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社会問題は、当事者だけでは解決できない – 注目の社会起業家特集「リディラバ」(1)(安部敏樹)【K16C-RDL #1】

社会の無関心を打破する「リディラバ」安部敏樹さんのプレゼンテーションを2回シリーズでお届けします。(その1)は、リディラバの理念と最新のスタディ・ツアー事例についてお話頂きました。2016月9月6日・7日に開催したICCカンファレンス KYOTO 2016「カタパルト」-グロースステージ- プレゼンテーションの書き起こし記事です。

一般社団法人リディラバが主催する、社会起業の最先端を知るカンファレンス「R-SIC(アール・シック)」が開催されます。ご興味のある方はHPをご覧ください。

本記事で特集しております8分間のプレゼンテーションを行う「CATAPULT(カタパルト)」のプレゼンターを募集しております。「スタートアップ」「社会起業家」「IoT/ハードウエア」「リアルテック」の4カテゴリーで募集しております。ぜひ募集ページをご覧ください。

登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 9B
CATAPULT(カタパルト) - グロース・ステージ特集 -
 
(プレゼンター)
 
安部 敏樹
一般社団法人リディラバ/株式会社Ridilover
代表理事/代表取締役
 
東京大学在学中にみんなが社会問題をツアーにして発信・共有するプラットフォーム『リディラバ』を2009年に設立。600名以上の運営会員と150種類以上の社会問題のスタディツアーの実績があり、これまで4000人以上を社会問題の現場に送り込む。また都立中学の修学旅行や企業の研修旅行などにもスタディツアーを提供する。
2012年度より東京大学教養学部にて1・2年生向けに社会起業の授業を教え、2014年度より同大学で教員向けにも講義を持つ。特技はマグロを素手で取ること。総務省起業家甲子園日本一、学生起業家選手権優勝、ビジコン奈良ベンチャー部門トップ賞、KDDI∞ラボ第5期最優秀賞など受賞多数。第2回若者旅行を応援する取組表彰において観光庁長官賞(最優秀賞)を受賞。著作に『いつかリーダーになる君たちへ』(日経BP)などがある。

リディラバ 安部 敏樹 さんの最新書籍が販売されました。


安部 敏樹 氏(以下 安部) リディラバの安部と申します。

本日はよろしくお願いいたします。

最初に、リディラバの創業はどのように始まったのかをお話したいと思います。

リディラバは私が東京大学3年の時に始めました。

私自身はもともと、社会問題の当事者でした。中学生のころは非行少年だったこともあり、大学生となり、色々な社会課題や人権侵害の現場を見ていく際に、「なぜ社会問題の多くは解決されないのか?」と疑問に思っていました。

社会問題は、なぜなくならないのか?

問題が解決しない理由は実は共通の構造があり、大きく3つに分けられました。

まず、ほとんどの人が自分に関係のない問題には興味がない。社会問題は多くの方にそもそも興味を持って頂けないことが問題だと感じました。次に、社会問題に関する情報もなければ、その後に具体的に関わるための機会もないということが続きます。

そんな状態では、当然ながら社会課題の現場に多くの人が関わるような状態にはなりません。

一方、ホームレスの方々が100人集まったからといってホームレスの問題が解決するのか?というと難しいわけです。昔の私のような非行少年が100人集まっても、問題解決は行われずに喧嘩が始まるだけなのです。

つまり、当事者だけでは解決できないからこそ社会の問題なのです。
それなのに、実は「非当事者」が関わる機会がない。
ここに、強い矛盾を感じました。

例えば今回ここにいらしている審査員あるいは会場の皆さんの中でホームレスの方々とこの半年間くらいで1~2分間でも話をした方いらっしゃいますでしょうか?

いらっしゃらないですよね。

自分に関係のない問題は興味を持ちづらい。だからこそ、社会問題をしっかり可視化し、気軽に接する機会を作ることができないだろうか。
このような問題意識の中でスタートしたのが「リディラバ」の活動です。

社会問題の現場への道づくり

一言で言うと、リディラバがやっていることは社会問題に触れるための最初の接点となるインフラを作りたいということです。社内的には「市民と公共社会の橋渡し」と言っています。

例えば、皆さんは休みの日に家族でどこかにいこうと考えたとき、いきなり鉈(なた)を持って野道を切り開き、山の奥にある集落に行こう、とはならないですよね。
あるいは、橋のかかっていない川にいきなり飛び込んで泳いで対岸に向かうということはしないですよね。

道路が通っていたり、バスが通っていたりする場所に「家族で一緒に行こうよ」という話になりますか?

誰かがそこに道路を通さない限り、基本的に日常生活の中で人がそこに行くことはありません。

だからこそ、「社会問題の現場」にいかに道路を通し、橋をかけていくか、ということが私たちの役目なのです。

「スタディ・ツアー」のスタート

具体的には、関わりやすいきっかけを作ろうということから、「社会問題を学びに行くという旅行はどうですか?」という「スタディ・ツアー」を始めました。

例えば、(上のスライドの)左上の写真は鹿肉を食べながら環境保全の問題はどうなっているかを学ぶツアーです。隣の右上の写真は妊娠や出産を疑似体験していただく体験のツアーですし、左下の写真は小布施の街づくりを学ぶツアーです。最後に右下の写真は林業について学ぶツアーです。

どれも課題を楽しみつつ学ぶ、その現場にある複雑さを学ぶ、ということを大事にしています。

リディラバの「スタディ・ツアー」の特徴と仕組み

リディラバは現在、約200のテーマと学びのノウハウをコンテンツとして持ってます。

ツアーでは参加者同士がディスカッションしたり交流するように設計しています。
その結果、ツアー参加者の中でこのツアーの体験をきっかけに仕事を変えたり、大学を辞めて移住定住する人もいました。またここで出会い、結婚する人たちもいます。このようにツアーでの体験をきっかけに人生観が大きく変わるという人がいることもリディラバのスタディツアーの特徴です。

今のところ、ツアー参加者は学生からファミリー層の方が中心です。特に家族が増えると社会問題に興味を持たれるということをおっしゃられる親御さんが増えています。

次に「スタディ・ツアー」の仕組みを説明します。

リディラバは、日本全国にあるNPO法人と一緒に「スタディ・ツアー」を企画します。社会問題に関心がある参加者と社会問題の解決に取り組むNPO法人とを「スタディ・ツアー」を通じてマッチングするプラットホームです。

社会問題の現場に人を送客するためには、まずどのようなコンテンツにしていくのかという企画立案も行いますし、実際にツアーを運営するためには旅行業の資格も必要です。また、それらに加えて決済・集客・CRMの提供・トレーニング・学びのマッチングなどあらゆるものが必要となります。

こういった必要な機能を私達が一括してNPOの方々と提携した上で、参加者の方々にスタディツアーを提供しています。

最近話題の「スタディツアー」事例

最近話題になったリディラバのツアーを紹介します。

例えばイスラムのテーマを扱う「ラマダン月限定!『”感謝”の食事』分かち合いツアー」がありました。

これは異文化理解というのをわざわざ海外に行かなくてもできる環境を作りたいという気持ちから始まったものです。

地域の福祉活動を考える「千葉県多古町のおっちゃんと、街を歩きながら福祉を考えるツアー」というこのツアーは、福祉を地域全体の中でサポートする形のモデルケースとなるような現場を体験するツアーです。

ホームレス問題に関して学ぶ「都会に潜む貧困。~池袋でホームレス事情を知るツアー」は実際に現場で炊き出しなどを体験もしつつ、元当事者の方々のサポートを受けながら現場をパトロールできるツアーです。

興味深いのはこういったツアーにいくと、実は受け入れ側の元ホームレスの方が意外なほどにモチベーションを高めて、意欲的になってくれるということです。

誰かに関心を持ってもらうということは実は当事者や現場の支援者にとっても大きいのだ、と改めて思います。

パラリンピック選手と実際にパラリンピックの競技を疑似体験してみましょうという「パラリンピック日本代表選手と交流!汗を流して障がい者スポーツ体験ツアー」もあります。

障害というとなにかと「弱い、守らなければならない」というようなイメージを持つ人もいると思いますが、彼らのアスリートとしての一面を体感すると違ったイメージを持つことになると思います。

皆さんスマホ使いすぎですよねという問題意識からのツアーもあります。デジタルデトックスをしましょうという「スマホを捨てて鎌倉探訪。デジタルデトックスツアー!」というものです。

最後に紹介するのは少しディープなテーマになりますが、風俗と労働の問題です。風俗の問題は「性」の問題と捉えられがちですが、実は労働の問題なんです。

若い女性にとっては良し悪しは別として、セーフティネットとして風俗が機能しているという事実認識から始められればと思っています。

風俗嬢とラブホでおしゃべり!大人な女子会ツアーin歌舞伎町」というツアーです。

このようにユニークな「スタディ・ツアー」を個人の参加者に向けに提供しています。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/築家 まき

続きは 修学旅行を社会課題の「原体験」の場にする - 注目の社会起業家特集「リディラバ」(2) をご覧ください。

【編集部コメント】

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