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ICCサミット FUKUOKA 2020 リアルテック・カタパルトに登壇いただいた、ファーメンステーション 酒井 里奈さんのプレゼンテーション動画【「ファーメンステーション」は、廃棄材料からオーガニックエタノールをつくり、サステナブルな未来を目指す】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 ゴールド・スポンサーの小橋工業様にサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2020年2月18〜19日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 3B
REALTECH CATAPULT
リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by 小橋工業
(プレゼンター)
酒井 里奈
株式会社ファーメンステーション
代表取締役
公式HP | STARTUP DB
国際基督教大学卒業。富士銀行、ドイツ証券などに勤務。プロジェクトファイナンス、M&A等を担当。発酵技術に興味を持ち、東京農業大学応用生物科学部醸造科学科に入学、醸造環境科学を学ぶ。
その後、株式会社ファーメンステーション設立。未利用資源から独自の発酵技術でエタノールと蒸留粕を製造、高付加価値のサステナブルな原材料として販売するビジネスを展開している。現在、岩手県に製造拠点、ラボを保有し、東京と岩手を往復する生活を送っている。研究テーマは簡易エタノール製造システム、未利用資源の有効活用技術の開発。第1回Japan BeautyTech Awards特別賞、第3回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション特別賞「地域イノベーション賞」、ブリティッシュ・ビジネス・アワード(BBA)2014 Community Contribution 等を受賞。EY Winning Women 2019 ファイナリスト。好きな微生物は麹菌。好きな発酵飲料はビール。
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▶「ICC FUKUOKA 2020 リアルテック・カタパルト」の配信済み記事一覧
酒井 里奈さん 皆さんこんにちは。ファーメンステーションの酒井です。
こちらは、代官山のおしゃれなお店に並んだ商品の様子です。
実はこれ、全部“ゴミ”からつくられました。
りんごのお酒をつくるときの搾りかすや、産業廃棄物などの“ゴミ”を利用してつくられた製品です。
廃棄材料から、幅広い用途を持つエタノールを製造
社名の“ FERMENSTATION(ファーメンステーション)”には、“発酵の駅”という意味があります。
私たちはおそらく世界で唯一の、未利用資源、ゴミ、フードウェイスト(廃棄食料)と呼ばれるような資源を発酵させて、オーガニックエタノールをつくっている会社です。
エタノールと聞くと、燃料を思い浮かべられる方も多いかもしれません。
実はエタノールは、非常に幅広い用途があり、無限の可能性を持った原材料です。
本日皆さんが会場の入り口で手指の消毒に使われた液体も、エタノールです。
エタノールは、その他にも化粧品や、香水、消臭剤、酎ハイなどのお酒にも含まれています。
現在流通しているエタノールの市場価格は、1リットル当たり約数百円です。
しかし私たちのエタノールは1リットル当たり約25,000円と、約200倍の価格がついた人気商品です。
驚かれると思いますが、その理由をご説明する前に、まずは私がこの事業を行うことになった背景についてお話ししたいと思います。
金融機関から農大へ。ゴミから燃料をつくる手法を学ぶ
以前の私は、金融機関でプロジェクトファイナンスやM&A等を担当していました。
ところがある日、テレビを通して東京農業大学に生ゴミから燃料をつくる技術があるということを知り大変興味を持ちました。
そして2005年、東京農業大学醸造科学科に入学します。
弊社を立ち上げたのは2009年で、今年で12年目になります。
元々ゴミからバイオ燃料をつくる研究をしていた私ですが、ひょんなことから岩手県の米農家と出会い、岩手県奥州市を拠点に「米からエタノールとエサを作る地域循環プロジェクト」に取り組むようになりました。
日本では、水田のおよそ3分の1が休耕田(農業生産に利用しておらず、休耕している状態の田)であると言われています。
この休耕田を有効活用し、米を育て、収穫される米を使ってエタノールをつくっています。
3年間の実証実験では、ひたすらエタノールをつくり続けました。
実は、日本には原料からエタノールをつくる会社が数社しかありません。
そんな中私は、15年もの間、様々な原料からエタノールをつくり実績を重ねてきました。
商品が売れている理由①サステナビリティ
先ほどエタノールの価格について触れましたが、私たちのつくるエタノールがなぜこのように人気なのかについて、ご説明したいと思います。
一つ目の理由は「サステナビリティ」です。
昨今グローバル企業を中心に、「サステナブル(Sustainable、持続可能な)」「サーキュラーエコノミー(Circular Economy、循環型経済)」といったキーワードが常識になりつつあります。
▶ピーター・レイシー (著), ヤコブ・ルトクヴィスト (著),『新装版 サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略 』(日本経済新聞出版社)
そして、私たちが消費するものが、いつ、どこで、誰によってつくられたのかといった情報が求められるようになりました。
しかし、現在市場に流通しているエタノールは、石油由来のもの、あるいは海外で栽培されたサトウキビやトウモロコシを原材料としたものがほとんどで、安価に製造される原材料であるがゆえに、そういった情報を辿ることができません。
一方で、私たちのエタノールは、トレーサブル(traceable、追跡可能)であり、米については唯一オーガニック認証を持っているメーカーです。
さらに、製造工程で一切ゴミが出ないことも特徴です。
色々な原材料からエタノールをつくった後の“蒸留粕”は、地域の家畜の餌として再利用されています。
この餌は、ニワトリにもウシにも大人気です。
商品が売れている理由②機能性
商品が売れている二つ目の理由は、その機能性にあります。
エタノールの製造プロセスには、様々な工程があります。
前処理、発酵、蒸留、精製という工程の中に15年のノウハウが積み重ねられ、できあがったエタノールは良い香りとやさしい肌触りを持っています。
皆さんもご存知のように、通常のエタノールは、いわゆる消毒液の匂いです。
私たちのエタノールは、米由来のものは大吟醸のような、また果物由来のものはバラやジャスミンのような香気成分を醸し出しています。
こちらに示されているのは、ガスクロマトグラフ質量分析計(気体試料の分析機器)のデータです。
また、今は(新型コロナウイルス感染症の流行のため)市場で消毒液が品薄になっていますが、私たちのエタノールにも同様の消毒・滅菌効果があります。
独自の小型装置で、多品種生産が可能に
次に、私たちのコア技術についてご説明します。
通常のエタノール製造では、次の写真の左側のように何億円もする装置が使われますが、私たちの工場のプラントは、写真右下にあるように非常にコンパクトです。
ズームアップすると、このような一体型の発酵・蒸留装置になっています。
この装置を使うことで、簡易に高付加価値のあるエタノールを製造することができるようになりました。
さらに、米だけではなく、廃棄果物、ワインに使うブドウの搾りかす、茶殻などからもエタノールをつくることで、昨今の少量・多品種の流れにも対応しています。
製造したエタノールを、原料として国内メーカーに販売
こうしてできた「シングルオリジン」「オーガニック」「ビーガン」という特徴を持ったエタノールを携え、事業展開を行っています。
現在は、原料をサステナブルなものとして国内外の化粧品メーカーさんや香水メーカーさんに販売しており、今後は食品原料としても取り扱っていく予定です。
独自プロダクトの開発に加え、OEM/ODM事業も
また、エタノール単体の製造量は少ないので、エタノールをコア素材としたプロダクトの開発も行っています。
自社ブランドだけでなく、OEM/ODMにも取り組んでいるので、皆さんに商品を手に取っていただく機会も増えてくることと思います。
JR東日本との協業で、企業向けソリューション提供も
三つ目に、最近JR東日本さんと協業したこちらのプロジェクトのように、飲料の製造過程で排出されるゴミを利用した新規事業を立ち上げます。
アロマ製品や、“かすのかす”を食べて育った牛肉の販売など、新規事業をつくりつつサステナブルなイメージの向上にも貢献しています。
このように、私たちの技術により、様々なところで“ゴミからつくられたプロダクト”が身近なものになりつつあります。
大企業との連携、海外サステナブル原料の市場へも
今後も大企業様との連携を進め、様々なプロダクトを開発することで市場をつくっていきたいと考えています。
また、海外にはサステナブル原料の市場があるので、グローバルブランドに対する原料の販売も視野に入れています。
東京、岩手に仲間が増えてきました。
様々な原料やゴミを再利用し、身近なものとして使えるような、そんな生活を目指しています。
消費者・生産者とエタノールによる循環社会を目指す
本日登壇するにあたって、新たにこの一枚のスライドを加えました。
今、新型コロナウイルス感染症の影響で、エタノールや消毒剤が品薄になっています。
通常のエタノールはサトウキビやトウモロコシなどを原料としているので、将来、気候変動による収穫高の減少などで安定的な供給が難しくなることもあるかもしれません。
一方で、私たちが出した“ゴミ”からつくられるエタノールは、供給の安定性だけでなく、その消毒・滅菌作用においても、これからの社会に貢献できるものであると考えています。
今回このICCサミット FUKUOKA 2020に参加し、九州オリジナルの原料で新しいプロダクトをつくってみたいという思いも抱いています。
今後も仲間を増やしながら、新しい市場を、ゴミのない社会を皆さんと一緒につくっていけたらと思っています。
以上です。ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/戸田 秀成
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