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ICC FUKUOKA 2025のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン10)」、全6回の①は、モダンフレンチ「Syn」のオーナーシェフ 大野 尚斗さんと平和酒造 山本 典正さんが登場。フーディーとして大野さんが訪問した店、海外出張やラグジュアリーエクスペリエンスを重ねる山本さんの美食の追求について紹介します。モデレーターは一休の榊 淳さんです。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 2E
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)
Supported by EVeM
▶︎登壇者一覧
(スピーカー)
大野 尚斗
Syn
オーナーシェフ
西井 敏恭
シンクロ
代表取締役
長谷川 誠
NTTドコモ
コンシューママーケティング推進担当部長/シニアプロフェッショナル
山本 典正
平和酒造
代表取締役社長
(モデレーター)
榊 淳
一休
代表取締役社長
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▶「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン10)」の配信済み記事一覧
シーズン10到達!モデレーターは一休 榊さん
榊 淳さん(以下、榊) よろしくお願いします。

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榊 淳
一休
代表取締役社長
1972年生まれ。熊本県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科修了後、1997年第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行し金融工学を駆使したトレーディング業務に従事。2003年米国スタンフォード大学院サイエンティフィック・コンピューティング学科修士課程を修了後、ボストン コンサルティング グループ、2009年からアリックス パートナーズにて戦略コンサルティング業務に携わる。2013年一休に入社し、2014年から取締役副社長、2016年から代表取締役社長(現任)2021年4月からヤフー株式会社 執行役員 トラベル統括本部長就任。2022年6月株式会社じげん社外取締役、特定非営利活動法人ジャパンハートの理事に就任。2023年10月からLINEヤフー株式会社執行役員コマースカンパニートラベル統括本部統括本部長就任(現任)
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会場の皆さん、夕方の遅い時間まで残って、ICCサミットというビジネスカンファレンスで、このセッションのために時間を使っていただいてありがとうございます。
シーズン10を迎えまして、非常に感慨深いです。
シーズン1の頃は、登壇者よりも聞いてくださる方のほうが少なかったので、我々としては大きな成長を感じています。
西井 敏恭さん(以下、西井) 会場もF会場から始まって、ついにC会場ですよ。
榊 そうですね。
長谷川 誠さん(以下、ハセマコ) そもそも最終日に行われていましたから、1日早まりましたし。
榊 これまで聞いてくださり、ありがとうございます。
今日も素敵な登壇者をお招きして、2つの内容でお話を聞いていきたいと思います。

まず初めに、「(自己紹介的に)普段どんなスタイルで「美食」を追求してますか?」、その後は、すごく雑なフリ方ですけれど、「美食」の何かおもしろいテーマについて語ってくださいという、この2点でまいります。
では、今日はどうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
まず大野さんから、自己紹介をよろしくお願いします。
2回目の登場、Synのオーナーシェフ大野さん
大野 尚斗さん(以下、大野) 今回も呼んでいただき、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

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大野 尚斗
株式会社ひみかな Syn
オーナーシェフ
福岡県福岡市出身/The Culinary Institute of America N.Y本校卒業/The NoMad*/Alinea***/Recte*/Droggeria dela Rossa/Faviken**/Central/Bar Tetu/Syn開業
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山本さんと西井さん、Synにご来店ありがとうございました。
西井 先日行ってきましたが、素晴らしいお店でした。ありがとうございます。
山本 典正さん(以下、山本) 先日はありがとうございました。
大野 僕は食べ歩きをずっとしていましたが、今は料理を作る側で、ガチの料理人です。
トータルで、世界44カ国を旅しています。

西井 まあまあですね。
大野 西井さんから、半分以下と言われました。
(一同笑)
世界7カ国ぐらいのレストランで修行して、2023年の6月に、福岡でSynというレストランをオープンして、オーナーシェフをしています。
まだお越しでない方は、ぜひいらしてください。
西井 僕は土曜日の夜に伺って、世界を旅するような料理を食べさせていただきました。
お店については、また後でお話があると思いますが、本当にありがとうございます。
大野 ありがとうございます。
「Syn」の文字に込めた思い
大野 お店の名前は「Syn」で、僕の名前は大野 尚斗なので、Syn(シン)はつきませんが、僕一人ではなく、生産者さん、チームのみんな、そしてお客さん、みんなで共にお店を育てていきたいという想いで、「Syncro」や「Synesthesia」、「Symphony」のアクロニム(頭語)を取って、「Syn」という名前にしました。

……前回よりも、喋りやすいですね。
▶︎前回初登場時の様子はこちら 1. 福岡「Syn」の大野シェフが加入! 最新美食を語り尽くすシーズン9
西井 そうですか?(笑)
(会場笑)
大野 料理のコンセプトは「Cuisine Voyages」で、フランス語で「旅の料理」です。

今ちょうど流行っている『グランメゾン東京』の主人公の尾花が言っている、フランス料理は異国の文化を取り入れて進化してきた料理という言葉をそのまま持ってきていますが、自分の生きてきた中で一番当てはまるのが「旅」なので、「Cuisine Voyages」をテーマにやらせていただいています。
こちらは店のメニューです。すみません、見づらくて。

左に料理名と食材、真ん中にイメージした場所と座標、その下に年号、右に仲良くさせていただいている生産者さん、食材だけでなく、器やカトラリーの方々、お店に関わる方々のお名前を一緒にさせていただいています。
Synのスペシャリテ
大野 こちらはスペシャリテ(おすすめの料理)で、左上は「Apple」といいますが、本物のリンゴではないです。
お越しになってみてください。

山本さんには、出来立てのイチゴのミルフィーユ(写真下中央)を召し上がっていただきました。
山本 とても手間がかかっていて、美味しかったです。
大野 ありがとうございます。
西井 目の前で作ってくれるということは、なかなかないですよね。
山本 そうなんです。30分くらいかけて、目の前で作っていただきました。
ハセマコ “ハセマコさんと榊さんがまだ来てない”圧がすごいですね。
(一同笑)

大野 いらしてください。お待ちしております。
こちらは個室のバーで、バーのみのご利用もできます。

コンセプトはちょっとふざけておりまして、チャージが僕らに1杯という、ただ一緒に飲むためだけのバーです。
(会場笑)
安いお酒は一つもないですが、皆さんなら一緒に楽しんでいただけるのではないかと思いますので、ぜひいらしてください。
フーディーとして世界中を食べ歩き
大野 こちらがもう一つの自己紹介で、フーディーとして食べ歩きする人間としての自己紹介です。

コース料理しか数に入れていませんが、お店をオープンするまで年間600軒、日本中、世界中を食べ歩きました。
一番遠いところでは、西井さんも行かれたことのあるグリーンランドの「KOKS(コックス)」という二つ星レストランに食べに行きました。
19歳から1人で食べ歩きを始めて、カンテサンス(Quintessence)、未在(みざい)など、色々なお店に行きました。
西井 さらっと言っていますけれど、年間600軒ですよね。
大野 そうですね。(多い日は)1日5軒ぐらい。
西井 (笑)変態ですよ、本当に。
大野 今は、月に3軒くらいですね。
西井 今は、作るほうに回られています。
大野 よろしくお願いいたします。
榊 ありがとうございます。では、山本さん、よろしくお願いします。
和歌山県の酒蔵を継いだ、平和酒造 山本さん
山本 平和酒造の山本です。

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山本 典正
平和酒造
代表取締役社長
1978年生まれ、和歌山県出身。東京のベンチャー企業を経て、2004年に平和酒造へ入社。廉価な大量消費のためのお酒ではなく、日々の人生に豊かな彩りを添えられるお酒を届けたいとの想いから「紀土」「鶴梅」を立ち上げ。近年ではクラフトビール「平和クラフト」の発売も開始。和歌山の柔らかできれいな水を活かした「紀土」「平和クラフト」は、お酒が苦手という方にもお酒の魅力を知ってもらいたいという、強い願いを込めている。また、斜陽産業と言われる酒造業界において新風をふかせるべく、若い醸造家の育成にも注力。酒造りへの情熱を胸に秘めた平均年齢31歳の若い醸造家達とともに、伝統と革新をもって酒造りを行う一方、日本酒の魅力を伝える活動を行っている。2019年4月、代表取締役社長に就任。
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酒造とつきますので、皆さん、すぐおわかりになったと思いますが、酒造りをしています。
和歌山県ですので、紀州の風土から日本酒「 紀土(きっど)」というお酒を造っています。
▶︎【25/4/17出荷開始】紀土 KID 再仕込み清酒 南部杜氏資格保有者シリーズ#6(数量限定)(平和酒造)
私は、このようなカンファレンスに参加するのが非常に楽しいです。
と言いますのは、京都大学を出てからエスプールという人材系のベンチャー企業に就職したので、私のファーストキャリアはスタートアップの会社です。
ですので、皆さんのようなスタートアップに関わられている方や、ビジネスのコラボレーションに非常に興味があって、皆さんと一緒に色々勉強させていただいている立場ではないかと思っています。
その後、実家の酒蔵に戻りましたが、実家はもともとパック酒を造っていたメーカーで、父の時代は安いお酒を販売して、私を大学までいかせてくれました。
日本酒業界は1972年から50年以上、右肩下がりの業界で、1972年の時点から考えますと、だいたい5分の1ぐらいまで消費量が減ってしまった産業になります。
こんな話をすると皆さん、「日本酒は高品質なものがよく売れているのではないか」とか、「海外の方が日本に来て買って帰るのではないか」とおっしゃいます。
まさにそういうこともありますが、全体量としては下がっている産業とお考えいただければいいかと思います。
そんな中で、実家に戻って高品質なものづくりをして、紀土というお酒を生み出したのですが、もう1点、トピックがあります。
酒蔵は非常に古い職人気質の組織で、それは蔵人であったり杜氏制ということなのですが、ヒューマンリソースの会社にいた経験から、大卒新卒だけで酒造りをするという組織改革で、モチベーション改革をして、日経BPから『個が立つ組織』という著書を出させていただきました。
「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に
山本 海外進出もしていて、日本酒は非常に世界でチャンスのあるものだと思っています。
最近のトピックで言いますと、日本酒業界が非常に盛り上がっている一つのきっかけが、ユネスコの無形文化遺産登録です。

▶ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」について(国税庁)
伝統的なこうじを使った酒造りが世界的に非常に珍しく、価値があるという形で伝わっていって、じわりとその効果を感じています。
海外から日本に来る、特にアジアのお客さんが日本酒を買って帰ることがかなり増えていて、ユネスコの無形文化遺産登録は意外と効果があるなと思っているところです。
どぶろくのブルワリーパブをオープン
山本 先ほど日本酒の消費量が1972年と比べて5分の1になったとお伝えしましたが、日本酒業界における1つの課題と私が感じているのが、「米からできる酒」を日本人になかなか飲んでいただけないことです。

平和酒造は「平和クラフト」というクラフトビールも造っていて、10年前から参入していますが、クラフトビールのカルチャーは非常にオープンで、フランクに若い方々が触れてくださいます。
そのきっかけの1つが、「ブルワリーパブ(醸造と提供を同じ場所でするパブ)」というスタイルではないかと、仮説を立てました。
「ブルワリー=酒造り」で、「パブ=飲む」ですが、消費者にとってのタッチポイントを都心に作るとおもしろいのではないかと、兜町に平和どぶろく兜町醸造所をオープンしました。
2025年4月には難波にも、このどぶろくという形で、平和どぶろく難波醸造所を開設します。
▶【大阪なんばに新名所が誕生!】「どぶろくのブルワリーパブ」が大阪タカシマヤ内に4月中旬OPEN!日本酒「紀土」の酒蔵 平和酒造が手がける直営店(PR TIMES)
美食は究極のラグジュアリーエクスペリエンス
山本 私は日本酒が非常に価値のあるものだと思っていますが、付加価値をつけていくことがすごく大事です。
そこから発展して、「ラグジュアリーエクスペリエンス」とカタカナにすると偉そうですが、なかなか体験できない体験はすごく価値があるのではないかと思っています。

ゴルフやスキーの画像を載せていますが、アメリカに行ってゴルフをしたり、ZOZOのチャンピオンシップを見に行ったり、ニュージーランドでスキーをしたり、今年はニセコにバックカントリーに行ったりしました。
ここ九州で言いますと、昨年(2024年)、長崎スタジアムシティが開業して、最上階にYAKINIKUMAFIA NAGASAKIがオープンしました。
▶堀江貴文が立ち上げた高級焼肉店「WAGYUMAFIA」とは?(GOETHE)
これは堀江 貴文さん、浜田 寿人さんが中心にされている和牛のレストランで、長崎、そして世界から高品質な和牛を食べにお客さんが集まっています。
私は日本酒だけではなく、日本の食は世界に通じるものだと思っています。
「Wagyu」も世界で通じる言葉になっていまして、ちょっとおもしろい話をすると、「オーストラリア産の和牛」というものがあります。
厳密に日本人の規定で言うと和牛ではないのですが、世界では「Wagyu」という言葉が一般化しているのです。
西井 正しい和牛の定義って何ですか?
山本 日本人からすると純国産の和牛系統で作られているものになるのですが、雌牛のほうは持ち出せないので、和牛の雄牛の種だけ持って国外に出て、現地で品種をつけます。
西井 交配すると、それで和牛と呼んでいいみたいな。
山本 そうですね。日本の和牛種自体は非常にレアな品種で、普通に考えると、筋肉に脂肪をつけるというのは、非常に牛としてはおかしいのですが、日本の和牛品種だけは、日本国内で特別に飼育されたものとお考えいただけるといいのかなと思います。
西井 海外に行くと、結構和牛を見ますよね。

山本 そうですね。平和酒造は世界30カ国に輸出していて、取引先のインポーターが来られてお連れする時に、鮨を皆さん期待されるのですが、日本料理店には日本食に対してリテラシーのある方をお連れしています。
日本を結構回って、鮨に飽きたという方からは、和牛の食べられるお店にぜひ連れて行ってほしいと言われます。
本場の神戸ビーフや銘柄牛を食べてみたいという要望は結構あって、そういう意味ではWAGYUMAFIAは非常に良い選択かなと思います。
西井 なるほど。昨日ちょうど神戸ビーフと神戸牛の違いの話で夜に盛り上がったんですよ。
山本 神戸ビーフと神戸牛に違いがあるのですか?
西井 神戸牛は商標的にちゃんと登録されていなくて、神戸ビーフのほうがなんかガチ感、ガチというか。
それで、神戸牛というのは実はその種なので、海外で普通に神戸牛がばあっと回ってしまって、神戸牛のほうがメジャーになっているようですが、合っています?
大野 合っていると思います。但馬系の、そういうことですよね?
西井 はい。そういうふうに聞いて、同じロジックなのかなと思って。
山本 確かにそういうことですね。
日本の場合ですと、品種、呼称登録が地名に結びついてないので、そういうようなことで世界流出しているという問題はあるかもしれないですね。
▶︎神戸牛・神戸ビーフについて(ビフテキのカワムラ)
平和酒造 山本さんが最近行った店
山本 日本酒は美食ジャンルに直結するもので、美食も研究対象にしています。
私が最近行った店を挙げているのですが、最近行っておもしろかったのは鰻のお店で、八重洲鰻はし本、それから、参宮橋 あさやという、どちらも若い料理人ですが、はし本は代々続く鰻の名店で、オーセンティックな鰻を出していただけます。
あさやは非常にイノベーティブで、プレゼンテーションの仕方も全然違っておもしろかったです。

西井 このお店は、わさ(WASA)出身の方の?
ハセマコ はい。
西井 榊さんとご一緒した。
榊 そうそう。ハセマコさん、何かコメントはありますか?
ハセマコ 後ほどコメントします。
(一同笑)
西井 怖い、怖い(笑)。
榊 山本さん、続きをどうぞ。
山本 そんなことで、お店を色々回らせていただいています。
後で、予約が困難なレストランの予約方法についても、お話しさせていただきます。
いいお店はおもしろい出会いもありますし、うちの日本酒とのペアリングも非常にいいので、とんかつ屋から鮨屋、Synにも入っています。

榊 さらっと食べログアワードの来訪が6割とありますが。
山本 これは、少し盛ってしまったかもしれません(笑)。
榊 まあ、でも、5割、6割が、このセッションに来るボーダーラインですよね。
西井 ちょっと待ってください。なんで、その後の僕のプレゼンをやりづらくしているんですか?
(一同笑)
榊 次にいきましょうか。
2024年の海外渡航は20回
山本 30カ国に輸出して、輸出割合が3割、2024年は海外渡航が20回でした。

12月に行ったお店で言うと、タイ・バンコクのGaggan Anandは、閉店前はアジアベストレストラン50のナンバーワンを4連続で獲得しました。
非常にイノベーティブなお店ですが、一度閉めて、また復活して、さらにショーアップされた形で提供していました。
▶ガガンアナンド (Gaggan Anand):バンコクの創作インド料理レストラン(タイランド画報)
このように海外にも行っています。
榊 今日はどうぞよろしくお願いします。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美