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リディラバ安部 敏樹さんのプレゼンテーションを3回シリーズでお届けします。(その2)は、「社会の無関心の打破」の先にある「解決の壁」を誰が打破するのかについてお話し頂きました。
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017「カタパルト・グランプリ」プレゼンテーションの書き起こし記事です。ぜひ御覧ください。
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スタートアップビジネスの「エコシステム」を構築し、日本の起業家を支援するプログラム「IBM BlueHub」は「カタパルト(CATAPULT)」のオフィシャル・サポーターです。
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【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンスFUKUOKA 2017
カタパルト・グランプリ
Supported by IBM BlueHub
(プレゼンター)
安部 敏樹
一般社団法人リディラバ 代表理事
株式会社Ridilover 代表取締役社長
東京大学在学中にみんなが社会問題をツアーにして発信・共有するプラットフォーム『リディラバ』を2009年に設立。600名以上の運営会員と150種類以上の社会問題のスタディツアーの実績があり、これまで4000人以上を社会問題の現場に送り込む。また都立中学の修学旅行や企業の研修旅行などにもスタディツアーを提供する。2012年度より東京大学教養学部にて1・2年生向けに社会起業の授業を教え、2014年度より同大学で教員向けにも講義を持つ。特技はマグロを素手で取ること。総務省起業家甲子園日本一、学生起業家選手権優勝、ビジコン奈良ベンチャー部門トップ賞、KDDI∞ラボ第5期最優秀賞など受賞多数。第2回若者旅行を応援する取組表彰において観光庁長官賞(最優秀賞)を受賞。著作に『いつかリーダーになる君たちへ』(日経BP)などがある。
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最初の記事
【安部敏樹が吠える①】リディラバは社会課題の現場との架け橋になる
本編
▼Part1のハイライト▼
安部 我々が行っているのは、社会問題に対して無関心な人、あるいは関心はあるけど関わり方がわからないという人に対して、社会課題について気軽に触れてもらう、知ってもらう機会を提供することです。
その機会をスタディツアーという旅行の商品やメディアで提供しています。
我々は市民と公共社会の橋渡しをするということをひとつの目標としており、そのためのインフラとして旅行やメディアというものを使っています。
ユーザーと社会課題の現場との架け橋になる
我々はこのような形で社会課題の現場に人を送りますが、それは個人だけではなくて、例えば学校の修学旅行や企業の研修という形でも行っています。
社会課題の現場に行ってもらうことにどのような意味があるのか?ということを、多くの方々に対してしっかりと分かりやすく説明し、その機会を提供するというのが主な仕事でございます。
▲Part1のハイライト終わり▲
この背景にあるのは、昔の日本、あるいは発展途上国とは違う、先進国・成熟社会だからこその課題です。
それは何かというと「社会の分断というものがどんどん見えづらくなる」ということです。
例えば、皆さんが戦後の時代に生まれて、今、戦後の1945年にタイムスリップしたとすると、ここにいる全ての人間にとって、たった1つのシングルイシューが存在するわけです。
それは何かというと「米が食えない」ということです。
食料がない、生存が危ないという社会においては、社会問題というのはたった1つになるわけです。
「何とか国民を食わせていけるようにしましょう」これが社会問題です。
このような課題に対しては、合意形成がしやすく、すぐに「反対する」というような人は出てこないわけです。
そのような社会においては、国や自治体といったパブリックセクターの役割は非常に大きくて、税金でたくさんお金を集めて、たったひとつのシングルイシューに対して投資をしていくということになります。
それは非常に効率の良いことです。
ところが成熟社会とか先進社会になってくると、例えば
「うちのビルに陽が差さないぞ。これは人権侵害じゃないか」
「LGBTが大事なんです」
「子どもの貧困が今問題なんです」
「いやいや高齢化社会なんだから介護を何とかしなきゃいけない」
というように、あらゆる問題意識が出てきますので、みんなが納得するたったひとつの社会問題というのが出てこなくなるわけです。
そうなると、いったい我々の社会において何が問題なのかというのを誰も把握できなくなってきます。
問題の所在が理解しづらい社会になっている
元々は国や自治体がこういった問題を把握していました。
しかし、国や自治体はそもそもそれほど身動きの良い組織ではないですから、問題が多様化してきてあらゆるところに「穴」が開いてくると、いったいその社会にとって一番問題であるところはどこなのかを理解するのが難しくなります。
そのような「分断」が見えづらくなってくる先進社会・成熟社会の中で、どのようにして国や自治体の代わりに社会課題というものを可視化していくかが、我々のチャレンジしていることでございます。
逆を言えば、このような領域には非常にチャンスがあるということです。
今のところ日本は、先進社会・成熟社会という意味で言うと世界中でトップランナーだというのは間違いないのですが、ミャンマーやエチオピアなど発展途上国と呼ばれる国が、いつか成熟してくるわけです。
ご飯が食べられるようになってくると、「少なくとも問題意識が多様化してあらゆる社会問題が複雑になっていく」ということについては必ず同じ道をたどるわけです。言い換えれば日本国内で見えている課題や現象全体は、いずれ海外すらも視野に入れていけるマーケットでもあるということです。
この部分に対して「新しい社会課題を発見し、見積もっていく機能」というのが世の中に必要になってくるでしょう。
このことに気づいている組織というのは実は世界中にほとんどありません。
ですから我々はここに大きな事業チャンスがあると思いますし、これは弊社だけで何かできるものでもないですから、ぜひ皆さんと一緒に解決するための機会を作っていきたいと思っています。
「社会の無関心の打破」を理念とする
我々の組織の理念は「社会の無関心の打破」です。
多くの社会課題に対して可視化を行い、関心を持ってもらいましょうということを事業にしています。
このことについては、事業モデルもかなりできており、ここからどのように量的な拡大をして行くかというフェーズです。
では、社会問題を見える化するとすぐ解決するのかというと、そうではありません。
実際に解決するためには解決してくれる「人」が必要になります。
ここからの話は、じゃあ一体その見えてきた社会問題というのを「誰が解決するのか」ということに議論を移していきたいなと思っています。
さて、これはいったい誰がやるのでしょう。
自治体なのか、NPOなのか、会社なのか、学校なのか。
あるいは皆さんひとりひとりの個人なのかと。
もちろん答えはみんなですという話になるわけです。
皆さんで社会を作っていくのだから、誰かに任せれば良いということはありません。
しかしながら、8年このような事業をやってきて私が思っているのは、最も伸びしろがあるのは、「企業」でしょうということです。
社会問題は行政的な縦割りでは解決しない
それはなぜかというと、社会課題に対して、国や自治体というのはもうずっと取り組んでいるのです。
取り組んできているが、なかなか上手にできなかった。
その歴史を考えたときに、今ここから新たに国や自治体に何か期待をしようというのは、そもそも違うだろうと思うのです。むしろ国や自治体が一定の役割を果たしてきたからこそ社会は回ってきた。ただ、次の時代にアップデートして行くためにはプレイヤーを加えていく必要があるでしょう。
これがどうして近年になってうまくいかなくなってしまったかというと、基本的には行政の縦割りの区間というのがそのまま社会問題の分類になってしまったということが大きいです。
複雑化している社会に対して、あまりにも行政は単純化をしてしまっていたという話です。
例えば、皆さんよくご存じの問題だと、待機児童問題というものがあります。
この問題は、保育園と幼稚園というものがそもそも併存していることから始まっているところがあるわけです。
子供を預けるのであれば一つの施設で良いだろうと思うのですが、それをなぜか文科省と厚生労働省が別々に管理した結果、保育園と幼稚園というものができてしまったいうことがあるわけです。
こういった縦割りの仕組みというものをもっと横に砕いていくような組織というのが必要でしょう。縦割りを実現するのが自治体や国などの行政であるとすれば、横串にして解決して行くことは自治体には少し難しそうだというのが、今私が感じていることです。
NPOだけでは解決に向けたスケールが足りない
一方で、ではそういったものをNPOと言われるような新しいソーシャルセクターが実現できるのかということも考えたいと思います。
少し古いデータですが、5万件以上のNPOがこの国にありますが、その会員は平均してだいたい1人あたり1,000円ぐらいしか払ってないのです。
正会員が132人ということは、月間13万円ぐらいしか収入がないわけです。
そのような会員組織が多いです。
スタッフの平均給与は、年間166万円です。
ボランティアが平均43人いますが、もし専属の人がこのような給与であれば、食べていけるわけがないでしょう。このような世界です。
このことを考えたときに、NPOたちが本当に圧倒的なスケールをもって、今我々が困難に直面しているような社会問題を完全に全部解決できるかというと、それは難しいだろうと思っています。
そうであれば、「企業の課題解決能力」を社会課題にも多く導入していった方が良いのではないかと思っています。
企業は「木を植えているだけ」
では、どうしてこれまでなされてこなかったのかという疑問が出てきます。
確かに資本もあるし、業務遂行能力も高い。
あるいは技術も持っている企業さんが多い。
そのような解決能力を何とか使おうということを、マイケル・ポーターさんが2011年からCSV(Creating Shared Value)という概念で提唱し始めました。お聞きになられたことがある人も多いかもしれません。
CSRのような形でボランティアをするのではなく、事業で社会課題を解決していきなさいよというわけです。
しかしながら…
実際のところは木を植えているだけなわけです、ほとんどの企業は。
しかも、多くの企業は環境保護と称して植林活動をして人工の森林を作っていますが、木は植えない方が良いことも多いのです。
人の手が入って森林になってしまったところというのは、その後ずっと人の手が管理しなきゃいけないので、里山になるわけです。しかし里山管理をする林業家というのは国内には足りていない。
そういう意味では、むしろ社会問題を作っている側面があるわけです。いや、本当に何をやっているのだと。
木を植えるよりも、やることがあるだろうという話なのです。
さて、それでは、先ほどの「なぜできなかったのか」ということにもう少しフォーカスしていきたいと思います。
(続)
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続きは 【安部敏樹が吠える③】社会課題を理解するビジネスパーソンが重要になる をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/平畑 真智子
【編集部コメント】
「CSVと言いつつ、木を植えているだけ」というのはなかなか辛口ですね(笑)(立花)
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