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「キャズムを超えろ! 所有からシェアリング/サブスクへの行動変容を実現するには?」全6回シリーズ(最終回)は、会場からの質疑応答。値段はいかに設定するか、初期導入費をいかに考えるべきかなど、サービスを順調に伸ばしている登壇者たちが答えます。最後までぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。
ICCサミット KYOTO 2020のプレミアム・スポンサーとして、ノバセル様に本セッションをサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
Session 10F
キャズムを超えろ! 所有からシェアリング/サブスクへの行動変容を実現するには?
Supported by ノバセル
(スピーカー)
天沼 聰
株式会社エアークローゼット
代表取締役社長 兼 CEO
児玉 昇司
ラクサス・テクノロジーズ株式会社
代表取締役社長
佐別当 隆志
株式会社アドレス
代表取締役社長
西井 敏恭
株式会社シンクロ 代表取締役 / オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員CMT / GROOVE X株式会社 CMO
(モデレーター)
菊川 航希
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▶キャズムを超えろ! 所有からシェアリング-サブスクへの行動変容を実現するには?の配信済み記事一覧
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最初の記事
所有からサブスクへ。ファッションの行動変容を進める「エアークローゼット」「ラクサス」
1つ前の記事
オイシックスは「売るまでがマーケティング」のネットスーパーではない
本編
Q.サブスクリプションの値段はどう決めている?
菊川 ここまでで、会場の皆さまから何かご質問などはありますか?
質問者 コメ兵の藤原です。
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藤原 義昭
株式会社コメ兵ホールディングス
執行役員
2000年株式会社コメ兵入社、全社のマーケティングを統括し、出店からCRMまですべてのタッチポイントに関わる施策を指揮している。2020年ホールディングス化に伴いグループ全体のマーケティングが管掌範囲。
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ラクサスの児玉さんとairCloset天沼さんのプライシングは結構似ているように思いますが、どのように決められているのでしょうか?
例えば、前例がないサービスの場合、6,800円がいいのか16,000円がいいのか分かりません。一度決めると変更しづらいですし。
エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO 天沼 聰さん
天沼 最初はすごく悩みました。
サブスクリプションで大事なのは、コアになる提供価値を持っておくことです。プライシングはその価値に対するものであり、製品などの物に対するものではありません。
私たちが行ったのは、200~300人のポテンシャルユーザーへの徹底的なヒアリングです。
「このようなサービスに、月々いくら払えますか?」と聞きました。
2,000円から10万円と回答は様々でしたが、一番多かったのは数千円から10,000円台後半という答えでしたね。
そこが狙い目の価格帯と見て、サービス提供によるコストを計算し、価格設定をしました。
児玉 僕は、アンケートは一切しませんでした。
サブスクリプションは、リテンション率が大事です。
2015年当時、携帯電話の通信費が約8,000円でした。ですから、それより安い価格でないと継続できないだろうと思ったのです。
そして結局、6,800円にしました。
菊川 ADDressの4万円というのは、どのように決められたのでしょうか?
佐別当 都心に住んでいる人が別荘を借りるとして、4万円なら安いと感じるだろうし、地方に住んでいる人も4万円の家賃なら安いと感じるだろうと思ったからです。
色々な人にとって安いと思える価格を考えて、この価格になりました。
ただし、都心の物件を借りるのは無理です。地方の活性化や空き家活用をしたいという思いもあったので、結果的にうまくいきましたね。
西井 オイシックスは野菜の量を増やしたり減らしたりできるので、定額のサブスクではないです。
プライシングは商品ごとに考えます。
オイシックスの場合、50~100人の小規模でサブスクをして、ダメだったらやめますね。
ビジネルモデル上、獲得コストがかかりますし、初回や2回目は損をします。何回目で利益に転換できて、どれくらい利益が出るか、LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)を計算し、いかに解約率を減らすかということですよね。
解約率の改善のためのアクションは取りますが、半年くらい経っても改善しない場合は、そもそもそのサービスはダメだということで止めることが多いです。
新サービス立ち上げの際は、最初から一気にローンチしません。小規模のターゲットユーザーに、提供したい「コト」を届けるテストをするということです。
そしてサービスが安定してくれば、そこで初めてプライシングをします。
それから僕は、サブスクリプションは値段を上げてもいいのではないかと思っています。Netflixもアマゾンプライムも、サービスレベルを上げて値段を上げていますよね。
オイシックスには980円で「牛乳飲み放題」というサービスがありますが、「プライムパス」という、月額固定費を払っていただければ野菜などが値引きになるプログラムもあります。
そのプログラムは、値上げをしています。
確かに解約率は上がりますが、利益が上がりますし、サブスクだからこそ構造が見えやすいですよね。
藤原 ありがとうございます。
天沼さんがサービスを始められた時、価格設定を見て他に誰も真似しないだろうなと思いました。
児玉さんのサービスもそうですが、参入障壁がプライシングだったのではないでしょうか。
児玉 当時は2日で5,000円、3日で8,000円という価格でバッグを貸していたのです。
計算をしていくと、継続率が1%変わると、たとえCPA(Cost Per Acquisition=顧客獲得単価)が2倍かかろうが一気に全部取り返すことが分かったのです。
この話は5年前にはしませんでしたが、すごいことを見つけたなと思いました。
西井 確かにそれはハックですね。
児玉 3日で5,000円だと離脱をするので苦しい戦いになるけれど、5年前に月額6,800円で入ってくれたお客様のうち、3分の1は残っていますからね。
西井 すごいですね。
児玉 解約率が1%、2%変わるだけで、原価を3倍にすることができます。
天沼 数字の切り替えで大きく結果が変わるので、サブスク事業は面白いですよね。
価格は面白いポイントですね。ご質問ありがとうございます。
先ほど、小売とサブスクの違いとして、サブスクはサービスを作り続けるという点を挙げました。(Part.参照)
私も、提供するサービスの価値が変わるのであれば、プライシングを変えてもいいと思っています。
サブスクは、小売と違って価格を変えやすいサービスだとも思います。
Q.初期導入費をサブスクでどう考えるべき?
伊東 大輔さん アドダイスの伊東と申します。
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伊東 大輔
株式会社アドダイス
CEO
東京大学法学部卒。卒業後にバイリンガルネットニュース創業の後、現アドダイス創業。広島大学デジタルものづくりセンター客員教授。医仁会武田総合病院臨床研究センター研究員。2008年よりAI研究を始め、目視検査専用AI「HORUS AI」や施設管理AI「SEE GAUGE」、養蜂業向け生育管理AI「Bee Sensing」など独自開発のAIソリューションを展開中。2015年「BeeSensing」 KDDI∞Lab 第8期採択。2016年Microsoft社 BizSpark Plus採択。2019年Plug and Play Japan Kyoto Batch1 採択。あらゆるところにセンサーが配置される人工生命時代の社会で自律神経のように振る舞う人工知能プラットフォームを提供し、安心・安全な社会を実現します。
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デジタルトランスフォーメーションを進めるための、BtoBのAIサービスを提供しています。
▶AIトリアージで、一人でも多くの命を救え!「アドダイス」は医師のキャパシティを上げ、医療体制の新しい基盤をつくる(ICC KYOTO 2020)【文字起こし版】
製造業向けには、検査1個あたり何円という価格で提供しています。
初期導入費に関しては、各社の既存設備が違うので、これを定額制にしようかどうか迷っています。
先ほど、分割払いはサブスクではないというお話(Part.5参照)がありましたが、定額制にするとサブスクになると思われますか?
シンクロ 代表取締役 / オイシックス・ラ・大地 執行役員CMT / GROOVE X CMO 西井 敏恭さん
西井 初期導入費が回収できなくてもよいとして、月ごとの解約可にすればサブスクになるのではと思いました。
つまり、解約率が高いということはサービスの質が十分ではないということになるのです。
市場に出しても売れないものを無理やり売ろうとするから、そうなってしまうのです。
SmartHRの例が分かりやすいと思うのですが、社員50名くらいまでの中小企業向けには、ソフトをほとんど無料で配っています。
社員が増えている会社で、事業が回り始めると解約されないですよね。
広告やセールスで1件あたり100万円かかっていたとしたら、その費用を原価に回せばいいだけの話です。
LOVOTも原価は高くて、実は定価を考えると今はまだ原価割れしていて回収できていません。
でも1年は使ってもらえるだろう、その後も4年くらい使ってもらえるだろうと想定して性能を改善し続けています。
コロナは追い風か、向かい風か?
菊川 残り時間も少なくなってきたので、児玉さんと天沼さんに、新型コロナウィルス感染症の影響があったかをお聞きしてみましょう。
オイシックス(Part4参照)とADDress(Part1参照)は追い風だったそうですが、アパレルはいかがでしたか?
児玉 バッグは持っていくところがないからと思われるかもしれませんが、実際は自宅でパーティなどが行われていて、そこで使われています。
新規顧客獲得ではなく、既存ユーザーのロイヤル化に舵を切っています。
そして利益は1.4倍になりました。
菊川 コロナ後も、ユーザーの囲い込みをしたということですね。
天沼 ファッション、アパレル業界はワースト3に入るくらいの向かい風ですね。
2~3月は新規顧客獲得も順調でしたが、4月に緊急事態宣言のニュースが流れたタイミングから、新規が3分の1に激減しました。
その時何が起こっていたかというと、多くの会社が出社NGにしてリモートワークにする意思決定をしていました。会社という媒体を通せば国民にメッセージが届く仕組みになっているのは、面白いと思いました。
店舗の閉鎖などで昨年対比で80%減のアパレルも多かったのですが、我々は純増でした。
菊川 サブスク事業の場合、ファンや顧客がロイヤルなので、ある程度安定していたということでしょうか。
では、まとめに入りましょう。
「キャズム超え」とはどんな状態か?
菊川 今回はキャズム超えについてのセッションでしたが、これから先、サブスクが当たり前になっていくべきかどうかも含めて、最後に一言ずついただけますか?
児玉 僕自身はキャズムを超えていると思っていますが、これは5年くらい経たないと分からないと思います。
我々のサービスは、世の中になかったサービスなのです。
世の中になかったものというのは、たいてい必要がなかったものですが、それでも我々がサバイブできているということは、ブレイクスルーするということだと思います。
今は分かりにくいかもしれませんが、後から振り返ると「あの時、超えていた」と思うのではないでしょうか。
天沼 キャズムの定義は難しいですね。
我々がサービスを開始した瞬間に受け入れられていたとしたら、既に超えていたと言えるかもしれません。
サブスクやシェアリングでありさえすればいいとは全く思っていないですし、サービス内容によって、サブスクが合う合わないが当然あると思っています。
airClosetは、毎日の生活の中にワクワクする出会いを作る、時間価値を高めて豊かなライフスタイルを作る、という想いでスタートしていて、サブスクリプションもシェアリングエコノミーも手段でしかないのです。
提供価値を中心に据え、伝え続けることでキャズムは超えられると信じてやっています。
佐別当 僕たちは始まったばかりで、キャズムを超えたとは到底言えないです。
ただ、単価は4万円、法人だと10万円前後、自分専用の部屋が欲しければプラスで払っていただくので、売上は数千万円単位で上がりやすいです。
しかし、そんな大きな意思決定をする人が、急にたくさん来ることは考えていないです。
会員獲得や売上拡大よりも、需要に対する供給体制、コストコントロールなどの仕組み化が大事だと思っています。
供給ができるようになると選択肢がどんどん増えるので、それによって満足度が上がり、ユーザーが増えていきます。
キャズム超えのための仕組み化、チーム作りがこれからは求められていると思っています。
児玉 ADDressは、テレビCMをすればどっと人が入ってくる気がするので、もしかしたらもうキャズムは超えているのかもしれませんよ?
西井 サブスクは、暮らしの提案だと考えています。
オイシックス、らでぃっしゅぼーや、大地を守る会は別々のブランドですが、ユーザーの目指すところが違います。
ユーザーの「豊かな食卓」が人それぞれ違っていいというのが、僕らのスタンスです。
先ほど言ったように、レシピを直前に決める人はまだたくさんいますし(Part.5参照)、我々のサービスはマスまでいかなくてもいいと思っています。
西井さん解説「サブスクマーケティングの3つのポイント」
西井 サブスクのマーケティングには3つのポイントがあります。
まず、「モノを買う」から「利用する」への変遷、データ活用でユーザー体験をアップデートすること、そしてソーシャルによる顧客とのサクセス共創です。
Netflixだとパワープレイヤーとしてマス向けになるかもしれませんが、例えばADDressの物件に高級マンションが入ってきたとしたら、ちょっとそれは違うのでは、つまり新しい暮らしが提供できなくなるのではと思います。
つまり、その方向には行かなくてもいいという可能性もありますよね。
サブスクにおいては、そこは考えなければいけないポイントです。
その他も話したいことはあったのですが、明日のLOVOTのセッション(※) でお話ししますね。
▶Session 11D 最新テクノロジーを体験しよう! テクノロジー・ショーケース「LOVOT」 & パネル・ディスカッション「LOVOTのいる新しい空間づくり」
なぜ今サブスクかと言うと、スマホとIoTによってお客様の情報が獲得できるようになっているからです。
LOVOTは音声も拾い、情報を取れるようになっています。
LOVOTは1つのヒントになるかもしれませんが、そのヒントを持ち帰ってもらい、皆さんの会社で面白いサービスができればいいなと思います。
菊川 ありがとうございました。
まだまだ話したいトピックはあるので、次回またサブスクセッションがあればよろしくお願いします。
改めてこの4名に大きな拍手をお送りください、ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成/フローゼ 祥子
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