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全員に票が入る大激戦! 信念あるものづくりのネットワークが拡がる、第5回CRAFTEDカタパルト【ICC FUKUOKA 2021レポート】

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2月15日〜2月18日の4日間にわたって開催されたICCサミット FUKUOKA 2021。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、今回のICCサミット全プログラム中で最高評価となったCRAFTED カタパルトの模様をお伝えします。今回も素晴らしいものづくりの企業8社が集まりました。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。


「どの企業が優勝でも納得」の8社が登壇

CRAFTEDカタパルトの登壇者には、Makuakeを通じて新しいプロダクトを紹介する登壇企業も多い。そのひとつワシオの鷲尾 岳さんとMakuake中山 亮太郎さん

過去のCRAFTED カタパルトは、どれも素晴らしいものだったが、第5回目となる今回のCRAFTED カタパルトは全体のレベルがさらに上がり、次のフェーズに入った印象が強いカタパルトとなった。

記事のタイトルにもあるように、8名のプレゼンは大接戦の様相を見せた。31人の審査員は1位の1社に2点、2位の2社に各1点として、合計3社に投票するが、票は割れて、全社に票が入った。「甲乙つけがたい」「選べない」という声が、会場から上がった。登壇側からさえ「どの企業が優勝でも納得」という声を聞いた。

レベルが上がった一因は、次の登壇者にと、日本各地に散らばるものづくり企業の推薦が、登壇者や参加者、運営スタッフから集まってくるようになったこともある。昨年末はそういった企業を訪ねる、関西CRAFTED TOURを行った。

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ICCのコミュニティのおかげで、今まで知り得なかったような素晴らしいものづくりを行う企業に次々と出会えている。そして現場の取り組みを見学したり、プロダクトに込められた思いを知れば知るほど、もっと世の中に注目されてほしいと思うものである。そのための取り組みのひとつとなっているのがCRAFTEDカタパルトである。

緊張の表情の登壇者たち

審査員は和やかに談笑。マザーハウス山崎さんと、みやじ豚 宮治さん、一平 ホールディングス 村岡さん

CRAFTEDカタパルトは、今回DAY2のSession10の枠で行われた。登壇者、審査員ともにアットホームな雰囲気があるのは相変わらずだ。登壇者たちのネットワークもすでにあり、CRAFTED TOURで訪問した関西の企業はもともと知り合いや顔見知りが多い。

山西牧場の倉持さんと農家ハンター宮川さんは、前夜の「鉄板焼ナイト」でホストを務めた。homealの鬼海さんはスタートアップ・カタパルト登壇経験があり、横山興業の横山さんは孤高の雰囲気を放っている。

本番前の登壇者たちは、顔見知りなのに緊張感が入り混じった何ともいえない雰囲気の中にいた。

KAPOK JAPAN深井さん「昨日は木村石鹸のサンプルで頭を洗って、mellowさんのCBDを飲んでみて、朝ごはんにベースフードを食べて、ICCを吸収しています(笑)。初めてお会いする方もいますが、みなさんすごくお話もしやすいです」

そこへhomealの鬼海さんがやってきた。

鬼海さんKAPOK KNOTの黒の羽織を買いました。ちょっと大きめにダブっと着たくて」

サステナブルなエシカル・ダウンを作る深井さんと、宅配の幼児食を作る鬼海さんの接点は?と聞くと、

深井さん「DtoC界隈では、homealは素晴らしい事業をやってらっしゃるので話題です。そのおこぼれにあずかりながら、ノウハウを盗みながら、優勝したいです(笑)!」

鬼海さん「でもそういう知識の共有も、ジャンルが違うからいいよね」

そう話していると、深井さんと親しく、会場逆側の登壇者席で待機していたワシオの鷲尾さんがやってきた。鬼海さんとは初対面のようで、挨拶をしている。

鷲尾さん「緊張しているので、少しでもリラックスしようとこっちへやってきました。外は雪ですが、僕はもちはだのタンクトップの上にシャツと、フーディ、これだけで来ました!」

この日と翌日には、福岡では年間で1、2度あるかという降雪があった。しかも風も強くて視界が悪くなるほど、一面銀世界になるほど降った。それを鷲尾さんは、下の写真の格好でコートも着ずにやってきたと言う。早速その暖かさの秘密、もちはだの特別な起毛を鬼海さんに披露する鷲尾さんであった。

その後ろに「明日はイノシシと豚の頂上決戦です!」と気炎を上げていた農家ハンター宮川さんがいる。登壇前の心境を聞こうとお声がけしたが……。

声をかけたのを後悔したぐらい、緊張しているのがわかる。話をして緊張を解こうとする人もいるが、そうではないケース。息を詰めてプレゼンのスライドを見返し、集中しようとしている。

同じく緊張の色が見えるのは、山西牧場の倉持さん。

倉持さん「茨城(山西牧場の皆さん)から、しくじるなよ、と言われました(笑)」

ともに昨晩は、来場者を前に、自分たちが作るものについて堂々と語っていた姿とは大違いだ。

CRAFTEDなものづくりを食べて実感!「美味しい豚肉・ジビエを堪能する『鉄板焼ナイト』」【ICC FUKUOKA 2021レポート】

写真左から、アックスヤマザキ山崎さん、堀田カーペット堀田さん、ワシオの鷲尾さん

一方、落ち着いて見える登壇者たちもいる。

山崎さん「昨日は、夜、Co-Creation Nightでアトツギを語る集まりがあって、少し行ってみました。面白かったです。今日の登壇では、作っているミシンも一緒にステージに出そうと思っています」

堀田さん「ピッチコンテストとかは今まで全部断っていたので、今回はいい機会をいただいたと思っています。余裕に見える? 全然そんなことないですよ(笑)」

自分たちのものづくりを7分間でプレゼン

今回の登壇者は8名。いずれも練習を重ねてこの日を迎えた方々ばかりで、自分たちのものづくりを思う存分プレゼンした。審査員もまた、ものづくりに関わる人たちや、CRAFTEDカタパルトの過去登壇者たち。新しくこのコミュニティに加わるのはどんな人たちか、興味津々である。

 

homeal鬼海さんは、親子で楽しめる、本格レシピの幼児食「オマール海老の旨味たっぷり 辛くないビスクカレー」の試食を提供

既存の流通では伝わらない想いを伝えるため、クラフトポークのDtoCを開始した山西牧場 倉持さん

加工が難しいカポックの実の繊維をシート化し、動物にも環境にも優しい防寒衣類を作るKAPOK JAPAN深井さん

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堀田カーペット堀田さんは、7分間のプレゼンで会場をカーペットのある豊かな生活に誘った

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ヒートテックの2倍温かな「もちはだ」起毛の秘密と、コラボ募集を呼びかけた鷲尾さん

運営スタッフやホテルのスタッフが、入れ替わり立ち替わり手袋をした手で審査員に体験サンプルを配り、回収するのも、もうおなじみの光景だ。まだ慣れないのは、体験した感想を、隣りの人と共有できる近さにないぐらいだろうか。

審査員席に配布されたサンプル。審査員たちは商品を体験しながらプレゼンを聞く

次代に続くイノベーションあるものづくりをともに

8社のプレゼンを真剣に聞き入っていた審査員たちは、異口同音に「感動した」と繰り返した。

三星グループ岩田さん「お疲れさまでした。今回いろいろあってMakuakeさんがこのカタパルトを支援してくださったのを、登壇OBのひとりとして感謝しています。ありがとうございます。

アパレルつながりで、深井くん鷲尾さんを知っていますし、堀田くんのカーペットのよさも知っています。登壇が決まったあとに知ったのですが、横山くんは高校の同級生で10数年ぶりに会いました。いろいろ頑張っているアトツギをこの場で見られることに、ものすごく感動しています。

その中であえていいますが、山﨑さんのあの手紙はずるい(笑)!

プレゼンで紹介された、山﨑さんの娘さんからの手紙

娘にクリスマスプレゼントでパパの作ったものがほしいと言われるのは、ものづくり冥利に尽きると思うし、私もそういうものづくりをしっかりやって次代に続いていくのが、この仲間たちで一緒に作っていきたいことだなと思います」

コエドブルワリー朝霧さん「アルコールの業界で、日本のものづくりを従来のTechnology×大企業だけでなく、ローカルの光る技術も組み合わせて伝えていくことに関心があり、自社でも取り組んでいます。

うかがっていて感じたのは、社会課題に対して、それぞれのバックグラウンドの技術をもって、自分たちだけでなく他者も巻き込んで作っていくということ。本当に感動しました。カクテルの飲み比べ、シェーカーの内側の磨きが違うだけで、味がすごく違いましたね!」

一平ホールディングス村岡さん「会社の生存の課題があって、そこから未来を作るにはイノベーションが必要で、それが社会課題の解決に向かっているという、今の世の中の変化を表していると思いました。

BIRDY.のシェーカーが世界で使われている写真を見てぐっと来ましたし、アックスヤマザキさんのプレゼンでは、僕も九州パンケーキを中学の娘が焼いてくれたときを思い出して泣きそうになりました。全社、どういう世界を作りたいかが表現されていてすごくよかった、素晴らしかったです」

ファクトリエ山田さん「本当にレベルが高すぎて、みなさん審査できなかったのでは?と思います。豚もお酒もおいしくて、堀田さんのカーペットも、触ってみるとすごく肉感がありました。こういうCRAFTEDは、触ったり味覚で感じるのが本当に大事だと感じました」

Minimal山下さん「プレゼンを聞くと、社会課題とニーズから商品を開発されていて、跡継ぎの方が多かったためか、創業の古い会社が持っている技術と時間を社会に向けてアップデートされているのを目の当たりにしました。日本はものづくりの国だと改めて思いました。この先、さらにいいものが生まれてくる胎動を感じました」

GRA岩佐さん「正直な話、審査をしていて選びきれなかったです。みなさんの発表が素晴らしかった。

イノシシなら捕獲から食べるところまでつなげて、社会全体を回していこうというスケールの大きい社会事業的なものから、横に磨く縦に磨くという超マイクロな方まで、大きさの違いはあっても、作りたい世界のこだわりが高くて、非常に感動しました」

優勝はKAPOK JAPAN、2位アックスヤマザキ、3位は横山興業

3位は、カクテルシェーカーBIRDY.を作る横山興業の横山さん

準優勝は、大ヒットミシンを続々と送り出すアックスヤマザキ山崎さん

審査員のコメントにもあったように、今回は、このCRAFTEDカタパルトの第1回目から一緒に育ててきてくださったLEXUSから、Makuakeにサポーターが代わるという変化があった。今回の登壇者の多くとプロジェクトを共にしてきたMakuakeの坊垣 佳奈さんは、順位が発表されたあと、今回のCRAFTEDカタパルトを総評を語った。

「改めて8名のプレゼンターの皆様、お疲れ様でした。深井さん、おめでとうございます。KAPOKのプロジェクトも実は以前にご一緒させていただいて、非常に嬉しく思っています。

プレゼンを聞いて、一つひとつのものづくりにストーリーやこだわりが詰まっているのを改めて感じました。自社が成長すればいいという、資本主義がちょっと行き過ぎた今までの時代のものづくりや企業の成長から、一歩先を行く皆さんのプレゼンが聞けました。

それをユーザーとつなげていくのがMakuakeの仕事です。普段のお買い物では感じられないそのストーリーを、私たちはしっかり伝えていかなければいけないなと思いました」

深井さんは、優勝のスピーチを求められたが、受賞の驚きを隠せないようだ。

優勝したKAPOK JAPAN深井さん。着ているのはKAPOK KNOTのコート

深井さん「最初のプレゼン練習では、自分でも自信があるぐらいのスタンスだったのですが、小林さんに本当にボコボコにされました(笑)。それで伝え方を改めて磨き上げたことで、皆さんにお伝えすることができたのではないかと思います。嬉しいです!」

昨年12月のCRAFTED TOURでオフィスを訪問してプレゼンを聞いた時と、伝えたいことは同じではあるものの、この日のプレゼンはやりたいこと、実現したい世界がさらにクリアになって、豪速球のストレートで入ってくるような、抗いがたい正しさがあった。身も蓋もないほど清々しい正論であった。

終了後の映像インタビューで深井さんは、「カポックを本当に世界中に広げたいと思ってこのプロジェクトをやっています。この受賞をきっかけに、よりグローバルで認知されるような存在になれるよう、しっかりとビジネスを広げていきたいです!」と力強く結んだ。

映像インタビューに答えるKAPOK JAPANの深井さん

「どなたが優勝しても納得する、と思って結果発表を見ていたので、すごく嬉しくて壇上ではコメントが出てきませんでした、ボコボコにされたネタとか、もっとあったのに(笑)」と残念がる深井さんのところへ、前回登壇したインターナショナルシューズの上田さんがやってきた。足元を見ると、二人は色違いのbrightwayを履いている。

技術と心のものづくりを伝えたい!初の自社ブランド「brightway」を作る「インターナショナルシューズ」の靴工場を見学【ICC 大阪CRAFTED TOUR レポート#6】

上田さん「優勝おめでとう!」

深井さん「紹介していただいたので、ここにいるのは上田さんのおかげなんです。写真を撮ってください!」

カメラを向けると二人は本当に嬉しそうな笑顔で、拳を作る”ICCポーズ”を決めてくれた。

深井さん「僕はICCにまったく縁がなくて、上田さんが登壇されているのを見て、すごいなと思っていたんです」

その上田さんは、三星グループ岩田さんの紹介で、ICC KYOTO 2020のCRAFTEDカタパルトの舞台に立った。

ものづくりに励む人たちが、閉塞感を感じたときや新しい学びを得たいとき、自分たちだけでは打開できない壁にぶつかったときに、話せる人や相談できる人がいることや、経験値が異なる人との出会いは、大きな助けとなる。同業でなくても同時代に事業に向かう仲間との出会いは、新たな価値を生む。

日本の各地で、孤独にものづくりに向き合ってきた人たちが集まってきて、同志を見つける。作っているものは違えどノウハウを共有し合う。そんなネットワークが、日本のものづくりを押し上げていく流れになることを、期待せずにはいられない。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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