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1. エネルギー自給率15%の日本を救う、「核融合発電」の実用化構想

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モデレーター尾原 和啓さんと、日本のディープテック最前線を走る4人の起業家が集結。Helical Fusion田口 昂哉さんが語るのは、エネルギー危機を根本から打破する「フュージョンエネルギー(核融合)」の開発状況。2030年代の実用発電に向けたロードマップと、圧倒的な挑戦の全貌を明かします。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2027は、2027年3月1日〜3月4日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 11C 最新テクノロジ゙ートレンド゙ 徹底解説(シーズン10) 
Supported by EVeM

(プレゼンター)

清水 映輔
OUI Inc.
代表取締役

スマートフォンに装着して眼科診療を可能にする医療機器「Smart Eye Camera」を開発・提供

田口 昂哉
Helical Fusion
代表取締役CEO

日本独自の「ヘリカル方式」による核融合発電所によって、2030年代に世界に先駆けたフュージョンエネルギー(核融合)の実用化を進めている。

秦 裕貴
AGRIST
代表取締役

ロボット技術やAIなどのテクノロジーで農業課題を解決するスタートアップ

林 正彬
LIFESCAPES
取締役副社長

BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)技術を応用し、脳卒中後の麻痺患者に向けたリハビリテーション医療機器を開発

(モデレーター)

尾原 和啓
IT批評家

『最新テクノロジートレンド 徹底解説(シーズン10)』の配信済み記事一覧


4つの異なる技術テーマを語るシーズン10

尾原 和啓さん(以下、尾原) ICCサミット3日目の朝から皆さん、本当にありがとうございます。


尾原 和啓
IT批評家

京都大学院で人工知能を研究。マッキンゼー、Google、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ・投資を専門とし、内閣府新AI戦略検討、経産省対外通商政策委員、NHK中央番組審議員等を歴任。現在13職目 、AI変革を描いた「努力革命」(伊藤羊一共著)はAmazonビジネス書にて新着3日連続1位「アフターデジタル」は11万部、元 経産大臣 世耕氏より推挙。けんすう氏と共催のPodcast「ハイパー起業ラジオ」はAppleビジネスカテゴリーで10週連続一位。

シリーズ「最新テクノロジ゙ートレンド゙ 徹底解説」は、今世界を本当に変えようとしてくださっている、技術に取り組む起業家をお迎えし、これまで毎回120分や135分の長尺でじっくり、たっぷり技術好きな方に語りかけ、話し合い、場合によっては質問もいただく形で、進めさせていただいてきました。

<過去のディスカッションはこちら>

【一挙公開】AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(全8回)
【一挙公開】AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン3)(全11回)
【一挙公開】AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン4)(全12回)
【一挙公開】AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン5)(全13回)
【一挙公開】AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン6)(全13回)
【一挙公開】AIの最新ソリューションや技術トレンドを徹底解説(シーズン7)(全11回)
【一挙公開】最新テクノロジートレンド 徹底解説(シーズン8)(全11回)

ありがたいことに、5年になっております。

本当にありがとうございます。

(会場拍手)

ICCの産業を創る輪がどんどん大きくなり、「ディープテック」がどんどん国の重点分野に挙げられ、スケールが大きくなっていっています。

本セッションは、何よりも「技術」によって世の中の誰に希望の光を提供しようかというセッションですので、どうしても技術的に難しい言葉が出るケースがあるのが特徴です。

そのため、皆さんに1つだけお願いがあります。

難しくてちょっとわからないなという時には、首を少しかしげてください。

その場合は、僕がそれに気づいて、技術的に難しい言葉を易しい言葉に変換してサポートする“応答GPTシステム”で、進行させていただきたいと思います。

未来を変える技術の話を135分間楽しんでいただければと思いますが、今回も技術の幅がとても広いです。

まず核融合、農業ロボ、そしてスマートフォンにちょっとしたアタッチメントをつけることによって、新興国の目の病気を予防するスタートアップ。

それから、「脳」と「AI」が直結していくことで、脳の障害によって体が動きにくくなった方がリハビリに戻れるようになることを目指すスタートアップと、異なる事業に取り組む方々に揃っていただいておりますので、ライトニング(短時間で行うプレゼンテーション)形式で進めていきたいと思います。

さあ今、日本で一番の問題は何でしょうか?

エネルギーですよね。

というわけで、エネルギー問題を解決しようと取り組んでいるHelical Fusionの田口さんから始めていただきたいと思います。

よろしくお願いします。

フュージョンエネルギーの実用化を目指すHelical Fusion

田口 昂哉さん(以下、田口) よろしくお願いいたします。


田口 昂哉
Helical Fusion
代表取締役CEO

日本独自の「ヘリカル方式」による核融合発電所によって、2030年代に世界に先駆けたフュージョンエネルギー(核融合)の実用化を進めている。
みずほ銀行での法人営業、国際協力銀行(JBIC)での発電プラント輸出ファイナンス(北アフリカ、ロシア担当)、PwCアドバイザリー、第一生命での新規事業・M&Aなどを経験。金融系スタートアップCOOなどを経て、2021年10月に株式会社Helical Fusionを共同創業。
一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)副会長
京都大学大学院文学研究科(倫理学)修了
京都大学修士(文学)

Helical Fusionは、今ご紹介いただきました、フュージョン(核融合)エネルギーというものを実用化しようとしている会社です。

このプロジェクトのメッセージとして「日本にもうひとつ太陽をつくろう」を掲げています。

核融合(フュージョン)というのは、太陽の中で起こっている反応です。

そういう意味では非常に身近なエネルギーですが、実は太陽だけではなく、宇宙にある恒星と呼ばれる、自ら光ってエネルギーを発している星は全部、この核融合という現象で光っています。

これは星のエネルギーであり、宇宙で核融合より根源的なものはビッグバンしかありません。

そういう意味では、宇宙で最も根源的なエネルギーを地球上で人工的に作り出して、直接エネルギー源として活用しようというのが、核融合(フュージョン)エネルギーです。

フュージョンエネルギーとは何か

田口 今、世界中でフュージョン(核融合)エネルギーが注目され始めています。

特徴を簡単にお伝えしますと、まずCO2フリーです。

また、燃料を海水から採ることができるので、地球上で一番豊富な資源と呼ぶことができます。

「核」とついているので、どうしても原子力発電を想起されると思いますが、実は原子力発電で使われている原理は「核分裂」で、「核融合」とは真逆の反応と言えるものです。

核融合(フュージョン)と核分裂の違い(核融合科学研究所)

全然違う原理を使っているので、原子力発電で心配されるような連鎖反応がそもそも起こらないので、原理上、暴走は起こり得ません。

ウランやプルトニウムは使いませんので、原子力発電でよく問題になる、今ニュースにもなっている核のゴミが出ないため、非常に扱いやすいという特徴があります。

日本のエネルギー自給率を技術の力で上げていく

田口 昨今取り沙汰されているように、再生可能エネルギーにはいろいろと課題がありまして、天候や季節による変動もありますし、日本のように平地の少ない国だと、そもそも物理的に限界があるといわれています。

まさに今、イラン、イスラエル、アメリカでいろいろと良くないことが起こっていますが、日本の一番の大きな課題はエネルギー自給率です。

他の国はご覧のような自給率で、アメリカはシェールガスも出るので、自給率が非常に高いです。

▶︎第1節 米国の「シェール革命」による変化(経済産業省 資源エネルギー庁)

尾原 もう輸出ができるようになってしまいましたね。

田口 そうですね。正直、全然まだ余裕があるのです。

それに対して、日本のエネルギー自給率は15%ぐらいしかないのです。

▶︎エネルギー自給率の推移(経済産業省 資源エネルギー庁)

尾原 これはやばい。

田口 これは普通に考えたら危ない状況ですし、我々が電気を使えば使うほど、85%は海外に富が流出しているということなので、年間で毎年、この原燃料だけでおよそ25兆円を放出しています。

年間で、毎年なので、相当危うい状況です。

▶︎財務省貿易統計(財務省)

尾原 国家予算が120兆円とかですから、1/5くらいが流出してしまっているということですね。

田口 そうなのです。

皆さんが最先端技術や高付加価値製品を作っても、ほぼオフセットされてしまうという非常にもったいない状況なので、エネルギー自給率を1%でも上げることは国として急務です。

ただ、日本は地下資源に恵まれていませんので、エネルギー自給率を技術の力で上げていく。

目指すところは、100%を超えて日本がエネルギー輸出国になることで、それが夢ではないのが、この核融合という技術、産業が持つ可能性です。

商用化の最終段階で残すはあと2つ

田口 どの辺りまで技術的に進んでいるかと言いますと、実は歴史は長くて70年以上、世界でも日本でもずっと研究が続けられています。

燃料としては、水素の仲間を使うのが一番核融合反応を起こしやすい組み合わせです。

これを装置の中で加熱していくと、1億℃という超高温に達します。

これはもうできているのですが、こうなると核融合反応が起こります。

そうするとエネルギーを持った中性子という粒が飛び出してきますので、これを壁で受け止めて熱に変えて、この熱を使ってお湯を沸かしてタービンを回し、発電するというシステムです。

ここがどこまで進んでいるかと言うと、今申し上げたように核融合に必要な1億℃という条件はすでに達成していて、我々が採用する、日本で開発された「ヘリカル方式」(※)を使えば、長時間安定的に維持することができることも実証済みです。

▶︎編集注:「ヘリカル方式」は、ステラレーター型の磁場閉じ込め方式全般を指すこともありますが、ここでは、日本で発案・発展した二重らせん状のヘリカルコイルを特徴とする方式を指します。

一番ここで苦労したのですが、ここはようやく乗り越えたという状況にあります。

最後の熱を使って発電するというのは、火力発電や原子力発電ですでに使われている技術なので、あと2つぐらいというところまで迫ってきました。

2つのうちの1つが、この壁のところです。

この壁は年中ずっとエネルギーを受け止め続けるので、一番過酷な環境にさらされます。

弊社としては、あと3年ぐらいでここを仕上げる計画を立てています。

尾原 おお!

田口 もう1つが、このエネルギーを閉じ込めておくための磁石です。オーソドックスなやり方ですが、従来の磁石だと大きくなりすぎてプラント全体も大きくなります。

そうすると建設コストもかかるし、運転にものすごいパワーがかかるので燃費が悪くなります。

そのためなかなか商用化に進まなかったのですが、ここ(ピンク色のマスキング部分)の超高性能な「高温超伝導」技術というものを使って、商用でも耐えられそうな磁石の開発に成功し、昨年(2025年)10月に発表させていただきました。

2030年代に核融合炉による実用発電を目指すHelical Fusion、統合実証前の最重要項目「高温超伝導マグネット」の開発にめどをつけ、最終実証装置「Helix HARUKA」製作・建設に着手(PR TIMES)

ここは埋まりましたので、あとは壁のところを仕上げて全部統合すれば、コストの面でも成立するような核融合発電所がいよいよできそうというところまで来ているのが現在地です。

核融合科学研究所のスピンアウト企業として創業

田口 当然、小さな会社一つでできるわけはありませんので、我々Helical Fusionは、今まで国立大学や公的研究所でやられてきたことを引き継いでいます。

核融合科学研究所という国立機関があるのですが、ここのスピンアウト企業として5年前(2021年)に創業しました。

我々は「ヘリックス計画(Helix Program)」を推進していて、2030年代には実用的な発電まで至ることを目標に開発を進めています。

尾原 あと15年でいく感じですか?

田口 10年くらいで発電までいきたいなと思っていますね。

商用化を実現する3つの必須要件「正味・定常・保守」

田口 我々は「実用発電」と言っているのですが、核融合は未だに研究者が主導しているところが多く、実際の発電インフラとして使えそうなものはなかなか開発されていません。

そろそろちゃんと一般感覚で使えそうなものを作らないと相手にされなくなると私は思っていて、実用発電にこだわっているのが弊社の特徴です。

次の3つの要件を満たさないとまともに使えないと考えていて、まず1つが「正味発電」です。

核融合発電所は化石燃料やウランを燃料に使わない代わりに、自分を動かすためにものすごい電気を使います。

この電気は当然自分が発電した電気で全部賄う必要があり、なおかつ余りが出るところまでいかないと発電所として成立しませんので、この正味発電がものすごく大事かつ当たり前ですが結構難しいのです。

尾原 意外とね、実現できないですね。

田口 そうですね。

もう1つは、当然発電インフラとして使うわけなので、連続運転時間が1時間とかでは話にならないので、1年間ずっと安定的に電気を出し続けられるという「定常運転」です。

定常運転をしていると、先ほど申し上げた壁の部分を中心として傷んでくる場所があるので、ここを定期的に交換できるように保守性もきちんと担保しないといけないため、この「正味」「定常」「保守」というのは、どんな炉の形であっても満たさないと商用化できない要件となります。

尾原 簡単に言っていらっしゃいますが、1億℃にするために使うエネルギー以上のエネルギーを安定して生み出し続け、なおかつ超高温にさらされている炉の壁が保守できるなんて、 ちょっと考えられない話ですね(笑)。

田口 考えられなかったのですよね(笑)。

3要件を満たすのはヘリカル方式だけ

田口 それはいい加減やろうよということで、今までいろいろな方式が提案されてきました。

こちらは、炉の中心部の形ですね。

淘汰されてきて、今この4つぐらいに大体収斂してきています。

細かいことは置いておいて、先ほど言いました、「正味」「定常」「保守」というこの当たり前の能力を今手に入る技術で実現できるのはどれかと考えると、弊社が採用しているヘリカル方式しかないというのが我々の考え方です。

これ以外議論する必要がないと考えているわけです。

そういう意味で、非常に商用化に向いた技術を日本は持っています。

このヘリカル方式は日本で発明されて、大型化に成功したのも日本だけなので、非常に高い参入障壁を構築できています。

その意味で、国際競争の中でも非常に良い位置に日本はいると考えています。

先ほど10年くらいで発電までいきたいと言いましたが、フェーズ1、2、3に分けていて、来年、再来年ぐらいで個別技術、先ほどお話しした磁石と壁のところは、ほぼ完成させるところまで持っていくことを考えています。

その次に、人工太陽の部分と磁石と壁といった中心となる技術を全部統合して、同じ装置で実験しなければいけないと思っています。

これがフェーズ2で、「Helix HARUKA」という装置で試そうと思っています。

もう製作に着手して、建設も始まっています。

それで確かめれば、我々が発電所を作る前に確認したいことは全部終わるので、フェーズ3、いよいよ実用発電の「Helix KANATA」という、世界で初めての実用的な核融合発電所を作ろうと計画しています。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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