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ICC FUKUOKA 2021 カタパルト・グランプリに登壇いただいた、ハイラブル 水本 武志さんのプレゼンテーション動画【音環境分析技術で、Webや対面の会議をリアルタイムで見える化する「ハイラブル」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プラチナ・スポンサーのAGSコンサルティング様にサポート頂きました。
▶【速報】自律分散型水循環システムの社会実装に挑む「WOTA」がカタパルト・グランプリ優勝!(ICCサミット FUKUOKA 2021)
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【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 7A
カタパルト・グランプリ
– 強者が勢揃い –
Supported by AGSコンサルティング
水本 武志
ハイラブル株式会社
代表取締役
2013年 京都大学大学院 情報学研究科 博士後期課程修了。博士(情報学)。カエルの合唱の時空間構造の可視化と人とロボットの合奏の研究に従事。IROS NTF Award 等受賞。同年にホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンに入社し、リサーチャとして車内の音声認識やロボット聴覚の研究に従事。2016年にハイラブル株式会社を創業し、オンラインとオフラインの話し合いの見える化サービス Hylable を開発。これまでに様々な学校の話し合いの授業や企業研修を中心にのべ18,000人以上の会話を分析。第17回 日本eラーニング大賞厚生労働大臣賞、リアルテックベンチャーオブ・ザ・イヤー2019などを受賞し、異能vationプログラム破壊的な挑戦部門の挑戦者に採択。
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水本 武志さん はじめまして、ハイラブル株式会社の水本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私たちは、音環境分析でコミュニケーションを豊かにすることをミッションとしている会社です。
京都大学・自動車メーカーで「音」を研究
私は、15年ほど音の研究をしてきました。
大学では、カエルの合唱の研究や、人とロボットの合奏の研究、あるいは複数の声を聞き分ける”聖徳太子ロボット”の研究などをしていました。
その後企業に入って、車を音声で操作するといった研究もしてきました。
「カエルの合唱」を光で見える化する研究
ところで皆さん、カエルの合唱を聴いたことはありますか?
こういうものです(プレゼン当日は音声が流れました。動画でぜひご覧ください)。
皆さん、もしかしたら、彼らが適当にゲロゲロ鳴いていると思っていませんか?
実はパターンがあるのですが、音声を聞いて聞き分けられましたか?
多分厳しいと思いますが、これを聞き分けられるようにしたのが、僕たちの研究です。
▶カエルの合唱の法則を数学と光計測を使って発見(京都大学)
実験では、「カエルホタル」と呼んでいる、マイクとLEDをくっつけたデバイスを田んぼにずらっと並べます。
カエルが鳴くと近くのマイクが音声を拾ってLEDが光るので、カエルがどこで鳴いているのかが分かります。
先ほどと同じ音声を、視覚的に確認すると、LEDの点滅により、真ん中で交互に鳴いていることが分かります。
このようにしてもう少し詳しく調べていくと、カエルの合唱は、適当に鳴いているのではなく、コミュニケーションの構造があることが分かりました。
ハイラブルでは、今、人の会話の分析をしていますが、実現したいことは同じで、ごちゃごちゃしたコミュニケーションの中から構造を見つけ出すということです。
学校の授業形態は大きく様変わり
具体的に取り組んでいる場は、学校です。
皆さん、「学校の授業」というと、どのようなイメージでしょうか?
先生が前に立って講義し、それを生徒が聞くというイメージではないでしょうか?
しかし実際、今学校の授業は大きく変わっています。
「学習者中心の教育」といって、この写真にあるように、話し合いをしたり、グループになって能動的に学ぶアクティブ・ラーニングがとても増えています。
アクティブ・ラーニングの現状
これは2015年の調査ですが、既に国内の90%近くの小中学校でアクティブ・ラーニングが導入されているという調査結果がありました。
具体的に何をしているかというと、子どもたち同士が話し合いをするという活動です。
これが実際の様子ですが、複数のグループで同時に話し合いが行われています。
問題点は2つあり、先生は子どもたちの話し合いを全部聞くことができません。
子どもたちの立場に立つと、せっかく頑張っても活躍を先生に見つけてもらえるかどうかは運次第になってしまいます。
「話し合い」の評価は難しい
この問題を解決するために、学校の先生たちは色々なトライをしていきました。
例えば、子どもたちに自己評価や相互評価をしてもらうというものですが、話し合いをしながら自分や相手を客観的に評価するというのは、とても難しいスキルなので、これだけに頼るわけにはいきません。
では書き起こしをするかというとすごく時間がかかりますし、特にうるさい環境では音声認識はうまくいかないため、これも厳しいものがあります。
では先生が近づいて聞くかというと、先生が近づいたら黙ったりしていませんでしたか?
僕はそんなタイプの生徒だったのですが、そんなこともあると、話し合いの雰囲気が壊れてしまいます。
では仕方がないからテストか成果で見ようとすると、プロセスの評価ができないため厳しいものがあります。
音環境分析で「話し合いを見える化」
この問題を解決するのが、私たちの音環境分析で、話し合いを見える化する技術です。
この技術を使うことで、評価のための客観的なエビデンスを提供することができます。
対面の話し合いでは、このような卵型のマイクを話し合いの輪の真ん中に置いて分析します。
Web会議でも同様に分析することができます。
話し合いの分析方法
話し合いの輪の真ん中に卵型のマイクを置き、Webブラウザから、誰がどこに着席しているのかを記録して録音ボタンを押すと、分析することができます。
音環境分析から分かること
どのようなことが分かるかというと、以下の通りです。
誰がどこに座っているかが色で分かるので、色分けによって誰がどのように話をしているのかが分かります。
横軸が時間で、時間が経つにつれてどのように話し合いが変化していったか、いつ盛り上がって、いつ盛り下がったかが分かります。
音の再生もできるので、実際に何と言っていたのかまで聞き返すことができます。
これを足し合わせると、合計でどれだけ話していたかという情報や、誰の後に誰が話していたかというターンテイクの情報も分かります。
個人にフォーカスすると、どれくらい割り込んでいたか、どれくらい周りを盛り上げたかも分かります。
このようなデータを蓄積していくと、「最近この人は発話量が減っているね」「最近頑張って喋っているね」といったデータや、「この人が来るとこの人が黙る」「この人が来ると盛り上がる」といった、人間関係についての情報も分かります。
リアルテック・ラウンドテーブルの分析
昨日、リアルテック・ラウンドテーブル(※)を分析する機会を得たので、この実データをご紹介したいと思います。
▶編集注:ICCサミットのプログラムの1つで、リアルテック・カタパルトと連動したセッション。リアルテック・カタパルトのプレゼンターと審査員が小グループに分かれて議論したいテーマを議論する。
このように話し合いを分析してきました。
すべての結果についてご説明すると2~3時間でも話せてしまうため、2つのグループを選びました。
上が5人のグループ、下が3人のグループです。
ターンテイクを見ると、上は真ん中の3人の人たち、下は黄色の人が中心にいたということが分かります。
前半を見ると、最初に多分意見を言っていたのでしょう。順番に全員が発言していました。
しかし、後半になるにつれて、主体になる人が変わっていて、上は青色の人が、下は青色と黄色の人が主体になっていったことが分かります。
このように実際のデータを分析することができます。
のべ2万人以上の話し合いを分析
こういったデータで、私たちは今までに2万人以上の話し合いの分析をしてきました。
学校であれば小・中・高・大学、色々な科目、企業の研修も色々分析してきました。
厚生労働大臣賞をいただいたり、Global EdTech Startups Awardsで2位に入賞したりしました。
▶コロナ禍でのオンライン授業・研修を見える化する Hylable が第17回日本e-Learning 大賞「厚生労働大臣賞」を受賞!(PRTIMES)
実際にどのように活用されているかというと、ある小学校の先生は、このデータを生徒に見せて、自分たちで話し合いを振り返ってもらいました。
それにより、生徒たちは自分たちの行動を変えたり、自信を深めたりすることができたそうです。
1カ月あたり5万円で利用可能
価格は、「対面の話し合い」も「Web会議」も同額です。
1カ月あたり5万円(税別)、最低利用期間は6カ月で、1年使っていただいたら1カ月分割引しています。
アカデミック価格など色々ありますので、詳しくはどうぞお問い合わせください。
今後の展望①「企業の話し合い分析」
今後取り組んでいきたいことは2つあります。
1つ目が、「企業の話し合いの分析」です。
学校だけではなく、企業にも話し合いの場がたくさんあります。
例えば、研修や普段の会議などです。
分析させていただければ、客観的なフィードバックやアドバイスができると考えています。
今後の展望②「話し合いパターンの分析」
2つ目が「話し合いパターンの分析」です。
話し合いのパターンをより深く研究するために、「おたまじゃくし研究所」をつくって、経験豊かな研究員の皆さんと一緒に研究しています。
成果も色々と公開しているので、ぜひ見てください。
ちなみに、最新のデータは、オンライン飲み会の分析です。
▶オンライン飲み会実験の分析でわかった不都合な結果(note)
最後に、私たちが一緒に研究している、埼玉県戸田市の教育委員会さんが、「ガバメントクラウドファンディング」を行っています。
「教室を科学する」というプロジェクトです。
▶データを活用し、すべての子供たちに質の高い教育を提供したい~「教室を科学する」プロジェクト~
研究費を自分たちで集めるために、ふるさと納税の枠組みのクラウドファンディングで寄付を募っています。ぜひよろしくお願いします(※) 。
▶編集注:2021年3月8日で、サイトによる募集を締め切り。
「音環境分析でコミュニケーションを豊かにする」
「音環境分析でコミュニケーションを豊かにする」ハイラブル(Hylable)でした。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成
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