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「ツナグパン」で支援が回り、心豊かな社会を実現する神戸の老舗ベーカリー「ケルン」(ICC FUKUOKA 2024)

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ICC FUKUOKA 2024 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇した、ケルン 壷井 豪さんのプレゼンテーション動画【「ツナグパン」で支援が回り、心豊かな社会を実現する神戸の老舗ベーカリー「ケルン」(ICC FUKUOKA 2024】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

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【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

壷井 豪
ケルン
代表取締役
HP | X(旧Twitter)

兵庫県神戸市出身、1980年生まれ。大阪阿倍野辻調理師専門学校卒業後、大阪や京都のベーカリーで経験を積む。その後、日本パン技術研究所やInhaber Fuhrmanns Backparadies(ドイツ・バイロイト)のマイスターの下でパン技術を学び、2013年、株式会社ケルン3代目代表取締役に就任。地元神戸との繋がりを重視し、知育・食育・教育を軸に教育機関での講演、技術講師を務める。2021年12月、フードロス削減と社会的弱者支援の同時解決を図る「ツナグパン」をスタート。同サービスが2023年に「神戸市SDGs奨励賞」を受賞し、それに付随する木製の地域通貨「エシカルコイン」が各業界からの注目を集めている。神戸の多彩な魅力を発信するNPO法人「Unknown Kobe」理事。社会を変える力を秘めた今知るべき全国の経営者を紹介するミートアップ「シェイク!未来つなぐ会議」発起人。


壷井 豪さん 皆様、ケルンの壷井です。

よろしくお願いします。

70年以上にわたり愛される神戸のベーカリー

弊社は、今年(2024年)で創業78年を迎える、神戸のベーカリーです。

現在、神戸市内に8店舗の直営店をドミナント(※) 展開しており、私が3代目の代表を務めております。

▶編集注:「ドミナント(戦略)」とは、チェーンストアが地域を絞って集中的に出店する経営(戦略)のこと。

発売開始から50年以上もの長い間、神戸の方々に愛されてきた、ロングセラー商品が多数あることが特徴のベーカリーです。

今、お手元にお配りしている「チョコッペ」 が、その中でもダントツで人気No.1の商品です(※)。

▶編集注:プレゼン前に、審査員席に「チョコッペ」が配布されました。ケルンの商品については公式HPの「ケルンのパン」を、「チョコッペ」については「発売50周年を迎える神戸のソウルフード「チョコッペ」。神戸の老舗ベーカリー“ケルン”を代表するパンの誕生秘話とは。」(PR TIMES STORY)をぜひご覧ください。

阪神・淡路大震災で複数店舗が被災

1995年に起きた阪神・淡路大震災では、ケルンも複数店舗が被災しました。

当時中学生だった私自身も、全壊した自宅の2階から命からがら脱出して、本日この場に立つことができています。

そのような私が、今から約2年前に、「フードロス削減」と「社会的弱者支援」の経済循環型サービスである「ツナグパン」を、ケルン全店舗にて、スタートさせました。

売れ残りパンの詰め合わせを定価の65%で販売

こちらが、「ツナグパン」です。

こちらの袋の中には、前日に売れ残ったパンが15個程度入っています。

ただし、バッグキャップで蓋をされているため、中身を見ることはできません。

パンの種類を選べず、また、同じパンが重複する場合も多いため、その旨をお客様にご了承いただいた上で、お買い上げいただいています。

販売価格は、パンの定価の65%に設定しており、FLコスト(食材費と人件費)と包材費等を回収可能な金額となっています。

ツナグパン購入者に木製の「エシカルコイン」を配布

ここで重要なポイントとなるのは、今、皆様のお手元にもお配りしている「エシカルコイン」です(※) 。

▶編集注:プレゼン前に、審査員席に「エシカルコイン」が配布されました。

こちらは、神戸市内で整備のために伐採され、従来は廃棄されていた木材を加工して作られたコインです。

「ツナグパン」を購入いただいたお客様に、「エシカルコイン」1枚をレジでプレゼントしており、100エシカルコイン=100円として、次回から、ケルン全店でお買い物にご利用いただけるようになっています。

パン廃棄率は2%に。コインの循環率も65%を超える

こちらのグラフのとおり、現在までで、15,170袋の「ツナグパン」が販売されており、パン廃棄率は、11%から2%まで減少しました。

「エシカルコイン」の全発行枚数に対する循環率は、なんと65%を超えています。

パン購入を通じて「エシカルコイン」が地域を循環

そのような「エシカルコイン」ですが、実は、本当の目的は、それだけではありません。

一般のお客様へお渡したものと同額の「エシカルコイン」を、翌月15日に、神戸市内の児童養護施設やDV被害者のシェルターである母子生活支援施設へも送っています。

この仕組みによって、福祉施設の利用者の方々にも、「エシカルコイン」を同時利用していただくことで、地域循環型の仕組みが構築されています。

フードロス削減活動中に起こる二次廃棄

「フードロス削減」を目的とした、全国のフードバンクのシステムは、施設の子どもたちの生活において、なくてはならない、とても大切なものです。

しかし、その適切な配分を行うことは非常に難しく、施設の望まないタイミングで、望まない量の食品が送られてくることも多く、それによって施設での二次廃棄につながってしまっています。

こういった現状の最も良くない点は、施設で暮らす思春期の子どもたちが、無償で送られてきた食品がゴミとして廃棄される光景を見て育つことです。

このことが、子どもたちの人格形成に、じわじわと悪影響を与えていくのです。

食べたいときに好きなパンを購入する機会を提供

そして、一般家庭に比べ、様々なルールが存在する施設では、子どもたちの意思決定が制限される環境にあります。

現在、支援の輪によって、施設には物があふれています。

しかしながら、子どもたち自身が、好きなものを、好きなタイミングで選択して行動するという、自立心の成長が置き去りとなっています。

「ツナグパン」のシステムでは、子どもたちは、焼きたてのパンが食べたいと思った時に、自分の意思で、施設に置いてある「エシカルコイン」を手に握りしめて、その足でケルンに来店します。

そうして、パンを焼いている職人やレジ業務を行っている大人たちの姿を目にして、「これらのパンは、多くの人たちの努力があって、手にすることができているのだ」という、地域社会のへ感謝の気持ちが芽生えてきます。

こういったことが、一般的なチャリティや寄付と、大きく違う点です。

利用にためらいが生じない「ツナグパン」の仕組み

以前、全国の子ども食堂の実態を調査した際、様々な理由により、命をつなぐためのその場所にすら行けない子どもたちがいることを知りました。

▶第13回子ども・子育て会議 食生活に関するアンケートの結果概要について(兵庫県西脇市)

この調査結果は、「ツナグパン」の仕組みづくりにおいて、とても参考になった点です。

「エシカルコイン」の場合、日々、一般消費者も施設利用者も、誰もが利用しているため、レジでほかのお客様から区別・差別されることがありません。

「エシカルコイン」の利用状況をデータで管理

「エシカルコイン」には、100、500、1000の3種類があります。

「ツナグパン」をご購入した一般のお客様がレジで受け取るのは、100エシカルコインのみです。

一方、施設利用者の方々お送りしているのは、500と1000エシカルコインの2種類です。

このように、使用するコインの種類を分けることで、施設利用者の方々が、どちらのお店で、いくら使用されたのかを、本社にてデータ管理しており、「エシカルコイン」の利用が滞っていないかも併せてチェックしています。

もし、長期間ご利用がない場合、弊社から施設に連絡し、何か内部トラブルが起こっていないかといった確認も行っています。

実物だからこそ利用する人を選ばない

「エシカルコイン」は、利用する人を選ばないということも、大きな利点と言えます。

デジタルクーポンと違い、実際に手に持って触れられるため、説明書もいらず、子どもからご高齢の方まで、全盲の方も、ご利用が可能となっています。

現在、世の中には日々便利なサービスが生まれ続けていますが、その中で、情報リテラシーが低いがために、誰かに頼らなければ、サービスの入口にも立つことのできない方々が多くいらっしゃるのも現実です。

こういったことが、ヤングケアラーの増加にも、つながっているのです。

私は、福祉施設の子どもたちが、「ツナグパン」や「エシカルコイン」を通じて、ケルンや地域の方々と関わる生活を続けるとどうなるかということを、常に考えています。

きっと、ケルンのファンとなってくださり、未来のお客様となり、ともに働く仲間となり得る可能性が高まることは、間違いありません。

自分のお得な買い物が、自然と支援につながる

そして、サービス開始から約1年が経った頃に、とある出来事が起こりました。

「ツナグパン」をご購入されていたお客様が、「エシカルコイン」に気づかずに、約1年間も捨ててしまっていたと、おっしゃったのです。

当時、「エシカルコイン」をパンとともに袋に入れて販売していたことが原因だったため、レジにて手渡しするよう変更することによって解決しました。

一方で、私は、「エシカルコイン」が捨てられていたという事実を知り、逆に、嬉しくなったのです。

なぜなら、そのお客様の購入目的が、施設の支援という「努力」ではなく、自分がお得にパンを手に入れたいという「欲求」によるものだったからです。

このことにより、売り手も買い手も、誰もが疲弊せずに、支援し続けられる仕組みであることを、実感することができたのです。

パンの廃棄が減ることで、増えたスタッフの笑顔

そして、弊社スタッフは長年のストレスであった、パンの廃棄を減らすことができて、明らかに笑顔が増えました。

また、それだけではなく、弊社の求人へ応募される方の多くが、社会貢献への思いの強い方々となりました。

私は、「ツナグパン」を通じて、食品の廃棄を減らすことで、人も環境も変わる、より良い未来があるのだという確信を持つことができました。

さらには、次世代の子どもたちの可能性を摘まずに育てることができるなんて、本当に最高だと思っています。

福祉施設への出張型支援システムを開発中

本日お聞きいただいたとおり、現在は、町のパン屋が始めた、とても小さなコミュニティにおけるサービスに過ぎないかもしれません。

しかし、施設で暮らす子どもたちにとっては、間違いなく、大きな一歩なのです。

また、それだけではなく、現在、「ツナグパン」をきっかけとして、様々な福祉施設の利用者の方々を対象とした、出張型支援システムの開発を進めています。

ただ、このような取り組みの場合、スケールするタイミングは早ければよいというわけではなく、その芯の太さが最も重要だと考えています。

まずは、自分が生まれ育ててもらった場所から救う事業こそが、本当の意味での“ソーシャルビジネス”と呼ぶことができるのではないでしょうか。

捨てさせない事が、心を豊かにし、人生を幸せにする

私は、「捨てさせない事が、心を豊かにし、人生を幸せにする」を合言葉に、次世代のすべての子どもたちが笑顔で暮らせる未来を、本気で考えています。

応援を、よろしくお願いします。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/森田 竜馬/小林 弘美/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成

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