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二酸化炭素ガスを吸収して育ち、産業廃液から金属を回収する苔で地球環境の改善に挑む「ジャパンモスファクトリー」(ICC KYOTO 2021)【文字起こし版】

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ICC KYOTO 2021 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただいた、ジャパンモスファクトリー 井藤賀 操さんのプレゼンテーション動画【二酸化炭素ガスを吸収して育ち、産業廃液から金属を回収する苔で地球環境の改善に挑む「ジャパンモスファクトリー」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミットFUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 プラチナ・スポンサーのベクトル様にサポート頂きました。

【速報】子どもの好奇心に火をつける!新しい学び場「SOZOW」を提供する「Go Visions」が審査員号泣のソーシャルグッド・カタパルトで優勝!(ICC KYOTO 2021)


【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICC KYOTO 2021
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト&ラウンドテーブル
Supported by ベクトル

井藤賀 操
株式会社ジャパンモスファクトリー
代表取締役CTO

2002年広島大学大学院理学研究科修了、博士(理学)を取得。2003年より理化学研究所植物科学研究センター研究員、2013年より同研究所環境資源科学研究センター上級研究員に従事。日本蘚苔類学会奨励賞、日本鉱業協会賞など受賞。2018年アグリテックグランプリに出場、最優秀賞を受賞。2019年スピンアウトし、株式会社JAPAN MOSS FACTORY創業、NEDO NEP 2019採択、いちかわ未来創造会議社会実験実施者に認定される。2021年リアルテックベンチャー・オブ・ザ・イヤー2021スタートアップ部門を受賞。現在、環境系の理研ベンチャーに認定されている。


井藤賀 操さん 皆さん、おはようございます、株式会社ジャパンモスファクトリー代表取締役CTOの井藤賀です。

当社のビジョンは、「苔で地球環境を守る」です。

地下資源の利用で生じる社会課題

私たち人類は、地下資源による恩恵を得て豊かな生活を続けてきました。

しかし、例えば化石燃料、鉱物資源、有用金属資源などの地下資源は、枯渇する運命にあるという社会課題を抱えています。

さらに、地下資源を採掘し、大量消費、大量廃棄すると、環境汚染や問題が発生するリスクが高まります。

これからは「地上資源」の利用が必要

したがって、これからは「地上資源」による恩恵を得て生活していく必要があると考えています。

例えば、「都市鉱山(※) 」と呼ばれる使用済の地下資源の有効活用や、バイオマスの利用などが挙げられます。

▶編集注:都市鉱山とは、都市でごみとして大量に廃棄される家電製品などの中に存在する有用な資源(レアメタルなど)を鉱山に見立てたものである。そこから資源を再生し、有効活用しようというリサイクルの一環となる。地上資源源の一つでもある(Wikipediaより)。

産業廃液から金属を濃縮吸着するフィルターを開発中

当社では、都市鉱山の産業廃液を対象とした、金属吸着フィルターを開発中です。

開発しているのは、このように塩ビ管の中に苔の原糸体(※) をはさみこみ、まるでフィルターカートリッジのように使う商品です。

▶編集注:コケ植物、およびシダ植物において、胞子の発芽後すぐに形成される構造(Wikipedia)。

これは金を含む白金属類の濃縮吸着ができるフィルターで、さらに、鉛を吸着する性質も見い出されています。

産業廃液から金の回収に成功

当社は、苔の原糸体で都市鉱山の産業廃液から金を回収することで、地下資源の社会課題を解決したいと思っています。

その思いのもととなった研究成果は、ヒョウタンゴケという苔の原糸体に金が11%も濃縮吸着したというものです。

苔は緑色ですが、金を吸着して赤色になりました。

これはナノ粒子で結合しているためですが、反射型の顕微鏡で見ると金色に見えます。

当社は、環境改善素材として、苔の原糸体の製造・加工する環境系の理研ベンチャーに認定されており、化学工業日報にも取り上げられています。

JMF to Commercialize Moss Adsorbent Able to Recover Precious Metals(化学工業日報)

目指すは、世界初・日本発の「苔の原料メーカー」

当社は、苔の原糸体の製造・加工することを生業とする、世界初、日本発の苔の原料メーカーになりたいと申し上げております。

苔から苔の原糸体を作り、水槽の中でさらに原糸体を作っていきます。

原糸体を製造・加工することを弊社の強みとして取り組みを行っています。

苔の細胞壁の特性を活かし鉛も回収可能

色々な用途の原糸体ができます。

こちらは本日紹介した、貴金属類を吸着する機能を持つ苔です。

鉛を吸着したものは、ピンク色に染めて表現しています。

その下の写真は、金を吸着した場合です。

鉛は細胞壁に吸着しますが、金は葉緑体の周辺に集まります。

鉛の場合はNMR(核磁気共鳴)などを駆使して、成分がポリガラクツロン酸やセルロースであることを確認しています。

重要なのは、原糸体は水をはじくクチクラ層を欠くということで、これは苔の独特な特徴です。

▶編集注:苔にはクチクラ層がないため、水がダイレクトにアクセスでき、細胞壁成分だけでも鉛を蓄積することができる。詳しくは、「ジャパンモスファクトリー」は、フィルター化した苔で、汚染された水や環境を浄化する (ICC FUKUOKA 2021)をご参照ください。

軽さが強みの苔の大気フィルターを開発中

最近、大気フィルターの開発に着手しています。

こちらの苔は繊維構造を持っていますが、競合となる活性炭との重さ比較で、20分の1という軽さを誇っております。

さまざまな用途の苔を受託生産

また、こちらのように、触ると非常に気持ちいい、繊維構造を持ったテキスチャーという素材もあります。

園芸やアクアリウム用の素材も出てきています。

苔の受託生産(ジャパンモスファクトリー)

太陽光を利用した苔の屋外大量培養に成功

KOBASHI HOLDINGSとの共創で、屋上での苔の大量培養に成功しています。

ニュースリリース 2021年02月12日 休耕田や休廃止鉱山で生育可能なコケ植物の屋外培養に成功(KOBASHI HOLDINGS)

これで得た苔の原糸体をまくと、1カ月程度で苔の群落になります。

二酸化炭素ガス濃度と原糸体の生長速度の関係性

重要なのは、大気中の二酸化炭素ガス濃度が高まると、苔の原糸体の生長量がアップすることです。

この性質は、「廃鉱山の管理をエコ化する植物利用型抗廃水浄化技術」として、『BIOINDUSTRY 』(2021年7月号)に掲載されました。

株式会社ジャパンモスファクトリー代表取締役の井藤賀の論文がバイオインダストリー誌に掲載されました(ジャパンモスファクトリー)

よろしければ、是非ご覧ください。

苔で地球環境を守る

当社は、二酸化炭素ガスを吸収しながら、環境改善素材を製造・加工してまいります。

そうすることで、私たちの健康や豊かさを守っていくことができると考えています。

苔の原糸体を、環境改善素材として製造・加工する新たな産業基盤を構築し、地下資源の抱える社会課題を解決することに挑戦します。

「苔で地球環境を守る会社」、ジャパンモスファクトリー。

今後ともよろしくお願いいたします、ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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