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見るだけから、ケアする眼鏡へ!目の動きに合わせたオートフォーカス眼鏡を開発する「エルシオ」(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】

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ICCサミット FUKUOKA 2020 リアルテック・カタパルトに登壇いただいた、エルシオ 李 蕣里さんのプレゼンテーション動画【見るだけから、ケアする眼鏡へ!目の動きに合わせたオートフォーカス眼鏡を開発する「エルシオ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 ゴールド・スポンサーの小橋工業様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜19日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 3B
REALTECH CATAPULT
リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by 小橋工業

(プレゼンター)
李 蕣里
株式会社エルシオ
代表取締役副社長COO
公式HP | STARTUP DB

1986年東京都生まれ。2017年、大阪大学大学院理学研究科博士後期課程を修了し、同大学工学研究科電気電子情報工学専攻にて特任研究員として、電気制御型の焦点距離可変レンズであるフレネル液晶レンズの開発に従事。学内アントレプレナー育成研修で結成されたチーム、LC Optels(エルシーオプテルズ)の未来2017メディカルヘルスケア部門最優秀賞等、ビジネスコンテストでの受賞を経て、2019年4月に、共同創業者の澁谷と株式会社エルシオ(Elcyo Co., Ltd.)を設立。度数可変眼鏡『エルシオグラス』により、視力に問題を抱える方への新しいソリューションの提供や、全世代のセルフヘルスケアの普及を目指す。

「ICC FUKUOKA 2020 リアルテック・カタパルト」の配信済み記事一覧


李 蕣里さん こんにちは。株式会社エルシオの李です。

本日は、度数可変眼鏡「Elcyo glasses(エルシオグラス)」についてお話しします。

弊社では、デジタルカメラのオートフォーカスのような仕組みを持つ眼鏡を開発しています。

40代から始まる目の老化。国内7,800万人が「老眼」

突然ですが皆さんの中で、「老眼」を自覚している方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか?

実は目の老化は40代で始まり、超高齢化社会の到来により、国内の7,800万人が老眼者であると言われています。

また、若い人の中にも、スマートフォンの普及とともにスマホ老眼(※)の症状を訴える方が急増しています。

▶編集注:スマホ老眼とは、スマートフォンなどの携帯情報端末の長時間の使用によって起こる症状のこと。加齢による老眼と同様、眼のピント調節がスムーズにできなくなることにより起こるが、若い世代にみられるスマホ老眼の症状は一時的なものが多く、長引くと、肩や首、頭などの慢性的な痛みに連鎖することがある。

長い間“アナログ”で進化のなかった眼鏡レンズ

近年、スマートフォンやデジタルカメラのズーム機能が進化し、自在に遠近の焦点を合わせて、綺麗な写真を撮ることができるようになりました。

しかし、眼鏡のレンズはどうでしょう?

ファッション性は高くなり価格も手ごろになりましたが、機能に特別な進化はありません。

スマートフォンのようにズーム機能の付いた眼鏡もありません。

そこで私たちは、長い間イノベーションがなかったこの領域に一石を投じるべく新たな眼鏡の開発を行うことにしました。

レンズの度数が自在に変わる眼鏡「エルシオグラス」

エルシオは、老眼でやスマホ老眼を一発解決する、完全オートフォーカス眼鏡「エルシオグラス」を作ります。

今日は、「眼鏡」「オートフォーカス」「エルシオグラス」と覚えて帰っていただきたいと思います。

このブレイクスルーを可能にするのは、眼鏡の度数を自在に変えられる液晶レンズの技術です。

実は私はこれまで、大学で有機半導体や超分子、有機磁性体の研究を行ってまいりました。

大阪大学大学院で博士号を取得した後、US San Diegoへの留学を経て、大阪大学尾﨑研究室で液晶レンズの技術に出会いました。

大学を卒業してから約10年間、様々な国で様々な研究に携わってきたのですが、その中で最も惹かれたのがこの液晶レンズの技術です。

この技術は、共同創業者の澁谷義一が、30年間の開発経験をもとに生み出したものです。

新技術「フレネル液晶レンズ」で、眼鏡の度数が可変に

そしてこちらが、現在開発中のエルシオグラスです。

エルシオグラスは、レンズ全面で度数の切り替えができるという特徴を持っています。

一般的な遠近両用眼鏡では視界が歪んだり視野が狭くなることがあり、そのような不便を解決することが期待されています。

この度数の切り替えを可能にするのが、「フレネル液晶レンズ」です。

「フレネル液晶レンズ」は、液晶レンズと後述するフレネルレンズの特長をかけ合わせた新技術で、従来の常識を超えた眼鏡を作ることを可能にします。

レンズとなる液晶内部には、棒状の細長い有機分子が複数存在し、電気の力が加わると(OFF→ON)一部分子の角度(屈折率)が変わります。

この液晶を、次のスライド右上のパターニングされた透明電極で挟むと、液晶レンズになります。

液晶を透明電極で挟み一定の電圧を加えることで、電界(帯電した物体の回りに存在し、電荷に働く力の存在する領域)に沿って液晶分子が並び、次のスライドの左上にあるような凹型の波面が形成されるのです。

ここを光が通過することで、被写体が拡大されて映ります。

また、反対の条件で電圧を加えると、被写体が縮小されて映ります。

これまでにも、液晶レンズについて数々の研究が行われてきましたが、一部を除き、ほとんど実用化されていませんでした。

それは、度数を追求するとより厚い液晶層が必要になり、電圧が全体に行き届かず液晶の制御ができなくなくなるという壁があったからです。

この壁を乗り越えるために着目したのが、照明系レンズなどに用いられることの多い「フレネルレンズ」です。

フレネルレンズは、レンズ表面を光軸方向(同心円状)に切り落とし、厚さを減らしたものです。

レンズを薄いまま大口径化できるという特長も持っています。

このフレネルレンズの特長と液晶レンズの技術を掛け合わせたものが、「フレネル液晶レンズ」です。

液晶版のフレネルレンズの表面には、フレネル型の溝はなく、フレネル型にパターニングされた透明電極のみがあります。

液晶レンズに電圧を加えて液晶を下記図のように並べ、形成したフレネル型の波面に光を通過させると、次のスライドのように光が焦点に集まっていきます。

そうすると、私の拳に焦点が合いますね。

このフレネル形状波面がレンズの役割を果たしています。

逆極性の条件で電圧を加えた時も、同様です。

眼鏡で健康データを集め、病気の早期発見・予防を

これまで眼鏡は“見る”ためだけのものでしたが、これからはデータ収集の役割も果たし、ビッグデータやAIを活用することも期待されています。

そういった観点から、今後はヘルスケアの分野において、認知症をはじめとした様々な疾病の早期発見・予防にも貢献していきたいと考えています。

さらに、メディカル領域での市場創造もロードマップに描いています。

例えば、プリズム機能や調光機能を搭載することで、小児弱視だけでなく、斜視、羞明(強い光を受けた際に、不快感や眼の痛みなどを生じること)などを治療できるような眼鏡を作っていきたいと考えています。

また、レンズだけでの応用も考えており、今後主流となっていくであろうVR・AR用ヘッドマウントディスプレイやスマートコンタクトレンズ等、ヒトの視覚に対する新しい挑戦となるようなデバイスへの応用や、スマホカメラを始めとしたカメラモジュールや照明器具まで、幅広い用途があります。

現状では製品開発を行っている段階ですが、将来はさらに市場を拡大し、多くの方々のお役に立ちたいと考えています。

人々の視界をクリアにし、生活から人生までを支える

こちらは、エルシオとともに夢の実現を目指す、大阪大学大学院工学研究科尾﨑研究室の仲間たちです。

私たちは、「世界中の全ての人々の視界をクリアに保ち、生活から人生まで支えるパートナーとなりたい」というビジョンを掲げ研究開発に取り組んでいます。

最後にもう一度。

皆さん、「眼鏡」「オートフォーカス」「エルシオグラス」を覚えていただけたでしょうか?

ありがとうございました。

(終)

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/戸田 秀成

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