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モチモチで美味い「寝かせ玄米®︎」で、主食のイノベーションを起こす“炊飯技術”ベンチャー「結わえる」

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ICCサミットに集まる方々は、食や健康にも関心の高い方が多いですが、玄米を食べている方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。美容や健康に意識の高い女性から火が点き、健康診断の数値がよくなったと男性がはまる、従来の「体にいいけれども、玄米はまずい」というイメージを覆して、着々とファンを拡大中の「寝かせ玄米®︎」はご存知ですか? その製造とショップ展開を手掛ける「結わえる」を訪ねました。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。


近年、女性が集まるような飲食店でのオプションメニューとして、主食の白米を玄米や五穀米などに変更できるところが増えています。美容、ダイエットという観点、栄養価が高くてヘルシーという訴求で、徐々に市民権を得ている玄米ですが、一般的にはまだ、白米のおいしさには敵わないという認識ではないでしょうか。

その玄米で、数年前から少しずつ存在感を示してきたのが「寝かせ玄米」。人気女優を始め、健康コンシャスな著名人が食べているものとして注目を集め、一過性のブームに終わらず認知を広げ続けています。その理由を探るべく「寝かせ玄米」を考案した「結わえる」荻野 芳隆さんを訪ねました。

取材で結わえる 本店を訪れたのは3月31日のランチタイムで、普段ならば、人気の玄米定食を求めるお客さんが長い行列を作っている時間帯。夜は季節料理とお酒の店(荻野さんいわく「なかなかいい店」)になりますが、昨今の状況を鑑みて、当面の間、夜は休業しているとのことでした。

ショップとレストランを併設した、東京・蔵前の「結わえる 本店」

コンサルタントから「寝かせ玄米」へ

代表取締役である荻野 芳隆さんが、2009年2月に創業した「結わえる」は、2020年5月現在、全国に別ブランドも含め10の店舗と、玄米ごはんパック企画製造販売のDtoC、OEM(他社ブランドの受託製造)、コンサルティング事業などを行っています。荻野さんの経歴からお話は始まりました。

「僕は新卒で船井総合研究所に入り、5年間働いていました。日本の伝統産業である、みそやしょうゆ、酒蔵、農業、林業、伝統工芸品などの伝承分断という課題を何とかしたいと、マーケティングやウェブデザイン、商品開発などで衰退を防いだり、復興させて世界に目を向けようということをやっていました。

本物のみそやしょうゆは、食事療法や、健康に気を使っている人が買っています。食べ物から健康に、元気になっていこうとする人がいることを知り、そこから東洋医学や食事療法を知って、今の世の中の食生活は相当よくないということを知りました。

かといって、病気を治すことはできないので、ならないような場を作ろうとしています。あまり厳しくなりすぎず、今の普通の食事の、主食を茶色くしていこうとしています。

玄米と白米はカロリーと糖質がほとんど同じなのですが、ただおいしくないという理由で、精米することで豊富なビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素がほとんど削られています。それで削らなくても、玄米をおいしく食べられるように開発したのが寝かせ玄米という炊飯技術です。

1食分パックで購入できる、豆や雑穀をブレンドした「寝かせ玄米ごはん」ブレンド各種(税込み296円〜)

おいしければ、どう考えてもみんな、玄米を食べるようになるはずだと思います」

荻野さんが考案する「寝かせ玄米」とは、白米との混ぜ炊きや、玄米をほどほどに精米したものでもない、100%の玄米を炊いて数日保温状態で寝かせたもの。炊きたてでないお米はおいしいのか? 茶色くてパラパラしていて、玄米独特のあの匂いは解消できるのか?と思ってしまいますが……。

「玄米を普通の炊飯器で炊くと、10万円ぐらいの炊飯器だろうと、玄米モードだろうと、おいしくありません。

まずいものは人は食べないから、どうしたら食べられるようになるだろうかと考えました。

僕には食品開発のバックグラウンドは全くありませんが、あらゆる炊飯ジャーや圧力鍋、お米、炊き方を試して調べまくりました。船井総研で働きながら、2、3年かけてやっていました。日本中の玄米を出す店に行き、本を漁り、この炊き方にたどりつきました。

炊飯手法が完成したときは、これで世の中変えられると思いました」

その数年かけて編み出した美味しい玄米ごはんの炊飯法、「寝かせ玄米」のレシピは、多くの料理レシピサイトと公式情報として公開されていて、cookpadなどの有名レシピサイトでも見ることができます。書籍にも載っています。

[公式]寝かせ玄米®の美味しい炊き方(cookpad)

「100%玄米を圧力鍋で炊飯をして、柔かくもちもちに仕上げたものを、保温状態で数日寝かせます。すると炊きたてでは水分が多くて柔らかいものが、余分な水分が飛んで安定してきます。

数日置いておいても、皮に守られて劣化が白米のように進まず、皮は柔らかいまま、中がぎゅっと締まる。そして弾力が出てきてモチモチになって、甘みや旨味がだんだん出てきます。そうして味も食感もよくなるというのが、炊飯の手法です。

米の種類やブレンドで味に違いは多少出ますが、炊き方の技術でカバーすることはできます。

みんなにどんどんやってほしいので、炊き方教室も開催していて、数ヶ月先まで予約で埋まる状態です」

「寝かせ玄米」レシピを公開する理由

秘伝の商売道具といえるこのレシピを公開してまで、みんなに知ってもらおうというのには理由があります。

「食べ物が僕らに与える影響はとても大きい。僕らが何を食べるかで、病気にもなるし、農業や伝統産業は衰退する。一方、世界中で、みんな太って生活習慣病になっています。人口が爆発すると食料争奪戦になります。

そこで玄米ならば、主食になり、栄養があって、安価で、保存もきいて、世界中で育てられます。世界の健康問題やいろいろな問題を、主食を変えることによって解決していきたいのです」

籾殻を取り除いた状態の玄米は、カロリーや糖質は同じでも白米と比べて食物繊維は6倍、ビタミンEは約12倍、マグネシウムは約5倍などのほか、副菜で摂るような豊富な栄養素を含んでいます。噛みごたえがあることから、満腹中枢が刺激されるうえ、腹持ちがいいために食べる量も抑えられるのだとか。

玄米のカロリー・栄養価(結わえる式玄米生活のススメ 寝かせ玄米くらぶ)

「今の世の中では、食生活で病気になっているということが、数十年年ぐらい前にわかってきました。炭水化物・脂質・タンパク質という栄養バランスで、一昔前は5~6割が炭水化物(米)だったというバランスが崩れて、米は今、25%ぐらいになっています。

昔は少ないおかずで米を半分食べていたのに、今は肉が約5倍の摂取量に増えています。根本的な原因はそこにあって、肉が悪いわけではなくて、食べすぎが悪い。米にしても、栄養のあるところを削って、ほぼ糖質だけで食べているから悪い。単純なことです。

玄米で5〜6割くらい食べることで、飛躍的に摂れる栄養素が変わってきます。すると病気にならず、太らないということがわかりました。昔は精米機がなくて、たまたま玄米を食べていたのですが、その後はおいしくないからという理由で、栄養を削っているという意識はなく、小麦も米も全部削っていたのです」

ショップではおすすめのブレンド玄米のほか混ぜ炊きする雑穀、レトルトカレーなども販売

健康や食、玄米というと、ストイックなイメージもありますが、荻野さんは、いかにそう見られないかを苦心したといいます。そこで、玄米を食事の6割食べればいいだけという、好きなものを食べても呑んでもいい”メリハリ寝かせ玄米生活”というのを、書籍やウェブサイトでも提唱しています。

「確かに食に関して、世の中やばいことだらけなのですが、それを悪だというと、極端な世界に入ってしまう人がいます。

日本人が世界一の長寿国だったことをすればいいだけなんです。それが今は崩れてしまって、スーパーフードやグルテンフリーに向かってしまっている。

昔のライフスタイルもいいけれど、現代に合う感覚やスタイルに合わせないとただ古いだけ。だからうちがハブになってちょっとアレンジして、現代人に提案しています。その一番が主食なんです。

社名は『結わえる』といいますが、日本の伝統的生活文化を、現代人の感覚やライフスタイルに結わえるという意味なんです」

男性はアンテナがとくに低いので、ちゃんとエビデンスも伝えながら、ちゃんと科学的に広めていこうとしています」

モチモチで美味しい「寝かせ玄米」を試食

早速、その味をいただくことになりました。「結わえる」本店のランチタイム、メインやおかずを選べる1,080円のセットです。まずはその自信の「寝かせ玄米ごはん」から。

セルフサービスで、左から黒ごま塩、しそふりかけをトッピング

食べる前に、どんぶりのような大きさのお椀に盛られたお米のボリュームに驚きます。量を確認すると220g。ランチ全体の写真も見てください。味噌汁とご飯が大きな椀です。食事の5〜6割をお米でとは、こういうことなんですね。

里芋コロッケと豆腐汁、小鉢のランチ

食べてみると、おこわのような、もち米のような食感に驚きます。もちもちとして噛みごたえがあって、香ばしい香りが広がる玄米は、いつまでも味わっていたいようなおいしさ。ふりかけもおいしいのですが、これだけでも十分食べられる味です。自然と噛む回数が増えてしまいます。

「僕は、食べ物、おいしいものが大好きなので、朝抜きの1日2食という食生活で、毎日玄米を食べています。毎晩必ずお酒も飲みますが健康です。全然玄米っぽい味がしないですよね」

メインのおかずや汁物を選び、いくつかある種類の小鉢を2つ選ぶランチ、他のメニューもご紹介しましょう。

目鯛のフライと酸辣湯、小鉢のランチ。割り箸は日本の間伐材を使ったもの

豚バラ大根、酸辣湯、小鉢のランチ

男性でもお腹がいっぱいになるような、食べごたえたっぷりのボリューム。お米メインでこんなにお満腹になったのは、久しぶりのような気がして、罪悪感すら覚えてしまうほどです。

「このランチは1,080円で、おかずも含めてオール無添加、国際原料で、調味料もいいものを使っています。こういう飲食店はなかなかないですよね。週5回、来る人もいます。

お客さんの中には、ここでランチ食べる以外の食生活は何も変えていないのに、3〜5kg痩せて、健康診断の数値がよくなったという方も珍しくありません。通ってくれるのはだいたい男性ですね。男性は、味と価格とエビデンスが理論的にわかれば通います。女性はどんどん次に行ってしまいますが(笑)」

炊飯技術DtoCで健康問題を解決する

健康のために玄米を食べることは新しいことではありません。オーガニック食品の店や、健康に配慮したレストラン、ダイエットのためや、マクロビ食を実践する人など、健康管理や食生活に意識の高い人にとっては、玄米食のジャンルはすでに確立しています。

しかし、これを本気で主流にしたいという推進力と描くビジョンの大きさについて、荻野さんは群を抜いていて、それがマネーフォワードの金坂さんからご紹介いただいた理由ではないかと思います。食事の後は、事業についてのお話を聞きました。

「 辻 庸介さん(マネーフォワードの代表取締役社長)と仲良くさせてもらっていて、マネーフォワードシンカというのを創るけれど、そろそろ『結わえる』も必要では?という話があったのです。ちょうどエクイティをしようとしていたので、代表取締役の金坂 直哉さんを紹介してもらい、今回の資金調達ラウンドを手伝っていただきました。

『寝かせ玄米』のDtoCビジネスを展開する結わえる、総額8.7億の資金調達を実施(時事ドットコム)

僕らは、炊飯の技術で問題を解決しています。店舗が10店舗あり、ネット通販、卸とOEMをしています。OEMは自社に加え、スーパーの紀ノ国屋ドクターシーラボ、辛子明太子のふくや万田酵素など、10種類くらい作っています。

僕らは、玄米を広めたパイオニアを目指しています。うちがすべてを独占しようとは考えていなくて、広げていくパイオニアとしていれば、売上はついてくると思っています。

茨城工場に、1,700坪の敷地に800坪の工場で、月に150万パック作れる工場を10億円かけて作りました。こんなベンチャーはいないと思います。

DtoCといっても、OEMのところが多いと思いますが、僕らはガチで自分たちでDtoCをやっています。

玄米は、契約農家から買っています。茨城の工場から車で15分くらいのところなので、輸送コストは非常に安いです。それだけでは足りなくなってきているので、株主でもある全農さんに手配してもらってもいます。原料で困ることはありません」

平均年収で実現できるライフスタイルにこだわる

ランチタイム前の店内

作って売るだけではなく、それを広げるためには、おいしさを体験できる店舗のほかに、レストランで玄米を提供するための導入コンサルティングも行っているといいます。

「話は結構いただいています。彼らの商売はそのままで、ご飯だけを玄米にする。炊き方、スタッフの指導などを全部コンサルティングして、『寝かせ玄米の公認店』とするのが最近増えています。

金沢のしょうゆやみそを扱う店で、寝かせ玄米と麹料理が食べられたり、神戸の野菜レストランで、野菜料理と寝かせ玄米といった形で展開しています。

原材料費は同じですが手間はかかるので、店で提供する値段は白米のプラス100円ぐらいででしょうか。業務用の冷凍寝かせ玄米の販売も開始しました。保温ジャーに入れておけば、数時間後には食べられます。寝かせ玄米があることで、店の差別化にもなります。

ほかにも、エステやスポーツジムで試食してもらって、買って帰ってもらったりなどしています」

荻野さんたちが目指す世界は、主食が、玄米になる世界。そのためには白米以外の選択肢としての玄米ではなくて、家庭のスタンダードとして選ばれるようになる必要があります。

「ミッションは世の中を変えることなので、値段が高くてはできません。平均年収で実現できるライフスタイルしか提案しないというのは、常に考えています。たとえばしょうゆ1本1,500円みたいに、こだわりまくった高価格のものではありません。

今は、ちゃんとしていないものと、こだわりすぎているものに分かれてしまっているのです。普通に正しく作って1本700円ぐらいのものを、みんなが意識して買う世界が一番いいので、高すぎてはいけない、こだわりすぎてはいけない、僕らは80点でいいんだよというのをよく言っています。

80点って高得点じゃないですか。僕は毎日お酒飲みますし、ラーメンもなんでも食べます。普段玄米を食べていれば、飲んで食べることが楽しいライフスタイルを続けられます。
このパックの玄米は1個約300円しますが、平均的にランチは800円〜1000円使います。うちのレトルトカレーを買って足したとしても650円です。家からおかずを持ってきてもいいんです。

それでも300円するので、それが高いというときは自分で炊けば100円くらいになります。そのための方法も伝えるし、機器も販売します。専業主婦で、家族で食べる人が3人ぐらいいるのなら、自分で炊いたほうがいいですよとうちのスタッフも伝えています」

圧力鍋と保温ジャーなど「寝かせ玄米」がおいしく炊ける機器も販売している

今のところは健康や美容、ダイエットという入り口で、入ってくる人が多く、順調に売上は伸びているそうです。おいしいの?と興味を持ってお店で体験する人が多く、都市部に店舗を今後も出していく予定だそうです。

荻野さんいわく「3日も食べれば、出るものがが変わってきます。そこで自己エビデンスが出来る。やめるとまた出なくなるので、体感は早いんです。いい便が出続けると、痩せたり、体重が減ったりする。するとみんな継続していきます」とのこと。

経済的に厳しいなら、自分で炊く、試したいときや時々なら、調理済みのパックという選択肢を用意。なお、店舗では1パックずつ買えますが、通販だと6パックからとなっており、これも継続して食べて、おいしさや効果を実感してほしいという想いが伝わります。

さらにECに注力し、夢の実現を目指す

 

店内では選りすぐりの調味料や器なども販売

筆者が「寝かせ玄米」のことを知ったのは、女優の石原さとみが食べているとメディアで語っていたことから。しかし、創業から今に至るまで、パブリシティ施策などは全くしていないといいます。自然とファンが増えるにつれ、売上が伸びているのだだそうです。

「石原さとみさんは、蔵前のお店に来てくれたこともあります。 10年やっていますが(2009年11月開店)、毎月4、5件何かしら取材が入ります。店舗がありますし、蔵前の街の取材もあるし、ヘルスケアや農業新聞とか、ファッション誌、フィットネス系とか、いろいろな角度から玄米に行き着くから、取材は多いんですよね。

オーガニックに売上は伸びていますが、伸びているからこそ、データ分析などが逆に弱くて、5月に超優秀な人が入る予定です。今後は、データ分析、マーケティングな手法でECをさらに伸ばしていきます」

ウェブサイトで募集した田植え体験(2019年の開催概要)などのワークショップは、募集をすると100人の定員もすぐ満席になるそうで「時代がそういう感じになっているんでしょうね」と荻野さんは言います。ファンをさらに増やして、主食を茶色に変えながら、さらに大きなビジョンを実現したいと考えています。

「今の工場が月産150万食なので、そこがいっぱいになったら次は静岡に作ろうと思っています。構想としては、最初は直売所やレストラン、温泉などがある施設で、日本の伝統的生活文化と食と健康のテーマパークを作りたいです」

ホームページには、その「結わえるヴィレッジ」の構想がイラストで描かれています

「どこまでこのミッションを達成できるか、チャレンジですね」と言う荻野さんの表情は真剣です。

まだまだ語るストーリーをたくさん持っていそうな荻野さんは、次回、ICCサミット KYOTO 2020でCRAFTEDカタパルトに登壇する予定です。

荻野さん、取材にご協力いただきましてありがとうございました! 以上、現場から浅郷がお伝えしました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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