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「徹底議論!エンタープライズSaaSビジネスの垂直立ち上げ裏話」全5回シリーズ(その2)は、急成長SaaSビジネスを支える「組織づくり」がテーマです。広告事業からSaaS事業へと大転換を果たしたオープンエイトの組織変遷とは? セールスフォース・ドットコムの成長を支えた営業プロセス『THE MODEL』は、立ち上げ・拡大期のSaaS系スタートアップにも適用できるのか? ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プレミアム・スポンサーのオープンエイト様にサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 7A
徹底議論!エンタープライズSaaSビジネスの垂直立ち上げ裏話
Supported by オープンエイト
(スピーカー)
庵原 保文
株式会社ヤプリ
代表取締役
髙松 雄康
株式会社オープンエイト
代表取締役社長 兼 CEO
高柳 慶太郎
株式会社プレイド
取締役
富岡 圭
Sansan株式会社
取締役 / 共同創業者 / Sansan事業部長
(モデレーター)
鈴木 淳一
株式会社セールスフォース・ドットコム
執行役員 セールスデベロップメント本部 本部長
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1つ前の記事
1. 注目SaaS企業が徹底議論!KARTE、Yappli、VIDEO BRAIN、Sansanの成長の秘訣とは?
本編
鈴木 それでは早速、1つめのトピックに移ります。
最初のトピックは「急成長のための体制づくりとは?」です。
創業から現在に至るまで、事業構造や体制をどのように変化させて来られたのか、お話いただきます。
それでは、オープンエイトの事例からお願いします。
広告からSaaSへと事業転換を果たしたオープンエイト
株式会社オープンエイト 代表取締役社長 兼 CEO 髙松 雄康さん
髙松 国内の良質な一次メディアにナショナルクライアントを中心とする動画広告を配信できる仕組みを提供する「動画マーケティング事業」と、ハイクオリティなオリジナル動画コンテンツを制作して生活者へお届けする「動画メディア事業」、この2つの事業を通じて培ったデータと知見を活用して、1年半前にインハウスAI動画編集クラウド「VIDEO BRAIN」を開発しました。
そのため、動画マーケティングや動画制作の領域に強みを持ったメンバーでスタートしました。
こちらのスライドに示した通り、広告事業はフロー型・単品売りである一方、SaaS事業はストック型・ソリューション型で全く違うものです。
ですから当初は、SaaS事業を展開するための体制づくりも課題でした。
次のスライドが、これまでの組織づくりの変遷を大まかにまとめたものです。
当初は広告事業がメインで、しかもシリーズBで43億円の資金調達を行っていたので既存の売上は落とせない、でもどうしてもSaaSに振っていきたいという中で、最初は3人の小さなプロジェクトからスタートしました。
半年くらいかけてプロダクトマーケットフィットを探り、2019年4月に初めて10人の「組織」にしました。
その半年後に20人、そして今は60人の組織体制となりました。
従業員は全社で90人なので、僕を含めてほぼ全員がSaaS事業に携わっている状況です。
まさに急成長で、会社の雰囲気も変わりますし皆よくついて来てくれたなと感じています。
体制づくりの点で我々にとって幸いだったのは、もともとマーケティングやメディア事業でお付き合いしてい企業さんにナショナルクライアントと呼ばれる大企業が多かったので、そうした企業へのソリューションという形で、エンタープライズの体制をつくりやすかったということです。
そして、ここにいるお三方も含めて先行するたくさんのSaaS企業がいらっしゃったので、そうした諸先輩方に教えていただき、現在に至るという感じです。
急成長SaaSビジネスにおける採用・組織マネジメント
鈴木 どのような企業を参考にされたのでしょうか?
髙松 ここにいらっしゃる皆さんを参考にさせていただいたのは当然ですし、SaaSだけを専門にする戦略顧問の方にも入ってもらい、組織の立ち上げから教育の仕方、KPI設定、それこそSalesforceの使い方まで色々なことを指導してもらいました。
そういう方々のお力があったからこそ、急速に立ち上げることができたと考えています。
KPIの設定にしても、リード獲得から商談設定に至る割合や、商談設定から受注に至る割合など、先行企業のKPIを見よう見まねで取り入れながら、組織づくりをしていきました。
組織の人数も、これくらいのMMR(月次経常収益)になったらこれくらいまで拡大する、みたいなのがあると思いますが、まさに教科書通りにそれを実行してきました。
ただ、広告とは違い投資額が大きいのでキャッシュバランスの問題もありましたし、売り手市場の中で採用にはだいぶ苦労しました。
高柳 採用面では、どういう業種からご入社される方が多いのですか?
髙松 初期メンバーはもちろん社内からのコンバートで、アドテクノロジー領域を手がけていた運用系の人材がフィットしました。そのあとは、他のSaaS企業にいた方ですね。
一方で開発メンバーはあまり関係なくて、エンジニアとして元の業種問わず採用してゆく感じです。
富岡 会社の雰囲気が変わったと言っていましたが、SaaS事業メインになって、どのように変わったのでしょうか?
髙松 広告事業は、クライアント企業の事情で売上が落ちるなど、自分たちの力ではどうにもならないことがあります。
しかしSaaS事業の場合、仕組みや数字を公開、共有しながら成長できるので、「キャンペーン自体が見送りになって受注を逃した」みたいに意気消沈することがなくなり、雰囲気が変わりました。
毎週、エンジニアを含めて60人全員が集まる会議を行っているのですが、そこではSaaS事業に関わるすべての数字を事業部ごとに発表して、数字の読み上げなどをしています。
広告事業だけだとこういう機会は持てなかったのと、特にエンジニアは自分たちのプロダクトを実際に使ってもらえるので、士気が上がっていますね。
鈴木 KPIが明確で、お客様の成功にコミットできるのは、SaaS事業の特徴ですよね。
では続いて庵原さん、お願いします。
SaaS事業の成長を支えるマーケティング・セールス職
庵原 僕たちもインサイドセールスなどについては一通り書籍などで学びましたが、それよりも重要だなと感じたのはやはり「採用」です。
嬉しいことにSaaSに携わって働きたいという人が世の中に増えている一方で、業界としてそうした人材の取り合いが起こっていますよね。
最初は、セールスやカスタマーサクセス(CS)も含めて創業者である僕が全て行っていましたが、事業の成長に伴い分業する必要が出てきて、「自分の分身がいたらいいな」と思い、採用に踏み切りました。
そこで、まずは(フィールド)セールスの人材を採用し、その後マーケティング、インサイドセールスと続いたのですが、この3つが揃ってようやく組織に革命が起こった感じがありました。
創業期は何よりも新規受注が大事なので、カスタマーリテンションなどには頭が行かないものです。
でもお客様が増えてくると、今度はCSサイドがより重要になってくるので、前述のような人材がどうしても必要になってきますね。
成長SaaS事業の人材採用、社長はどこまでコミットする?
髙松 ヤプリさんでは、インサイドセールスも含め全員が正社員ですか?
庵原 はい、そうです。
高柳 庵原さんが最終面接を行っているのでしょうか。
庵原 はい、僕が出ています。すごく申し訳ないのですが、まだ最終面接でお見送りするケースも少なくありません。
高柳 うちはビジネスサイドの最終面接は代表の倉橋(健太)が行っていて、エンジニアも全員会っています。
庵原 同じですね。
髙松 それはすごいですね。それで採用スピードは追いつくのですか?
庵原 半日は採用面接という日もありますね。
髙松 急速に立ち上げるという意味では、僕は採用を加速するためにそこは権限移譲し、入社後に面談するようにしています。
そうしないと、自分がボトルネックとなって採用を増やすことができないと判断しました。
鈴木 庵原さんが、事業の立ち上げで参考にした企業はありましたか?
庵原 まさにSansanさん、Salesforceさんのような先を行くSaaS企業ですね。あとは、国内だけでなく海外の文献にあたるなどして勉強しました。
鈴木 なるほど。高柳さんはいかがですか?
分業し切らないことで、チームが一緒に働く機会を設計する
高柳 今、社員は170人ほどいて、エンジニアとデザイナーで70人ほどです。
グロースサイド、つまりビジネスサイドが約80人です。
財務や経理など、いわゆるコーポレートのチームはアクセラレーターチームと呼んでいます。
実は半年ほど前まで役割ごとに分断してチームを構成する形はとっておらず、インサイドセールスチームも去年6月まではありませんでした。
セールスのメンバーが商談をつくり、フィールドにも出向き、お客さまを獲得するところまで全てカバーしていました。
最初から業務を分けると、学習できずに知見がたまらないと思ったためです。
今は鈴木さんの元部下のメンバーらが入社してくれまして…。
庵原 さらりとすごいことを言いますね(笑)。
(会場笑)
高柳 今は、ディールジェネレーション、つまり良い機会をつくることをミッションにしたチームができて、そこに5人います。
一方、フィールドセールスは20人くらい、カスタマーサクセスが40人ですね。
こういう場では言いづらいですが、福田康隆さんの書かれた『THE MODEL』とは、少し違う考えを持っています。
Salesforceのような製品であればあのモデルでうまくいくと思うのですが、我々はそのフェーズには達しておらず、チームごとのKPIや役割がお互いに重なるように設計しています。
フィールドセールスは、売上であるMRRを追っていますが、併せてチャーンレート(解約率)も意識させています。
社内ではよく「溶ける」と表現するのですが、分業しきらず、チームが一緒に働ける状況をつくっています。
契約更新のタイミングでお客さまのところに訪問したり、クロスセルやアップセルの際も、最初に契約を取ってきたメンバーがカスタマーサクセスチームと連携するなどしています。
鈴木 ありがとうございます。『THE MODEL』に関しては、エンタープライズでは適用しにくいという声もたくさんいただいていますし、弊社もそう感じています。
庵原 今のお話でも思ったのですが、SaaS事業を成長させるためにはやはりインサイドセールスの地位を上げないといけません。
昔ながらの「テレアポ部隊」と勘違いされることもありますが、僕はインサイドセールスはサッカーで例えるとミッドフィルダーのような存在だと考えています。
「あなたたちはフォワードにパスを出す、セールスにおける重要な存在だ」というような文化つくりが大事だと思っています。
KARTEの成長を支えるKPIモデル「PLAID Flywheel」
高柳 こちらは、弊社が設定するKPIのベースとなる考え方を示したスライドです。
良い「機会」を生み出し、「可能性」を最大限にし、それを「価値」として残そうというサイクルを示しています。
KPIと言うとやはり数字になりますが、同時に自分たちのミッションを概念レベルで理解していることも大事です。
「このチームは、この価値の最大化を担っているんだね」というのが分かってはじめて、そのチームを助けたり、協働することができます。
社内で話すときもこのサイクルをベースに「今はこの部分が課題だよね」と状況をシェアし、共通の目線で課題にタックルするような体制を整えています。
鈴木 先ほどおっしゃっていた“境界を溶かす”という意味では『THE MODEL』とは違い、こうしたサイクルが最適だったということですね。
高柳 そうですね。あくまで1枚の絵ではありますが、こういうものを話し続けることで意識もかわりますので、常に同じ地図を見ながらコミュニケーションを取ることが大切だと考えています。
髙松 これは、個人の評価にもリンクしていますか?
高柳 現時点では明確な給与テーブルは設けておらず、全員1on1をして給与改定をしています。
各マネージャー陣から一次情報を集めて、役員、マネージャー、メンバーで給与を決めています。
鈴木 富岡さん、Sansanはもう13年にもなりますが、どういうものをモデルにして事業を始めたのでしょうか。
富岡 僕たちが創業したのは2007年で、当時はクラウドやSaaS、カスタマーサクセス、チャーンという言葉も一般的ではありませんでした。
参考にできるような事例もなかなかなかったのですが、やっていくうちに、Salesforceさんに学ばせていただくことが多々ありました。
私はもともとオラクルに勤めていたのですが、当時、オラクルからSalesforceに転職した知り合いもたくさんいたので、彼らにも助けてもらいました。
鈴木 ありがとうございました。
(続)
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続きは 3.【SaaS市場分析】米国SaaS上場企業の95%は、エンタープライズ(大企業)をターゲットにしている をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/大塚 幸/戸田 秀成
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