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ICCサミット KYOTO 2019「教えてほしい!プロダクトのグローバル戦略」のセッション書き起こし記事を全7回シリーズでお届けします。(その1)では、ニュースアプリ「スマートニュース」が2014年に米国進出を果たした経緯を、同社代表取締役会長兼社長 CEOの鈴木健さんが語ります。スマートニュースが分析する米国の消費者インサイトとは? 海外プレイヤーとしての“強み”はどこにあるのか? ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019のプラチナ・スポンサーの日本マイクロソフト様にサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 6F
教えてほしい!プロダクトのグローバル戦略
Supported by 日本マイクロソフト
(スピーカー)
鈴木 健
スマートニュース株式会社
代表取締役会長兼社長 CEO
十河 宏輔
AnyMind Group
CEO
玉川 憲
株式会社ソラコム
代表取締役社長
(モデレーター)
濱野 智成
株式会社トレンドExpress
代表取締役社長
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▶「教えてほしい!プロダクトのグローバル戦略」の配信済み記事一覧
本編
濱野 智成さん(以下、濱野) 皆さん、おはようございます。トレンドExpressの濱野です。
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濱野 智成
株式会社トレンドExpress
代表取締役社長
前職Deloitte Japanでは、当時グループ最年少のシニアマネージャーとして東京支社長、事業開発本部長を歴任。事業開発、マーケティング、組織開発を得意領域として、120社以上に経営コンサルティング支援を行う。その後、上場支援先だった株式会社ホットリンクに参画し、COO(最高執行責任者)として、経営企画、グローバル事業、戦略人事、事業開発等を推進。2017年1月に新規事業として立ち上げた日中のクロスボードマーケティング&コマース事業を株式会社トレンドExpressとして分社化して、代表取締役社長に就任。2017年10月、DraperNexas(現DNXVentures)、アコードベンチャーズ等からの資金調達を発表。月の半分を上海で過ごし、日本企業の中国市場でのビジネス成功支援に豊富な実績を有する。
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他の会場では今カタパルト・グランプリをやっているので「人が集まらないかな」と思っていましたが、その予測を超えた人数にお越しいただいていますね。ありがとうございます。
濱野 今回は少人数セッションですから、一体感を持って、皆さんからの質問をお聞きしながら、進めてまいります。
玉川 憲さん(以下、玉川) 最初に、会場の皆さんから「これは聞きたい」ということがあれば、先に聞いておきたいですね。
濱野 そうですね、では手前のほうにいらっしゃる方、お一人ずつお伺いしたいと思います。
発言者1 海外に進出する際の「法規制」について聞ければ嬉しいです。
濱野 まさに始め方のところですね。では次の方どうぞ。
発言者2 我々は東南アジアへの進出を行っています。その際に「プロダクト開発をどこまで内製化するべきか」、もしくは「現地のパートナーをどのような基準で選えばよい」を聞きたいです。
濱野 ありがとうございます。続けてお願いします。
発言者3 グローバル進出にあたり「国内マーケットをまず取り切ろう」という声が出てくると思います。それに対して、皆さんがどう周囲を説得されたのかを聞きたいです。
発言者4 今後英語圏に絞って海外進出する予定ですが、展開先地域をどのように選ぶべきか、具体的なアクションを知りたいです。
発言者5 日本と海外では離職率に違いがあると思います。今コンサルティング会社として韓国・中国・タイに進出しているのですが、少し組織の動きが遅いなと課題を感じています。サービスをより絞って製品化するか、海外の同サイズの会社を買ってしまうか、それかどうにか組織の離職率を下げるか、という選択肢があると考えていて、これらをどう乗り越えればよいのかを聞きたいです。
発言者6 ゲームを作っていますが、海外ユーザーにはまだ使われていません。日本のプロダクトを海外に持って行って受け入れられる際にポイントについて、まさにその先駆者であるスマートニュースの事例とともに教えてもらいたいです。また、海外メンバーとの意思疎通が課題なので、その辺りもお伺いできれば嬉しいです。
日本から世界で勝てるプロダクトを生み出すには?
濱野 皆さん、ありがとうございました。
改めまして今日ですが、こちら一点に絞りたいと思います。
「日本から世界で勝てるプロダクトを生み出すには?」
つまり、日本企業が世界で勝つためにはどうすればよいかです。
このセッションが満席にならないのが、まさに日本の課題と言えるかもしれません。
日本の人口は減少傾向にありますので、国内のビジネスがシュリンクしていくのは明白です。
ニッチなマーケットを取るという戦略もありますが、マクロで見ると、世界に出なければいけません。
30年前と比較すると、日本企業は時価総額のランク外になってしまいました。
特に昨今注目高まるビッグデータの技術は、データの母数が違うこともあり海外のほうが強いです。
日本はICT人材も少ないですし、ポスドク人口も減っています。
鈴木さんは昨日、それに対して危機感があると言っていましたよね。
鈴木 健さん(以下、鈴木) 日本では博士号を取る人が減っていますが、世界ではどんどん増えています。それは、潜在的にグローバル展開や新しいアイデアを生み出せる人が減ることを意味しますので、危機感があります。
濱野 そうですね。またGDP成長率は先進国の成長率は押しなべて鈍化しています。
インドのような国では上がっているので、どの市場を捉えるべきかも今日議論したいですね。
これはOECDが出している消費に関するデータですが、赤い縦線が2019年で、水色がEU、黄色がアメリカです。
これまでの消費は欧米中心でしたが、今後はインド、中国、東南アジアなどが台頭してくるという予測で、これは日本にとっては追い風になるはずです。
鈴木さんと玉川さんは欧米、私と十河さんはアジア中心で事業展開をしているので、2つの面から議論ができると思います。
GAFAとの差別化、どんな体制や仕組みを取っているかなども話せたらよいですね。
では早速ですが、各社がなぜ海外展開するに至ったのか、そしてどのように戦っているかを教えていただきたいと思います。
鈴木さんから、お願いします。
ニュースアプリ「スマートニュース」米国進出の理由
鈴木 改めましてスマートニュースの鈴木です。よろしくお願いします。
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鈴木 健
スマートニュース株式会社
代表取締役会長兼社長 CEO
1998年慶応義塾大学理工学部物理学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化 研究科博士課程修了。博士(学術)。情報処理推進機構において、伝播投資貨幣PICSYが未踏ソフトウェア創造事業に採択、天才プログラマーに認定。著書に『なめらかな社会とその敵』(勁草書房、2013年)。東京財団研究員、国際大学グローバル・コミュニケーションセンター主任研究員、東京大学特任研究員などを歴任。2006年株式会社サルガッソー設立。2012年スマートニュース株式会社(旧:株式会社ゴクロ)を共同創業。2014年9月SmartNews International Inc.設立、Presidentに就任。2019年6月より単独CEO体制となり現職。世界中の良質な情報をなめらかに発信中。
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まず、「スマートニュース」を使われている方はどれくらいいますか?
(会場挙手)
ありがとうございます。
先ほど濱野さんからもあったとおり、スマートニュースではアメリカ版も展開しています。
この1年間で5倍に急成長していて、グローバル全体で2,000万人の月間アクティブユーザー(2019年9月時点)がいます。
なぜアメリカ、海外かと言うと、やりたかったからです。気持ち先行です(笑)。
日本でヒットした後アメリカで展開したくなって、グロービス・キャピタル・パートナーズから出資を受けた時にその話をしたところ「いいね、やってみよう」と言ってもらえました。つまり最初から、株主が応援してくれる状況がありました。とはいえ、シリコンバレー進出は初めてで、英語もできませんでした。
最初にアドバイスをもらったのが、当時グリーの青柳 直樹さん(現 メルペイ代表取締役CEO)です。メルカリの山田進太郎さんがスマートニュースの株主だったので、青柳さんを紹介してくれたのです。
2014年1月に単身でサンフランシスコに乗り込んで行って、最初の失敗は、レンタカーがレッカー移動されたことでした(笑)。サンフランシスコで路上駐車をするとレッカー移動されるという基本的なことも知りませんでした。5年前の出来事ですが、本当にドタバタしながらやってきたことです。
スマートニュースのミッションは、「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」です。大事なのは「世界中の」というところで、初日から世界進出を考えていたということです。
スマートニュースの前のプロダクトはCrowsnest(クロウズネスト)というものだったのですが、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)に持って行き、そこで痛い目にあいました。展示会場のWi-Fiが弱すぎて、アプリがダウンロードできなかったのでした(笑)。そこでオフライン機能のついたニュースアプリを作ろうという方向になり、できたのがスマートニュースです。
一方、「良質な情報」というのは定義が曖昧ですが、これは、バランスのとれた食事のようなものだと捉えています。現在ある問題として、フェイクニュースや、自分に近い意見や欲しい情報ばかり入ってくる「フィルターバブル」というものがあります。つまり、入ってくるものが偏ってしまうわけです。そこでスマートニュースは、バランス栄養食のようなものを目指しています。バランス良く情報を提供して、新たな発見が生まれるようなサービスを作っています。
米国の政治的分断に対する消費者インサイトを分析
鈴木 メディアは特定の読者層を持っていて、アメリカでは、メディアには大きく3種類があります。
例えば、USA TODAYなど自分たちでコンテンツを作るメディアと、TwitterやFacebookのようなソーシャルメディアがあります。そして、我々のようなニュースアグリゲーターです。スポーツ好きがスポーツばかり、エンタメ好きがエンタメばかりの情報を見てしまう状況に対し、興味関心を広げていくのです。
そしてもう一つ大切なのは、政治的なバランスです。アメリカではリベラルと保守が対立しているので、そのバランスをとろうとしています。スマートニュースはアメリカで「色々な観点からニュースを見られるアプリ」というポジショニングをしています。図は、青が民主党支持者、赤が共和党支持者で、左が1994年のデータです。
冷戦終了直後の1994年当時、政治はそこまで分断されていませんでした。右側はトランプ政権前のオバマ政権時ですが、わずか20年ほどでここまで分断されました。しかし、実際には両方のニュースを読みたいと思っていている人達が多いことに気づき、我々はそこをターゲットとしています。
濱野 消費者インサイトに基づく機能での差別化と、各地域を結びつけることに勝機を見出しているということですね。
海外プレイヤーだからこその「客観視」が強みになる
濱野 ある意味、これはアメリカ人が気づいていないポイントだからこそ、そのチャンスをスマートニュースが攻めているということかなと思います。
鈴木 そのとおりです。我々は2016年の大統領選挙の前に、政治的に偏らないように記事を配信することを発表しています。当時はそれを行っているアメリカのプレイヤーはいませんでしたが、トランプ政権後、政治分断がアメリカで大きな社会問題になりました。実は僕はそれ以前から、アメリカ南部を回ってヒアリングをしていたので、それに気づいていました。
濱野 インサイトに基づく機能は、日本企業にとって勝てるチャンスだと思うのです。
例えば中国でも資本力がある企業でも、顧客インサイトとなると弱いです。
日本は宗教色が濃くない分、フラットに物事を見られるのではないかとも思いますね。
鈴木 自分のことではないから客観的に見られるというのはありますね。それは外国に出ていくからこそ発揮できる強みかもしれません。
(続)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/大塚 幸/戸田 秀成
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