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見どころ満載! ICC KYOTO 2021の特別プログラム「伊勢角屋麦酒」ブルワリー&「おかげ横丁」ツアーを一足早く体験しました【事前レポート】

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ICC KYOTO 2021最終日の特別プログラムとして予定されている、「地域活性化の成功事例『伊勢内宮前 おかげ横丁』 から日本を代表するクラフトビール『伊勢角屋麦酒』のブルワリーを巡る伊勢ツアー」。その下見をすべく、ICC一行は伊勢へ向かいました。伊勢角屋麦酒の鈴木 成宗さんにご案内いただき、伊勢神宮近くの「おかげ横丁」、そして歴史の深い二軒茶屋餅角屋本店、2018年に完成した大規模工場を見学しました。そのレポートをお伝えします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。


初夏のような4月某日、運営スタッフ3名含むICC一行と岐阜羽島から、岩田真吾さん率いる三星グループ一行は、伊勢神宮近くの「伊勢角麦酒 内宮前店」で待ち合わせました。このお店は伊勢神宮の参道周辺、風情ある商店が並ぶ「おかげ横丁」の中にあり「おはらい町」、ビール、名物の「二軒茶屋餅」やかきフライ、うなぎなどが味わえます。

アポの相手は、二軒茶屋餅角屋本店 / 伊勢角屋麦酒 代表取締役社長 鈴木 成宗さん。ICCサミットにも登壇、ご参加いただいていますし、以前のオフィスイベントでは、ビールを差し入れてくださっています。今回ついに、その工場を見学できることになりました。

伊勢角屋麦酒 内宮前店」2階へ上がって、まずはビール!です。

二軒茶屋餅角屋本店 / 伊勢角屋麦酒 代表取締役社長 鈴木 成宗さん

鈴木さん「ようこそ伊勢へ来てくださいました、今日はこの内宮前店と、伊勢角屋麦酒創業の地、現在の主力工場をご案内します。まずはこの『おかげ横丁』をご案内しましょう」

工場にうかがう前から、ビール談義が始まりそうな雰囲気でしたが、ここは心を鬼にして、学びのツアースタート。このお店は五十鈴川のほとりにあり、気持ちのいい外のテラスでは川を眺めながらビールを飲むことができます。

いつもは身動きとれないくらい人並みであふれているという「おかげ横丁」ですが、現在は観光客もまばら。近隣の修学旅行生が少し歩いていたくらいでした。

何はともあれ、一行は伊勢神宮を目指しました。入り口の鳥居の前で、鈴木さんが解説します。

鈴木さん「すべてのお社は20年に1度、掛けかえています。『常若』といって、神様が住まわるところは、常にみずみずしくないといけない。質素だけれども、常に新しいものが建っているという。それが神道の1つの精神なのです。森と同じで、千年二千年とあるけれども、常に若いものが生えている」

この翌日に、鈴木さんにご案内いただき伊勢神宮を見学しましたが、お天気は良いのに観光客が少ないという絶好のタイミングで、それはそれは厳かな雰囲気でした。特別プログラムに参加する方で、翌日時間のある方は、ぜひ足を伸ばしてみることをおすすめします。

「おかげ横丁」を見学

伊勢神宮の参道にある「おかげ横丁」は、その伊勢神宮への江戸時代の参拝者を迎える町を再現した町で、約50軒の専門店が軒を並べています。

すべての商店はスタイルが統一されていて、江戸から明治期にかけての伊勢路の建築物が移築・再現されています。地元の人たちが「神様のお住いと同じ入り方では恐れ多い」と、建物の短辺側に入り口を作る「妻入り」、雨風の侵入を防ぐために外壁を板壁で覆う「きざみ囲い」、建築材料は栂(とが)材が特徴的です。

街並みに合わせたスタバもあります

この伊勢角麦酒 内宮前店が建つ「おはらい町通り」の並びには、あの「赤福」の本店もあります。

この「赤福」が、おかげ横丁とこの地の発展の鍵となった企業。以前は寂れた門前町だったこの地に、当時の年間売上とほぼ同程度の140億円の投資を行って、伊勢の魅力的な食や名産を集めた場を作って1993年に完成しました。

1980年の着想当時、伊勢神宮には大勢の参拝客がいたものの、そのうち20万人しか立ち寄らなかったところを、2019年には、参拝客600万人に対し550万人が訪れて賑わう町となり、年間の売上は45億円と、近年の10年で伊勢の観光復興の柱となっています。

「おかげ横丁」について詳しくは下のリンクに情報を集めましたので、興味のある方はぜひご覧ください。

▶【動画】伊勢「おかげ横丁」の地域を活かした街づくり~竹田恒泰×橋川史宏×鈴木康友(Globis知見録)
おかげ横丁を神恩感謝の精神で人気観光地にできた理由(Globis知見録)
住民が共に育てる観光まちづくり事例 21 三重県 伊勢市 有限会社 伊勢福
おかげ横丁おすすめグルメ14選!伊勢観光とあわせて行きたい!お土産紹介も(じゃらん)

一企業が年間参拝者数の半分が訪れて、一人1,000円を使うと年間30億円で採算がとれると踏んで投資したのもすごいし、何も無かった場所に一大商圏を実際に生んだというのがすごいですよね。写真中心に少しだけ紹介します。

100年企業ながら、AIベンチャーとしても話題の「ゑびや」の食堂、土産物店舗もあります。店頭の陶器製のえび型おみくじや、地サイダーのディスプレイが面白く、ついつい引き寄せられます。

“老舗ベンチャー”ゑびや大食堂が「的中率9割」のAI事業予測をサービス化! ITビジネスに参入決断した「その理由」(CNET Japan)

おいしい飲食店もたくさんあり、食べ歩きしても2〜3日は飽きなさそうです。

見学しているうちにだんだんと人出が増えてきましたが、通常期の比ではないでしょう。もっと見たい、食べ歩きしたと名残惜しさありつつ、一行は伊勢角屋麦酒の創業地へ移動しました。

伊勢角屋麦酒が生まれた二軒茶屋餅本店 神久本社

タクシーに乗って20分弱。一行が到着したのは、静かな川のほとりに建つ古い建物です。「二軒茶屋餅」という看板を見るに、相当年季が入っていそうです。

お店に入ると、その名の通り「二軒茶屋餅」が売られています。早速いただいてみると、甘すぎない餡を餅でくるみ、きなこをまぶしただけなのに、なんともいえなく柔らかでほっとする味です。

料理研究家も絶賛の味。お昼過ぎると売り切れることも多いとか

名物は赤福だけじゃない!伊勢で400年以上愛される「二軒茶屋餅」(ippin)

鈴木さん「天正3年(1575年)創業で、この地に約440年です。後ろ側に流れる勢田川の船着き場に到着した参拝客の方がここで休憩をして、腹ごしらえをしてというためのもので、これを持参して参拝する方も多かった。明治天皇陛下もここから上陸しました」

参拝客のために餅を作って売っていたのと同様、歴史が深く、伊勢角麦酒の始まりといえるのが、大正12年(1923年)創業の味噌と醤油の製造。この二軒茶屋餅店の近くにその蔵があります。

「角屋味噌醤油醸造所」の蔵が建っているところは、側面にはまっすぐな道が走っています。1961年まではここを路面電車が通っていて、駅もあったそうです。水路と陸路、交通の要衝だったということです。

1923年に建てられたという蔵の前まで回ると、入口ですでにむせ返るような味噌や醤油の香りがします。早速入ってみましょう。

背丈以上の大きな木桶の中で、小麦や大豆が発酵しています。

1年以上の熟成後、米麹を加えて3カ月さらに熟成して完成するしょうゆ「伊勢むらさき」の樽。この杉樽は100年以上の歴史があるそう

そのひとつの中を覗いてみると…

桶の底に、味噌が見えます。2年仕込みなので、年間在庫回転数は0.5回!

醤油は大豆と小麦、味噌は100%大豆で仕込んでいます。こちらは醤油の仕込み樽

昔ながらのたまり醤油の製法。麹菌をうった大豆を清水(きよみず)で仕込み、石の重みによって筒の中に液体だけが溜まっていきます

この蔵の隣が、伊勢角屋麦酒創業の地で、現在はショップも併設した形になっています。

ショップの奥には、1997年に創業した醸造所があり、窓越しに見学ができます。うかがった時は、アメリカでは醸造のオフシーズンによくあるそうですが、ビールの麦芽を濾過する装置を利用して、ブルーボトルコーヒーの缶コーヒーの抽出をしていました。ちなみに、ブルーボトルとのコラボビールもあります。

味噌醤油の製造開始から75年後に、培った発酵・醸造技術を生かしてここでビールを作りはじめた伊勢角屋麦酒。増設を重ねて1日2,000リットルまで作れるようになったものの、生産が間に合わなくなったため、2018年に下野工場へ移転しました。

伊勢角屋麦酒 下野工場へ

再び車に乗って到着したのが、工業団地の一角にある伊勢角屋麦酒 下野工場。大きなガラス窓にロゴがカッコいい!

見学の詳細は、ICC KYOTO 2021の特別プログラムにご参加いただいた方のために取っておくとしますが、鈴木さんは一行のさまざまな質問に答えながら、ビールを作る工程を豊富なエピソードとともに紹介してくださいました。ここでご紹介できないお話がたくさんあります。

国際的なビール審査会の審査員も務める鈴木さんは、審査会で使われる品質管理のシートを使って自社のビールを品質管理しています。あらゆる数値を計測するオペレーションルームでは、あのPCRの機器も見ることができました。

鈴木さんは、自然酵母の研究の博士号を保有しており、伊勢の森で見つけた自然酵母でビール(ヒメホワイト)を作っています。土地に根ざした家業21代目の経営者としての新規事業が、この研究開発型のブリュワリーなのです。

ビール醸造の科学的側面への取組(伊勢角麦酒)

伊勢角の巨大ビールプラント

さて、巨大タンクが並ぶ工場内に入りました。一定の間隔で、プシューっと蒸気が輩出されるような音がしています。

広い! 思わずICC小林もパチリ。その視線の先にあるのは…

4,000リットルの巨大タンク! 中身はもちろん全部ビール!

現在は1日最大で16,000リットル仕込めて、どんどん増やしているといいます。6月には12,000リットル増産できるタンクや、を増設予定だそう。このタンク、0.7℃でキンキンに冷えています。

0.7℃に冷えた作りたてのビールを試飲

社長自ら、タンク直! ビールを注いでくださいました。

Hazy IPAや、ヒメホワイトなど、3種類を試飲させていただいて、熟成や味の差を感じ取ったり、次々に鈴木さんに質問を投げかける一行。ヒメホワイトは、倭姫宮(やまとひめのみや)の森林からの酵母に由来しますが、酵母があるところは、発酵している独特な匂いがするそうで、その樹液ごと採取するそうです。

狙った味のために、水も作り上げる

飲み比べてみると、味の違いにはっきり気がつきます。発酵含め仕込んでから40〜50日でできるエール、2〜3カ月熟成させるラガー、ともに味を決めるパラメーターは無数にあり、伊勢角ではモルトが15種類、ホップが30種類あって、カレーのスパイスを調合するように組み合わせているそうです。

モルト=麦芽で、文字通り、麦を発芽させたもの。発芽している状態のほうが、酵母と合わせたときに麦の成分を糖に分解しやすいためです。日本酒ならば麹菌をが担う役割を、発芽で可能にしているのが、ヨーロッパの醸造技術というわけです。

材料の中では主成分である水は、土地柄天然水は使えないため(海が近いので掘ると海水が出てしまうそう)、伊勢角麦酒では水道水を完全に濾過して、狙ったビールに一番合う水質を作り上げているというのも大きな驚きでした。

プラント内の最新マシン

工場の中にはさまざまな見学ポイントがあります。

麦酒の生臭さを消すために、濾過した麦汁を煮沸し、ホップを加えるマシン

ラベル貼りからバキューム、炭酸ガス注入、王冠を打つまで行う8ヘッドのイタリア製瓶詰めマシン

こちらもイタリア製の缶フィラー。瓶より空気に触れる面が多いため、クリーンルーム化して雑菌を防ぐ。1時間に6,000缶が製造できるそう。イタリアの職人の来日調整待ち中

ペットボトルビールを実現する 酸素を通さないハイバリアのペットボトルは、容器だけで1本200円

さまざまな種類のビールが並ぶ冷蔵倉庫

ビール事業創業とともに世界一のビールを作ると宣言して、その基準を知るために国際審査員の資格を取った鈴木さん。初めて日本代表審査員として参加した全米大会で、大会の名誉審査委員長と同部屋になった話や、この工場の設備を構築したドイツ企業の総代理店となった話などなど、型破りなエピソードには事欠きません。

あらゆるところが溶接されていて美しい配管。「消耗品が中に入っているのは不完全なプラント」だそうで、日本側で作業した配管は2年に1度、部品の交換が必要なのだとか

工場見学はロゴの前で記念写真で終了しました。

見学を終えて

金賞を採れなかったビールはすべて改善の余地があると考えており(たとえ世界一の賞を獲ってもレシピを変えることもあるそう)、その精神は社内の道具の整理整頓にまで行き渡らせようとしていること、その一方で、世界的な賞のトロフィーやメダルを、嬉しさのあまりみんなでボロボロになるほど触っていたりと、社員の方々が一丸となってビールづくりに取り組んでいるフラットな雰囲気が印象に残りました。

受賞歴(伊勢角麦酒)

ビール界のオスカー2連覇のメダル。新卒採用ではそんなビールのレシピを作りたいと、日本中から応募があるそう

最後に見学させていただいた社長室には、メダルやトロフィーのほかに、鈴木さんがビールづくりを始めた頃にお世話になった人たちからいただいたものがいくつかありました。額装しているロールスロイスの絵もそのひとつ。

鈴木さん「若い頃から薫陶をいただいた、とある会社の創業社長に、僕が34、5のときに君にツキをあげたいということで、乗っていらっしゃったロールスロイスをいただいたのです。

『今の君には、そんなに先のことを考えられないのはわかっているけれども、そろそろ2歩3歩先のことを考えられるように、この車に乗りなさい』ということでした。

でもとても大きすぎて乗れないし、目立ちすぎる。だから絵にして飾っています。

その方は去年の1月に亡くなってしまったのですが、仕事を始める朝7時頃に絵を眺めて、『この人ならどうするかな?』と考えたりしますね」

最初は「餅屋の息子の道楽」としか思われていなかったといいますが、2歩3歩先の未来を見つめながら、常に研究者魂をもってビールづくりに励み、有言実行で世界一の賞をビールを作り上げた伊勢角麦酒。

その餅屋から始まる長い歴史と、伊勢という土地が育む独特の商業空間を1日どっぷり体感していただける特別プログラム「「地域活性化の成功事例『伊勢内宮前 おかげ横丁』 から日本を代表するクラフトビール『伊勢角屋麦酒』のブルワリーを巡る伊勢ツアー」は、9月9日開催です。ぜひふるってご参加ください! 以上、伊勢から浅郷がお送りしました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/北原 透子/戸田 秀成

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