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「最先端テクノロジーは社会をどのように変えるのか?」【K16-6C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!6回シリーズ(その6)は、会場からの質問を受け付け、gumi國光さんとAIやVRで知性や感性が再定義される時代に人間は何をすべきか?といった問いを議論しました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 6C
「最先端テクノロジーは社会をどのように変えるのか?」
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
福田 剛志
日本アイ・ビー・エム株式会社
理事 東京基礎研究所 所長
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役
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【前の記事】
【本編】
小林 これだけは聞いてみたいということなど、他に何かございますか?
國光さん、目が合いましたね。
後光が差している國光さんです。
質問者3 おはようございます。
gumiの國光です。
小林 よくこの時間(朝10時からスタートするセッション)に来られましたね。
質問者3 そうそう。
最近、朝、自然に目が覚めるようになったのです。
特に「Watson」などのAIがどのようにスタートアップと結びつくかについて色々と考えています。
例えばトヨタのようにデータが沢山あるところがAIを使っていったり、或いはFacebookのように動画や写真が沢山あるところがAIを使っていったり、研究者がAIを取り敢えず使ってみるというのも分かります。
でも、AIを使ってどのようにスタートアップとして作っていって、大きいビジネスにしていけばよいのか。
その辺りについてアドバイスがあれば是非お願いします。
小林 難しいところですね。
基本的にある程度絞ってデータがないとできないということですよね?
AIをスタートアップはどう活用できるか?
福田 そうですね。
学習させるデータが要ります。
プログラムするのではなくてデータから学習しますので、データがある、或いはデータがこれから集められる仕組みが作れるということが大切です。
AIははじめは賢くないですから、段々賢くして適応させていかなければならないのですが、それがビジネスモデルの中にはまらなければなりません。
はじめから高品質な答えがないと絶対にダメですというところには、なかなか使えないですね。
或いはすごく長く時間をかけてトレーニングできるならいいですよ。
まさに医療の分野等で使う時には、すごく長く大きなエネルギーを使って時間をかけてトレーニングをして、はじめて実際に適応するんですね。
そういう風に時間があって待てるならよいのだけれども、そうではないのだとすると、データを集めながら学習させながら段々良くしながらというプロセスを回していけるということが、結構重要になりますね。
スタートアップだからというところと、何か違いがあるのですかね?
小林 スタートアップだからというのは、結局はあまり関係ないですよね。
質問者3 どこの会社でもA/Bテストをするなどして改善していきますが、AIの場合は機械学習を作って少しずつ改善するといった話ですよね。
つまり、改善の延長線上にある手法の一つとしてAIがあるのかなと思っていて、AIそのものがどうビジネスに結びつくのかなというのが疑問です。
福田 確かにそういうプロセスの改善、最適化にAIを使うというのがあると思うのですが、それに限らないですよね。
それは一つのアプリケーションの方法だと思います。
Watsonはビジネスを考えずにまず作ってしまった
石川 「Watson」自体がまさに試行錯誤をされているのかなと思うのですけれども、「Watson」がそもそもどう作られたのかという本を読んでいて面白い記述がありました。
普通でしたら國光さんがおっしゃるように、どういうビジネスにするのか、そのためにはどういうテクノロジーが必要かということに対して「Watson」の開発があると思うのですが、この「Watson」の場合は逆で、まず作ってしまったと。
そして作ってしばらく行った後に、さてこれは何のビジネスに使えるだろうかという風に後付けで考えられたという…
福田 作っている途中で考えました。
まずはクイズに勝てるコンピュータを作るということが大目標で、それがどうビジネスになるかというのは後から、まだ完成する途中くらいからできそうだということで考え始めたんですよね。
ですから、初めからビジネス問題を解こうとして生まれたものではないですね。
小林 そもそもクイズ王に勝ちたいと思われた背景には、どのような発想があったのですか?
福田 やはり、次のグランド・チャレンジは何だろうと思ったんですよね。
随分前にGarry Kimovich Kasparovというチェスのチャンピオンに勝ち、次のグランド・チャレンジとしては何ができるだろうかと。
月に行くとか火星に行くといったことも考えられたはずですが、別に行ったから何だという話です。
月に行って別にそこに植民地を作る訳ではないですよね。
行くという目的を設定すること自体が科学技術を伸ばす、それと似た考え方が、「Jeopardy!」で活躍した「Watson」の開発の背景にありました。
その過程で相当お金を投資したのですが、もともと私企業ですので、もちろん途中から、「Watson」のビジネスへの応用を考えながら取り組むようになりました。
それでここに挙がっているようなアプリケーションが出てきているんですよね。
こういう風に成功事例が幾つかあるので、それこそどうやってはまるかというのを、あまり狭く考えないで欲しいんですね。
確かに、最終的には狭く始めなければならないというのは今のAIの限界なのです。
ただ、A/Bテストのような繰り返しのimprovement(改善)は重要ですが、より価値のある本質的な問題の方に使えるといいなと思っています。
こうやって使いますよという使い方を言えるくらいだったら言う前にやっているので、そのようなアイディアが具体的にある訳ではないのですが。
ですから、はじめからこのビジネス課題を解くというためにやってきたものではないです。
AIとVRで感性と知性は再定義される
質問者3 最後に、少し大きな話になりますが、VR(Virtual Reality、仮想現実)の一番大きな価値は、僕らが感じている感覚、つまり五感を極めて曖昧にしてくれるところですよね。
例えば、すごく高い場所にいなくても、高い場所にいるような気がして怖いとか、熱い火のようなものが近づいて来ると、熱くないのに熱く感じるといったように、自分の五感が極めて曖昧になりますよね。
VRでは五感の再定義がされ、AIでは知性自体が再定義される。
VRとAIが同じ時代に出てきているというのがすごく面白くて、感性と知性がVRとAIとによって再定義された後に人類に残されるのは何なのだろうなと考えたりします。
僕らがどこを評価していけば、このAIやVRに凌駕されずに済むのか、その辺をお伺いできれば。
小林 なるほど。
難しい問いですね。
福田 AIとVRが同じ時期にできたということには、もしかしたら意味があるのかもしれませんね。
VRというのは、人間の脳とコンピュータのインターフェイスを、今までは画面で、マウスで、であった世界から、人間の五感を全部使ってということを進めていくものですよね。
コンピュータとの人間のインターフェイスを言語という形で良くしようとしてある程度上手くいったのが「Watson」だとすると、言語的な部分と、もっとその他の感覚的な部分のインターフェイスを画期的に良くするというのがVRです。
先ほどおっしゃった人間の共感覚、音がすると風が吹いたように感じるという、そういう関連した、頭の中で起きている脳自体の研究ですね、そういったことと合わさっていくと、すごく革命的なことが起こる可能性というのはあるのではないかと思います。
質問者3 子どもが1歳3か月なのですが、何を勉強させたらいいのかなと思って。
知性と感性が置き換えられるとすると、ここから人類にとって希少価値になるものというのは何なのでしょうね。
小林 やっぱりミドリムシですかね。
出雲 好きなことを学んでいる時や、練習している時には、時間が経つのを忘れますよね。
時間を忘れるくらい好きなことに没頭する能力というのは、すごく非連続だし、それはどんな時代になっても子どもたちに一番大切にして欲しいものですね。
子どもは、大人よりも時間を忘れて何かを没頭するということに長けていると思うんですね。
それをスポイルしないようにするということかなと思います。
小林 石川さんいかがですか?
石川 僕も國光さんと同じで1歳の子どもがいて、迷うのですけれども、例えばAIがこれからもっと発達して、同時通訳を自動的にしてくれるようになったとしたら、その時に外国語を学ぶ必要があるのかという問いをたててみたんですね。
もうこうやって話しているのと同じくらい、誰とでも話せるような時代になった時に、英語や中国語やスペイン語をそもそも学ぶ必要はあるのかと考えたのですけれど、やっぱりあるなと思ったんですね。
コミュニケーションをとるための英語は、AIがやってくれるからもう必要ないと思うんですよ。
ただ、苦手な第二言語で物事を考えると、人ってものすごくシンプルに考えられるんですね。
人間が考える作業自体はずっと残るわけですから、そういう意味では、苦手な言語を持っておくのはいいことだなと思います。
どんな言語を外国語として勉強したらよいのかと考えたのですが、それは数学だなと思ったんですね。
これからは数学ができないと本当についていけないと思うんですよ。
福田 私が言おうとしたのはまさにそれです。
考え方を学ばなくてはならないのです。数学や物理や英語の中に、考える方針が埋め込まれているんですよね。
石川 ありますよね。
福田 それを理解しないといけないと思います。
石川 これまでは、英語の授業だと100点を取ることが良しとされましたが、これからは100点を取ると怒られる時代が来ると思うんですよ。
「お前、そんなに英語が得意になったら、英語で自由に考えられるじゃないか。じゃあ日本語と変わらないだろう。英語は60点くらいでよい!」と(笑)
そう言う時代が来ると思うんですね。
英語や数学があまり得意にならないということが、これからは意外と重要なのではないかと思います。
得意にならない分野をどれだけ持てるかと(笑)。
小林 時間も残り少なくなりましたが、國光さん、よろしいでしょうか。
質問者3 はい。ありがとうございます。
小林 あっという間の75分でしたね。
石川 もう終わりですか?
小林 はい。
最後に皆さんから一言ずつ感想を頂きたいと思います。
石川 昨日と同じ展開なのですけれども、多分まとまらないので、どなたかにまとめて頂いた方が良いと思うのですが。
小林 石川さんではないのですか?
石川 僕はちょっと自信がないですね。
小林 では、福田さんから一言ずつ感想を頂きまして、石川さんには、その間に考えておいて頂きたいと思います。
「Winner Takes All」の競争が始まっている
福田 「Watson」にはできることが増えてきたのですが、まだまだよちよちで、何とミドリムシには勝てないということが分かりました。
ありがとうございます。
小林 ありがとうございます。出雲さんいかがですか?
出雲 今日は朝一番の時間帯にも関わらず、こんなに大勢の方が来られるというのは、このテーマにやはり意味があると思うんですよね。
「Watson」のような最先端のテクノロジーというのは、今までの「エネルギー効率が1割良くなりました」「5パーセントのコスト削減に成功しました」といったテクノロジーと全く違うと直感されて、何か大変なことが起ころうとしているのではないかという問題意識を持たれた方々が、朝にも関わらずこんなに大勢お越しになられていると思うんですね。
特に私の分野やITの分野では、今までの技術革新と今起こっていることとが全く違うんですよ。
桁が2つ以上違う。
多分、これが本当のイノベーションなんですね。
本当のイノベーションが起こると、もう1位の、つまりトップの技術以外は全てあっという間に陳腐化してしまって、こんなに頑張りましたというのが何の意味もない社会と時代が、もうある分野では目の前に来ている訳です。
バイオとITは、本当に目の前、もしくはその分野で競争が始まっています。
恐らく皆さんのビジネスや研究にも、遅かれ速かれそういう時代が来るわけですね。
「Winner takes all.」
1番、つまりトップ以外のものが何の意味もなくなる時代に、どうやって戦っていったらよいのかというのは、今日聴いてくださった皆さんと一緒に議論を深めていけたら私としても非常に助かりますし、有難いなと思いました。
今日は朝一番のセッションにも関わらす、こんなに大勢の人にお越しいただいて、改めて感謝申し上げたいと思います。
どうもありがとうございました。
「流行と本質」を両方ディスカッションする
石川 ではまとめますよ。
小林 おお!
石川 キーワードから言うと、「流行と本質」だなと思うんですね。
今回僕らは、「Industry Co-Creation(ICC)」という、産業を創るんだという旗の下に集まっている訳なんですね。
産業はどう生まれるのかと。
産業が生まれたらビジネスは沢山生まれますよ。
産業はどう生まれるのかと考えた時に、流行というか学問の最先端から産業が生まれるということは一つあると思うんですね。
もう一つの大事な視点を今日は話さなかったのですが、こちらも重要かなと改めて思ったのが、本質から生まれる産業というのもあるということです。
人間ってそもそも何なのだという本質です。
そういう、「流行と本質」というのですかね、両方をディスカッションしながら一緒に産業を創っていこうじゃないかというのが、まさにこの会の本質だと思うのです。
どうしても流行を追いたくなるのが人間です。弱いですから。
でもやはり、本質という部分を、これからも一緒にディスカッションしていけたらなと思いました。
小林 ありがとうございます。
今回は、「最先端テクノロジーは社会をどのように変えるのか?」というテーマに沿って議論できた、意義深い時間でした。
どうもありがとうございました。
(終)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子
【編集部コメント】
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