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2016年に配信した、石川善樹さんご登壇記事を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス TOKYO 2016 から、「試練に打ち勝つ強いメンタルの作り方」を5回に再編集してお届けします。石川善樹特集2(その3)は、長く活躍する人の目標設定は何が違うのか?といった問いを中心に議論しました。セプテーニ佐藤さんやユーグレナ出雲さんの目標設定術にもご注目頂きつつ、ぜひご覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 1B
「試練に打ち勝つ強いメンタルの作り方」
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
佐藤 光紀
株式会社セプテーニ・ホールディングス
代表取締役社長
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役
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【前の記事】
【本編】
長く活躍する人はどのように目標設定を行うのか?
石川 なるほど!佐藤さんの話を聞いて、ある研究を思い出しました。
「活躍する人はどのように目標設定を行うのか?」
というものです。そもそも遠い未来の目標を高く置くというのはみんなやります。1位になりたいとか、金メダルを取りたいとか。
ただ、長くずっと活躍できる人は何が違うかというと、「日々の目標行動の設定」がすごく上手い人たちだといいます。
私たちの脳は怠けものなので、どうしても日々を単調にしがちなのですが、このルーティーンの中に明確な、昨日とは違うちょっとした目標行動を設定できるかどうか。
佐藤 まさにその通りだと思います。それを意識して、細かく刻んで目標を立て、目の前のものまでブレイクダウンする。
このようにずっとしていたのですが、最近それが少し発展してきて、「Just This Moment」ではないかと。この瞬間です。究極までブレイクダウンして行くと、この1分1秒の目標の設定と達成が大切だな、と。
やはりそれが究極だと思っていて、一日の目標設定とかも、もうやめました。前はしていたのですが、それもやめたのは「一日」も長いと思ったからです。
小林 単位は1秒なのですか。
その瞬間を最高の時間にすることだけを考える
佐藤 秒とかはあまり考えていませんが、この瞬間がすべてということです。それ以外は過去も未来も存在しない。少し概念的な言い方ですが。
石川 なるほど。ちなみに、その瞬間が自分にとっていい瞬間かどうかは、自分なりの物差しがあるのですか?
佐藤 無理しないということでしょう。自然体で、何か相手をやっつけてやろうとかは思わない。ただ楽しく、この瞬間、目の前の人と、最高の時間にすることだけを考える。
例えば、今日はこうしてお聞きになっている方々がいるから、自分はこういう場ではイイことを言わなければならないとか、何かカッコ良いことを言わなければならないとか、人からこう見られてカッコ悪いから上手く振る舞っておこうとか、そういうのはもうやめようということです。
面倒くさい。
それはやはりその瞬間の目標達成には繋がらないので、やはりこの瞬間、石川さんと出雲さんと小林さんと話していて、オーディエンスのみなさんがいて、この瞬間とにかく自分が思いっきり楽しんで、何も鎧も着ずに自然体で向き合うだけ。
その結果、相手からどう思われるかはあまり気にしない。そういう感じです。
出雲 今の発言をお聞きしていてスゴ過ぎますよね。
私はもっとでも、ミドリムシのことを知っていただいて、カッコイイものだとみなさんに思っていただいて欲しくて。
やはり私の話というのは、すごいという意図がかかっているのです。完全なミドリムシのポジショントークですから。
佐藤 そこまで行くと清々しいですよね、むしろ。
だから、出雲さんのキャラクターというのはすごいなと思います。先ほども雑談していて、出雲さんがどういう風にしてこんなキャラクターになったのか、すごく気になる。
でも、素晴らしいと思うのは、主語がミドリムシでミドリムシのポジショントークだから、自分のエゴとかはないのです。
その時点で清々しく感じる。つまり自然体に近い。それって、僕と言っていることは一緒だと思いました(笑)
出雲 ミドリムシをもっとみんなに知って欲しい、みんなに褒めて欲しい。ミドリムシ頑張っているぞと。確かに、先ほど石川さんがおっしゃったように「出雲が」という主語は、少しセルフィッシュですね。
別に私が光合成をしているわけではないですし、CO2を削減しているわけでもないので、やはり頑張っているのはミドリムシですよね。
ただ、これは少し哲学的な悩みかもしれないのですが、ここまで来ると、みなさんは実は気づいていて私だけ気づいていないのかもしれませんが、私はミドリムシに乗っ取られていませんかね。大丈夫でしょうか。
(会場笑)
何故、こんなに24時間、365日、「ミドリムシは良いですよ」といっているのでしょう。
そして、私はこれを心の底から楽しいと思ってやっているのです。まあ多分、私はまだ人間だと思うし、脳みそを開けるとミドリ色のものが埋まっているということはないと思います。
ここで私が今一番知りたかったことがあります。少し一個前の議論なのですが、インナー・ドリームの話です。すごく大事な話だと思うのですがスーッと行ってしまった。
例えば、普通は名札を作る時、「この人に最近会ってないな」とか「この人と前こういう話をしたな」とかを想像しながら名札を作ると楽しい。これはおっしゃるとおり。
「インナー・ドリーム」は興味を持つことから始まる
出雲 ですが、私は次のことが一番知りたいのです。すなわち、こういうことは小林さんが正しくそれを伝授すればスタッフの方もそういう人になるのか。
もしくは、これは非常に生まれつき、生得的なものであって、何かこの素晴らしいセッションやフロリダへ行ったりしても、私が突然心のこもった名札作りをできるようになるとはならないのか。その辺りはどうでしょう。
小林 僕の感覚からすると、ほとんどの人はできるようになりますよ。
多分、ICCの受付で感じると思うのですが、みんなボランティアのスタッフで真面目に、というか熱心に渡しますでしょう。
あれって、作業で考えるとものすごくつまらない作業だと思うのです。
でも、「参加することによって、この人たちが活躍することを考えろ」とよく言うのですが、やはりそうすると名札を渡すとか、参加いただくとか、受付をするとか、案内するというのに、喜びを感じるようになるのではないかと思うのです。
石川 やはり小林さんは、変な人ですね(笑)ただそれは冗談で、研究者として冷静に観察すると、小林さんは「興味を持つ力が高い」と言えます。
そういえば、現代社会で活躍するために最も重要な能力の一つは、まさにその興味を持つ力だといわれています。
これまで僕ら研究者は、IQが大事だとか、いや、EQが大事だとか、自信だとか、自尊心だとか、いろいろいっていたのですが、どれも決定打に欠けていました。
それよりも、ある行動、タスクに対して、興味を一貫して持っていられるかということが実はすごく大事だということがわかってきたのです。
人は、新しくそのタスクへ取り組む時は興味を持ってできる。ただ、2回、3回、4回となってくると、飽きて興味を失ってしまいます。
その時に別の観点から興味を持てるかというところ。やり尽くしたタスクに対しても、新たな興味を持てるかというのが、実は今の時代を生きる人にはすごく大事だと言われているのです。
為末大さんが陸上を続けられた理由
石川 これがすごく上手いなーと思うのが、陸上の為末大さんです。為末さんは、陸上という名の二足走行を職業にされてきましたが、ご本人もおっしゃっているように、これはあまりに単調な作業です。50メートル走るとかですから。
それを20年近くやってきて、でも毎日新しく興味を持つ。今日はこうやってやろう、明日はああやってみよう、というように興味を一貫して持っていられたから、続けられたといいます。
彼は引退された今でもそれをやっている。例えばこういうセッションとかでも、今日は最初に喋ってみようとか、今日はしばらく黙ってみようとか、彼はいろいろ試すのです。
そして、僕は為末さんとシェアオフィスしているのですが、見ているとチームのメンバーとミーティングをする時も、今日は自分から話そうということで話し始める日もあれば、今日はちょっとあえて黙ってみようという日もあるのです。
彼は毎日変化させているんですね。「何故ですか」と聞くと、やはり興味を持っているのです。ですから、インナー・ドリームというのは興味の一貫性ということなのかなと思います。
小林 僕は今(当時)、泉ガーデンタワーというところに仕事場があるのですが、毎朝7時40分くらいに子どもの通学と合わせて仕事場に行く。
するとだいたいTULLY’Sへ行って、「(ホットの)グランデ・ソイラテ」を頼むのです。
するとある日、僕が言わなくても出てくる状態になり、毎日行くのが楽しみになった。出てくるのか出てこないのか。本当は違うものを頼もうかなと思った瞬間にグランデ・ソイラテが出ると、「ああ、俺は毎日これを頼まなければならないな」などと思ったりする。
そして、その出した店員がいるかいないかとか、どういうふうに僕は判別されるのだろうとか、試すのが楽しみになっています。そういう興味を持ってやっていますね。
僕、変でしょうか。
石川 変すぎますね(笑)。でもだからこそ、いろいろなことに興味を持っているのですね。
小林 興味を持つことによって人生楽しくなる。そう思うようになるので、日々何かを作るにしても興味を持つようにしています。
石川 そのための方法論として、自分の中で複数の人格を持ちながら対話するというのが多分あるのだと思うのです。
小林 あと、わざとらしく「これ、面白いな」と呟くということは良いのではないでしょうか。たとえ面白くなくても。
石川 確かに、それはありますね。面白いと言ってみると。出雲さん、どうでしたか。インナー・ドリームの話でしたが。
快い「慣れ」をどうやって排除したらよいか
出雲 最後に出た、わざと呟いてみるとか、その興味の持ち方はすごいですよね。
僕は「慣れ」をどうやって排除したら良いかということに、今すごくフォーカスして聞いていたのです。TULLY’Sの話も、注文しなくても出てくるというのは、非常に心地良いわけでしょう。
何故このようなことを言っているのかと言うと、生物というのはすごく原初的に考えれば、昨日と今日と明日が同じ日であって欲しいはずなのです。昨日と今日と明日が同じような日であれば、同じような安全が確保できて、同じように生活することができる。
昨日と今日と明日が毎日全然違うプロトコルで違う環境だとすごく生き辛いわけですね。ですから、頼まなくてもTULLY’Sで同じものが出てくるというのは、すごく脳みそが相当な「快」、ストレスから開放されて気持ちいい状態でしょう。
すると、生物は非常にそこへ執着しますから、最後そこにいる全員が小林さんのことを認識して、以心伝心で何も言わずに同じメニューが出てくるようになると、すごくイノベーションが起きにくくなる。
そして、ありえないのですが、あまりにも気持ちよすぎて、例えば小林さんがTULLY’Sへ行った時の注文の仕方を忘れたとしますでしょう。そして、泉ガーデンのTULLY’Sが突然何かあって閉店したとする。
すると、それまで言わなくても自分の好きなものが出て来たのに慣れた状態で、他のTULLY’Sへ行った時に生物は多分黙って立っていると思うのです。
明らかに不審者なのですが、目で「いつもの、いつもの」とやって出てこない。それで怒って帰るということになると思うのです。
が、どうしたら、「後30分です」というマニュアルとか新しいものができるか。それには一貫して興味を持ち続ける仕組みが必要でしょう。
そう思って聞いていたのですが、それが最後にポロっと出て来てすごくビックリしたのです。面白くないものでも「ああ、面白い」と呟く。
興味を持つことと成長することはイコールである
小林 興味を持つことと成長することというのはイコールな部分というのがあると思うのです。
僕は41歳なのですが、やはり年齢が上がってくると、「ヤバイ、もっと働かなければならない」とか「生存しなければならない」とか、そういう生存本能が働く。
特に僕は「ICCカンファレンス TOKYO 2016」は初開催のイベントだから必死にやらないとヤバイと思う。これでコケたら次はないぞとか考えるので、やはり本気になる。
すると、頭を使わないと僕の仕事では生きて行けないから、常に頭を使うことを考えるようになるのです。
例えば、家から駅まで歩いて行きますでしょう。
みなさん、道路で次に自転車が来るか自動車が来るか予測しながら歩いたことはありますか。僕は10mくらいで来るかどうか、来るのだったら何色か、そういうことを予測するのです。変でしょうか。
石川 変ですね(笑)ただ、その話を聞いて思い出したのが、長距離ドライバーの運転手で事故が少ない人はそれをやっているらしいです。
常に頭の中で「前の車がこう来たらどうなるのだろうか」とシュミレーションしている人は、事故が少ないみたいですね。
出雲 と言うか、石川先生は何でも答えられるのですね。普通こんな話は誰も拾えないですよ。みんな今そう思っていたでしょう。
だって、何色の車が来るとかどうでも良い。それよりももっと、良いミドリムシとか、いろいろ考えなければならないことはあるのに。
小林 世田谷区だと外車、ドイツ車が多いとかというのもあるのです。だから、「次はメルセデスが来るかもしれないな」と予測したりして、来たら当たりというふうにして楽しみながら日々歩いています。
あと、没頭しながら、「今日どうしよう」などとボーっとして歩いている時もありますが、常に頭を動かしながら生きるというのをやっています。やはり変でしょうか。
石川 変を通り越して、もはや面白いです!(笑)その話を聞いていて思い出した研究があります。「幸せな人生」と「意味のある人生は違う」という研究です。
(続)
続きは 〔石川善樹〕「幸せな人生」と「意味のある人生」は違う をご覧ください。
https://industry-co-creation.com/special/7715
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/石川 翔太
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【編集部コメント】
続編(その4)では、石川善樹が語る「意味のある人生」や「慣れを排除する仕組み」などを中心に議論しました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。
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