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「ズバリ聞きたい!ベンチャーキャピタルは今後どうなっていくのか?」全7回シリーズ(その2)は、オプトベンチャーズ野内さんが、自社のVCファンドの特徴を解説します。オプトグループのCVCでありながら、狙うのはストラテジックリターンではなくキャピタルゲインだと明言する野内さん。GCP仮屋薗さんによる、この四半世紀のベンチャーエコシステムの振り返りにもご注目ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 ゴールド・スポンサーのfor Startups, Inc.様にサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 2C
ズバリ聞きたい! ベンチャーキャピタルは今後どうなっていくのか?
Supported by for Startups, Inc.
(スピーカー)
仮屋薗 聡一
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
代表パートナー
野内 敦
株式会社オプトベンチャーズ
代表取締役
宮宗 孝光
株式会社ドリームインキュベータ 執行役員 /
DIMENSION株式会社 代表取締役
村田 祐介
インキュベイトファンド
代表パートナー
(モデレーター)
竹内 寛
MAGENTA Venture Partners
Managing General Partner
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1つ前の記事
1. 徹底議論!ベンチャーキャピタルは今後どうなっていくのか?
本編
竹内 仮屋薗さんが今、機関投資家から資金を集めることがポイントだとご指摘されました。
グロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、グロービス)がそれをできている理由といいますか、どういう過程で今にたどり着いたのか、そこのところを詳しくお聞かせいただけますか?
1996年当時のベンチャーエコシステムを振り返る
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 仮屋薗 聡一さん
仮屋薗 やはり最初は、産みの苦しみがありました。
日本における1996年のベンチャーエコシステムでは、スタートアップ企業が上場するマーケットがそもそも存在しませんでした。
店頭市場はありましたが、それも売上20億円、利益4億円くらいの中堅企業がリストする市場でした。
今のスタートアップの市場ができたのはマザーズ、ナスダック・ジャパンができた2000年で、それまでは今のような市場もなく、フレッシュな起業家もいませんでした。
また、1990年代後半は成長産業が特定されておらず、「IT産業は伸びない」」とすら言われていました。
1997年の山一證券の経営破綻もあり、投資家がつかない期間が長く続いていたのです。
そのような中で我々は日本で1号ファンド 5億円の資金調達をして、やっと良いリターンを出すことができました。
それでもなかなか資金が集まらない中で、我々は海外に活路を求めて、2号ファンドでエイパックス・パートナーズとジョイントベンチャーを組みました。
それにより、世界中の機関投資家の皆様とのインベスターリレーション(IR)、ファンドマネージメントのあり方を学びました。
やはり、ゼロから何かを獲得することは非常に難しいので、偉大なロールモデル、師があってこそ学べるところが大きいと思います。
現在、日本ベンチャーキャピタル協会(以下、JVCA)のLPリレーション部会長の村田さんのもと、私はただの部会員として(笑)、機関投資家から資金を預けてもらえるようにと勉強中です。
竹内 ありがとうございます。
では今お名前が挙がりました村田さんにもお話を伺いましょう。
国内VCのパフォーマンス・ベンチマークの整備
村田 当時を振り返ると、まさに「機関投資家の資金を預かることができているVCはグロービスしかない」、そんな時代が長く続いていました。
それ以前もジャフコやNIF(エヌ・アイ・エフベンチャーズ/現:大和企業投資株式会社)などで運用はされてきましたが、リーマンショックとともに、そのモメンタム(勢い)は完全に変わりました。
そのような状況の中、JVCAでは5年ほど前から、仮屋薗さんのファンドにLP出資されている日本を代表する機関投資家の方々と私設の勉強会をスタートしました。
その方々と議論した結果、「資金が集まらないのは、様々なスタンダード(標準化)が足りていないからだ」との結論に行きつきました。
国内VCのパフォーマンス・ベンチマークをどうしたらつくれるのか。そもそもベンチャー企業に対して公正価値評価をしているVCがいない。そうした問題に対して、JVCA全体で取り組んでいこうとしたのです。
2015年から2019年までは仮屋薗さんに会長として陣頭指揮をとっていただき、私も陰で支えながらここまでやってきました。
直近では、2020年3~4月頃に国内VCのパフォーマンス・ベンチマークを公表できる状況になりそうかなと思います。
▶関連:ベンチャー投資、成績比較しやすく JVCAが指標作成(日本経済新聞)
竹内 ありがとうございます。
それが実現すると、VCの近代化・可視化の度合いが今後大きく上がって行く感覚を持ちました。
宮宗さん、野内さんにもお聞きしたいと思います。
どのような投資家から資金をお預かりして、どのような期待を受けて、それに対してどのような取り組みをされていますか?
国内VCに対する、機関投資家の期待と温度感
株式会社ドリームインキュベータ 執行役員 / DIMENSION株式会社 代表取締役 宮宗 孝光さん
宮宗 我々がDIMENSIONを立ち上げたのは2019年の10月で、公表している機関投資家はみずほ銀行さんです。
今ファンドをレイズしながら投資支援しているので、3~4月にはもう少し機関投資家を公表できるかなと思います。
先達である仮屋薗さんや村田さん、機関投資家の方々がマーケットを切り拓き大きな資金を引き込んでくださったおかげで、そこからベンチャー企業の資金調達の規模が上がってきました。
我々は現在アメリカや中国にも投資していますが、両国では100億円規模の投資は普通で、逆の言い方をすればその規模に達しないベンチャーはメジャーになれないのが現状です。
ですから我々も、機関投資家の方々からより信頼していただき、資金をより預けていただく流れをつくって、それを国内起業家の方に渡していくことが大事だと思っています。
それにより、挑戦する起業家の方もさらに増えていくのかなと感じています。
オプトベンチャーズは「キャピタルゲインを狙う」CVC
野内 わが社のファンドも、似たところがあります。
多くの方が「オプトベンチャーズのファンド資金は、全部オプトグループが出しているのでは」と誤解されているのですが、1号ファンドと2号ファンドでは日本の3メガバンクに入っていただき、かつ機関投資家比率は7割ぐらいです。
実は外部からの資金がほとんどで、その中でも、機関投資家から多くの資金をお預かりしています。
なぜCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)でそれができているのかについて自分なりに分析しているのですが、我々は「CVCだけれども、狙うのはストラテジック・リターンではなく、キャピタルゲインだ」と明言しています。
持続的に投資事業をやるならば、利益を出さねばなりません。
利益は投資先企業が成長しないと出ませんので、CVC投資とキャピタルゲインは両輪だと、投資家の皆さんにお話ししています。
そして、なかなか良いベンチャー企業を発掘できずにいる金融機関の方の代わりに、それを請け負わせていただいています。
このスタンスでしっかりと良い成績が出てくれば、国内の機関投資家の方々が我々のようなプレーヤーを信頼してくださり、桁が1つ、2つ上の資金を出していただける土壌ができるのではないかと考え、日々活動しています。
竹内 ありがとうございます。
私の会社はCVCではなくピュアフィナンシャルなのですが、それでも三井物産系だと「三井物産の商売なんでしょ?」と言われることはよくあります。
したがって、外部から資金を集める時はそこは切り離してピュアフィナンシャルとして整理しています。
やはり、事業会社の子会社VCとなると、そのどちらかに寄せないと究極的にはコンフリクトが生じるように思います。
その辺りはどのようにお考えでしょうか?
親会社に対する“ファーストルック”の権利を保有
野内 オプトグループでは、VCファンドを立ち上げる際「少額の出資に関しては、すべてオプトベンチャーズで出資する」と決めました。
そして、「オプトグループとしての戦略的な投資が必要になった場合には、しっかりと諮問委員会を開き、なぜ本体のオプトグループが投資する必要があるのか議論を進める」というレギュレーションをつくりました。
投資案件はすべてオプトベンチャーズを通して、「この会社はVCとしては投資に値しない」と決めた上で、オプトグループが出資するかどうかを決めてもらいます。
この“ファーストルック”の権利を子会社であるオプトベンチャーズが取ったことが、社内的には最大のイノベーションでした。
2000年代前半から比較的大きな会社がベンチャー企業に出資をして“オープンイノベーション”的なことをやろうとしましたが、過去のトラックレコードをレビューすると、そのほとんどが親会社の事業成長に寄与していないというのが私の所見です。
であれば、むしろ子会社VCとして投資先企業と経営の目線を合わせて、一緒にその事業の拡大を目指せばよいのではと考えたのです。
少し変わった会社かもしれませんが、このような棲み分けを自分の中でも意識しており、ことあるごとに社内でも説明をしています。
竹内 ありがとうございます。今、村田さんが頷いていらっしゃいましたね。
村田 野内さんは、この数年間コンスタントに投資先を上場に導いていらっしゃいますよね。
つい最近も上場のセレモニーで鐘を鳴らしに行かれた写真を拝見しましたが、その再現性がすごいと思いながらずっと見ています。
特にシェア(持分比率)の高い出資先のガバナンスをどのようにやりくりされているのか、ぜひお伺いできればと思います。
野内さんが心がける「事業目線」の投資スタイルとは
野内 今お話に挙がったのは、2月7日にマザーズに上場したジモティーですね。
ジモティーは、6年ぐらい前に現ICCパートナーズ代表の小林雅さんにご紹介いただきました。
そのときは本体による投資で、できるだけシェアを取ったほうが絶対うまくいくという予感があり、「シェアは取れるだけ欲しい。その代わりグロースはお手伝いします」と申し出て、支援させていただきました。
最初の出資は45%前後のシェアで、持分法にはなりますが子会社化ではないので、ジモティーに自由な経営をお任せしました。
ダイリューション(株式持分の希薄化)の結果IPO時は30%ほどのシェアでしたが、こちらのコミットメントを示す意味でも、当時はシェアをとることが必要でした。
私はずっと事業をしてきたので、投資してただ成長を待つよりは、ボードメンバーに入って起業家の方に繰り返し「こうしたほうがいいと思う」「こういう選択肢があるけれどもどうか?」という対話をやらせていただくケースが多いです。
現在のファンドでは、レンタルスペースの貸し借りサービスを提供するスペースマーケットにもリードインベスターとして入らせていただいて、取締役に就いています。
とにかく事業目線を持って事業が伸びるポイントを探る役回りで、投資家兼ボードメンバーとして関与させていただいています。
日本ではあまりなかったと思いますが、そうした独自スタイルで投資しています。
竹内 ありがとうございます。
私は日本のVC事情をよく存じ上げないのですが、野内さんのようなスタイルは稀なケースなのでしょうか?
仮屋薗 野内さんの素晴らしいところは、オプトの創業メンバーでもあって、事業をご自身で創っていらっしゃるところですよ。
それに加えて、本体の取締役としての立場、VCの代表としての立場として、複雑なグループ内のコンフリクト(対立)をマネジメントするガバナンスの視点もお持ちです。
私はVCしかしたことがないので、経営者・事業経営についてのアドバイスは自分自身の力がまだまだと思っています。
野内さんは稀有なご経験とバックグラウンドを持っていらっしゃるからこそ、そうしたスタイルができるのだと尊敬します。
(続)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成
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