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QDレーザ 菅原充さんのプレゼンテーションを2回シリーズでお届けします。(その2)は、網膜走査型レーザアイウェア”RETISSA”が眼疾患の方々をどうサポートできるのかについて具体的な事例を交えてお話頂きました。最後に、QDレーザが目指すビジョンとそのロードマップについてもお話いただきました。ぜひ御覧ください。
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017スタートアップ・コンテスト「カタパルト -リアルテック特集-」Supported by リアルテックファンド プレゼンテーションの書き起こし記事です。是非御覧ください。
本記事で特集しております8分間のプレゼンテーションを行う「CATAPULT(カタパルト)」のプレゼンターを募集しております。「スタートアップ」「IoT/ハードウエア」「リアルテック」「カタパルト・グランプリ」の4カテゴリーで募集しております。ぜひ募集ページをご覧ください。
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2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
CATAPULT(カタパルト) -リアルテック特集-
Supported by REALTECH FUND
菅原 充
QDレーザ
代表取締役社長 工学博士
1958年新潟生まれ。1982年東京大学工学部物理工学科卒業、1984年同修士課程終了。1995年東京大学工学博士を取得(論文)。研究テーマはナノ量子半導体エレクトロニクス。1984年富士通株式会社入社。富士通研究所 フォト・エレクトロニクス研究所フォト・ノベルテクノロジ研究部長、東京大学特任教授、ナノテクノロジー研究センター センター長代理として、量子ドットレーザーの光電子物性の理論・実験的研究、及び、光通信応用に関する研究を進めた。2006年4月富士通のベンチャー支援制度により、株式会社QDレーザ設立。 量子ドットレーザーの基礎から実用化までの業績に対して、IEEE Photonic Society Aron Kressel Award、一般財団法人材料科学技術振興財団山崎貞一賞等、受賞歴多数。
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▶網膜走査型レーザアイウェアの事業化に挑む「QDレーザ」の配信済み記事一覧
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最初の記事
「QDレーザ」が挑む網膜走査型レーザアイウェアの事業化(前編)【F17C-QDL #1】
本編
▼Part1のハイライト▼
菅原 Low Visionという言葉はほとんどの方がご存知ないと思います。
Low Vision とはWHOの定義では、矯正メガネをかけても視力が0.3以下の方です。そして0.05以下の方を社会的盲目といいます。
日本では150万人、アメリカでは300万人、先進国で約1,000万人弱、そしてWHOの定義では中国インドも入れると、世界人口の2.5億人がLow Visionで、数千万の方が白内障で視力を失っています。
彼・彼女らへのソリューションとして、網膜にレーザで書き込むアイウェア”RETISSA”を考えています。
これは普通のアイウェアとは違います。普通のアイウェアですと、液晶画面を目の前に置いてものを見るわけですから、実は見えないんです。見ようとする努力がそもそもできず、目の近くにまで持ってきて初めてちょっと字が見えるぐらいです。
我々はそれを乗り越えて、アイウェアの真ん中に設置したカメラで捉えたイメージを与えることができます。HDMIのインプットがあり、スマホやパソコン等のデジタルデバイスを普通の形で読むことができます。
どのような原理かというと、レーザをスキャニングすることで、網膜に画像を書き込みます。
細いビームを入れることで、目の水晶体レンズの調整作用を全く使わずに網膜に画像を描くことができ、且つ鮮明です。つまり、目の調整作用や、どこを見ているかに関係無く情報を取り込むことができるデバイスが可能になるのです。
▲Part1のハイライト終わり▲
眼疾患の患者を救うアイウェア”RETISSA”
菅原 我々がアイウェア”RETISSA”を提供したい眼疾患の方々をご紹介します。
1つは目の前側が壊れてしまった方々。混濁や屈折異常があります。私も60歳手前なので、そろそろ白内障が始まると思いますが、どこかが曇ってしまいます。
そして屈折異常、乱視、近視、遠視、或いは目が尖がってしまう円錐角膜、そういう方々は見たものを網膜に正常に写せません。
Low Visionではなく、矯正メガネを使って見える方は、多くの方は眼軸が異常になったり、角膜が腫れてしまったりして、メガネを使っても矯正することはできません。
しかし、レーザを使えば先程申し上げたように、目の水晶体レンズの調整作用を全く使わずに網膜に画像を描くことができるので、網膜に(画像を)直接届けることができます。
多様な眼疾患の問題に対応し、視力を最大化する
例えば近視。
私も近視ですがメガネを外すと全然見えないので、海外の空港に行ってもゲートを探すことが困難です。そういう方々が、アイウェア”RETISSA”をかけて網膜にスキャニングすると、25度の角度でくっきりと映像を見ることができます。
そして乱視や円錐角膜だと、画像が歪んでしまって見ることができません。そういう方々もメガネをかけて網膜にスキャンをすると、下の図のように見ることができます。
90%のLow Visionの方々は網膜や視神経に疾患を抱えています。加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)といって真ん中が見えない方、そして緑内障といって神経疾患によって真ん中しか見えない方、視野が失われていきます。
また、網膜色素変性症や糖尿病網膜症などに罹患すると夜盲(暗いところでものが見えにくい症状)や羞明(強い光を受けた際に、不快感や眼の痛みなどを生じる症状)が始まり、最後には失明する可能性ががあります。
このような場合にもレーザアイウェアはとても大きな力を発揮します。前眼部をバイパスして、網膜の任意の場所に書き込むことができるからです。
このように真ん中が見えない方や真ん中しか見えない方も、その場所にある特定の画像処理したものを与えてあげると、その方の視力を最大化することができます。
ですから、基本的には前眼部の白内障、混濁、屈折異常、網膜疾患等どの方にも今ある以上の視力を与えることができるのがこの技術のポイントです。
例えば、網膜疾患で夜盲が発症してしまった方は、午後3時になると「今帰らないと帰れなくなる」というのです。午後3時ですが、それぐらいの暗さになると見えなくなるのです。
網膜異常者の場合は、カメラで捉えたものを網膜に書いてしまえば普通に見ることができます。
最近我々は、パラリンピックを目指している柔道選手の方をスポーツ採用で契約しました。
この方は、柔道をやっていて網膜が剥がれてしまい、網膜剥離になり夜盲になってしまったのですが、これで練習に行く時に電柱にぶつからずに行ける、と言ってくださいました。
彼が2020年にQDレーザのロゴをつけてオリンピックに出ることを我々はサポートしたいと思っています。
さらに、視野狭窄(しやきょうさく)です。
この辺はあまりニーズがありませんが、トンネルビジョンといって、本当に狭いところしか見えない方に、広角のカメラで書いてあげると、このように視野を与えてあげることができます。
これから話すのは我々の最終目標で今実験が始まったばかりの事です。
加齢黄斑変性といって真ん中の視力を失ってしまい、人の顔が見えない、文字が読めないという症状があり、その患者はどうしても斜視になってしまい、斜めに物を見るしかないです。
しかし、端っこに物を書くことで見ることができます。
これはまさに医療機器で、本気で医療機器認証(Medical Device Certification)を取ろうとしています。
日米両方でその取り組みは始まっていて、こういった前眼部をバイパスする機能を我々は実証しようとしました。
被験者の例を挙げさせてください。
ある被験者の方は、、子供のころにインターネットで知った化学実験で目を焼いてしまい、視力は0.028で12回手術をしても全く戻らず、社会的失明で働くことはできませんでした。
とても健康でハンサムな青年で、我々のスタッフが心配気に見守る中でこのアイウェアをかけると、視力がなんと0.3まで回復しました。これは働くことができる視力です。
彼にかけてもらったものはプロトタイプだったので、まだ視力0.3ですが、恐らく来月・再来月(2017年3月・4月)には0.5までいき、いよいよ彼が人生を変える日が来ると思います。
他のアイウェアより数歩先を行く性能
我々のこのデバイスは、従来型に比べオンリーワンの性能を持ちます。ハンズフリーで使えるので、楽譜を見ながら歌ったりピアノを弾くこともでき、もちろん対人の顔を見ることができるデバイスです。
最後にオーグメントリアリティー(拡張現実)の話をしたいと思います。「どこを見ても見える」というのは、網膜に書き込むということで「そうなるだろう」と想像していただけると思います。
我々は近くを見る時と遠くを見る時ではピントを変えて見ていますが、我々のアイウェアは、どこを見ても同時にこういった画像を見ることができます。
人類のビジョン(視覚)を再定義する
我々のロードマップとしては、まずLow Visionの方々をサポートし、続けて、彼らが助かる新しいメディカルインフラを作ります。
その先に、AR(オーグメントリアリティー)、 Smart Glassと進んでいき、Low Visionの人が、「自分達が使っているデバイスが普通の人が使うようになるんだ」といったプロセスを辿ってこのビジネスを立ち上げていきたいと思っています。
今は情報とリアルが融合し始めていますが、人間の進歩として、これから人間自身の体力面や心理面がサポートされてどんどん進化していくので、我々もそこに参加し、ビジョン(視覚)を再定義することを実現したいと思っています。
以上が我々の事業です、ご清聴どうもありがとうございました。
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(終)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/城山 ゆかり
【編集部コメント】
”RETISSA”はARなどとも関連づいてくるのですね!眼に関わる事業は、VRやAR、MRと相性が良さそうです。(横井)
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