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5. Clubhouse、速聴トレンド、ユーザーが開拓する音声市場の可能性

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「ラジオパーソナリティが語る音声コンテンツの魅力とは?」、全6回シリーズの(その5)は、このセッションの開催当時、出てきたばかりのClubhouseの話題からスタート。ユーザーがコンテンツを受け身で楽しむだけでなく、積極的に活用し、視聴スタイルまで変え始めた状況を語ります。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。最新情報は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プレミアム・スポンサーのベクトル にサポート頂きました。



【登壇者情報】
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 5B
ラジオパーソナリティが語る音声コンテンツの魅力とは?
Supported by ベクトル

(スピーカー)

井上 佳央里
Radiotalk株式会社
代表取締役

嶋 浩一郎
株式会社博報堂 執行役員/株式会社博報堂ケトル エグゼクティブクリエイティブディレクター

中村 洋基
PARTY Founder / Creative Director ヤフー株式会社(MS統括本部ECD) / 電通デジタル(客員ECD)

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授

(モデレーター)

中竹 竜二
株式会社チームボックス 代表取締役

ラジオパーソナリティが語る音声コンテンツの魅力


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最初の記事
1. 元ハガキ職人、ラジオで活躍するスピーカーが集結! 音声コンテンツの魅力を語り尽くす!

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4. 音声コンテンツは、睡眠時間以外のすべてに入り込める

本編

Clubhouseはダラダラしゃべり過ぎてしまう?

 ところで皆さん、Clubhouseはやられていますか?

中村 僕も1回やりましたが(※2021年2月時)、まだまだ新陳代謝というか様変わりはしていきそうだなと。サービス側もそれを受け取る側も、と思ったのが、第一印象です。

それこそ、以前モデレーターをしていた井上 大輔ともやりましたが、4時間とかしゃべってしまうんですよね、それで疲れてしまって。

 僕はいつも注意していますよ、4時間しゃべってしまう人には。

Zoom飲みは1時間、Clubhouseは1時間、ゲームは1日1時間という基本ルールですよ(笑)。

(一同笑)

中村 1回やるともう懲りてしまうんですよね。

 30分でもいい。ダラダラやっているのもいいのですが、プロがちゃんとワイド番組的にダラダラやる中に1個ずついい話が入っているのはいいけれど、計算されていないダラダラトークが3時間とか続くと、ちょっと勘弁してほしいなと思うんですよね。

中村 確かに(笑)。

井上 話し出すと、だんだん話を止めることにすごいカロリーを使うようになってしまうというのは目にしています。Radiotalkも最初は配信時間を無制限で出す予定でしたが、世の中に公開前に、ベータ版的にテスターに使ってもらったころ、本当に終わり時が分からなくて、ずっとしゃべるようになっていました。

Clubhouseのようなアカウントパワーが強い有名人が話す上では全然いいのですが、素人の3時間のしゃべりでは、なかなかリスナー数が1人付くのも難しいぐらいの感じになるので、12分までという制限時間を付けて出すようにしましたね。

 それは、いろいろやっていったらTwitterが140文字になったように、音声コンテンツをスマホなどで聴くのには12分が最適化しているのではないかという研究というか、経験値から?

井上 いくつか仮説を立てた中で、話し手の都合では5回やれば1時間になるとか、2分、3分、4分で区切れるとか、リスナー視点でも女性の平均メイク時間が12分だったり、家から最寄り駅の平均時間が12分だったりするところでしたね。

ラジオパーソナリティの定番が「男女ペア」の理由

 あとは、大勢でしゃべり過ぎな気がするんです。

誰がしゃべっているのか分からなくなってしまって、結局しょうがないからユーザーインタフェースの、ピコン、ピコンと話者の印が出ているのを見てしまうのだけれど、そもそも音声コンテンツはそれを見なくていいから聴いているのに、見なくてはいけなくなってしまっている。そこなんとかして欲しい。

ラジオで男性パーソナリティと女性パーソナリティの2人組が多いのは、誰が今しゃべっているのか明確に分かるからなのですが、ちゃんとラジオ放送の歴史の中で、注意を払わなくても今この人がしゃべって、今この人に変わったというのが明確に分かるようになっています。

Clubhouseのユーザーの皆さんは、ラジオ放送をちゃんと1回勉強して、ラジオリテラシーを高めるとすごくいいコンテンツが作れるんじゃないのかなあ。

渡邉 この間、Clubhouseでやっちゃった事件があります。J-WAVEの番組収録が終わった後、ちょっと早いなと思って蔦屋書店のカフェで仕事をしていました。その時パッとClubhouseを開いたら、山口周さんと誰かと、すごい面白い人たちがポスト資本主義に関してしゃべっていて、「おっ!」と聴いていたら、熱中しすぎて打ち合わせを1つ忘れていました。

社内ミーティングだったのでまだマシだったんですが、あれ渡邉さんがいない、ザワザワとslackで話題になって、「あ、Clubhouseにいる」と、スクリーンショットが届いたんです。

(一同爆笑)

中村 「あいつー!」ってなりますよね(笑)。

渡邉 そういう痛々しい瞬間があったりしましたね。

 そういうの、ありますよね。頻発していますよね。

中村 おそらく皆さんあるのは、深夜に奥様が「静かにしてっ!」みたいな。

渡邉 夜に家庭内不和が。

Zoom以外のノイズがどんどん入ってくるという(笑)。

「ダラダラ続けちゃう問題」というのは、時間あたりの意味を濃厚にすべきか否かという問題があると思いますが、意味が濃厚な世界とそうでなくていい世界があると思うんです。

そうでなくていい世界も結構盛り上がっている気がして、友達がやっていて笑ったのは「バビ語」です。

女子高生が、しゃべる時にすべての音節の間に「ばびぶべぼ」を入れることで、何をしゃべっているのか一見分かりにくくするという。教室の中に男子がいても、何をしゃべっているのか分かりにくくする技らしく、そのバビ語だけで話す部屋があるそうです。

バビ語変換

それは別に会話を暗号化したいわけではなくて、バビ語とその時代を思い出したいんですよね。

あとはせんべいを食べる部屋があるらしくて、そこは「バリバリバリ」と。

深井 ここだけ全員ピカチュウの部屋もあって、ずっとみんなで「ピカピカ」言っていました。

(一同笑)

それは面白かった。

渡邉 裏声でね(笑)。

中村 ASMRみたいなものより、ピカチュウは「ああ、みんな模索しているんだな」と思いましたけれどね(笑)。

ハマる高校生が続出!聞くだけでゾクゾクするASMRってどんなもの?(スタディサプリ)

ズバリ、井上さんはRadiotalkをやっていて、Clubhouseのフィーバーは率直にどう思いましたか?

というのは、Radiotalkのほうがすごく高機能だし、UIとして考えられている部分もたくさんあって、単純な比較はできないなとも思うのですが、どういうふうに思われているのか聞きたくて。

Clubhouseがバズって、Radiotalkのユーザーも増加

井上 まさにそうですね。

まずインターネットのユーザー投稿型サービスは、例えばTikTokならTikTokerが生まれたり、YouTubeならYouTuberが生まれたり、YouTubeプラットフォーム発の新しいスターが生まれるタイプのものと、FacebookやTwitterなどリアル社会のネットワークをそのまま持ってきているSNSタイプの2つに、大きく分けられると思います。

Radiotalkは先ほど(Part.1)お話しした「音声の民主化」なので、リアルの友達のつながりをインターネットに持ってきたというよりは前者のほうで、全然知らない人の話だろうと、面白ければ輝けるみたいな感じです。

Clubhouseはどちらかというとリアルに知っている人を聴きにいくとか、テレビで知っている人を聴きにいくので、住み分けは実際されています。

これはありがたいことですが、Clubhouseがバズってから、Radiotalkのユーザー数がすごく増えました。

つまり、人の話を聴くと安心したり、自分のしゃべったことを世の中に出すということ自体が昔は恥ずかしいことのように言われていましたが、全然できることだし気持ちいいことだしということが認められたというか、証明されたということなのかなというふうに見ています。

 音声コンテンツの追い風を、ここ1カ月くらい感じている?

井上 そうですね、やはり特にステイホームになってからですよね。もし音声コンテンツや音声を発する場所が無かったら、人の話を聞く時間や人と話す時間がすごく減ってしまうと思うと、コミュニケーションはメンタルヘルスの問題にも繋がる欲求だったはずなので……。

渡邉 サードウェーブコーヒーとかシングルオリジンコーヒーが話題になりますが、話題になるためにはセカンドウェーブが必要だった、という感じですよね。

コーヒーの歴史 セカンドウェーブからサードウェーブへ(珈琲タイム)

井上 確かに。

渡邉 まずスタバなどが全国的に流行るというセカンドウェーブのステップを踏まないと、突然ブルーボトルコーヒーみたいな店がやってきても、浸透しないですよね。

すそ野を広げることによって、新たな文化が花開くための土壌ができたという感じがありますね。

音声市場は飽和しているのか?

深井 今、元から音声コンテンツを聴いている人たちの聴く時間が限界に達しているのではないかと思っています。

音声コンテンツを享受していたら音楽を同時に聴くこともできないし、ながらはできますが、1日の時間には限界がありますよね。

新しい人たちが入ってこないと、これ以上この市場は伸びていかないのかなと勝手に思っていましたが、皆さんはどう思われますか?

井上 ラジオやポッドキャストだと確かに限界とまでいかなくても、面白いコンテンツがどんどん生まれていて奪い合いが加熱、というのはあると思いますが、Clubhouseがその新規を取りに来てパイを広げてくれた感じはしますね。

音声コンテンツを全く聴いたことが無いような人のほうが多かったというのが、あったと思います。

深井 なるほど。

中村 音声コンテンツではないですけれど、それこそニュースサイトみたいなものは、ほとんど誰でも何かのアプリをインストールしています。

全体のマーケットとしてはある程度もう飽和してしまっているから、食い合いになったり、他にない楽しみ方を出すための1つの手が、例えば音声であったり映像であったりというほうに向かおうとしていて、むしろ音声は開拓し甲斐がある側なのではないかというイメージでしたね。

嶋さん、メディアとしての音声について、真面目に考えたことありますか?

 トラディショナルなラジオ事業が聴取率に基づいたビジネスをしていくのと、新たに台頭するアプリの音声コンテンツでは、また違う課金方法を考えていくわけじゃないですか。

そのマネタイズの新しいやり方、たぶん投げ銭とかやっていくんでしょうけれど、お金の儲け方にはすごい可能性を感じて、そこはトラディショナルなラジオの事業をやっていらっしゃる人たちも見るべきものはあるんじゃないかなとはすごく感じますが、中村さんはどうですか??

ライブ配信だけで生活する「ライバー」まで登場–若者たちの「投げ銭」事情(CNET Japan)

ひな壇芸人の役割は、カタルシスのスピードアップ

中村 今のお話と完全には連動していませんが、元TBSプロデューサーでバラエティ番組を担当していた角田(陽一郎)さんと話をした時に「ひな壇芸人」がバラエティ番組ですごく流行った時期があります。あれは何かというと「フリからオチへのフレームレート」(※1秒の間のコマ数。ここでは頻度)を上げているのだそうです。

つまり、普通の既存のバラエティ番組のコントでいうと、フリから1つのオチで、「ああ面白かった」とカタルシスを感じるまでに5~10分かかっていたのが、ひな壇芸人のトークでは、誰かがピュッと何かを言った後、それに誰かがすぐツッコミをして、またそれに対してひな壇のだれかが面白いネタを振ったら、すぐ他の人からツッコミが……と、フリからオチへの速度ががめちゃくちゃ速くなって、チャンネル離脱を阻止しているのだそうです。

実は人間は知らないうちに、たくさんの情報や感情を享受するレートを上げて、進化しているのですという話を聞いて、面白いなと思いました。

▶参考:「ひな壇芸人的存在」から抜け出す確実な方法 | TKO木本の「基礎から知りたい」 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

YouTubeを倍速で視聴する「速聴」が増えている

中村 あと、YouTubeでは、動画時間が長いほうが表示されるアフィリエイト広告が増えるので、YouTuberが最近長尺のコンテンツを増やしてきています。それに対抗してすごく多くなったのが、1時間あるようなコンテンツを1.5倍や2倍速で聴く聴き方です。

つまり、速読のような「速聴」をリスナー側が勝手に獲得しようとしている。限界に来てしまっているから、自分のほうがそれに耐える新しい、本で言う速読みたいなパワーを獲得しなければいけないということが、自然発生的に生まれているような気もしますよね。

渡邉 今の「スピード」の話は、実は2種類の異なる話なのかもしれませんね。

前者のバラエティ番組では、何回も回数をこなす。きっと見ているほうも、やっているほうも同じ笑いのパターンを踏襲することの楽しみを味わっています。あるタイポロジー、パターンの笑いに収束させる。それを見る側もやる側も確認したい。

我慢できる時間が短いので回転が速いみたいな状況がかもしれません。

一方で、YouTubeの速聴でいうと、新しい情報をもっとほしいというか、類型にはまらないもの、新鮮なものはどこにあるんだろうというのを探しているのかもしれません。

中村 そうですね。おっしゃるとおり、ちょっと前者と後者の話は違っていて、前者はどちらかというと、バラエティ番組はザッピング(リモコンでチャンネルを頻繁に切り替えながら視聴する行為)している時に止まってほしいわけですよ。

だから、フリからオチが、「あっ、面白い」「あっ、面白い」という気持ちいい状態ができるだけまめに続いてほしいわけですよね。

それをなんとかするために繰り出されたもので、YouTubeの速聴とはまた違いますね。

渡邉 僕はよく速聴しちゃいますね。

(中村さんは)速聴します?

中村 しますね。僕は米国株の解説をしている「じっちゃま」こと広瀬隆雄さんが、めちゃくちゃ米国株で上がる株を当ててくれるんですよね。

#広瀬隆雄 – YouTube

だからそれを聴くのですが、まあ広瀬さんのYouTubeが長いんですよ(笑)。

だから2倍速で聴いていますが、本当は4倍速ぐらいで聴きたいですね。

(一同笑)

そろそろお時間で、大勢の方が会場に来てくださっていますが、もし質問がある方がいらっしゃったら、どうぞ。

(続)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/尾形 佳靖/戸田 秀成/小林 弘美

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