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2019年5月9日、麹町PREXへ移転したICCパートナーズの新オフィスのお披露目として、オープニングパーティを開催しました。お招きしたのは、普段からICCサミットにご参加、登壇いただいている方たち。恒例の特別パネル・ディスカッションもあり、出張九州パンケーキありと、盛り上がった夜の模様をお伝えします。
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
新オフィスでの初イベント
ICCパートナーズは、4月20日に新オフィスに移転して、以前のオフィスから約6倍の広さになりました。引っ越しについては、こちらのレポートでご紹介していますが、スペースがとにかく広がったので、オフィス内でイベントを開催することができるようになりました。
以前はイベント時に、GRiDの地下や6階のイベントスペースをおかりしていましたが、今度は初めての社内での開催。どのようになるか私たちもドキドキしていましたが、おなじみの方々が集まり、いつものように議論をしてくださったことで、オフィスに魂が吹き込まれた気がしています。
登壇者の方々には映像をシェアさせていただいていますが、今回のオープニングパーティでは特別セッション「モデレーターの極意とは?」を討論いただきました。
スピーカーは、ヤフーのコーポレートエバンジェリスト/Yahoo!アカデミア 学長 伊藤 羊一さん、ドリームインキュベータ 執行役員 宮宗 孝光さんに、飛び入りで、前回のICCサミットFUKUOKA 2019で最高評価のセッションをモデレートしたUBS証券マネージングディレクター武田 純人さん。進行はICCパートナーズの小林雅です。
▶【開催御礼】ICCサミット FUKUOKA 2019 セッション評価レポート
登壇よりモデレーターは100倍大変
伊藤さん「モデレーターをするにあたって、重要なことはたくさんあります。登壇して話すより、モデレーターのほうが100倍大変ですよね?」
武田さん「それは間違いないです。セッションが終わるまで、緊張感が半端ないですよね」
伊藤さん「僕が声を大にして訴えたいのは、登壇するなら楽しく話せばいいけれど、モデレーターは準備が大変で、いつも胃が痛くなります。なぜ引き受けてしまったのだろうと思ってしまいます」
小林「モデレーターの依頼は、僕からメールをお送りするのですが、『あとはよろしく!』みたいなメールです」
(一同笑)
伊藤さん「そうなんですよ! メールが来ると、僕はモデレーターだから最初に挨拶を送らないといけないかなとか、いろいろ悩みます」
武田さん「だいたい依頼をいただく時は、スピーカーがまだ全員決定していない状態です。その他のスピーカーが決まるまでのドキドキ感がすごいです」
宮宗さんも大きく頷いています。
事前に登壇者とコミュニケーションすべき?
小林「メールが来たあとはどんな準備をするのですか?」
武田さん「僕はめちゃめちゃします」
宮宗さん「僕もします。まず最初は小林さんの人選がどういう方々なのかというのと、来てくださる方の期待値を考えることが起点で、存じ上げない方がいると事前に会いに行ったりします」
伊藤さん「(驚)そうなんだ!会うのはマストですか?」
宮宗さん「お互いが面識があったほうがよいので、登壇する4人で会っていたりします。お忙しい方もいるので、難しい場合もあります」
伊藤さん「僕は会ったことがないです!」
坂本達夫さん「事前に会って話して、盛り上がりすぎてしまうと、当日話すことがなくなったりしませんか? 会ったときは、何を話しているのですか?」
宮宗さん「みなさん起業家なので、営業のはじめにアイスブレイクをされていると思いますが、そういう話ですね。どういう性格で何が趣味かとか、なぜ事業を始めたかなどを知り合ったりします」
小林「ネットプロテクションズの秋山 瞬さんも、スポンサーセッションを持たれていることもあり、事前に飲み会をされていたりしますよね」
秋山さん「小林さんにそう聞いて事前にやってみたら、本番ではめちゃくちゃ盛り上がりました」
武田さん「僕もできる限り会うようにしています。個人的に会いにいったり、(イベントなどを)こっそり見に行ったりします。どうしても忙しくて本番まで会えなければ、ICCサミットの会場で、事前に必ずその人をつかまえるようにします。パーティで出待ちをしたりします」
伊藤さん「ICCサミットの場では、僕もやりますね」
議論のストーリーをいかに準備するか?
伊藤さん「事前にセッションのコンテンツやストーリー、流れなどはどう準備していますか?」
武田さん「モデレーターをお引き受けするときに、なぜまささんがこのセッションをやりたいのか、なぜこの人選なのか、こういう盛り上がり方をするのではという仮説を自分の中で作ります。それを骨組みに組み立てますね。
最初のころの失敗は、ストーリーを組み立てすぎてしまい、そのとおりにいかないときにぐちゃぐちゃになってしまったことです。だから仮説はいくつも準備しますね」
伊藤さん「以前、石川善樹さんに物事を考えるときに『そもそも〜〜とは何か』という問いをするといいと言われました。『ストリートファイター』の強いゲーマーが『そもそもこのゲームにおける強さとは何か』というのを問うていて、石川さんはそれが本質だと思ったそうです。
そこでモデレーターならば『このセッションにおける面白さとは何か』と考えるようにしたのです。みんな何かしら学びを得たいから来るわけで、単純に考えただけではだめです。そもそも〜〜とは何か、と考えるようにしています」
宮宗さん「コバケン(シニフィアン 小林 賢治氏)さんもきっと共感いただけると思いますが、準備をしすぎてしまうと、話すことが決まってしまいませんか?」
小林 賢治さん「説教しているみたいになってしまいますよね」
伊藤さん「そうなんですよね。だから僕は準備などはしてもらわないです」
小林 賢治さん「僕は、ちょっと隙がある資料を作って投げたりします。突っ込んでかき回してもらえるような」
小林「それはプロの技ですね!」
宮宗さん「リアルな場に来るのは、ネットや本には載っていないような、みんなが本当に知りたいことがあるからです。福岡では取締役のセッション(『教えてほしい! スタートアップの取締役会・経営会議の運営と社外取締役の役割』)のモデレートをやらせていただきましたが、こういった情報の非対称性があるものは、来ている方たちが本当に知りたいテーマです。
コバケンさんのように、みんなの力を引き出してくださる方が、サブモデレーター的に入っていただけるとありがたいです(編集注:小林氏は客席リングサイドで議論に参加)。そういうセッションはいいなと思いますね」
モデレーターとしてのストーリーの描き方
この日伊藤さんは、モデレーションとっておきの技を教えてくださいました。
議論のストーリーは、
(軽く)現在
↓
(現在のWHYを理解するための)過去
↓
(聞き手に背景と現在をマッチングさせて)現在→未来
という流れを意識しているそうで、聞き手は「過去と現在の差分に感動する」とのこと。
そんなふうにモデレーターが技を駆使して組み立てても、誘導しても、前のめりになってくれない登壇者がいる場合は、どのモデレーターも「無理に乗せない」という答え。
議論に入っていくのが苦手な方もいるので、武田さんは事前に話したいことを決めて教えておいてもらい、それを必ず話してもらうようにするそうです。でも全体の流れを考えて、無理に巻き込もうとはしないそうで、これはモデレーターとして場数を踏んでいるプロの共通認識のようです。
オーディエンスをどれだけ意識するか?
武田さん「お聞きしたいことがあります。何にプライオリティを置いてモデレートしていますか? それは企画した小林さんの意図なのか、スピーカーなのか、オーディエンスが求めていることなのでしょうか?」
小林「それはセッションを企画する時点で明確です。このテーマなら主役はこの人とか、決まっています。それが一人ではなくてコンビネーションの場合もあります。たとえば社外取締役のセッションならば、コバケンさんがいて岡島(悦子)さんがいて、経営者が入れ替わるといった場合です」
伊藤さん「それでいうと、僕はオーディエンスのことをまったく考えていません」
武田さん「僕もです!」
伊藤さん「それはオーディエンスのことを無視するという意味ではなくて、自分がオーディエンスというつもりだからです。わかるわかる、その表情を見たい、それを聞きたいというふうにモデレートしています」
武田さん「オーディエンスに憑依するというか、そのゾーンに入れるとモデレーションではなくて、アクセレレーションになりますよね」
小林「ひとつ聞いていいですか。”ICCあるある”なのですが、小さな会場だとすごく盛り上がるのに、大きな会場だと盛り上がらないことがある。あれは壇上にいるときはどうなんでしょうか」
伊藤さん「大きな会場のときは……全然大丈夫と思っていたけれども、だめですね!
(一同笑)
そこへいくと、川邊(健太郎氏 ヤフー/ソフトバンク)とか、石川善樹さんは、雰囲気を盛り上げるのがうまいですよね。『ぇみなさんっ!カブキますからっ!』というところから入りますよね。明確に最初ドーンと盛り上げて、オーディエンスがワーッと来たところで、ハイッ!と渡す」
内容を忘れないための「まとめ」
宮宗さん「いまのふたつに重ねると、お客さんの視点で問うというのと、どうやって場を作るかというところで、みなさん話を聞いて、その内容が”蒸発”しませんか?
インプットがたくさんあって、Aさんはこう回答、Bさんはこう答えた、何かいいことを聞いたのだけど、具体的に何を言われたかよく覚えていないということがありませんか? だから僕は途中でまとめを入れるようにしています。
なぜなら自分でも覚えていないことがあるからです。大きい会場だと特に、ばらばらになってしまうのでところどころでまとめるようにしています」
武田さん「今回モデレーションについて語るということで、僕は予習をして宮宗さんのモデレーションの映像を見てきました。たしかに宮宗さんはすごい記憶力で、話したことを一つひとつまとめていますよね。僕は一切やっていません」
小林「それができるのは、あと琴坂(将広氏 慶應義塾大学総合政策学部准教授)さんくらいかもしれないですね」
伊藤さん「僕はまとめないけれど、リアクション、返事のバリエーションはたくさんある自信があります」
(一同笑)
伊藤さんは、話をそろそろまとめてほしいときはガン見して、続けてほしいときは激しく頷くそうです。次回サミットでは、ぜひ伊藤さんのリアクションにもご注目ください。
小林 賢治さん「話したいオーラを出す人もいますよね。永田さん(ユーグレナ/リアルテックファンド)は、話したくなってくると、明らかに人の話を聞いていない。(一同笑)それに気がついて岡島(悦子氏 プロノバ)さんがパッとパスを出す(笑)」
わかるわかる、と一同頷いています。みなさん、誰かがネタを仕込み始めたというのはわかる、「話したい」というオーラは見てわかるということでした。
満足度No.1セッションをどうモデレートしたのか
武田さんは最後に、ICCサミット FUKUOKA 2019終了後の回答で「最高だった」と評価した人が92.3%と驚異的な数字を叩き出した「『子育て経営学』- 私たちは子供をどう育てていくのか? 」について、モデレーターを務めたエピソードを語りました。
武田さん「セッションの中身により、事前の準備は自分の仮説で変わります。情報共有もせず、初見でばっとやってしまったほうがいいものもあります。まさに『子育て』セッションがそうでした。
モデレーターとしては、本番までに登壇者の持っている球、カードは記事を読んだりして頭に入れておきましたが、その他のストーリーを考えるということはしませんでした。そして終わった瞬間に、満足度1位を獲れたという実感がありました。会場が、オーディエンスもスピーカーもないような一体感があったのです。
その理由は何かというと、まずテーマがよかった。子育てには正解がありません。特定の知見、ノウハウのあるジャンルのセッションのように、オーディエンス側のほうが上だと感じる可能性はなく、全員がスピーカーにもオーディエンスにもなれるし、お互いに学びがある。登壇の人選もすばらしかったです。
みなさんが伝えたい自分の子育てがあって、それを否定することなく、話して学びあった。そして『子育てはメガトレンド』という大きな流れが来ており、学んだ人たちが一歩踏み出そうという感じが間違いなくあった。最後の締め方もあえてまとめず、そう呼びかけました」
「最高だった」「異次元だった」という声をたくさんいただいた2月のICCサミット FUKUOKA 2019ですが、それは登壇いただく方々はもちろんのこと、一つひとつのセッションを質の高い学びが得られるものにしようと努める、モデレーターの方々の多大なご尽力があるからこそです。
ご多忙もかかわらず、ここまで考えて、準備してくださっていることに驚き、あらためて、参加いただく方々とCo-CreationしてICCサミットという場ができているのだなと実感しました。
伊藤さん、武田さん、宮宗さんは、30分という時間ではモデレーションについて話し足りなかったようで、パーティになってもずっと語っている姿が印象的でした。この議論の動画を登壇者グループ内で共有したところ、反響が大きいため、現在、モデレーションについての勉強会を企画中です。
今回の議論でも参加いただいた小林 賢治さんを囲む伊藤さん、SHIFTの丹下 大さん
九州パンケーキが登場
討論のあとは、パーティの始まりです。ご参加いただいたり、登壇いただいている方々にお花以外でもお酒やお菓子など、たくさんの差し入れをいただき、お出しました。皆様、どうもありがとうございました!
ウェルカムドリンクはWAmazing加藤史子さんからいただいたシャンドン ロゼ。「人々が一堂に会する」という意味のあるデザインのボトルを贈っていただき、感激です!
ファームシップ安田 瑞希さんからご提供いただいたレタス入りスムージーも大人気でした
いただきものばかりでなく、自ら出店(!?)いただいた方もいます。前回のICCサミットでCRAFTEFDカタパルトで審査員を務めてくださった「九州パンケーキ」の村岡 浩司さんです。
HitoHanaの森田さん(写真左)には、今回オフィス移転時のお祝いにいただいたお花のとりまとめや、オフィスの緑化やフラワーアレンジメントを手配いただきました。
▶ICCパートナーズ 新オフィス開設祝い 祝花 窓口 お祝い頂いた方へのメッセージ
個別のお花の贈り物の代わりに、お祝いを一箇所でとりまとめて、オフィスの緑化やメンテ費用に分配するという画期的なシステムに、「食べチョク」の秋元さん(写真中央)も興味津々です。
ICCのパーティで、もはや恒例となったHLABの高田修太さんが華麗なマジックを披露!楽天のセイチュウさんも、マジックを勉強中という息子さんのために動画を撮影していました。
食事やドリンクでお腹を満たしたら、恒例のフォトタイム! ご協力いただいた皆様、どうもありがとうございました。
最後に、ICC小林からもご挨拶させていただきました。
小林「ICCサミットを始めたころは、今さらカンファレンスをやるの?と言われたりもしました。創業当時は自宅の書斎がオフィスでしたが、その後WAmazingのオフィスの一角(4席)を間借りさせていただいて、Nagatacho GRiD、そしてこのオフィスに至りました。
今まで、どう転ぶかわからないようなことについてきてくださった方々、登壇者の方々に本当に感謝いたします。
すべては皆さんのために、自分の能力、頭はすべてICCサミットのために、使おうと思っています。これからもどうぞご支援をよろしくお願いいたします」
ICCサミットだけでなく、新しいオフィスでも、「ともに学び、ともに産業を創る」ための実験を重ねていきたいと思っています。随時その報告はレポートでお届けします。以上、快適な新オフィスより、浅郷がお届けしました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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