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2. 過去の“壮絶な経験”がポジティブさを生む? 幸せの国際基準「Well-being」調査が示した意外な真実

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「人生100年時代の幸せな生き方とは?(シーズン2)」7回シリーズ(その2)は、幸せの国際基準「Well-being」がテーマ。Well-being調査によると、日本人は“ネガティブ体験”が少ないのが特徴だそうです。一方、そうしたネガティブ経験が、その後の「ポジティブ感情」に寄与するという調査結果も。私たちは一体どのようにして幸せを感じているのでしょうか? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2018 プラチナ・スポンサーのクライス&カンパニー様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2018年9月4〜6日開催
ICCサミット KYOTO 2018
Session 5A
人生100年時代の幸せな生き方とは?(シーズン2)
Supported by クライス&カンパニー

(スピーカー)

石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

澤 円
日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長

仁禮 彩香
株式会社TimeLeap
代表取締役社長

(モデレーター)

南 章行
株式会社ココナラ
代表取締役社長

『人生100年時代の幸せな生き方とは?(シーズン2)』の配信済み記事一覧


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1つ前の記事
1.「◯◯をしたら幸せになれる」という思考パターンから抜け出すために

本編

 さきほど澤さんが、子どもの頃全く楽しくなかったとおっしゃっていましたよね。

幸福やWell-being(ウェルビーイング)を実現する手段には、様々な要素があると思います。

その要素として「達成」「快楽」「没頭」「意味合いを見出す」「関係性」などがあります。

幸せの中でどれが一番重要なのかと考えると、個人的には、「関係性」とか「社会資本(社会的ネットワークにおける人間関係)」 的なものが、僕をすごく幸せにしてくれていると思っています。

あるいは、日々仕事をしていて「意味合いを見出す」といった感覚は、自分の幸せをすごく支えてくれていると思います。

しかし子どもにとってはどうかと考えると、「達成」や「快楽」なら可能かもしれませんが、「関係性」「社会資本」「意味合いを見出す」ことで幸せを感じるのは、少し難しい気がします。

この辺りはどう考えたらよいのでしょうか?

石川 学校にはクラスという概念があるので、人間関係はある程度決められてしまいますよね。

仁禮 井上さんが子ども達とされていること (※) というのは、まさに子ども達を社会と繋げていることだと思います。

▶編集注:リバネスでは、企業や大学、研究機関などと連携し、教育の現場に科学の魅力を届ける「教育応援プロジェクト」に取り組んでいます。

しかし私は、子ども達がそこで社会資本に意味合いを見出すこと、つまり社会との関係性を「幸福」と捉えるというのは難しいのではと思います。

幸せの国際基準「Well-being」で測った日本人の幸福度とは?

写真左から、石川さん、井上さん、澤さん、仁禮さん

石川 実は「幸福学」や「ポジティブ心理学」というエリアでは、「幸せ」という言葉は使わないんですよね。

代わりに、先ほど南さんがおっしゃった「Well-being」という言葉を使います。

▶参照:【石川善樹】僕が「Well-Being」の研究に人生をかける理由(NewsPicks)

なぜかというと、例えば「ハッピー」や「幸せ」という概念は、国によって全く感じ方が違うと言われているからです。

閾値 (ある現象を引き起こすのに必要な入力や刺激の大きさ) が違うのです。

アメリカ人は何かあるとすぐに「ハッピー」と言います。

しかし、ドイツ人や日本人は「幸せ」という言葉をあまり使いません。

▶編集注:書き起こしを担当頂いているドイツ在住のFROOSE様より、次のようなコメントを頂戴しました。「日常生活を観察すると、確かに“Ich bin floh.(I’m happy.)”という表現はあまり聞かないように見受けます。幸せの表現方法はもっと多様で具体的。例えば、活けてあるお花が気に入れば“Das sieht wonderschön aus!(これすごく綺麗ね)”と言ってくれるし、料理が口に合えば“Mmmh, das schmeckt lecker!(これすごく美味しいね)”と言ってくれます。ドイツ人はあまりお世辞を言わないので、こういった言葉をかけられると、本当に幸せな気持ちになりますね。」

だから「私は幸せです!」と言われると「この人は一体どうしたのだろう」と一歩引いてしまうのが日本人なのです。

国によって閾値が違っていては国際標準の概念にはなり得ないので、「Well-being」という概念で測っています。

「Well-being」の定義は2種類あり、それは「評価」と「体験」です。

はじめに「評価」についてご説明します。

「梯子」を想像して下さい。10段の梯子だとします。

この梯子の一番上が「最高の生活」、一番下を「最低の生活」だとすると「10段ある梯子のうち自分はどのあたりにいるか」という評価をするんです。

グローバル社会でこれだけ情報が行き渡っているので、10点の生活 (最高の生活) と0点 の生活 (最低の生活)のイメージが、世界中で揃い始めています。

そうすると、国際比較が可能になります。

日本人は大体6段目から8段目くらいと答える人が多いんです。

井上 2つピークがあるんですね。

石川 次に「体験」についてご説明します。

これは単純に「今日は良く笑いましたか?」とか「今日は悲しいことがありましたか?」というポジティブ体験・ネガティブ体験を聞くというものです。

面白いことに、日本人は「ネガティブ体験」がとても少ないのが特徴です。

世界でもトップ10に入ります。

「ネガティブ体験」はすごく少なく、同時に「ポジティブ体験」もすごく少ないのが日本人の特徴です。

 真ん中の「何事もない普通の状態」ということですね。

石川 そうです。

澤さんのように「ネガティブ体験が多い人」は、意外と少ないというのが日本の特徴です。

井上 しかし、バックグラウンドにそういった「ネガティブ体験」がたくさんあると、逆に「普通のことがすごく幸せ」という、「差分」が大きくなるところに幸せを感じるのではないかと思います。

だから梯子が5段目から10段目になるよりも、1段目から5段目になった方が幸せが大きいのかなと思います。

「その差分をどう評価すればよいのか」ということに、いつも興味を持っています。

製造業派遣労働者のWell-being調査が示した意外な事実

株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹 さん(写真左)

石川 僕は昨年1年間かけて、工場勤務の製造業派遣労働者のWell-being調査をしました。

全国各地の工場を訪問し、労働者がどういう人生を送ってきたのか、たくさんヒアリングしました。

その結果、基本的に、製造業派遣労働者の「Well-beingは低い」ということが分かりました。

でも、彼/彼女らの仕事や人生についての考え方を聞き、非常に興味深いと思ったことがあります。

それは「何に対して怒っているのか?」ということです。

多くの人が声を上げていたのが、「仕事がつまらなすぎること」なんです。

「楽しく意味のある仕事をしたい」のです。

ところが、派遣労働者の方に「マニュアルにないお願い」をすると「派遣労働者にこんなことやらせるな」という気持ちが生まれるという矛盾もあります。

一方で、派遣労働者でもすごくハッピーな人達、Well-beingが高い人達も存在します。

面白いことに、この人達に「マニュアルにない仕事」を頼むと、「派遣労働者なのにこんなこともやらせてくれるのですか?」と、すごくポジティブなんです。

そこで、この人達の特徴について詳しく調べたところ、1つの要因を発見したんです。

過去の「壮絶な経験」がその後のポジティブさを生む

石川 それは、それまでに「とんでもなく壮絶な経験」をしているということです。

壮絶な経験をした人からすると、現在の環境全てが有難いと感じるんです。

長い目で見ると、人生のどこかで「とんでもなく壮絶な経験」をすると、それがその後の幸せに大きく寄与するのではないかと思います。

 今、僕がすごくハッピーなのがまさにそれと同じです。

過去の自分と比べると、それを理解してくれる妻がいて、尚且つ話を聞いてくれる色々な人達がいてくれて、とかなりハッピーな状態です。

「過去の自分と比べることでハッピーを感じる」これは本当にハッピーだと思います。

しかし、ここで陥ってはいけない罠が「他者と比較する」ことです。

これは全く意味のない行為なのに、皆がしてしまいます。

他者はコントロールできないので、他者と比較して自分のハッピーを測ろうとするのは無謀です。

自分を不幸にするプロセスでしかないし、更には「自分よりも下の人がいる」と思うことでハッピーになるのは、病んでいる証拠ではないかと思います。

石川 隣の芝は青く見えがちですからね。

皆悩みがあるのに、井上さんには悩みがなさそうですね。

井上 ありますよ!

先ほど、派遣労働者の中には「すごくハッピーな人」と「そうでない人」がいるとのことでしたが、その差が実は「腸内細菌でした」と言われたら、僕はすごく嬉しいです(笑)。

普通の状態が有難いと思えるのは、そうではなかったり病気になっていたりする時です。

そこで僕は、「ずっと下痢をしていて、普通の状態に戻ったらすごくハッピーかな」と考えました。

ところが「自分で下痢を誘導すること」自体がすごく悲しくて、「普通に戻って当たり前じゃないか!」と思ってしまったのです。

(壇上笑)

「不健康な状態を作り出し、普通の状態に戻すことで幸福感を得られる」という仮説は間違いだと気付きました。

人は「ヨーグルトを食べるともっとお腹の調子が良くなるかもしれない」といったような「予測できないことがある状態」が良いんですね。

(続)

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続きは 3.「修羅場体験」と「幸せ」の因果関係を考える をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/三木 茉莉子/尾形 佳靖/戸田 秀成/Froese 祥子

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