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8. あなたの健康情報・疾患リスクは、毎日捨てる「便」に詰まっている

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『テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?』全12回シリーズの(その8)は、メタジェンの創業者にして世界的な腸内細菌研究者の福田真嗣さんが、私たちが毎日ただ捨てるだけの「便」にはたくさんの健康データが含まれていると力説します。今日から、トイレに流すのがもったいなくなるかも? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プレミアム・スポンサー Honda R&D Innovationsにサポートいただきました。


【登壇者情報】
2019年2月19〜21日
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 4F
テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?
Supported by Honda R&D Innovations

(スピーカー)
串間 充崇
株式会社ムスカ
取締役/Founder

羽生 雄毅
インテグリカルチャー株式会社
代表取締役

福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO

安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役

(モデレーター)

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

『テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?』の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. ライフスタイルの多様化で、農業は「都市部集中」「個体管理」にシフトする

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本編

井上 では、糞尿の話も出てきたので、そろそろメタジェンの話に移りましょうか。

それでは福田さん、お願いします。

腸内細菌で病気ゼロの実現を目指す「メタジェン」

福田 こんにちは。メタジェンの福田と申します。


福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO

2006年明治大学大学院農学研究科博士課程を修了後、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て2012年より慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授、2019年より同特任教授。2016年より筑波大学医学医療系客員教授、2017年より神奈川県立産業技術総合研究所グループリーダー、2019年よりマレーシア工科大学客員教授、JST ERATO副研究総括を兼任。2013年文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。2015年文部科学省科学技術・学術政策研究所「科学技術への顕著な貢献2015」に選定。同年、第1回バイオサイエンスグランプリにて、ビジネスプラン「便から生み出す健康社会」で最優秀賞を受賞し、株式会社メタジェンを設立。代表取締役社長CEOに就任。専門は腸内環境制御学、統合オミクス科学。著書に「もっとよくわかる!腸内細菌叢 健康と疾患を司る“もう一つの臓器”」(羊土社)。

今、イエバエの糞尿の話で「微生物」の話題が出ましたが、まさに僕は、その微生物の力を使った事業開発を行っています。

皆さんは、「腸内細菌」をご存知でしょうか。

お腹の中に棲んでいる微生物ですけれども、イエバエのお腹の中にも腸内細菌がいます。

だからおそらくムスカさんのイエバエの機能も、実は微生物が担っている可能性があるかもしれません。

この画像は、マウスの大腸を輪切りにしてカラーイメージングをしたものです。

外側の赤色と青色の部分がマウスの腸の細胞で、内側全体のグリーンに染まっているところが、腸内細菌です。

内側で青く見えるのは、マウスが食べた植物です。

実は私たちのお腹の中には、こうした腸内細菌がぎっしりと詰まっています。

先ほど井上さんが人間の体は37兆個の細胞でできていると言われましたが、それよりも同程度かはるかに多い微生物の細胞が、私たちの腸内にはいます。

この腸内細菌がいる場所は腸の中なので「体の中」のように思えますが、実は体の外側です。

ちょっとイメージが難しいかもしれませんが、口から肛門まで人間の体を筒状に単純化すると、ストローやちくわと一緒の構造と考えることができます。

ですから、腸内というのは外環境とつながる体の外側なのです。

今日のトピックスの一つである「食」を考えてみますと、「食べる」という行為は体外から体内に栄養素を取り込む行為です。

その体外と体内のはざまにある腸には、このような無数の腸内細菌が棲み着いているのです。

そして、私たちが食べたものをさらに腸内細菌が分解して、その結果作り出されたものが、私たちの体に供給されているのです。

そしてさらに面白いことは、皆さんのお腹の中に棲んでいる腸内細菌の種類や組成が、人によって違うということです。

一卵性双生児でも違うことが分かっています。なぜならば、腸内細菌が住んでいる場所は”体外”だからです。

仮に私たちが同じものを食べたとしても、果たして同じものが体に供給されるかといえば、答えはノーなのです。

メタジェンは、この腸内細菌のバランス、あるいは機能をきちんと理解することによって、究極的には病気ゼロを実現するというビジョンを持っています。

腸内細菌のバランスの悪さがあらゆる疾患の原因に

福田 お腹の中の腸内細菌のバランスが悪いと、色々な病気になることが、近年の研究で次々に分かってきています。

もちろん腸の病気もそうですけれども、例えば糖尿病や動脈硬化といった代謝疾患にもなってしまったりもします。

さらにはアレルギーなどの免疫疾患や、自閉症や多発性硬化症、パーキンソン病などの脳疾患との関連も分かってきています。

なぜ脳疾患と関連するかというと、実は脳と腸は迷走神経でつながっていますし、ホルモンでもやり取りをしているのです。

一方で、悪いだけではありません。

当然、腸内細菌のバランスが良ければすごく良い効果もあるわけです。

栄養素を供給してくれたりするなど、色々な良いバランスを保ってくれています。

便は健康情報がたくさん詰まった「茶色い宝石」

福田 皆さんのお腹の中にいる腸内細菌の情報は、日々、便の中に出てきます。

便の中には、皆さんの健康あるいは疾患リスクに関する情報がたくさん詰まっているので、僕は宝石と同じくらいの価値があると思って、便のことを「茶色い宝石」と呼んでいるのですが、これが一向に流行りません。

井上 本当に流行らないですよね(笑)。

福田 全く流行らないです。

2016年くらいからメディアを使って大々的に言っているのに、全然流行りません。

安田 私は、福田さん以外から聞いたことがないです(笑)。

福田 会場の皆さんで、「茶色い宝石」を知っていた方はいますか?

(会場を見渡して) あっ、結構いるじゃないですか!

では、「茶色い宝石」という言葉を、会話の中で使ったことがある人は?

え、いるじゃないですか! 少しずつ広まっている!(笑)

(会場笑)

便を薬として使う「便移植」の臨床試験がスタート

福田 僕らがやろうとしていることも、究極の「廃棄物利用」と言えます。

便の中には皆さんの健康情報も詰まっていますし、便移植と言って、便を治療薬として使う臨床試験がスタートしています。

海外でも、便の中にいる腸内細菌を薬として使おうというベンチャーが次々と出てきています。

アメリカではこれまでに総額6兆円が投資されています。

これくらい大事なものなのに、肥料として一部使われはするものの、基本的には捨てられています。

映画『ラストエンペラー』で、皇帝がウンチをすると、お付きの人がそれを見るというシーンがありますが、それは要するに、便で健康状態が分かることを昔の人は知っていたということです。

そこで僕らは、テクノロジーの力を使って便から情報を取り出して、それを皆さんにフィードバックすることによって、便から健康長寿社会、さらには病気ゼロを実現したいと考えています。

(続)

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続きは 9. IoTトイレで“便データ”を集め、便から世界を健康にする をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/戸田 秀成

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