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伝統工芸の普遍的な価値を伝え、次世代につなぐアパレルブランド「renacnatta」を展開する「Dodici」(ICC FUKUOKA 2022)

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ICC FUKUOKA 2022 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただいた、Dodici 大河内 愛加さんのプレゼンテーション動画【伝統工芸の普遍的な価値を伝え、次世代につなぐアパレルブランド「renacnatta」を展開する「Dodici」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回300名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 ゴールド・スポンサーのSIIF(一般財団法人 社会変革推進財団)にサポートいただきました。

【速報】未来を奪われた難民の、日本での活躍を支援する「WELgee」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2022)


【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICC FUKUOKA 2022
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト
– 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by SIIF(一般財団法人 社会変革推進財団)

大河内 愛加
株式会社Dodici
代表取締役

1991年横浜市出身。15歳でイタリア・ミラノに移住し13年間在住。 Istituto Europeo di Design ミラノ校(ヨーロッパデザイン学院、略称IED)広告コミュニケーション学科卒業。 2016年2月に「文化を纏う」をコンセプトに掲げるD2Cアパレルブランドrenacnatta(レナクナッタ)を立ち上げ、日本とイタリアのデッドストック生地や伝統工芸品などの素材を組み合わせたアイテムを展開。2021年4月にはネクタイをメインとした着物のアップサイクルブランドcravatta by renacnatta(クラヴァッタ・バイ・レナクナッタ)を立ち上げる。現在は京都とミラノの2拠点生活。
2020年 京信・地域の起業家アワード 優秀賞受賞。
2021年 京都女性起業家賞(アントレプレナー賞) 京都府知事優秀賞受賞。


大河内 愛加さん 株式会社Dodiciの大河内愛加と申します。

弊社は、「文化を纏う」をコンセプトに掲げる、renacnattaというアパレルブランドを運営しています。

デッドストック生地や廃棄寸前の着物を再生

renacnattaという、ちょっと変わったブランド名は、使われなくなったもの、着ら「れなくなった」もの、そして以前より作ら「れなくなった」もの、など、「れなくなった」素材や技術を使うところに由来しています。

今日はこの3つ目の、以前より作られなくなったものを使った弊社の取り組みについて、お話しさせて頂きます。

西陣織、金彩、久留米絣、播州織、手捺染、丹後ちりめん、これらは全て日本の伝統工芸であり、renacnattaで実際に取り扱っているものです。

弊社では、伝統工芸の技術はそのままに、現代のライフスタイルに合うものづくりをして、多くの人に届けることをミッションの1つとしています。

イタリア生活を経て、日本の伝統技術の価値に気づく

私は、高校、大学、社会人時代の13年間、イタリアのミラノで過ごしました。

イタリア人について印象的だったのは、子供でも大人でも、文化や歴史をきちんと知っていて、語れる人が多いこと、そして古くから残るものを尊重し、自然な形でそれらと共存しているということでした。

私はイタリア生活を経て、母国である日本の、古くから残るものに興味を持つようになりました。

伝統産業の現場にも、たくさん足を運ぶようになりました。

職人の方々の実際の仕事場を見てその奥深さを知り、衰退している中でも大切に残そうとしている人たちがいる意味が分かりました。

それと同時に、何百年、何千年と残ってきた技術の価値を知りました。

これらを残すには、どうすればいいか。

それには、「職人に、技術に見合う賃金が支払われる環境を作り続ける」ことが大切です。

そのために、文化を止めないという思いのもと、伝統産業の方たちと一緒にものづくりをしています。

約15年間で関連企業が半減、転廃業が進む西陣織

実際にどんなものを作っているか、いくつか紹介させてください。

まず、西陣織です。聞いたことがある方も多いと思いますが、その定義をご存知ですか?

西陣織の定義は、「先染めされた糸で織られる織物」です。

つまり、西陣織とは技術そのものを指しているので、素材は絹ではなくてもいいし、和柄ではなくてもいいのです。

西陣織とは(西陣織工業組合)

様々な素材や柄で織ることが可能だと知ってから、とても可能性のある織物だと感じるようになりました。

私が今着ているスカートも、ポリエステルで織られた西陣織です。

そんな西陣織が抱える問題は深刻です。

約15年間で関連企業が半減、事業者が高齢化し、彼らの代で転廃業を始めている方が年々増えています。

このままでは、今でさえ貴重な西陣織が二度と作られなくなる幻の織物になってしまうかもしれません。

西陣織をウェディングドレスやマスクとして展開

そこで、renacnattaでは、西陣織を新しいカタチで纏う機会を作りたいと思い、”一生着られる”ウェディングドレスという商品を展開しています。

このドレスはセットアップになっているので、トップスだけ、スカートだけでも着られます。

結婚式の後も、人生の大切な節目で着続けて欲しいという思いから、”一生着られる”ウェディングドレスというネーミングにしています。

コロナ禍では、西陣織のマスクを作ったところ、大きな反響があり、様々なメディアでも紹介頂きました。

安土桃山時代に確立した“金彩”も身近なアイテムに

次に紹介したいのが、金彩です。

金彩は、友禅の着物などに金箔を施す技術で、安土桃山時代に確立された伝統的な工芸です。

京都の伝統工芸「金彩」を纏うイヤアクセサリー Kinsai Collection(renacnatta)

しかし西陣織と同様、着物離れと共に、職人の数が激減しています。

renacnattaでは、着物ではなくイタリアンシルクの上に施し、そしてイヤーアクセサリーという気軽に身につけてもらえて、さらに金彩を身近に感じてもらえるアイテムにしています。

西陣織のドレスと金彩のアクセサリーは一昨年、マクアケでローンチし、約730万円の売上になりました。

文化を纏うブランド「renacnatta」が伝統工芸の新しいカタチを世界へ発信|マクアケ – アタラシイものや体験の応援購入サービス (makuake.com)

この結果を見て、伝統工芸だからといって敬遠されることは決してなく、知るきっかけさえあれば、多くの人に届けることができると確信しました。

横浜の伝統技術“手捺染”のスカーフを製作

そして最後に紹介するのが、手捺染(てなっせん)スカーフです。

私の地元、横浜の伝統技術です。

手捺染は、色ごとに型枠を作り、1色ずつ手作業で印刷していく、とても手間のかかる作業です。

デジタルプリントが主要になっている今、手捺染の需要はどんどん減っています。

実際、70年代には横浜に捺染工場が100以上あったのですが、今は10以下となっています。

それでも、横浜の捺染技術は、フランス、イタリアと並んで世界トップレベルと言われています。

手捺染スカーフ x renacnatta(YouTube)

renacnattaでは、昔ながらの手捺染手法を用いたスカーフを作りました。

ものづくりの背景を伝え、伝統産業の希望でありたい

いくつか伝統工芸を紹介させて頂きましたが、私たちの生活の西洋化やテクノロジーの進化によって、これらは衰退の一途をたどるばかりです。

勿論、今の私たちの生活に必要ではなくなってきている、それに代わるものが生まれているのも事実です。

しかし、それを理由に私たちの世代でなくしてしまうのは、あまりにももったいないです。

私は、先人たちが受け継いで、ずっと守ってきた普遍的な価値を、これからの日本に残していきたい、そんな思いで今、ブランドを運営しています。

最後に、弊社が掲げる2つのビジョンについてお話しさせてください。

まず、「声でありたい」。

作る側の責任として、生産者の顔が見えて、どんな原料で、どんな工程を経て作られているのかを、しっかり伝えることを大切にしています。

それを知ると知らないとでは、製品を手に取った時に人が感じる価値が大きく変わるはずです。

ブランドであると同時に、ものづくりの背景を伝えるメディアのような存在でありたいと思っています。

また、アイテムを買ってくれた人がそれを身につけて誰かと会ったり、SNSで発信をしたりして話題になれば、それはまた新たな声になります。

renacnattaのアイテムが伝統工芸の伝達ツールになると信じています。

知られるべきものが知られるきっかけでありたい、と強く思っています。

2つ目は、伝統産業にとって「希望でありたい」です。

関わる人たちに良い影響を与える存在でありたいと思っています。

残るべきものが残る世界を創っていく

renacnattaが商品を作れば、職人や工場が潤うだけではなく、産業全体が、ひいては地域全体が活気づくような現象を、日本各地に起こせる会社にしていきます。

弊社の影響はまだまだ小さなものですが、これから大きな声、大きな希望となって、残るべきものが残る世界を創っていきます。

応援よろしくお願いいたします。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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