▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友達申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! Youtubeチャネルの登録はこちらから!
ICCサミット FUKUOKA 2019『テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?』のセッション書き起こし記事を全12回シリーズでお届けします。(その1)は、世界最大規模の植物工場ネットワークを持つファームシップの安田さんによる解説です。私たちの生活様式の変化は、農業の在り方をどのように変えるのでしょうか? ぜひご覧ください!
▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)を募集しています。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プレミアム・スポンサー Honda R&D Innovationsにサポートいただきました。
▼
【登壇者情報】
2019年2月19〜21日
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 4F
テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?
Supported by Honda R&D Innovations
(スピーカー)
串間 充崇
株式会社ムスカ
取締役/Founder
羽生 雄毅
インテグリカルチャー株式会社
代表取締役
福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO
安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役
(モデレーター)
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
▲
▶『テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?』の配信済み記事一覧
本編
井上 浄さん(以下、井上) こんにちは!リバネスの井上です。
▼
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。博士課程を修了後、北里大学理学部助教および講師、京都大学大学院医学研究科助教を経て、2015年より慶應義塾大学特任准教授(現任)、2018年より熊本大学薬学部先端薬学教授(現任)、慶應義塾大学薬学部客員教授(現任)に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所設立の支援等に携わる研究者。多くのベンチャー企業の立ち上げにも携わり顧問を務める。株式会社ヒューマノーム研究所取締役、経済産業省「未来の教室」とEdTech研究会委員、NEDO技術委員、株式会社メタジェン技術顧問、株式会社サイディン技術顧問、等兼務。
▲
この会場には「未来を見たい」と願う方々にお集まりいただいているかと思います。
僕たちはこれから、「農」と「食」と「健康」について、思う存分未来を語ります。
そして、それらがつながることで、どのような世界になっていくのか?
その世界の一部を僕らはすでにつくりはじめているので、その様子を見ていただき、会場の皆さまと何かご一緒するきっかけになればと願っています。
まずは自己紹介も兼ねて、お一人ずつ事業内容やどのような未来を目指しているのかをお話しいただきたいと思います。
ファームシップの安田さんからお願いします!
「農」と「食」の未来を創造するファームシップ
安田 瑞希さん(以下、安田) ファームシップ代表の安田と申します。
▼
安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役
1981年3月福岡県生まれ。花卉専業農家の長男。明治大学農学部卒業。公認会計士。大学にて施設園芸を専攻し、卒業後渡米。米国オレゴン州のOregon Roses, Inc.にてバラの生産管理及び販売業務に従事する。帰国後、2007年新日本有限責任監査法人に入社。国際部にて監査業務及び内部統制(JSOX)のアドバイザリー業務を通じて、大手総合商社のグローバル監査を担当。退職後、ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパン社の経営企画、事業開発マネージャーとして事業推進を行う。その後、大規模植物工場事業運営会社の事業企画責任者として、国内外の事業開発及び経営管理を担当。2014年3月ファームシップを設立し、同社代表取締役就任。農家の長男としてのバックグラウンド、監査法人での経験や外資系事業会社での経験を活かし、事業戦略、資本政策及び渉外活動を担当している。
▲
ファームシップは、「農と食の未来を創造する」をミッションに掲げています。
まず簡単に事業の話と、それから私たちが描く未来の話をさせていただきたいと思います。
世界最大規模の「植物工場ネットワーク」を稼働
安田 私たちの会社では、テクノロジーを武器に、農業に関するあらゆることを行っています。
生産、流通のほか、そこに人材を送り込むこともしていますが、なかでも特徴的な事業が、「植物工場事業」 です。
オペレーターモデルという形で、ここ5年の間に大規模な植物工場を次々と稼働させています。
今年も大手企業のセイノーホールディングスさんや三菱ガス化学さんと一緒に植物工場をつくり、今では世界最大規模のネットワークを持っているのではないかと思います。
▶セイノーHD×ファームシップ:中京地方で複合機能型植物工場稼働へ
▶国内最大規模の完全人工光型植物工場の竣工について
今日は植物工場や農業分野のスピーカーとして呼ばれているので、この分野の未来についてお話しします。
人々の嗜好・ニーズ・ライフスタイルは多様化する
安田 まず私たちファームシップは、決して単なる「植物工場の会社」ではありません。
「農業がどのように人類の発展に貢献できるのか」、そこに向き合っている会社です。
色々な課題がある中で、結局農業は何のためにやるのかというと、人の暮らしを豊かにするためです。
したがって、どうすれば人の暮らしは豊かになるのか、それをしっかり分析して、そこで農業ができることは何か、そこに必要なテクノロジーは何かと逆算して考えています。
今回は未来考察のテーマをいただいたので、日頃考えていることを、ごく簡単にお示しします。
「現在〜短期的未来」の変化と「中〜長期的未来」の変化の2つに分けて考えました。
今日のディスカッションでは、すごく先の未来の話もあれば、足元の話もあると思っています。
私たちの会社では、足元では植物工場の事業を展開しつつ、テクノロジーの研究ではさらにその先を見ている、そのようなバランス感覚で事業を行っています。
短期的には人に対するソリューションを考えているので、以下の変化を挙げました。
・嗜好の多様化
・ニーズの多様化
・ライフスタイルの多様化
・価値観の多様化
短期的にはこのような多様化が、次々と生じていくだろうと考えています。
そして中〜長期的には、昔からあった「生きることへの執着」や「若さへの欲求」などが、さらに顕在化していくのではないかと思っています。
健康であることや若さを保つことに、「食」や「医」によるソリューションが求められてくると考えています。
ニーズの多様化は「都市部集中」「個体管理」の農業形態を生む
安田 私たちが短期的な視点で農業を見るときには、「人がどこに住むか」を考えます。
人のニーズが多様化すると、ニーズ即応型の生産技術と流通形態が必要になります。
すると短〜中期的には、人は都市部に集中していきます。
なぜなら、ニーズ即応型を実現するには情報だけでなく物理的にも近くなることが必須になるからです。
モノを運ぶにはリソースも時間も必要なので、人が生活している消費地の近くでモノを作ることが求められ、かつ需要予測に応じてリアルタイムにモノを作ることが重要になってきます。
したがって、ニーズの多様化は短〜中期的には、「物理的に1つの場所にある」ことの合理性がどんどん高まってきます。
今、農業は大きなフィールドを管理していく「群管理」が主流ですが、より細分化された「個体管理」の技術が必要になってきます。
さらに、エネルギーソリューションの問題も重要です。
ニーズが多様化してくると、オーガニックなどもそうかもしれませんが、地球環境にやさしい農業や食料生産のやり方を求める声も大きくなります。
例えば、ある系の中でCO2の排出量をトータルでゼロにする取り組みも求められるでしょう。
SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)というワードが注目を浴びていますが、そのようなものに対応した農業も必要になっていきます。
井上 「ファームベース構想」とありますが、ここには人も植物工場も、全部が集まってくるのですか?
安田 詳細は省略してありますが、例えば飲食店があれば、病院もあるというイメージです。
日本の場合、全てが東京に集まるとは言いませんが、都市圏にこのようなものが集まる傾向はしばらく続くだろうと思っています。
そのような状況で成立しうる農業とは何か、食料生産とは何か、そしてそこに必要な技術は何かを短〜中期的に掘り下げています。
その一つが、植物工場です。
長期的未来では、「医食同源」の傾向が強まる
安田 長期的な面では、改めて「医食同源」が強くクローズアップされてくると思っています。
先ほど申し上げた、長生き、若さ、健康などの生への執着を「医」に求めるだけではなく「食」にも求める傾向がより強まり、例えば医師の処方箋が「食」にも影響してくることが考えられます。
その「食」を提供できる技術が整ってくれば、さらにその傾向は強まるでしょう。
植物工場における管理・エネルギー・ヒトの問題
安田 最後に、植物工場についてお話しします。
皆さんはあまりご覧になったことがないかもしれませんが、今の植物工場は、外で行っていた水耕栽培を建物の中に入れて多段化しただけ、と言えないこともないです。
しかし、先ほどお話ししたように、多様化された嗜好に対応し、ニーズ即応型を訴求すればするほど、「群管理」より「個体管理」、すなわちパーソナライゼーションが必要になってきます。
そしてエネルギーの問題です。
今は、野菜や植物以外の空間にも大量のエネルギーを投入して、冷やしたり光を当てたりしています。
それを省エネ効果で最適化していく、いわゆるオプティマイゼーションが必要になります。
あとはヒトに関する部分になります。
食料の生産に労働力をどれくらい投入していくかですが、この点は社会構造の変化もあり、自動化が重要な課題になると思います。
簡単ですが、以上が農業に関して私たちが描いている未来と、そこに向けた取り組みになります。
井上 これは楽しみですね!ありがとうございます。
▶以下の植物工場の見学レポートもぜひご覧ください!
ファームシップが運営する世界最大規模の完全人工光型植物工場「富士山グリーンファーム」を見学しました!【ICCビジネス・スタディツアー vol.5】
(続)
次の記事を読みたい方はこちら
続きは 2. 植物工場野菜は「お日様で育った野菜」への根強いニーズにどう応えるのか をご覧ください。
▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友達申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! Youtubeチャネルの登録はこちらから!
編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/戸田 秀成
他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。