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4. 温室を自動制御し、人間は収穫を楽しむ。「データ農業」が開く新たなビジョン

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「農業特化型AIエージェント」が農場全体を最適化する未来像とは? AGRIST秦さんが提示するのは、センサーや作業データをAIに集約し、環境制御や作業割り当てを自動化・自律化していくモデル。「農業連続起業家」の可能性やレジャーとしての収穫など、業界の常識をアップデートする議論が広がります。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2027は、2027年3月1日〜3月4日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 11C 最新テクノロジ゙ートレンド゙ 徹底解説(シーズン10) 
Supported by EVeM

(プレゼンター)

清水 映輔
OUI Inc.
代表取締役

スマートフォンに装着して眼科診療を可能にする医療機器「Smart Eye Camera」を開発・提供

田口 昂哉
Helical Fusion
代表取締役CEO

日本独自の「ヘリカル方式」による核融合発電所によって、2030年代に世界に先駆けたフュージョンエネルギー(核融合)の実用化を進めている。

秦 裕貴
AGRIST
代表取締役

ロボット技術やAIなどのテクノロジーで農業課題を解決するスタートアップ

林 正彬
LIFESCAPES
取締役副社長

BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)技術を応用し、脳卒中後の麻痺患者に向けたリハビリテーション医療機器を開発

(モデレーター)

尾原 和啓
IT批評家

『最新テクノロジートレンド 徹底解説(シーズン10)』の配信済み記事一覧


収穫ロボットの量産と開発上重要な自社農場

秦 これから量産していく形で、ちょうど今年(2026年)、量産設計と量産の準備をしていこうと思っています。

今はJAグループと一緒に農場で活用していて、今は累計15台ぐらい、このロボットが各地で稼働している状況です。

世界的にもまだ実際の現場で実用レベルで普及している収穫ロボットはなかなか無いので、ここは技術的にも進捗している部分かなと思います。

先ほど少しお話ししましたけれども、収穫するだけではなくて、カメラが載っていてセンサーとしての機能もあるので、作物の生育状態なども記録できます。

尾原 収穫していない時も、動き回って観測しているわけですよね。

 はい。

収穫しながらもしていますし、していない時も撮影しています。

やはりこういった開発をやる上で、自分たちでフィジカルの現場を持っていることは非常に重要だなと思っています。

今、宮崎、鹿児島と先ほどの茨城の3カ所で、計2haぐらいの農場を持っています。

「オートノマス・グリーンハウス」は世界的テーマ

 集まってきたデータを全部AIに統合して、今風に言うと「農業特化のAIエージェント」を作ろうみたいなことをやっていますが、いろいろと人の管理もそうですし、農場の管理も含めてAI化していく辺りは、意外とそんなに進んでいません。

世界的にも、テーマとして、「オートノマス・グリーンハウス(自律型温室)」というキーワードが結構出ています。

尾原 オランダとか。

秦 そうですね。

それに近いのですが、日本国内ではまだそんなに聞こえてこないなと思っていますが、ロボットから集めたデータもそうですし、そもそもビニールハウスの中に結構センサーはついているので、そこから集まったデータと、あともう1つ、作業記録の定性的なデータみたいなものを連携しています。

現時点ではレガシーな制御盤のようなものでルールベースで制御していて、この閾値を越えたら窓を開けるというようになっています。

その設定をなんだかんだ管理者が1日2〜3回、今日はちょっとここの設定をいじろうみたいな感じで、制御盤でコントロールしているのが現状です。

もう少し事細かに1分・数秒単位で農場を最適な環境にコントロールしていくことをモチベーションに、AIと農場の環境制御を接続するみたいなことをやっています。

作業を割り当て個々の特性を可視化する「パート・カルテ」

秦 先ほどの定性データみたいなものをどんな感じで取っているかと言いますと。

尾原 これは楽しいぞ(笑)。

秦 実はロボットだけではなくて、これはファーミングプランナーというもので、うちの農場のカレンダーのようになっています。

例えば「2月24日に誰が何の作業をやるか」というシフト管理とタスク管理ツールを作っています。

それぞれのスマートフォンや端末に、今日、自分がどこの列の何の作業を割り当てられているかが通知されます。

尾原 Amazonのピッキングみたいですね。

秦 思想としては、それに近いです。実績値もここに記録していきます。

林 植物の生育状況などによっても、これが変わっているのですか?

秦 現時点では農場長側が考えたものを一方的に伝えるのですが、ただこれを当然、学習データとして記録していきます。

これ自体は農場でホワイトボードに書いて作業者に指示すれば同じことができますが、僕らのモチベーションとしては、これを通して定性的なデータをいかに収集するかみたいなところにつながっています。

こういうマップベースで、誰がどこまで作業したかを記録できます。

尾原 これが全部きゅうりやピーマンの棚なんですね?

秦 はい、そうです。

「パート・カルテ」と呼んでいるもので、「この人は収穫がめちゃくちゃ得意だけれども、葉っぱを取り除く作業は遅い」など、作業者ごとの特性を把握できます。

農業はやはり売上でミラクルが起こらない産業です。

だいたい毎年何トン取れて、単価や売上高がこれぐらいという風になると、経営管理としてはコストを非常にシビアに見ていかないといけなくて、むしろそこの勝負みたいな感じなので、「誰がどこに配置されるのが最適なのか」をデータとしてためていく感じです。

一人ひとりがどんな作業を得意としているのかという「強み」を可視化することで、その人が最も力を発揮できる環境へマッチングするための仕組みを目指しています。

当然ここにAIを統合していて、まだまだちょっと粗いですが、「来週の作業予定を作って」と指示すると、ばっとAIが作ってくれるので、農場長がそれをちょっとずつカスタマイズしてみんなに作業の指示をするという流れです。

農業に足りていないのは質的な労働力

清水 映輔さん(以下、清水) サボっている人もわかりますね(笑)。

尾原 (笑)

秦 ばれちゃいますよ。農業は労働力不足や人手不足と言われますが、実は手数よりも、質的な労働力のほうが実はクリティカルなのではないかと思います。

今スキマバイトで農業はめちゃくちゃ人気で、募集するとたくさん人が来るのですよ。

あまり人とコミュニケーションを取らなくていいし、スポット作業をしたいという人は結構来るので、手数としての労働力は実は短期的にはなんとかなりそうです。

むしろ管理するほうが足りなくなっている感じなので、これをデータ化、形式値化していこうとしています。

尾原 それがちゃんと詰まってくると、それこそタイミーにAPIで自動出稿しますみたいなこともあるかもしれないですね。

秦 そうですね、自動で求人募集できるかもしれないですね。

これらを全部統合して、ここがオートノマス・グリーンハウスに近づいている部分かなと思います。

「今、農場の状況が最適なのかどうか」「この場所だけ少し湿度が高い」「病気のリスクが上がっている」のように優先アクションとして知らせてくれて、「ファンを回して、カーテンを閉めたほうがいいですよ」というように全部提案してくれます。

尾原 これは診断をマシンラーニングベースとかでやって、診断結果をアクションに落とすところをLLMでやっているのですか?

秦 そのようなイメージです。

現時点では、AIが各デバイスを直接制御していなくて、これを農場長が承認すると実際に稼働するみたいな感じです。

承認したかどうかも全部学習データにしていって、将来的にはそれを自動で回していくみたいなことをやろうとしています。

尾原 ある程度センサーベースやマシンラーニングベースで入力データの整理が終わっていれば、そのデータを知識に変えていくところは生成AIが非常に強いから、農場長のフィードバックを含めて知識をためていくと、だんだん自律的に動くオートノマスになっていくだろうということですね。

これはいけそうですね。

 そうですね。先ほどのAIはそんなに活用していなくても、データを可視化して、それをもとに農場管理するだけで収穫量が1.5倍になったみたいな農場も出始めているので、きちんとデータを活用すると効果が出るという結果が見え始めています。

土壌と立地を選ばない再現性の高い農業

秦 先ほどちょっと触れたので、簡単に終わらせますが、まちづくりのプロジェクトに組み込まれている要件の1つに「再現性の高さ」があり、再現性が高いと投資対象になりうるということに近づいていくと思います。

あとは、土壌の場所を選ばないので、焼却施設とか排熱がある場所、CO2の排出がある場所の隣接地で農業をやるみたいなことも。

田口 核融合プラントの横でやりましょうよ。

秦 めちゃくちゃ面白いですね。

尾原 確かに、排熱があるから!

秦 そうすると、先ほど言った20%くらいを占めるエネルギーコストの部分がカバーできて、環境にも良い農業ができるかなと思います。プレゼンは以上になります。

尾原 ありがとうございます。

(会場拍手)

途中でツッコミが多かったので質問タイムは5分ぐらいですが、「オートノマス」は、めちゃめちゃ重要なキーワードです。

世の中はAIエージェントブームですが、AIエージェントはあくまでタスク単位でお願いするものです。

これを全部一連でお願いできるようになると、自律で動くオートノマスに変わっていって、AIが人を募集して、人がパーツとして動くみたいなことも含めて自律(オートノマス)になるわけです。

農業が本当にオートノマスになる感触があるのかとか、あとこの辺りは田口さんの専門かもしれないですが、オートノマスになると投資の費用対効果が見えるようになるから、投資商品のような形でまた別のスケーラビリティが生まれるのか。

プレゼンから、ちょっとそういう妄想が見えちゃったのですが。

人間から収穫の楽しみを奪ってよいのか

秦 2つの若干矛盾するような側面を併せ持っているのですが、再現可能性が高まって収益性も読めるようになってくると、投資対象には当然なり得るなと思いますし、むしろ日本の今の人口動態と食料自給率を考えると、そうなっていくべきではないかと思うので、悪い話ではないと思います。

尾原 そうですよね。

秦 あとは、完全自動化されて人が関与しないみたいな話が本当に正解かどうかは、若干哲学的な話にもなるなと思っています。

きゅうりを収穫するのが楽しいみたいな話がありましたが、定年退職すると土いじりを始めて農業をやるように、元々農業は本質的に楽しい活動のはずです。

それを人類から奪ってしまう感じもあるので、それはどうなのかなという気持ちも半分あります。

そういうことを感じつつ、(自動化は)必然的ですし、あとはコモディティ化していくような、食料自給率を下支えするような農業においては、どうしても自動化と効率をひたすら高めていく必要はやはりあるなと思います。

尾原 いまやOpenClawというAIエージェントが勝手に求人サイトに出稿して、「AIができないところは、人間がやってよ」という風に出稿するものもあったりするので(笑)、楽しさを含めてブレンドとか。

田口 それはめっちゃ面白いですね。

元々人類は、狩猟採集してきて、「採集」だから、栽培とかはやっていなかったわけですよね、元々。

尾原 ああ、確かに。

田口 ある時から定住して農業を始めるようになったから仕方なくやっているけれど、本当は多分育てるのはやりたくなくて、採るのをやりたい。

とすると、農業の従事者が減っている課題に対して、私が思ったのは、採集するのは人間として楽しいことだから、お給料を払うのではなくて、逆にお金をもらってやってもらえばいいのですよ。

尾原 そうですね。

田口 お話を聞いていて、レジャーとして採集を人間がやるのは、人類の根底にあるものに合うやり方かもしれないと、ちょっと思いましたね。

ブドウ狩りとかありますし。

尾原 イチゴ狩りやブドウ狩りに行くのであれば、別にきゅうり狩りがあっていいですよね。

栽培地をモジュール型で運用できるようになるのだったら、高速のインターチェンジの道の駅で、「ちょっと収穫していくか」とか、必ずしも収穫したものを全部自分で買わなくてもいいよみたいな、そういうアレンジもあり得ますね。

清水 その横で核融合プラントの見学ツアーも行って。

(一同笑)

名前をICCにして、どんどん名前を売っていけば、どんどん大きくなるんじゃないですか。

田口 (笑)

農業でも連続起業家が生まれるようになる

秦 もう一つあるのは、農業従事者側のイメージもだいぶ変えることができるのではないかという視点です。

自動化できたとはいえ、それぞれちょっとずつ気候が違うところにいかにローカライズしていくかみたいな話はまだ残ると思っています。

基本レシピができたら、アレンジするのがめっちゃ上手い人が必要だなと思っていて、農業を上手くできる人が「農業連続起業家」のようになっていく世界は面白いなと思っています。

農業が得意な人が、弊社のAIとデータを集める仕組みを使って、あるエリアで農場を立ち上げて2〜3年間回すのです。

そうすると、そこにデータセットがたまって、そこ固有の栽培方式がたまると再現可能になります。

これを売却すると、どんどん「農業連続起業家」になっていくみたいな存在も生まれ得るのではないかと。

尾原 確かに。

中国ではAIエージェントを作って売るマーケットプレイスが、もう300億円ぐらいのマーケットになっています。

それがまさにAI化していくと、スキルセットをまとめて売れば、もうそれでイグジットみたいな世界もあり得るようになります。

清水 それに付随した質問ですが、ローカライズの話はもちろんあると思いますが、これは海外で普通に売れるのではないでしょうか?

外国には結構アナログなところもあるので、どこの場所かは別として、そのまま海外に、それこそ日本から売るみたいことが熱いのではないかと思いました。

秦 それは十分あり得ると思います。

むしろ海外のほうが労働集約的な作業がまだ存在していて、農業技術に関しては、質的な労働力不足は日本よりも特に新興国で深刻なので、ニーズは非常に高いです。

清水 そうですね、農業は無くなるわけはないと思うので。

秦 そうですね。

清水 ありがとうございます、すごく面白いです。

尾原 結局、技術でボトルネックが解消すると、産業構造そのものが変わってしまいます。

そうなると、元々「安かろう」だったものを、採集することが楽しくてお金を払ってでもやる人がもしかしたら現れるかもしれません。

そういうように、お金の流れそのものも全部変えていけます。

インテグレーターという話から、意味を変容させていくインテグレーションみたいなところまで変わっていくところが、技術の話の非常に楽しいところだと思います。

ありがとうございます。

(会場拍手)

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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