットがあれば農業の未来を変えられる」という希望
マーケティングについてです。
2019年2月から始めたばかりなので、まだ実績は少ないですが、講演会やデモ会などを自社開催し、農家さんにアタックしています。
「佐賀県農業青年冬季のつどい」のように、地域の農家さんの集まりに参加します。
そこで農家さんにアンケートを取りました。
私がinahoのサービスをプレゼンさせていただいただけで、8割くらいの方が「将来ロボットを導入したい」と回答して下さいました。
そして、非常に面白いアンケート結果が出ました。
inahoのロボットの話を聞いて、手作業で収穫する野菜ではなく、米・麦・大豆や玉ねぎなど、機械でしか収穫できなかったものを生産している方々が、「それなら野菜を作りたい」とおっしゃってくれたのです。
そして、農地を拡大したいという方が7割も出てきたのです。
世帯当たりの農地面積はずっと横ばいでしたが、「ロボットがあれば未来が変わるかもしれない」と、農家のみなさんが思ってくれたのです。
「ロボットデモ会」参加者の95%が導入意向
自社開催のデモ会には、ロボットを実機で持参します。
農家の方々は熱心に見てくださるのです。
このデモ会では参加者に意向書をいただきます。
「実際にロボットを導入しますか」という意思を確認しています。
すると、95%の決定率なのです。かなり高い数字だと思います。
それほどニーズがあることが分かっています。
たった数回のデモ会ですが、それだけで売上見込み5,500万円となっています。
こういった取り組みをしっかり行っていくことで、ロボット8,400台で売上約80億円が達成できる見込みです。
テクノロジーで、農業の未来を変える
2022年までに九州24拠点、全国40拠点を達成し、テクノロジーで未来の農業を変えていきたいと考えています。
人の手作業でしかできないことを、野菜の生産量が半分になると言われたからとはいえ、自ら進んでやりたくはないですよね。
しかし、テクノロジーがあり、ロボットがある今、未来は変えられると思います。
ぜひ応援して下さい。
ありがとうございました!
(終)
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編集チーム:小林 雅/三木 茉莉子/尾形 佳靖/戸田 秀成/川村 郁
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