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「今、宇宙ビジネスが激アツだ。注目宇宙ベンチャー大集合!」【F17-3D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!10回シリーズ(その10)は、最後のメッセージと併せて「なぜ宇宙ビジネスに取り組むのか?」を各登壇者にお話いただきました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日・22日・23日開催
Session 3D
「今、宇宙ビジネスが激アツだ。注目宇宙ベンチャー大集合!」
(スピーカー)
伊藤 美樹
株式会社アストロスケール
代表取締役社長
大西 俊輔
株式会社QPS研究所
代表取締役社長
倉原 直美
株式会社インフォステラ
代表取締役
中村 友哉
株式会社アクセルスペース
代表取締役
(モデレーター)
田川 欣哉
Takram
代表取締役
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▶「今、宇宙ビジネスが激アツだ。注目宇宙ベンチャー大集合!」の配信済みの記事
【前の記事】
【本編】
田川 もう少しだけ会場から質問を取っていきたいと思います。いかがでしょうか。
質問者4 今のお話を聞き、皆さんがやっている宇宙関連の事業、つまり地球上の人類に対して提供できるサービスについては想像できるものもありますが、逆に宇宙に対して本当に人類としてやるべきことは何なのか、どのようなエリアに取り組むべきなのか、皆さんがどのように考えられているか、お伺いしたいと思います。
田川 いいですね、この会場に相応しい大きい質問ですね。
(視点は)宇宙だと。人類などと言うなと(笑)。
では、そちらの方はいかがですか?
質問者5 どうしても聞きたいことがあり、プロの方の意見をお伺いしたいのですが、昔、ケネディ大統領時代にアメリカは月へ行ったと言っていますが、それが本当かどうかは別として、当時の技術でそれが可能であったならば、それ以降なぜ誰も月へ行かないのでしょうか。
皆さんのご意見を聞きたいと思います。お願いします。
田川 ありがとうございます。
2つのご質問、どちらからでも構いませんが、いかがでしょうか?
月に行かなくなったのは、「宇宙ゴミ」のせい?
伊藤 月に行けない理由を、一つ知っていると思います。
聞いた話なので、もし間違っていたら皆さんに訂正をお願いしたいのですが、月に行けないのは、やはりゴミのせいなんです。
人が宇宙に行くというだけで、設計の信頼度のレベルがかなり上がります。
最後に月に行ったときは、それほどゴミがなかったんです。
今人類が月に行こうとすると、一定の高度のところにゴミがベルト状に集まっている箇所があり、そこを突き抜けて行かないとなりません。
田川 非常にリスクが高いわけですね。
伊藤 はい。求められる設計の信頼度がかなり高くなるため、行けないという理由を聞きました。
田川 つまり、これから大宇宙時代がやってきて、衛星がより頻繁に打ち上げられるようになり、より多くのゴミが出てくると、いずれは外に出て行けない状態になる、地球に閉じ込められてしまうということでしょうか。
伊藤 そうだと思います。
低軌道というのは、400~800、ないしは1000キロくらいが人気のある軌道です。
そこにやはり小型衛星が投入されてきていて、これからも投入されていきますので、更にゴミ同士の衝突が起こると、一気にゴミだらけの密集地帯になってしまって、そこから探査機なり人なりが出て行くのは非常に難しくなると言われています。
田川 新しい公害ですね、それは。
伊藤 そうですね。
田川 なるほど。そこに取り組まれているわけですね。
それでは月に行かなくなった理由はゴミということでしょうか。
伊藤 恐らくですね。
田川 後はいかがでしょうか、宇宙に対して、これは少し哲学的な問いですが、質問を読み返すと、皆さんが宇宙ビジネスに関わっている理由というのは、儲かるからというだけではないような気がしています。
今日会場にいらしている皆さんもそうですが、純粋に宇宙に対する憧れやワクワクなどもあるわけです。
投資家、エンジェルに近いようなところもあるかもしれませんが、なぜこの仕事を自身のビジネスとしてやろうと思ったのか、聞いておきたいのですが、いかがでしょうか。
宇宙ビジネスは、データ提供ビジネスとなる
倉原 私は宇宙がもともと好きで、大学に入り、学術系の会社にも入り…という経歴なのですが、いま地上系をやっている理由というのは、そもそも宇宙ビジネスをやろうと考えた時に、たぶんビックデータや、先ほど中村さんがおっしゃったように、データ提供の方に行くことは間違いないと思ったんですね。
後はインターネットが登場して、世界中の人が知識をシェアするようになってきて、今度はそれをリアルタイムで世界中のことを把握しようとしています。
恐らくこれがそのうち3次元に移行すると思っています。
3次元というのは、縦が宇宙データ、宇宙から観察することで、横方向ではなくて、縦方向のデータが、ビッグデータの中に入ってくると。
恐らくそのうち、時間軸も加わって、未来の予測、過去こうだったから、こういうことが次起こるだろうという予測も入ってくると思います。
そのためには、ひたすらデータを集めなくてはなりません。
過去から未来へ向けて、膨大なデータを蓄積していくうえで、これは通信などがネックになるだろうとパッとひらめいたので、それで始めたという感じです。
田川 そうですか、分かりました。
もっとこう熱い宇宙への憧れがあったのかと思っていました(笑)。
倉原 もともとあったんですよ(笑)
田川 もともとあったと、分かりました(笑)。
いかがですか?
木星に行きたい
大西 私はもともと宇宙が好きなので、どちらかというと、木星に行ってみたいんですよね。
田川 木星に行きたいと!
大西 木星を目の前で見てみたいんです。
あの大きさのものを近くで見た時に、どんなに感動するだろうかと。
田川 いいですね、目が輝いていますね。
大西 もう一つやりたいと思っていることがあります。よくSFに出てくる宇宙船というのは流線形ですよね。
あれは重力の影響が無い宇宙で作ったからあのような形になるのかなと思い、いつかあの形の宇宙船を作ってみたいなと。
伊藤 地上にはない形ですよね。
大西 どういう考えを捨てたら、ああいう形を作れるのだろうかと。
田川 衛星は四角いですからね。
大西 そうなんですよ、あれを作ってみたいんです。
田川 そうですか、そういう興味があるんですね。
この世にないものを実現できる
伊藤 私も大西さんと同じで、やはりイメージを現実化すること、モノづくり、エンジニアという職にとても魅力を感じたんですね。
私はゴミのやっていることとはあまりつながっていませんが、この世にないもの、イメージできたものを、実現化できることは素晴らしいと思っています。
ですので、今までないものを作るということに魅力を感じたことが一つ。
ゴミ掃除の点においては、宇宙開発が始まる5、60年前というのは、宇宙はクリーンだったはずなんですよね。
宇宙のゴミは100パーセント人間のせいなんです。
人間が出したゴミは、人間がきれいにしていかないといけないという使命感もあり、以上の二つの理由ですね。
田川 空気清浄機のようですね(笑)。
中村さん、いかがですか?
中村 他のお三方とは違って、宇宙ファンというわけではないのですが……。
田川 出ました(笑)。ビジネスだという感じでしょうか?
大学の研究を「面白かったね」で終わらせたくない
中村 宇宙にロマンや夢を感じるというよりは、自分が衛星を作り、それが宇宙という手の届かないところに行って、自分が設計した通りに動いてくれるということに魅力を感じます。
田川 エンジニアの発想ですね。
中村 私だけじゃなくて、大学でそうした衛星プロジェクトを経験した人は、多かれ少なかれ同じようなモチベーションを持っていたと思うんです。
衛星開発ってすごく大変だし、好きじゃないと続けられないですよ。
そんなに好きじゃないなら、衛星なんて作っているよりバイトやってた方がよっぽど有意義な時間の使い方です。
にもかかわらず、結構な数の人が、なぜか当たり前のように証券会社に就職したり、コンサルへ行ったりするわけです。
もちろん宇宙業界に残る人もそれなりにはいましたが、JAXAや既存メーカーに行くんです。
そこで超小型衛星の開発ができるわけではないにも関わらずですよ。
まあ、宇宙ファンなら超小型衛星じゃなくても、とにかく宇宙に関われればいいのかもしれませんが(笑)
一方、私は、繰り返し超小型衛星を作る中で、この技術はいったいどう社会の役に立つんだろうと考えるようになったんです。
自分たちが取り組んできたことの価値っていったい何なんだろうかと。
せっかく得難い経験をしたにもかかわらず、卒業するとき「面白かったね」というような、単なる美しい思い出として終わらせたくなかったんですよね。
とにかく、自分たちが長年取り組んできた超小型衛星を、何とか実用的なものにしたいという思いが強かったのです。
当時は大学の起業家教育もほとんどありませんでしたし、自分の周りに経営者がいたわけでもありませんから、起業なんていう選択肢は頭にありませんでした。
どこの企業に就職すれば、実用的な超小型衛星開発に携われるだろうかと考えていたんですね。
ただ、そもそも超小型衛星ビジネスを手掛けている企業なんて、当時は世界中どこにもないわけです。
行くところがなくて悩んでいるときに、大学発ベンチャーが盛り上がっていることを知り、なんだそうか、ないならば自分で創ればいいのだ、と思ったところから始まりました。
能天気ですよね。当時は本当に熱意しかありませんでした。
経営の勉強なんかまともにしていたら、こんなリスクの高い宇宙ビジネスなんて始めなかったと思います。
今から思えば、起業って、とにかく新しい価値を創りたいんだという強い思いだけでできちゃうし、逆にそこが原点でないと、世界を変えるような大きいビジネスにはなかなかならないんじゃないかなと個人的には思います。
もちろん、その思いを支えてくれる多くの人を見つけることができてはじめて実現できることですけどね。
とはいえ、霞を食べて生きているわけではないので、ビジネスをやるからにはお金が回らないといけません。
衛星を作り、それを火星に飛ばしても、火星には今のところ人がいませんので、誰もそれに対してお金を払ってくれないでしょう。
宇宙という特殊なフィールドであっても、お金を生むためにはやはり地球にいる人に対しサービスを提供しないといけないと、そのように強く思ったんです。
今はまだ存在せず、かつ宇宙を使わないと実現できないサービスを作りたいなと考えました。
宇宙ビジネスはインターネットの黎明期に似ていると話す投資家の方もいます。
軍事技術として生まれたインターネットは最初、こんなもの民間で誰が使うんだと言われました。それが今、なくてはならないインフラとして普及しているわけです。
同じように、国が主導してきた宇宙利用も一気に民間に広がり、近い将来新しいインフラになっていくはずで、今はまさにその過渡期だと思っています。
宇宙分野ではやはり欧米やロシアの活動が目立っており、最近は中国やインドでも活発になってきていますが、その中で日本が注目を集める機会はかなり減ってきてしまっています。
それでも小さな衛星やロケットは、まだ日本が十分世界に対して勝てる、リーダーシップを取れる領域だと思っているので、その分野で何とか頑張っていきたいというのが、我々の最大のモチベーションです。
田川 素晴らしい。ありがとうございました。
時間がほとんど残っていませんが、最後に1問だけ会場から質問をいただきたいと思います。
最後列の方、どうぞ。
質問者7 ネットジンザイバンクの志水と申します。
いわゆるヘッドハンターなのですが、日本のチームを世界で勝たせたいと思い、仕事をしています。
この会場にいらっしゃる皆さんは、インターネットセクターの方が大変多いですが、インターネットセクターで日本が世界を相手に勝てるかというと、勝てるチームも出てくるかもしれませんが、なかなか勝ち難い状況もあります。
やはり日本が成長していくためには、外貨を獲得できるような新産業が生まれるべきだと思っているのですが、宇宙というテーマは、本当に日本が世界に勝てるとお考えですか?
宇宙は、日本が世界に勝てる産業でしょうか?
この分野を育成する皆さんは、果たしてそのような高い期待をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
宇宙ビジネスで日本は世界に勝てるか?
田川 どなたからでもどうぞ。
中村 基本的に宇宙ビジネスというのは、グローバルなんですよね。
日本だけにサービスを提供するというのは、そもそもナンセンスなんです。
ですので、我々も世界でどう勝っていくのかといことを、ベースに置いて考えています。
グローバルビジネスを展開するベンチャーというと、どうしてもシリコンバレーの企業が思い浮かびますよね。
アメリカも国を挙げてこうした企業を応援しています。
ただ、宇宙に関しては、ITなどでは考えられないと思うのですが、アメリカは非常に内向きです。
宇宙は安全保障とも密接に関連する最先端かつ重要な技術という位置づけであり、政府は技術流出の可能性のある行為には敏感です。
こういう理由もあって、アメリカの宇宙ベンチャーにとって海外の企業と協力するのはかなりハードルが高いんですよね。
また、もともとアメリカ政府の宇宙関連予算は莫大であり、ベンチャーもこれを目当てにしている節があるため、結果として国内でお金がグルグル回っている状況です。
ですので、日本にとってはとても大きなチャンスだと思います。
つまり、我々がアメリカ以外の国々を巻き込んで、新しいインフラを作っていくというチャンスだと捉えています。
我々は世界中の様々なパートナーとともに大きなビジネスを作っていくためのプランをベースに考えていますし、主導権を取っていくという意味ではやはり、世界で1番のプレイヤーにならないといけません。
インフラビジネスなので、2番目ではだめなんですね。
とにかくユーザに本当に使ってもらえるプラットフォームを世界で最初に作り上げる。これを実現できるタイミングは、歴史上1度しかないわけです。アクセルスペースは、それに向けて今努力しているところです。
田川 では、時間がちょうど終わってしまったので、今日のセッションは以上にしたいと思います。
今回のお話を伺っていて、私も大いに認識を新たにしたのですが、宇宙ビジネスとはすなわちデータビジネスであるということが、よく分かりました。
地球を計算機に乗せるということなのだということが、今日はっきりしたように思います。
投資家の皆さんも、宇宙ビジネスへの投資する時は、恐らくデータを握りに行くことになるのではないでしょうか。
今日4名の皆さんがおっしゃっていたことを辿っていくと、基本的には全てそこにつながっていますし、いわゆるデータのリソースにアクセスするために、衛星が手段としてあるというような話だったのではないかと思います。
そのように考えればITと決して遠くない話なのかなとも思いました。
今日、会場にお集りの皆さんも、どうもありがとうございました。
ぜひここから、この4名の中から、日本を牽引する宇宙ベンチャーが育ってくれればと思っていますし、皆さんの応援もいただければと幸いです。
最後に登壇者の皆さんに大きな拍手をお願いします。
(会場拍手)
一同 ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/Froese 祥子
【編集部コメント】
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