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「トップ・リーダーの行動・思考パターンは何が違うのか?」【K16-8C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!5回シリーズ(その3)は、各登壇者の方々がマジ(本気)になった瞬間を語って頂きました。日本交通 川鍋さんの家業を継ぐ葛藤と決意のお話にご注目頂きつつ、是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 8C 「トップ・リーダーの行動・思考パターンは何が違うのか?」
(スピーカー)
出雲 充 株式会社ユーグレナ 代表取締役社長
川鍋 一朗 日本交通株式会社 代表取締役会長
松山 大耕 妙心寺退蔵院 副住職
(モデレーター)
松田 充弘 マツダミヒロ事務所株式会社 代表取締役
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【前の記事】
【本編】
松山 とにかくリーダーは本気じゃないとダメというのはどの分野でもそうだと思います。
松田 本気になった瞬間を皆さんにお聞きしたいんですが、出雲さんはいつミドリムシについて本気になりましたか。
ユーグレナ 出雲 氏が本気になった瞬間
出雲 大学3年生の時です。
それまで栄養素の勉強をしてたんですが、ミドリムシで一番皆さんにも見ていただきたいのは、生のミドリムシ or ミドリムシの動画なんですよ。
動画じゃないと何にも伝わらないんです。
やはり自分も自分の目で見て、ミドリムシが緑色をしていて葉緑素クロロフィルという色素があって光合成をする植物だと。
誰がどう見たって植物なんですが、でも動いてるので動物だと。
両方の栄養素があるのでとってもいい栄養源になるし、1980年から栄養失調の問題を解決するためにミドリムシの研究を20年間してきた先生がこんなにいるというのを知った瞬間「これは間違いない」とマジになったんです。
マジになった話しの前に忘れないようにお話しますが、川鍋さんと何が違うのかな、と考えたんです。
最初は、自分はゼロイチでベンチャーで会社を創り、川鍋さんは大きいタクシー会社を継がれたので、「創業と守成」は色々違うところがあるんだろうと感じていました。
ですが、多分一番違うのはそこではなくて、お二人のお話を聞いていて「何でしっくりと来ないんだろう」と思っていたのですが、私は今まで仕事をしてきて誰にも意地悪されたり妬まれたり、足を引っ張られたりしたことが無いんですよ。
川鍋 感じて無いんじゃないんですか。
出雲 いえ、これは絶対に無いんですよ。
だってミドリムシの足を引っ張る人っていないんですよ。
「あいつばっかりミドリムシでいい思いしやがって、俺もミドリムシなのに」という人があまりにもいないので、タクシーや仏教など歴史があるものは本当に大変だなと思いながら聞いていましたが、そこが違い過ぎて全然違うのかという感じです。
(会場笑)
協会といっても全日本ミドリムシ協会なんてそんなものはないので、協会の50才のお偉い方とお酒を飲んで大変でしたなどそういう悩みは分かりませんでしたが、今は分かったんです。
川鍋 そのうち作りますよ、きっと。
初代会長ですね。
出雲 そうするとそういう問題が発生するのかもしれないですね。
川鍋 そうですね、だんだんとミドリムシ業界が大きくなると。
私の祖父は同じだったと思うんですよ。
まだフォードのような車自体が珍しい時代だったので、足を引っ張る人がいなかったんです。
出雲 確かにこれからミドリムシガソリンとやミドリムシジェット燃料などミドリムシのご飯が産業として広がっていくと、ミドリムシがそういう業界団体を作る時代が近いかもしれない、来たらいいですね。
かっこいいですよね、全日本ミドリムシ連盟、全ミ連ですよね。
(会場 笑)
川鍋 全タク連と全ミ連、
出雲 めっちゃかっこいいですよね。
(会場より拍手)
それさすがに僕以外の人が会長になったら、僕はめっちゃ嫉妬します。
「何で俺じゃない人が全ミ連の会長してるんだ」って。
松田 大分近づいてきましたね。
話は1つ前に戻りますが、川鍋さんが本気になった瞬間はいつですか。
日本交通 川鍋 氏が本気になった瞬間
川鍋 本気になった瞬間は2回あります。
タクシーをやるということは物心ついた時から祖父に刷り込まれていたのですが、その道を本気で阻害してくる「敵」が現れた1回目が、タクシー以外の不動産とかで1900億円ぐらいの借金を作って、それを取り立てにきた時です。
小泉内閣の2001年頃一気に金融行政が変わって、今までちゃんとメインバンクの言うとおりのペースで返していたにも関わらず、急に小泉内閣の指導の下、金融庁から銀行ときて「はい、すみません、変わりましたのでお宅は債務区分が破綻懸念、”はけ”です」と言われました。
銀行やその辺に馴染んだ方は懐かしいと思います。
急に銀行から3人うちの社員として送り込まれてきまして、もちろん人件費払うんですよ。
当時、全ての会議が2通りあって、銀行の人たちがいる会議と、裏会議といって同じメンバーマイナス銀行の人でやっていました。
そしてある時、もうそれやっていても間に合わないから全部諦めてくれと言われた時、「ちょっと待てよ」と。
生存の危機から「本気」が生まれる
川鍋 それまで意外と従順にやっていましたが、ある時生存を脅かされた瞬間にメラメラと怒りがこみ上げてきて「何だそれ」と。
金融の実務は良く分からなかったので、その後は弁護士先生に聞いたら「そこまで言われる筋合いは無い」と言われ、その瞬間に「ちょっと待ってくれ」と言った時から始まったのが1回目。
それは怒りに任せてわーっとやると意外と不動産とかあって、上手く売っていけば借金自体は返せるんですね。
2回目は今、まさに起こっている”UBER”ですよ、「何だそれ」と。
土足で「ディスラプト?!(破壊しろ!)」、あ、すみません、声が大きくなりました。
(会場笑)
これは哲学の問題で、向こうはアメリカ的だから「ディスラプト、産業新しくなるぜ、ヒュー!」でいいんだけれども、こっちはアメリカのタクシーと全然違って相当やっとるんじゃい、という気持ちがメラメラと起きてきて、絶対負けないというのが2回目で、ガチ本気モードに入ったのが2年ぐらい前です。
UBER JAPANが日本に来て、私のUBERアカウントが凍結された瞬間です。
(会場笑)
松田 そうなんですか。
損得の「得」ではなく、「徳」の大切さ
川鍋 海外に行ったらUBERを使っていたので、日本でも最初は使えてたんですよ。
ある朝 スマホで開いてもうんともすんとも言わないし、私のメールアドレスで入れない。
UBERの問い合わせ用の電話番号は無いのでメールで問い合わせても梨の礫。
消費者庁に訴えようかと思ったんですけど、私も国交省管轄下なのであまりそういうのはやりたくないので、しょうがないからUBER JAPANの社長に連絡して、「社長、大変申し訳無いんですが僕のアカウントを凍結解除してください」と言いました。
アメリカではいいけれど、日本的に言うとそれってちょっといかがなものか、UBERの顧客として何も悪いことしてないのにいきなり凍結されてしまうというのは何なのか、と。
向こうは「そうですか、調べてみます」と言ったまま梨の礫。
当社の経営理念は「徳を残そう」ということですが、正反対じゃないですか、彼らの「とく」は損得の「得」。
松田 文字が違うわけですね。
川鍋 とにかく金だ金だというところが私はちょっと、あのやり方といい、関係者の方いらっしゃったらすみません。
それが2回目本気になった時です。
やはり「敵」に攻められて生存の危機に晒された時ですね。
でもある意味、銀行に攻められてV字回復させたからこそ、その後メディアに出たり、ファミリー・ビジネスの中であの人は立て直したと言われたり、今UBERと戦ってるからここ(ICCカンファレンス)にいられるわけで、そう考えると感謝しなければいけないのかな、とふと思う時もあります。
松田 なるほど、ありがとうございます。
退蔵院 松山大耕 氏が本気になった瞬間
松山さんは本気になった瞬間というのはどんなタイミングだったんですか。
松山 私は学生の頃、元々お坊さんやりたくなかったんです。
松田 そうだったんですか、でもやらなければいけない環境だったんですか。
松山 やらなければいけないというか、周りは当然のことながら期待していたんですが自分は嫌だったんです。
何故かというと学校で友達に言われたんですよ、「お前は何で勉強してんねん、勉強しないでお坊さんになったらいいやんけ。寺継いだら終わりやろ、勉強しても意味ないやん」とずっと言われてたんです。
自分がどれだけ努力しても勝手に自分の将来が決まってるというのがすごく嫌だったんです。
実は出雲君と同じ学科にいて1学年上なんですが、農学部で大学院の頃 長野県の農家に半年間住み込みで研究することがあって、その時たまたま出会ったお坊さんがものすごく素晴らしい方で、結構お坊さんの世界ってどろどろしているのが見えて嫌だったんですが、そのお坊さんを見て考えが変わったんです。
写真提供:退蔵院
そこのお寺は、冬場は雪が3メートル位積もるところで、檀家というサポーターが1軒もなく、観光もやっていません。
どうやって生活しているかというと、托鉢だけで生活をしてるわけです、その雪の中。
本堂の立て直しとか色んなこともあるんですが、全部自分が毎日托鉢していただいた施しでやってらっしゃったんです。
その姿を見て「この時代にこんな凄い人がいるのか、こういう人がいる世界だったら間違いないな」と本当に感動したんです。
和尚さんと自分は立場お寺も違うので同じことはできませんが、その中で村の詩人がその和尚さんの詩を書いていて、「自分の息子位の年齢の和尚さんが托鉢をしている声を聞くと、町の中に安心が広がる」という詩なんですが、お坊さんは安心を与えるのが仕事なんだな、とその時にはっと気づきました。
ですから、本当の心の師匠というかそういう方に巡り会えたというのが自分がこの道に入りたいと本気で思った瞬間です。
松田 もしその出会いがなかったらどうなっていたと思いますか。
松山 やってなかったかもしれないですね。
「家業」を継ぐこと
松田 川鍋さんは家を継ぐという意味では松山さんと同じような立場だと思うのですが、1度目の本気の瞬間が来る前までは、ちょっと嫌だなという思いはありませんでしたか。
川鍋 そうですね、例えばここ(ICCカンファレンス)にも来ていますが、マッキンゼーで丁度同じ頃入った高島 宏平さんはオイシックスをやっていて、なんかネットベンチャーかっこいいな、俺タクシーかよ、と取り残された感はありました。
マッキンゼーに残ってる人もいたし、他のコンサルティング会社に行った人もいるし、今まで素敵なビルでピーっと押して高層階に行って仕事してたのに、いきなりタクシー営業所ですよ。
これでいいのか、というのはすごくあって、最初の頃2年ぐらいはいつでも辞めるかもしれないと思っていたし、そういうのが態度にも出ていて「そんなこと言ったって、俺だってやりたくてやってるわけじゃないから」みたいなことを言っていました。
ある時 中の人にマジ顔で怒られて「一朗さん、あなたは確かに外に行けるかもしれない。でもここにいる人たちは誰も外に行けないんですよ。そういう時にあなたみたいなオーナーがいつでも外に行けるなんて言われちゃったら、誰もあなたについていくいくわけないじゃないですか」とマジギレされ、シンプルにそうだなと思って痛く反省しました。
自分として何となく前の世界に未練があったし、当時マッキンゼーの時に買ったベンツに乗っていたので、「ベンツに乗っている時だけ本当の自分に戻れてベンツ降りた瞬間から仮面の自分です」みたいな感じでやっていたのが、その時「俺はこれなんだ」と思ってベンツを売った頃から本当の覚悟が決まったのかもしれません。
それまではしょうがないからやってあげてる、というのが自分の中でありました。
家業を継ぐとそういうパターンが多いですね、星野リゾートの星野社長もぶつかって1回辞めて、逆に「来てくれ」と言われたとか、「本当にこれでいいのか」という葛藤はありました。
【参考資料】 同族経営の承継ではハードな世代交代を恐れてはいけない – 星野佳路 [星野リゾート代表]
大体タクシーは今みたいにネットとかアプリとか無かったので、「はー、タクシーか」みたいなね。
運転手さんににこやかにお茶でも出して「奥さんの病気大丈夫か」等と言い、いわゆる労務管理がタクシー会社のコアスキルですから、人間性は良くなるかもしれませんがそれ以上でも以下でもなく、どんどん左脳が弱まってくるんですね。
ボリューム的な拡大とか、当然規制産業ですからタクシー協会で国土交通省や政治家とやるというのはありましたが、それでいいのか、というのはすごく思っていました。
松田 なるほど、ありがとうございます。
(続)
続きは 「人間に違いはない。違うのは努力の試行回数」ユーグレナ出雲氏が考えるリーダーの資質 を配信予定です。
https://industry-co-creation.com/management/6604
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり
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【編集部コメント】
続編(その4)では、トップ・リーダーとそうではない人は何が違うのか?について議論しました。「そんな違いはない」と断言するユーグレナ出雲さんの言葉が印象的です。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。
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