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焼却処分される寝具を再生する「susteb」から、資源が循環する社会を目指す「yuni」(ICC FUKUOKA 2023)

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ICC FUKUOKA 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇し、2位に入賞した、yuni内橋 堅志さんのプレゼンテーション動画【焼却処分される寝具を再生する「susteb」から、資源が循環する社会を目指す「yuni」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】まちなか留学で子どもたちの世界を広げる「HelloWorld」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

内橋 堅志
株式会社yuni
代表取締役
HP | STARTUP DB

実家が寝具メーカーのAIエンジニア。高校在学時から実家の寝具事業の手伝いを始め、寝具の廃棄問題に関心を持つ。その後京都大学工学部を卒業し情報学研究科に進学、AIの研究に従事。在学中に産総研やNIIで研究を行ったり未踏プロジェクトに採択されるなど精力的に活動。2019年末に、寝具とソフトウェアエンジニアの特殊なキャリアを活かして、寝具業界の課題解決ができないかと考えyuniを創業。2021年9月、寝具をはじめとする綿・羽毛・ウレタン製品の回収と再生素材化を行う「susteb」をリリースし、多くの法人・自治体と連携を進める。自治体と連携した再生工場の設立も進めており、「焼却処分場を再生工場に転換し、日本を廃棄大国から資源大国へ」変えるミッションの実現に向け事業を進めている。サウナと柴犬が趣味。


内橋 堅志さん 皆さん、おはようございます。

株式会社yuni代表取締役社長の内橋と申します。

私たちは「素材の廃棄をなくし、日本を廃棄大国から資源大国へ。」というビジョンを持ち、寝具のお引き取りと再生素材化に取り組んでいるスタートアップです。

実家の寝具メーカーで知った寝具業界の課題

内橋 まずは、私の自己紹介をさせてください。

私は、元々、IT企業でAIのエンジニアとして働いていました。

そのような私が、なぜ、寝具の再生に取り組むのか。

実は、私の実家は、寝具メーカーなのです。

高校生の頃から、こちらで働き、育ってきました。

本日は、皆さんに、私が働く中で知った、寝具業界における最大の課題について、お話しできたらと思っています。

その前に、少し質問なのですが、皆さんの中に、ご自宅に寝具がないという方はいらっしゃいますか。

数名いらっしゃるようなので、のちほど、寝具を差し上げます(笑)

 (会場笑)

そうすると、(会場の)全員が寝具を持っているということになりますので(笑)。

寝具はどう処分している?

ところで、皆さんは、寝具をどうやって捨てていますか。

粗大ゴミとして捨てる、あるいは、廃棄物収集業者に回収してもらう等、ほかにも様々な捨て方があると思います。

続いての質問ですが、皆さん、これらの車は、何のために並んでいるか、わかりますでしょうか。

これらの車は、皆さんが捨てた寝具を焼却処分するために、並んでいるのです。

寝具のリサイクル率は2%

実は、皆さんがどのような方法で捨てた寝具も、ほぼすべて燃やされているのです。

ほぼすべてというのは正確に言いますと98%、つまり、寝具のリサイクル率は2%ということです。

この数字がどれほど低いかと言いますと、アパレルのリサイクル率が37%ですので、寝具は、アパレルのたった20分の1しか再生されていないのです。

そして、燃やしてしまうと、灰と二酸化炭素となり、それでもうすべて終わりなのです。

こうして燃やされている寝具は、なんと年間1億枚、およそ1人1枚を燃やしているのです。

しかし、これらは本当に燃やさなければいけないのでしょうか。

“天然素材の宝庫”なのに燃やすしかないのか?

内橋 寝具は、天然素材の宝庫なのです。

確かに、人が使った寝具は多少汚いかもしれないですし、潰れていたりカチカチに硬い状態になっていたりするかもしれません。

しかし、本当に、燃やすしかないのでしょうか。

廃棄される寝具を“資源”に変える「susteb」

「いや、絶対に再生できる」――そう思い、私たちは、寝具の廃棄をなくすだけではなく、廃棄というマイナスを、莫大な資源というプラスに変えていく、廃棄される寝具等の綿・羽毛・ウレタン・ブレス製品を回収し、素材として再生するサービス「susteb(サステブ)」を運営しています。

「susteb」では、寝具等をお引き取りし、再生素材化して、また社会で活かし、そして、お引き取りする、このループを作っています。

自治体との連携や引き取りサービスを開始

寝具を集めるところからご説明していきたいのですが、皆さん、廃棄の寝具が最も集まっている場所は、どこだと思いますか。

実は、自治体の廃棄待ち倉庫なのです。

粗大ゴミの中で最も多いものは寝具で、寝具があふれかえって困っている自治体は、数多くいあります。

これらの寝具を、「私たちが全部お引き取りします」と言いますと、とても喜んでいただけるのです。

結果、「susteb」を開始直後から、多数の自治体と連携することができました。

さらに、皆さんのご自宅に伺ってお引き取りをしたり、全国の提携店舗へ寝具の持ち込みを可能にしたりしました。

ほかにも、寝具販売企業や百貨店、クリーニング店、マンション、素材メーカー、廃棄業者等、あらゆる業界と連携して、寝具の持ち込みや大規模回収を行っています。

こうした取り組みを1年間続けたところ、総お引き取り枚数が20万枚以上、月間最大1.9万枚のお引き取りができるようなりました。

今年は40万枚を超える見込みで、もちろん、国内最大級です。

再生プロセスをゼロからオートメーション化

内橋 また、私は、自身のエンジニアとしての経験を活かして、マテリアルリサイクルのプロセスを、ゼロから作り、オートメーション化しました。

その一例として、綿の再生工程を、ご覧ください。

まずは、廃棄寝具を集めていきます。

数時間でこれほど溜まって、たった1日でパンパンになります。

洗浄・滅菌の工程については省略しますが、こちらはオリジナルの再生の機械です。

素材ごとに機械を使い分けており、綿は、こちらで再生しています。

元々、カチカチに硬い状態なのですが、再生すると、このような感じでふわっとした状態になります。

そして、倉庫から全国に送られていきます。

今、審査員の皆さんのお手元にも、再生素材のサンプルをご用意しています。

綿・羽毛・ウレタンの3種類です。

新品の素材となんら変わらない手触りだと思いますが、いかがでしょうか。

「susteb」で40%コストダウン

内橋 そして、こちらの素材は、再生素材のため、普通は天然よりも高価なはずなのですが、私たちは天然より安価な再生素材を実現しています。

天然素材の高騰が続く中、国産の再生素材、しかも安価ということで、大きな支持を集めています。

そして、再生率も90%以上と、アパレルの10〜30%程度と比較して非常に高い水準を実現。価格と再生率は再生素材において最も重要なメトリクスですが、私たちは、この最重要メトリクスでイノベーションを起こしているのです。

再生時に発熱性の繊維を織り込み、温かさをプラス

また、再生素材に機能性を足すこともできます。

例えば、こちらの素材、再生時に発熱性の繊維を織り込むことで、温かさをプラスしています。

こういった廃棄物を使用した新素材を作っていることも、私たちの強みです。

そして、皆さんご存じでしたでしょうか。

寝具は、廃棄を前提にした製造方法しかされていません。

廃棄が前提の業界を変革、再生率100%を目指す

しかし、私たちは、多くの企業で、再生率の高い製品作りをサポートしてきました。

これによって、廃棄を前提とした業界構造が、まさに今、少しずつ変わってきているのです。

yuniが業界をリードして、再生率100%を、今まさに、目指しているのです。

そのためには、廃棄寝具を安定して集める仕組みが必要なのです。

「susteb」では、焼却費用よりお引き取り費用のほうが安いので、燃やすよりも、お引き取りするほうが合理的だと考えていただけるのです。

そのお引き取り費用で、私たちはきちんと利益も出しています。

すごい! これなら、いくらでも廃棄寝具が集まるのではないかと思われるかもしれません。

日本はゴミの焼却率が世界一

しかしながら、実は、うまくいかないこともあります。

今、サーマルリサイクルという、燃やしてエネルギーを回収する技術が進んでいます。

もちろん、よいことなのですが、本来、燃やさなくてもいい、再生できるものまで燃やされてしまっているのが現状なのです。

寝具も、そのひとつでした。

私は、自治体の担当の方から、このようなことを言われたことがあります。

「寝具はよく燃えるんだ。再生なんてしなくていいよ。」と。

私は、本当にショックを受けました。

日本は、世界一、焼却処分の多い国なのです。

サーマルリサイクル、もちろん大事ですが、これをリサイクルと呼ぶのは、日本だけです。

そして、世界の焼却処分場の半分以上が、日本にあります。

私たちは、この「非効率で不合理な日本のごみ処理を変えたい」。

そのために、「どのような自治体や法人にも使ってもらえる、本当に応援できるサービスにしたい」と考えています。

実は、再生素材は、CO2排出量が非常に多いこともあるのですが、「susteb」では、CO2の排出量も従来に比べて大変少なく、電力消費もほぼないのです。

現在、日本の綿の自給率はほぼ0%ですが、国産の再生綿を作ることで、それを数%まで引き上げられるのです。

就労支援への取り組み

内橋 私たちの再生工場では、障がいを持つ方の就労支援も行っています。

実は、再生製品作りは、彼らが担ってくれていて、国産の高品質な寝具を手作りしていますので、本当に“職人”なのです。

私たちも本気で、彼らに技術を身につけてもらっています。

この再生工場での経験をきっかけに、就職できるケースもあります。

こうして、焼却廃棄・脱炭素・自給率・福祉等、yuniは、社会課題をビジネスモデルの力で解決するのだと、粘り強く説明することで、風向きが変わっていったのです。

10年後、今の100倍=20%の寝具の再生を目指す

そして今、回収した1枚当たりの売り上げが2,349円、利益は1,059円です。

皆さん、これらは元々捨てる・燃やす予定だったものですが、これだけのビジネスインパクトを生むことができ、決してゴミではないのです。

今、私たちは、0.2%の寝具を再生していますが、10年後には、今の100倍、20%の寝具を再生します。

このとき生み出されるビジネス規模は、売上1,000億円以上、同時に1万人の就労支援を生み出し、廃棄物由来のCO2を0.5%削減し、国産の再生綿で自給率10%へと、これほどのソーシャルインパクトを起こすことができるのです。

日本を「廃棄大国」から「資源大国」へ

内橋 そして最後に、実は、ゴミ焼却において、日本が世界一の技術を持っているのです。

今、膨大な廃棄を抱える日本から生まれる、グローバルで勝つことのできる新しい産業は再生技術だと、私は思っています。

ですから、これは希望であり、チャンスなのです。

焼却処分場をなくし、資源を生み出す場所へ変えていく。

資源循環だけではなく、多くの社会課題を解決できる場を作る。

その先に、日本を廃棄大国から資源大国へ、私たちが再生します。

ご清聴ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成/中村 瑠李子

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