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1. トークセッションは「準備」がすべて? 司会・モデレーター役を依頼されたあなたが、イベント当日までにするべきこと

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ICCサマーパーティ2019の特別セッション「モデレーター勉強会」で交わされた議論の模様を、全8回の書き起こし記事でお届けします。(その1)は、トークセッションの司会・モデレーター役を依頼されたあなたがするべき「準備」について。ICCサミットの名物モデレーターたちはどのような準備をしてイベント当日に臨むのか?ぜひご覧ください!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は、2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2019年7月17日
ICCサマーパーティ2019
特別セッション「モデレーター勉強会」

(スピーカー)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

宮宗 孝光
株式会社ドリームインキュベータ
執行役員

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應大学SFC特別招聘教授

(モデレーター)

小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

「ICC名物モデレーター直伝!トークセッションを成功に導くための極意とは」の配信済み記事一覧


本編

小林 雅(以下、小林) ICCパートナーズの小林です。よろしくお願いします。

僕は日々ICCの活動ばかりやっているので、基本的にはほぼひたすら、黙々とPCの前で考えごとをしているという日々を過ごしています。

それは、皆さんに非常に素晴らしい体験をしていただきたいと思っているからです。

僕は「ともに学び、ともに産業を創る。」と言っていますけれども、「学ぶ」ということはどういうことなのかを常に考えています。

やはり、本のように巷にあふれているものではなくて、皆さんのような第一線で活躍する経営者の方々が本音でぶつかり合う「場」が、本当の意味で価値ある場だと思っています。

その「場」をいかにつくり上げるかを考えたときに大事になってくるのは、単純にいうとセッションの企画、スピーカーの組み合わせを考えることもそうですが、やはりそれを仕切るモデレーターの力量そのものではないでしょうか。

そこで、できればモデレーターどうしも学び合う「場」をつくろうということで始めたのが、本日の特別セッションです。

Takramの渡邉康太郎さんがちょっと遅れてきますが、モデレーターを長くやられている方々からの経験を聞いていきたいと思います。

では簡単に、スピーカーの紹介をしたいと思います。

ベイン・アンド・カンパニーの井上さんです。よろしくお願いします。

井上 真吾さん(以下、井上) よろしくお願いします。井上です。

実は5分前に小林さんからメッセンジャーが飛んできまして、「パネルやりますか?」ということでした(笑)。


井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。ボストン・コンサルティング・グループ、Apple Japanを経て、ベイン・アンド・カンパニーに参画。ベイン東京オフィスの通信・メディア・ハイテクプラクティスのコアメンバー。約15年にわたり、通信、ハイテク、メディア、消費財、運輸等の様々な業界において、新規事業創出、M&A、顧客ロイヤルティ向上、中期経営計画策定など、様々なコンサルティング活動に携わっている。Apple Japanでは、法人部門において戦略アライアンスを担当した。ICCでは、立ち上げ当初から運営スタッフとしても従事。

回数としてはモデレーターを結構やらせていただいていますが、まだまだ未熟だと思っていますので、今日はむしろこの場でいろいろ学ばせてもらおうかなと思います。

小林 ありがとうございます。

次は、慶應義塾大学SFCの琴坂先生です。よろしくお願いします。

琴坂 将広さん(以下、琴坂) よろしくお願いします。

私はモデレーターという役割が大好きでして、日本帰国後に最初に小林さんにモデレーターとの登壇機会をいただいてから、気付いたら癖になっていました。


琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

数社の起業を経験の後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本およびドイツを拠点に主に海外企業の経営支援に従事。その後、オックスフォード大学に移籍し、経営学の優等修士号と博士号を取得。立命館大学経営学部を経て、2016年より現職。専門は、経営戦略、国際経営、および、制度と組織の関係。ユーグレナ、ユーザベース、ラクスル、アピリッツ、五常・アンド・カンパニーの社外役員を兼務。著書に『経営戦略原論』、『領域を超える経営学』、共著に『Japanese Management in Evolution New Directions』などがある。

どのぐらい好きかというと、今年は「基調講演をやらないか」というお話が何件もあったのですが、日程が合うものでも全て可能な限り講演ではなく、モデレーターに変えてもらったくらいです。

基本的には話すことよりも話を聞きたい。伝えるよりも知りたいと思っているような人間なのですが、今日はモデレーターとは、というお題ですので話すことをすごく楽しみにしています。

小林 よろしくお願いします。

続きまして名モデレーターに最近仲間入りした、ドリームインキュベータの宮宗さんです。

よろしくお願いします。

宮宗 孝光さん(以下、宮宗) よろしくお願いします。


宮宗 孝光
株式会社ドリームインキュベータ
執行役員

1974年生まれ。東京工業大学・大学院を卒業後(飛び級)、シャープ株式会社にてDVD用半導体レーザーの開発・量産化に従事。2002年、ドリームインキュベータ入社。大企業とベンチャーの戦略策定、幹部採用、M&A、提携などを推進。ベンチャー支援の実績として、3社の上場、2社の東証一部上場企業へのMBOに貢献。直近の投資・支援先はC Channel株式会社、AnyMind Group。2006年から起業家との勉強会を主催。メンバー17名中、10名が上場。現在、国内ベンチャー投資・上場支援事業を統括。支援先ベンチャー・トライオン株式会社の社外取締役、日本スタートアップ支援協会の顧問を兼任。「正しい起業家・事業の創出」をビジョンに、起業家支援に注力。

ICCサミットで初めてモデレーションをしたのは、ちょうど京都に台風が来た時(ICCサミット KYOTO 2018)で、実はまだ2回しかやっていません。

経験的にいうと全然少ないので、逆に井上さんや琴坂先生から僕自身が学べるかなと思っています。

よろしくお願いします。

小林 ありがとうございます。

それでは早速ですがみなさんに「モデレーターの極意」を語っていただきたいと思います。

モデレーターはどんな「準備」をしているか?

小林 モデレーターは本番の議論はもちろんですが、そのために色々な準備をしているかと思います。

そこでまずは「モデレーターは、何をどこまで準備をすればよいのでしょうか」という質問から始めたいと思います。

僕から打診が来るところから始まり、どういう流れで準備されているのかを、宮宗さんからお願いしたいと思います。

宮宗 僕は基本、予定がなかったらモデレーターは全部即受けるタイプです。

2018年のICCサミット KYOTO 2018の前に小林さんから「(モデレーター)どうですか?」と言われたのが最初です。

そのときのスピーカーの一人が、今そこにいらっしゃるインサイトフォースの山口義宏さんなのですが、当時は面識がありませんでした。

▶編集注:宮宗さんには、ICCサミット KYOTO 2018にて「LECTUREシリーズ 今さら聞けない! スタートアップ経営者のためマーケティングとブランディングの基本とは?」(スピーカー:ラクスル松本さん、Bloom&Co.彌野さん、インサイトフォース山口さん)のモデレーターをお務めいただきました。

初対面であるがゆえに会話がはずまないのはよくないなと思って、前回も少し触れたように(※)、実はICCサミットの前に事前にお会いして、そもそもお互いどういう仕事をしているかや、当日どんな形でやろうかということを一緒にお話ししました。

▶参照:ICCサミットでの議論の質を担保するモデレーション。 新オフィス・オープニングパーティで明かされたその極意とは?

ただ、そういうことをするのは、すごく変わっているとは言われます。

小林 事前に登壇者に会いに行って、どのようなお仕事をされているかを聞くということですね。

宮宗 はい。初対面でその場でいきなり議論する、ということに極力ならないように意識をしています。

小林 ありがとうございます。

琴坂さんはどうですか?

琴坂 私は結構ふわっとしたセッションを担当することが多いのですが、そうした場で、スピーカーの方々からそこでしか話していない話題を引き出せたら勝ちだと思っている人間です。

そのためにやっていることが2つあります。

1つは、自分自身もしくは助手の人に、ウェブと『東洋経済』『週刊ダイヤモンド』『日経ビジネス』などの紙媒体や『日本経済新聞』をはじめとした新聞を含め、全メディアでその方がインタビュー等に答えている記事を収集してもらいます。

その際はSPEEDAやNewsPicks、そして日経テレコンや日経BP検索など、データベースを駆使して出来る限り網羅的に調べています。コストは度外視ですね(笑)

その中で特に主要なものをマーキングして、整理します。

たいていの場合、私の中ではそれを全部頭の中に入れた状態にして、その上でスピーカーの方にはほぼゼロ・プレパレーション、何も準備をしない状態で本番に入ってもらっています。

(最前列に座る村上さんに)そうですよね?

村上 臣さん(以下、村上) そうです。琴坂さんがモデレーションをされる際は、スピーカーとしてはそのような感じです。


村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

青山学院大学理工学部物理学科卒業。大学在学中に仲間とともに有限会社「電脳隊」を設立。2000年8月、株式会社ピー・アイ・エムとヤフー株式会社の合併に伴いヤフー株式会社入社。2011年に一度退職した後、再び2012年4月からヤフーの執行役員兼CMOとして、モバイル事業の企画戦略を担当。2017年11月に6億1000万人が利用するビジネス特化型ネットワークのリンクトイン(LinkedIn)の日本代表に就任。複数のスタートアップの戦略・技術顧問も務める。

琴坂 なので、スピーカーとして参加されている側としては「こいつ大丈夫か?」と思う状態からスタートするのがポイントです。

なんか、いつもと違うぞ。大丈夫か?と焦ってもらってもよいです。普段と違う精神状態で臨んでもらいたいといつも思っています。

そしてもう1つ。私の中では、「多分こんなことを話すんじゃないかな」とか、「こういう考えをお持ちなんだな」ということを理解した状態で入っているので、スピーカーが「メディア回答モードになったな」と思ったときに、そこから“切り替える”ことがすぐできます。

「メディア回答モード」というのは、頭が自動再生モードに入ることです。

特にICCでお話しされる方は、毎週のように色々な取材に答えられていると思うので、気がつくといつものIRモード、いつもの採用モード、みたいな感じで特に新しくないことを話されてしまうことがあるのです。

きっと無意識に思考力をセーブされているのかなと。慣れもあるかと思います。

モデレーターとしては、それを回避することに一番力を使っていますね。

そのモードになってしまうと、「あっどこかで聞いた話だな」と聞いている人の少なくない部分のスイッチが切れてしまいます。

小林 なるほど、いきなり深いですね。井上さん、どうですか。

井上 宮宗さんの「会いに行く」というお話を聞いて、全然そこまでできていないな、とまた反省しました。

私がやっていることは、登壇していただく方の色々なメディアの記事をなるべく直近3つくらいは読むことです。

「普段どういうことを話しているのか」「どういうことを話したがっているのか」を把握して、なるべく既存の記事と被らないようにはしようと思っています。

モデレーターをお受けするにあたっては小林さんからも「こうしてください」というディレクションがあるので、その上で自分なりの考えで、こういう論点でこういう順番で話をする、と決めます。

そして、それを整理して書いたメールを登壇者の皆様に送るようにしています。

正直、多分ほぼ読まれたことがないのかなと思うんですけど(笑)。

小林 これは“あるある”なのですが、僕がモデレーターやスピーカーの方々にメールを送るじゃないですか。

そうすると誰も返事をくれないときがあって、皆さん読んでいるんだろうか? と不安に思うときがあります。

でも時間通り来てくれるので皆さん素晴らしいなと思うわけですが、たまには返事してくれたら嬉しいなと思います。

(会場笑)

井上 一応自分なりにインプットしたものをアウトプットすることで、考え方を整理することができるかなと思っているので、そこで仮に返信がなくてもいいかな、ぐらいの気持ちでやっています。

小林 ありがとうございます。

今お話しいただいたのは、結構代表的な準備の仕方かなと思います。

質問や補足などある人はいますでしょうか?

琴坂 1つだけ補足があるとすると、センシティブなトピックのときだけ個別にNGを聞きます。

「さすがにこれは聞いてほしくない」というラインをどこまで突っ込んでいいのか、などです。

小林 突っ込んではいけないことを、事前に教えてくれる登壇者もいたりしますよね。

芸能人と何々とか、そういうNGワードや触れてはいけないことが実際にあったりするので、そういうことは僕からの事前ガイダンスでモデレーターに伝えていますね。

加えて、そもそもこのセッションがどう主旨の企画なのかを、僕のほうでできるだけガイダンスをするようにしているのが、特徴といえば特徴ですよね。

質問のある方は?はい、村上さんどうぞ。

村上 ICCのセッションは結構、登壇者どうしがわーっと突っ込み合って盛り上がるような感じがあると思いますが、そういう状態をつくり出すためにしている努力は、今言ったこと以外で何かありますか?

小林 そもそも、ICCのステージ設計は顔が見えるようになっているのが大前提ですよね。

あとはリングサイド(※)の方々はステージの目の前に座るので、できるだけステージの高さが40センチくらいになるようにしています。

▶編集注:ICCサミットでは、観覧席の最前席(いわゆる“砂かぶり席”)を「リングサイド席」と呼び、登壇者に質問したい方や一緒に議論したい方に率先して座っていただいています。

普通ステージは60〜80センチくらいの高さですけれど、僕らは実はわざと低くして近くなるようにしています。

最大の演出ですが、そういったまず僕が考えられることをやっていまして、そこで振っていくというのが大前提としてあります。

(続)

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続きは 2. 議論を活性化するモデレーター講座①「質問は、短く切って、テンポよく」 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成/小林 弘美

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