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ICCサミット FUKUOKA 2019 リアルテック・カタパルトに登壇頂いた、ヒューマノーム研究所 瀬々潤さんのプレゼンテーション【ヒューマノーム研究所は、“データ駆動型サイエンス”で健康を理解し「人間とは何か」を探究する】の文字起こし記事をぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プレミアム・スポンサーのHonda R&D Innovations様にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2019年2月19日〜21日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 3B
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by Honda R&D Innovations
(プレゼンター)
瀬々 潤
ヒューマノーム研究所
代表取締役社長
東京大学大学院新領域創成科学研究科 博士(科学)。東京大学助教、お茶の水女子大学・准教授、東京工業大学・准教授、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)ゲノム情報研究センター研究チーム長、産総研人工知能研究センター研究チーム長を歴任。米国計算機学会のデータマイニングコンテストKDD Cup 2001優勝、Oxford Journals-JSBi Prize 受賞。機械学習・数理統計の手法開発および生命科学の大規模データ解析を専門とする。2018年10月1日付にて、株式会社ヒューマノーム研究所代表取締役社長に就任。研究の場を国の研究所から、民間の研究所へと移すことで、研究の活動と社会実装の幅を広げ、多くの企業・公的機関と協力し、健康を計算しデザインできる社会を目指す。
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▶「ICC FUKUOKA 2019 リアルテック・カタパルト」の配信済み記事一覧
瀬々 潤氏 よろしくお願いします。ヒューマノーム研究所の瀬々と申します。
私たちは、「人間とは何か」という壮大な問いに、どのように挑んでいくかということを考えています。
私自身は研究者です。
今までこの問いに対し、一貫して人工知能(AI)の開発を通して挑んできました。
学生時代にデータ解析の世界コンペティション(KDD Cup 2001)で優勝し、その後、お茶の水女子大学、東京工業大学、産業技術総合研究所の人工知能研究センターなど、国立の教育研究機関で12年間、研究室を主宰してまいりました。
その間、人工知能の中でもコアな技術である「機械学習方法の開発」を行ってきました。
研究成果を有力な学術雑誌で積極的に発表し、これまでに合計80報以上の論文が掲載されました。
まさに世界の最前線で戦ってきました。
AIで遺伝子・タンパク質・疾患の「つながり」を考える
私たちが開発してきたAIは、ひと言で言うと「物事のつながりを考えるAI」です。
私は特に生命科学に興味があったので、例えば遺伝子のつながり、タンパク質のつながり、疾患のつながり、そのような様々なものの「つながり」を考えてきました。
少し実例を出して説明します。
これらのグラフは、肺がんの患者さんが手術を受けた後にどれだけ生存しているかを表した曲線(※)です。
▶︎編集注:このように、時間経過に伴う個体の生存率を示したグラフを生存曲線とよぶ。このグラフでは縦軸は生存率、横軸は時間(日)を示す。
左の4つのグラフは、検査項目ごとに、陽性の方(オレンジの線)と陰性の方(青い線)を示しています。
例えば左上の「検査項目1」のグラフでは、陽性の方と陰性の方の間には曲線のカーブに全く差がないように見えます。
同様に他の3つのグラフについても、それぞれの検査項目が陽性か陰性かでは、その違いが分かりません。
ところが、私たちが開発した「つながりを見つける技術」を使うと、右下の図に示すように、4つの検査項目全てにおいて陽性の方(オレンジの線)は、早期に亡くなっていることが分かります。
つまり、一つひとつの項目だけを見ても判別できないものを、それらを組み合わせることで判別できるようにする、そのような人工知能技術を開発してきました。
そして、その技術を遺伝子やタンパク質・疾患などに適用してきました。
分散した個人の生体データを統合し「健康」を計算したい
さて、ここは「リアルテック・カタパルト」の場です。
今、様々なリアルテックが開発され、様々なデータが取得できるようになってきています。
そのデータを包含的に集め、学習させることで、現実世界で集めたあらゆるデータを扱えるAIへ発展させることができるのではないか、それがこの「ヒューマノームAI」のコアになります。
最初に考えたのは、このヒューマノームAIを開発していくことで世界全体が健康になるのではないかということです。
ところが、道のりは必ずしも平坦なものではありませんでした。
例えば病院では、人間ドックへ行って検査をしたり、病気があれば投薬をたり、場合によっては手術をする、そのようなことが行われていると思います。
そこでリアルテックの技術を使えば、検査はウェアラブル端末でリアルタイムに実施でき、投薬は食事の調整などで代替可能になり、手術はなかなか無くならないかもしれませんが、運動などで一部減らすことができるかもしれません。
ところが、その個人のデータは、検査をした人間ドック・お薬手帳・ウェアラブル端末というように、それぞれ別の場所にあり、全然違うデータとして存在しています。
したがって、これらのデータを「つなげる」ということが必要になります。
データをつなげることで、その人がどういう活動をしているかということが見えてくるだろうと考えています。
そして1人のデータだけではなく、人類のデータを集めてデータベース化することができれば、私たちの技術を発展させ、健康自体を計算できる世界が来るだろうと考えています。
私たちは、そのための技術やデータを作ることを行っています。
人類皆が自分のデータを提供することにより、その成果が自分自身に戻ってきて、自分の健康がどうなるかが分かる、ということです。
ここは福岡です。
皆さんの中には、連日このようなごちそうを食べて罪悪感を感じている人がいるかもしれません。
しかし、これが本当に最悪感を感じるべきものなのかどうかといったことも、ヒューマノームAIから計算できる未来を考えています。
山形県の温泉街・湯野浜での先行研究
実際に計算するにはデータを集める必要がありますので、そこからスタートしています。
山形県の湯野浜という温泉街で、従業員の方にご協力いただき、携帯電話・センサー・血圧計・睡眠計・腸内細菌を測るキットなどをお渡しし、1〜2カ月間計測するということを行っています。
実際に計測してみると、人は千差万別です。
まだデータが取れたばかりですが、このようなグラフが山ほど出てきています。
私はデータが大好物なので、これらのデータをどのように解析すれば皆さんにフィードバックできるか、ということを考えながら活動しています。
人類の健康な未来のため、データ解析で挑み続ける
しかし、湯野浜の一部だけではまだまだデータが足りません。
そこで、様々なリアルテックを組み合わせて次の世界へつなげる、そんなヒューマノーム研究を実践してくださる企業や自治体を募集しています。
研究に参画いただくことで、それを健康経営などに役立てることができると考えています。
さらに、研究をサポートして下さる企業も募集しています。
もし皆様が新しいテクノロジーをお持ちでしたら、私たちのヒューマノーム研究で試験的に使用をし、実際に利用可能かどうかを試す場としても利用できます。
あるいは、販売しているものをそのまま提供していただき、何が得られるかを考えていく、そのような研究を一緒に推進してくださる方を募集しています。
また、金銭的・人的な支援をして下さる「ヒューマノームサポーター」も募集しています。
私たちの活動は今スタートしたばかりです。
どのようなリアルテックを、どのようにつなげば、私たちの健康な未来へとつながっていくのか。
そのようなことを考えながら、「人間とは何か」という大きな問いにデータ解析を通じて挑んでいるのが、ヒューマノーム研究所です。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/三木 茉莉子/尾形 佳靖/戸田 秀成
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