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『テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?』全12回シリーズの(その7)は、前回に続き、完全循環型有機農業を目指す「MUSCAプラント」の解説です。1日に100トンもの畜産排泄物を処理し、有用な家畜飼料や有機肥料を生み出すことができる夢のようなシステムですが、実現に向けた課題もあるようです。ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プレミアム・スポンサー Honda R&D Innovationsにサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2019年2月19〜21日
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 4F
テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?
Supported by Honda R&D Innovations
(スピーカー)
串間 充崇
株式会社ムスカ
取締役/Founder
羽生 雄毅
インテグリカルチャー株式会社
代表取締役
福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO
安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役
(モデレーター)
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
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▶『テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?』の配信済み記事一覧
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最初の記事
1. ライフスタイルの多様化で、農業は「都市部集中」「個体管理」にシフトする
1つ前の記事
6. 昆虫を活用した「完全循環型有機農業」でタンパク質危機に挑むムスカ
本編
串間 肥料や飼料の分野は薄利多売の世界で、既存の商品がすでに非常に低価格なので、それらに勝てるだけの安い原価で製造するためには、大きな工場が必要になってきます。
その工場さえできれば、十分に勝負できる価格で、しかも高品質な肥料と飼料の生産ができることが分かっています。
井上 一方で、海外のライバル会社たちはもう、とてつもない資金を集めて工場をつくり始めているわけですよね。
串間 工場をつくるという発表はされていますが、実際に稼働し始めたという情報はないので、皆さん結構苦労されているかなあと思っています。
福田 大量飼育に課題があるということですか?
串間 そうですね。実際に昆虫を扱ってみると分かるのですが、おそらく昆虫もストレスを感じるのだと思います。
ですから大量に過密空間で飼育しようとすると、ストレスで死んでしまったり、卵を産まなくなったりします。
おそらくライバル会社は、工業化に向けて効率を高める作業に苦労しているのだろうと想定しています。
我々ムスカはその課題をクリアしていますので、そこが強みだと思っています。
現状ラボで実現できていることを、原料と空間容量を増やすだけということです。
一応、重量物を扱うので、そうしたオペレーションを自動化していく必要はあります。
それだけで、我々が今やろうとしていることはクリアできます。
ムスカプラントの建設コスト、糞尿の収集方法は?
(左から2人目) 株式会社ムスカ 取締役/Founder 串間 充崇さん
安田 昆虫工場を建設するにはどれくらいコストがかかるのですか?
植物工場の場合は、10億円〜30億円ぐらいを想定します。
串間 我々が今想定している一番効率の良いプラントは、1日に100トンの原料を処理することができます。
要するに畜産排泄物を毎日100トン投入できるプラントで、その場合だと7~8億円から10億円ぐらいを想定しています。
安田 100トンの畜産糞尿を収集するというのは、結構簡単にできるのですか?
串間 簡単ですね。今現在、畜産糞尿は堆肥センターというところに大体集まるようになっているのです。
ですから、もう集まるルートがあるので、その堆肥センターをリプレイスして処理方法を変えるだけです。
福田 堆肥センターには、1日当たりどれくらいの量が集まってきているのですか?
串間 それは規模にもよりますし、地域特性もかなりあります。
けれども、100トンぐらいはすぐ集まります。
我々のラボが宮崎にありますが、宮崎だと大体、中規模の養豚農家3軒分ぐらいで大体100トンのイメージなので、大規模農家だともっと多くなります。
例えば北海道あたりのメガファームでは、1カ所で200トンぐらいの畜産糞尿が毎日出ています。
羽生 堆肥センターをそのままリプレイスしようとすると、何か足りないものや多すぎるものが出てきたりしないのですか?
串間 全くないですね。我々は原料を100%リサイクルすることができます。
そして我々の仕組みからはゴミが出ないので、環境負荷も減り、一石三鳥、四鳥ですね。
すばらしい仕組みだと我々は自負しています。
井上 いやあ、研究でもそうですが、例えばある数値が2倍になったと言うと、結構みんな「おおー!」と言ってくれるのですが、それが100倍になったと言うと「絶対ウソだ!」と言われがちです。
100%できると言われると、「そんなわけないでしょう」というのが人間の心情だと思うのですが。
串間 本当に、もうできてしまうのです。
さっきも言ったように、ラボでやっていることと大型化してやることは、基本的に一緒なのです。
井上 逆に、何かできないことはないのですか?
串間 資金調達ぐらいですかね(笑)。
▶飼料と肥料に革命を起こすハエ技術のムスカ、丸紅に続き伊藤忠と提携し10億円超調達へ(TechCrunch Japan)
井上 それほど完璧なのですね!
串間 もともとが、自然の摂理なのです。
我々がプラント化するのは、ハエという生き物が4億年前から地球上の生態系に組み込まれ、食物連鎖に組み込まれている仕組みです。
地球上の自然界で綿々と営まれてきたことを、我々がほんの少し効率的にしただけなのです。たくさん卵を生むようにするとか。
それだけのことなのです。
発酵による従来の堆肥生産よりも高い生産性
福田 ちょっと質問してもいいですか。
生ゴミが、イエバエの卵と排泄物になるわけですね。
そして卵は飼料になって、排泄物も肥料になるということでした。
そこはものが変わっているので分かりやすいですが、元々の生ゴミを肥料として使った場合と比べると、コストや価値にどれくらいの差があるのですか?
串間 全然違います。
生ゴミを肥料として使おうとするときは、発酵プロセスを設ける必要があります。
そのままでは土の中で腐ってしまうだけで、それはある意味で毒なのでそのままでは撒けません。
きちんと有機物を微生物で分解して肥料になったものを撒く必要がありますが、完熟させるためには数年かかります。
それを我々のハエだと1週間でできるわけです。
福田 つまり、微生物対ハエなわけですね。
串間 おっしゃるとおりです。ライバルは微生物です。
井上 本当に、何か弱点はないのですか?しつこいですが(笑)。
串間 しいて言えば、弱点というかビジネス上でネガティブなところは、やはり「イエバエ」というネーミングやイメージでしょうか。
「ハエ」と聞いただけで「気持ち悪い!」と言われてしまいます。
案外、若い女性などは平気で生きている幼虫を触ったりできるのですが、年配の方だと、苦手な方がかなりの比率でいらっしゃいます。
井上 ハエは神経の研究などでよく使われたりするので、僕には違和感はないのですが、そういう面もあるね。
また、ライバルは微生物による発酵ということでしたが。
串間 そうですね。微生物の堆肥センターをハエに置き換えるということです。
(続)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/戸田 秀成
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