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「最先端テクノロジーは社会をどのように変えるのか?」【K16-6C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!6回シリーズ(その5)は、会場からの質問を受け付け、脳神経科学者でもあるヤフーCSO安宅さんやしつもん家のマツダミヒロさんと議論しました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 6C
「最先端テクノロジーは社会をどのように変えるのか?」
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
福田 剛志
日本アイ・ビー・エム株式会社
理事 東京基礎研究所 所長
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役
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【本編】
小林 ここからは、会場からのご質問を受けつつインタラクティブに進めていきたいと思います。
いきなりランダム性を発揮して、(ヤフー CSOかつ脳神経科学者でもある)安宅さんにコメント頂き、議論に参加して頂きたいのですが。
何かお聞きになられたいことや、これはどうなのということはおありでしたか?
ミドリムシについてでも何でも結構です。
一貫性のない組み合わせが知を生む
質問者1(ヤフー安宅) いえ、全く大丈夫です。
お聞きしたいことは特にないのですが、非常に面白いですね。
一見すると、一貫性のないような人の組み合わせが知を生むのだなということを今、目の当たりにしている感じがします。
小林 「Watson」とミドリムシとを比較して議論するというのは、
質問者1 相当ラディカルですよね。
小林 はい(笑)。
質問者1 これを合わせた小林さんの意図はどういうものだったのかを、むしろお聞きしたいなと思っていました。
小林 なるほど。
元々福田さんが登壇されるということになり、テクノロジーの話をしているだけだと遠いなと思ったのです。
そこから、研究者の石川さん達を組み合わせると面白いのではないかという発想が生まれました。
石川さんや出雲さんは、前回 2016年3月にカンファレンスを行った時にも対談されていて、すごく話が盛り上がりました。
今回は出雲さんもいらっしゃることが分かっていたので、出雲さんはどうかなと思って登壇して頂いたらこんな風になったという(笑)。
質問者1 とても素晴らしいですね。
出雲 「Watson」は相当いいところまできていますよ。
これで人工光合成のタンパクをプロテインサーチングで見つけてきたら…と思います。今は素材産業の人達が無機で太陽光パネルみたいにして反応させるということをずっとやっていて、そちらの方が主流なのですよ。
やはり、私はタンパクで絶対にやるべきだと思っていまして、バイオミミック、つまり生物を真似してそういうタンパクを我々が箱で作れるようになったら本当にすごいことなのですけれどね。
だからすごく楽しみなのですよ。
ですから、「Watson」を少し使わせて頂けないでしょうか?
福田 マテリアルディスカバリに使うというのが、非常に有望な用途だと思います。
マテリアルというのは非常に幅広いので、光合成にフォーカスして行うというのは正しい研究の筋だと思います。
小林 次のICC(ICCカンファレンス)までに見つかったりしたら、すごいですよね。
石川 意外と見つかったりして。
小林 見つかるかもしれませんね。
俺の十何年は何だったのだ、といったことになりかねませんね。
出雲 それは本当にあるかもしれないですよね。
上手くピタッと合うと、こんなに速くてすごいマシンはないので、それはあまり冗談ではないような気もします。
小林 ありがとうございました。
安宅さん、何か続きはございますか? 大丈夫でしょうか?
質問者1 大丈夫です。
今真面目に考えていたのですけれども、以前、クロロフィルの構造や光合成に必要なタンパク質複合体の三次元構造を発見したことでいくつもノーベル賞が出た訳ですよね。
このぐらい光合成のシステムというのは我々、地球上の生命にとってとてつもなく大切かつ超絶で、奇跡に近い系だと思います。
システムが全般的にすごく複雑ですし。
石川 光合成はあれですもんね、エネルギー効率には「カルノー限界」という限界があるのですが、(光合成は)それを軽く超えてますもんね。
メカニズムでいうと、光が反応中心まで移動して、そこでエネルギーを生んでいる訳なんですが、エネルギーロスが圧倒的に少ない。そこに量子的な現象が起きているのではないかというのを研究している先生がいて・・・
小林 石川さんは、なぜそんなにお詳しいのですか?
石川 あー、なんでですかね?色々なことに興味があるからだと思います。
小林 興味があると。
石川 はい、よく分からないことが世の中にはたくさんあると思うのです。
人間がやるべきは、正しい問いを立てること
石川 「Watson」のようなものが登場してきた時、結局僕ら人間は何をしたらよいのか。つまりそれは、どういう問いを「Watson」と共に考えるのかなのだと思います。
例えば僕だったら、妻に「私のことを好き?」と聞かれる度に、どのように返答したらよいのだろうと迷うんですよ。
小林 「Watson」に聞いてみたら?
石川 確かに(笑) 実は、それに近いことをやったんですが、趣味を持とうと思って、ネットで検索しました。
「石川善樹 どんな趣味を持てばよいか」
と検索したんですよ。
そうしたら出てこないんですよ(笑)
(会場笑)
全然出てこない。
これだけテクノロジーが発達してデータもあるのに、僕に合った趣味をまだ誰も教えてくれないのだなと思いました。
でも、そういうものができるのだったら、「Watson」は本当の意味で人の健康にも貢献し得るなとは思いますよね。
小林 あなたにフィットする趣味。
石川 そうそう。
趣味というのは沢山ある訳じゃないですか。
その中で何が僕に適しているのだろうと、全部を試している時間はない訳ですよね。
もしかしたら、アフリカのどこかの国のこの趣味が石川さんに合っていますよなど、そういうことも起こり得るかなと思います。
福田 先ほど、イノベーションを起こすことができる年齢が上がっているというお話があり、それは実は意外だったのですけれども、「Watson」が目指しているのは人間を助けることで、研究の時に代わりに色々と調べごとをするとか、 まさに今おっしゃった、趣味を見つけることなどを目指しているのです。
人間がやるべき残されたものは何かというと、正しい質問を、つまり、解くべき問題を設定するというところだと思っています。
残念ながら「Watson」のようなシステムにはモチベーションや道義がある訳でも、倫理がある訳でもないですし、更に何を解くべきかという価値判断は基本的にはできないのです。
価値関数や目的関数を与えればそれを計算してくれますけれど、そもそもそれをどうやってデザインすればよいのかという知性がないので、人間が設定するしかないのです。
だからミドリムシが大事だといったような問題設定というのは人間が行い、それが正しいか正しくないかというのは、別に証明できる話ではないので、人間が信じるしかないということですよね。
結果的に歴史が証明するということがあるかもしれないけれども、数学で示せるという話ではないので、そこは人間の役割なのだと思います。
小林 そうですよね。
何か他に聞いてみたいという方はいらっしゃいますか?
僕のデータベースには「『問い』といえばマツダミヒロさん」とあるのですが、松田さん、何かお聞きになられたいことはありますか?
Watsonにできないこと・ミドリムシにできないこと
質問者2 「Watson」でできないことは何でしょうか?
小林 できないことは何でしょうか?
福田 できないことは本当に沢山あります。
そして、一般常識は全くないです。
ここで行っているような会話、知的な会話、色々なことを発想しながら会話するということは全くできないですね。
特殊なあるドメインに特化してトレーニングされた「Watson」が、その分野に関しての色々なことを教えてくれたり、発見してくれたりというのはあるのですけれども、ドメインをかなり絞らない限り、殆ど何もできないと思っていいのですよ。
質問者2 なるほど。
ミドリムシができないことは何でしょうか?
小林 お!
その質問にいくための(前の)質問だった訳ですね。
出雲 ミドリムシにできないことはないのですよ。
(会場笑、拍手)
出雲 だからすごいんですよ。
だって誰も光合成ができないではないですか。
動くのに光合成ができるのは、ミドリムシだけなのですよ。
どうやって共生関係を維持しているのか?や、そのエネルギーをパスしているのか?など、やはり調べれば調べるほど色々な新しいテーマが出てきます。
できないことはないと申し上げましたが、世の中全て上手くいくかというと当然そんな訳はなく、栄養や遺伝的なダイバーシティ(多様性)や能力という観点では、ミドリムシというのは殆ど極大値に近い生き物だと思います。
ただ、研究するためには、ピュア(純粋)なミドリムシが必要なんですね。
純粋なミドリムシというのは、まず存在しないのですよ。
バクテリアやカビや酵母や大型の昆虫やプランクトンのようにとにかく色々な害虫が、ミドリムシをすぐに食べてしまいますので、研究対象としては最も扱い難いわけですね。
ですから、例えば植物で光合成の研究をしましょうというと、大体日本では全部のゲノムが分かっているので、もう少し実験用に簡単な標準的なイネを使ったり、シロイヌナズナを使ったりするのです。
そのせいで、データがすごく少ないんですね。
標準的に大学で使われている所謂「モデル生物」というのは、大腸菌などもそうですけれども、非常にシンプルで、管理しやすくて、色々な実験をしてインプットとアウトプットのフィードバックを見て論文になるようなものです。
ミドリムシの場合、その再現性が非常に小さくて、同じ実験を2回しようとしても…
石川 データをインプットしても、出てくるアウトプットが違ったりするのですか?
出雲 違います。
ミドリムシ自体が非常に複雑で多様なので、人間は同じデータをインプットしているつもりなのに、出て来るものが全然違うことに非常に混乱するわけです。
それくらいまだよく分かっていないし、実験のトライアルの回数もモデル生物に比べると圧倒的に少ないので、これがたまたま起こったことなのか、それとも何か実験系の中で起こった致命的なミスのせいなのかを、毎回毎回峻別していかなければならないのです。
これほど効率の悪い研究というのはないのですよ。
小林 次の質問は、「石川 善樹にできないことは何ですか?」ということですかね。
質問者2 そうです。
石川さんは色々な研究をされていますが、研究しても分からないことというのは何だと思いますか?
石川善樹にできないこと
石川 やはり人間が分からないですよね。
質問者2 ですよね。
石川 本当に分からないですよね。
例えば、また妻の話で恐縮ですが、妻は女性なので、「私、最近太ったの」とよく言うんですね。
それに何と返答したらいいのかに迷います。
どうやら、僕の答えは毎回答えが違うらしいんですよ。
「そんなことはないよ」と言って妻が安心する時もあれば…
質問者2 僕が感じるのは、石川さんがいつも混乱状態になるのは、奥さんの話をする時だということです(笑)。
石川 確かに、分からないことだらけですね(笑)
まあ、僕は研究者なので、基本的に考えることが仕事なのですけれどもね。
けれど、自分自身がどう考えているのかすら、分からないんですよ。
そういう意味では、そんなことも分からずに生きていていいのだろうかと、絶望しながら日々生きていますね(笑)
質問者2 ありがとうございます(笑)
それでもできないことをどんどん見つけていくことで、更にテクノロジーが進化するのではないかと思っていて、それの要素をお聞きしたいなと思って今質問しました。
小林 いつもありがとうございます。
(続)
続きは 【最終回】「Winner Takes Allの競争が始まる」突き抜けたテクノロジーが産業を変える をご覧ください。
https://industry-co-creation.com/industry-trend/10596
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子
【編集部コメント】
続編(その6)では、会場からの質問を受け付け、gumi國光さんとAIやVRで知性や感性が再定義される時代に人間は何をすべきか?といった問いを議論しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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