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4.グローバル展開は奇跡のような人材採用のチャンス(ビービット中島さん)

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ICC KYOTO 2022のセッション「ITスタートアップにおけるグローバル展開のケーススタディ」、全6回の④は、グローバル歴10年以上、上海・台湾・日本においてUX領域で事業を展開するビービットの中島 克彦さんが語ります。経験から導き出した「グローバル3つの要諦」は、世界を目指す経営者には必読です。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはネットプロテクションズです。


【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 3D
ITスタートアップにおけるグローバル展開のケーススタディ
Sponsored by ネットプロテクションズ

角元 友樹
恩沛科技股份有限公司(NP Taiwan, Inc.)
董事長/總経理

久保 恒太
Ubie株式会社
代表取締役 エンジニア

十河 宏輔
AnyMind Group株式会社
代表取締役CEO

中島 克彦
株式会社ビービット
取締役副社長

(モデレーター)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

「ITスタートアップにおけるグローバル展開のケーススタディ」の配信済み記事一覧


台北と上海に海外拠点。「UX型のDX」を支援するビービット中島さん

中島 克彦さん(以下、中島) ビービットの中島と申します、よろしくお願いいたします。


中島 克彦
株式会社ビービット
取締役副社長

横浜国立大学経営学部卒業後、株式会社富士銀行(現みずほ銀行)入行。法人融資などに従事した後、 2003年に設立メンバーとしてビービットに参画。コンサルティング事業全体の統括、広告効果測定ツール「WebAntenna(ウェブアンテナ)」の立ち上げを行い、その後2012年には台北、2013年には上海にて新オフィスを創設し、東アジアマーケットを開拓。帰国後は、UXデザインコンサルティングとUXチームクラウド「USERGRAM(ユーザグラム)」を融合したUXインテリジェンス事業の全体統括を行う。2017年、beBit UCD Ventures 代表に就任。2018年、ビービット 取締役副社長に就任。

ビービットは2000年創業で、実はもう22年続いている会社です。

ネットプロテクションズとほぼ同じ長さの歴史があります(笑)。

私自身、あまりカンファレンスが得意ではないので、ICCサミットにもこれまで参加していなかったのです。

ただ、今回はグローバル展開のTipsシェアということで、我々はその分野で10年以上取り組んでおり、スタートアップの中でも長い間取り組んでいる会社はあまりないので、少しでも皆さんのお役に立てればと思い、恥を忍んで参加いたしました。

井上 そういえば、中島さんのご兄弟は…。

中島 あ、そうですね(笑)。

私の弟は、よくICCサミットに参加しています。

タクシーアプリ「GO」を提供している、Mobility Technologiesの社長、中島 宏は私の弟です。

私は、彼のような本格的な経営者ではなく、あまり表に出ないタイプなのですが、今日は参加をお許しください(笑)。

申し上げた通り、ビービットは社歴が長い会社ですが、行っていることはずっと変わっておらず、いわゆるUX領域に特化してビジネスを行っています。

UXのソリューションを提供している会社と思っていただければ、と思います。

ニッチな領域ですが、社員数は260人規模で、UXで社会を良くするというミッションに共感した仲間がだいぶ増えてきています。

東京、台北、上海にオフィスを構えており、この3拠点で事業展開をしています。

スライドには経営陣を並べていますが、創業メンバーである遠藤(直紀)と私、そして、グローバル展開に私と10年取り組んできたJason(Chen)の3人で経営をしています。

Jasonはnon-Japanese speakerで台湾人ですので、経営のグローバル化も少し進んでいると捉えていただけるといいかなと思います。

「UX」がまだ知られていない2000年に事業を開始

中島 UXに特化していると申し上げた、ビービットの事業概要を簡単にご説明します。

「UXを良くすると、ビジネスが成功する」ということで、コンサルティングやソフトウェアの提供を行っています。

2000年当時、そもそもUXという言葉自体が存在しないという状態から、事業をスタートしています。

ホームページやデジタルサービスが使いやすいとコンバージョンレートが上がるという、デジタルマーケティングからスタートしました。

その後、デジタルサービスの立ち上げや、当時はまだiモードでしたが、企業がアプリを作る際、サービスの企画事業も行うようになりました。

そして時間が経つと、自分たちが作ったデジタルサービスが本業を飲み込むということが起こりました。

例えば、日本経済新聞を想像してください。

もとは紙の新聞のイメージがあったと思いますが、今では日経IDをベースにした電子版の会社であり、紙媒体もあるというような状態です。

デジタルシフトを起こすようなサービスを提供するうち、ビジネスコンサルのような仕事もするようになり、少しずつ業容を拡大し、2020年頃からはDXが大きなテーマとなりました。

そうすると、全体の経営マネジメントのお手伝い、我々はこれを「UX型のDX」と呼んでいますが、つまり、UXを良くするためにDXを実施するという経営の考え方に共感いただいた企業向けに、ソリューションを提供しています。

ビービットの代名詞『アフターデジタル』

中島 UX型のDXについては、ビービットという社名や実例を紹介するよりも、『アフターデジタル』という本を出版している会社ですとお伝えした方が理解しやすいかなと思います。

アフターデジタルシリーズは我々の考えをまとめた本で、約22万部を発行していますので、この本を通じて、UX型のDXについてご存知の方も多いのではと思います。

『アフターデジタル』出版の効果もあり、「日本のDXコンサルティング会社である」という認知が非常に強いのですが、実はビービットは、表から見る時と裏から見る時では少し違う会社です。

コンサルティング会社だと思われることが多いのですが、今年の実績で、売上の40%はSaaSビジネスから、60%がコンサルティングからで、今はSaaSの方が大きく伸びています。

また、日本のコンサルティング会社に見られますが、売上の25%ほどは中華圏から、つまり、中国や台湾のクライアントからという状況になってきています。

本日のテーマはグローバル展開なので、状況を整理いたします。

中国でのSaaS展開を戦略転換

中島 先ほどご説明したように、我々は現在、3拠点で事業展開をしています。

最初に台湾に進出し、そこのリソースを使って上海に展開しましたが、ビジネス規模として上海が今どんどん大きくなっている状況です。

ただ、完全に予想できていなかったことがあります。

2012年に中国に進出した段階では、SaaSビジネスを中国に展開できるのではないかと考えていました。

中国はもともとSaaS不毛の地と呼ばれていましたが、人口動態を見る限り、必ずSaaSの波が来るだろうと思い、それを狙っていました。

しかし、PEST(※) で言うとPの読み違いがあったと思います。

▶編集注:Politics(政治)、 Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字。

この3年ほどで、やはり中国でのSaaSビジネスの展開は厳しいということが明らかになったので、戦略転換をし、上海をコンサルティングのCoE(Center of Excellence:中核的研究拠点)に位置付けました。

中国はDXが進んでいるのでナレッジの吸収をし、そのナレッジを活用してソフトウェア化されるサービスを、日本と台湾で提供しようという考え方です。

コンサルティングがソフトウェア化されていると話しましたが、SaaSを用いて、来年2023年からベトナム、インドネシア、タイで展開する準備を今進めています。

これが今の、グローバル展開の状況です。

経営のグローバル化が企業の生死を分ける

中島 さて、本日お集まりの皆様に少しでも、経験からの知見をお伝えしたいと思います。

私は一応、10年以上、スタートアップのグローバル展開に携わってきましたので、要諦、つまりここが肝だという点を考えて持ってきました。

経営者の皆様には耳の痛い話もあるかもしれませんが、10年取り組んで思ったこと、ということでご理解いただければと思います。

一言で言うと、経営のグローバル化がとにかく肝中の肝で、これができなければ、ほぼ事業を行う意味がないのではないかと思っています。

事業やサービスのグローバル化は大変ですし、やることはすごくたくさんあります。

でも最終的に生き死にを決めるのは、経営がグローバル化しているかどうかだと考えています。

スライドには、ポイントを大きく3つにブレイクダウンして書いています。

まず、私がこの10年を振り返って、抽象化して、もう一度最初からやれと言われたとしたらと考えると、私なら、創業者にグローバル展開を担当させます。

これは耳の痛い話かもしれませんが、要諦だと思っています。

後で、詳しく話します。

2点目としては、進出先で、将来、自社のスリートップの1人を任せられるような経営人材を採用できるかどうかが、生き死にを決めます。

それくらいの覚悟で取り組まないといけない、というのが2つ目の要諦です。

最後の3点目は、BS(バランスシート)から再構築するということで、これも後で詳しく触れます。

創業者自ら現地に行って強くなるべき

中島 一つずつ説明します。

まず、創業者がハンズオンで現地に行くべきということですが、先ほどのネットプロテクションズの例(Part.1~2参照)のように、PESTからそもそも違うので、サービスを組み直す必要があります。

普通に考えると、それを成功させることができるのは、日本で同じことを成功させた経験のある創業者であると思います。

ただ、角元さんからお話があったように、それを若手の人材に任せて成功させれば、それは次の経営者を作ることになりますので、それはそれで素晴らしいことだと私は思っています。

スライドの右側を見ていただきたいのですが、もしもそれを行うと、下手をすれば角元さんがネットプロテクションズの社長よりも、ビジネスパーソンとして強くなります。

このセッションのスポンサーはネットプロテクションズさんなので、スポンサーの皆さんに対しては、本当に申し訳ないと思うのですが(笑)。

ただ、実際に自分が海外展開に取り組んでいて、本当にそう思います。

日本国内よりもずっと競争が激しいという状況の中で、言語も違いますし、下手すれば、相手の方がずっと流暢な英語を話すこともあるかもしれません。

その中で事業を立ち上げることになりますし、かつ、人材も国内よりも海外の方が優秀なのです。

先ほど、皆さんとディスカッションさせていただいた際に申し上げたのですが、「Jリーグで戦うのか、チャンピオンズリーグで戦うのか」と同じくらい、日本での戦いと海外での戦いは違います。

海外リーグで戦ったプレイヤーの方がやはり強くなるので、若手が育つのは事実だと私は思っています。

ただ、「創業者が戦って、創業者自身が強くならないと、グローバル企業としては勝てないですよ」というのが私からのメッセージです。

ですから、創業者が出向いて立ち上げたところが、グローバル企業としての発祥の地になる、くらいの覚悟を持ち、ヘッドクォーターをその地に移すのかどうかの判断をするという心づもりで、創業者が海外に進出するのが正しい姿だと考えています。

グローバル展開は奇跡のような人材採用のチャンス

中島 その上で、自分の経験を振り返って、一番大きな要諦だったと思うのが、Jasonを採用できたことです。

株式会社ビービット台湾現地法人 新総経理就任のお知らせ(ビービット)

実は、半分は狙っていましたが、完全に狙い切れていたとは言えないので、狙っていなかったとも言えます。

ただ、もう一度同じことをやるとしたら、絶対に経営人材の採用を狙います。

Jasonがどれだけすごいかと言うと、ローランド・ベルガー上海で、史上最年少でパートナーになった人材です。

学歴としては、シカゴ大学のMBAを持っており、彼は入社した後、自身の人脈を使い、マッキンゼー、ローランド・ベルガー、KPMGから、ジュニアパートナーを1人ずつ引き抜いてきました。

彼はその後、台湾で2018年にベストアントレプレナー賞を受賞しています。

彼がいなかったら、グローバル展開には成功していなかったくらいのキーマンとなっており、今のビービットの3番目の経営者です。

彼を採用できたのは、一緒に創業しようという起業時ボーナスがあったからだと思っています。

創業経験のある皆さんなら分かると思いますが、一番優秀な人材が採用できるのは起業するタイミング、起業のパートナーを見つけるタイミングですよね。

海外に進出してグローバル展開をするのは、ほぼ第二の創業になるので、創業者自身が現地に行って自分のパートナーになる人材を採用するということで、すごく大きな採用チャンスなのです。

その時に採用した人を経営陣に入れる、くらいの覚悟がないといけないと思います。

グローバル企業になろうとしても、経営陣に外国人がいなければ無理だと僕は思っています。

すごい経営者を外から連れてきてできるかと言うと、文化も違いますし、背中を預けるのはやはり難しいです。

ただ、僕たちが幸運だったのは、Jasonを見つけられて、彼を10年で経営者に仕立て上げ、完全に背中を預けられる、一緒に経営ができるプレイヤーにできたことです。

10年という期間は、少しかかりすぎたかなとも思いますが、こういう展開を狙った方がいいのではないかと思います。

10年スパンで「ガチグローバル」を目指せ

中島 最後に、僕らが「ガチグローバル」と呼んでいるのは、事業を立ち上げて少し成功すればいいよねということではなく、「グローバル企業になる、グローバル企業として成功する、世界で成功する」ことです。

そして、それを目指すのであれば、10年スパンで考えるべきです。

10年くらい経たないと、やって良かったねということにはなりません。

コストも労力も大きく、全然割に合わないと思いますが、10年後くらいにやっと、「ああ、良かった」と分かるようになります。

こんな取り組みを許容してもらうには、BSの部分のプレイヤーが、きちんと10年スパンでグローバル企業として成功することを目指しているプレイヤーでないとできないです。

ですから、グローバルで成功した、グローバル企業になりたいのであれば、BSから再構築する覚悟を持って取り組むのが良いのではないかと思います。

これらが、私が10年の経験から思っていることです。

国の興隆はスタートアップに懸かっている

中島 ここまで苦い話ばかりしてしまったので、最後にチアアップの話をさせていただきます。

僕は20年前に創業した時以来ずっと、国の興隆は皆さんに懸かっていると思っています。

2000年に創業した際は、皆さんのような優秀なプレイヤーはおらず、いわゆるトリックスターと呼ばれる、いわばペテン師のような人が多かったのですが、今は素晴らしいプレイヤーがそろっていると思います。

『アフターデジタル』という本を出版した当時にはあった、「日本は他国に比べて、圧倒的に優れている」というような変なバイアスもなくなってきており、これはすごく良いことです。

そんな良い状況になっているので、是非皆さんと一緒にグローバル市場で戦いたいと思っています。

しかし、台湾のプレイヤーは全て英語で情報を仕入れていて、僕たちよりもSaaSのナレッジを持っていますし、ベトナムでは下請け会社で働いていた人たちがもう、Amazon Echoみたいなものを自分たちで作るくらい、技術力を上げています。

つまり、そういう人たちが国のインフラを作りながら社会変革に挑戦しており、アメリカにもどんどん出て行っているのです。

色々なグローバルスタートアップが生まれているので、彼らと一緒に取り組めればいいなと思っています。

“Fake it, till you make it.” これは、Jasonが僕の特性を一言で表した言葉で、「それが実現するまで、嘘をつき続ける」みたいな意味です(笑)。

今日話したことも、皆さんには簡単に信じてもらえないかもしれませんが、私は真実だと思っていますので、あえて直言させていただきました。

ありがとうございます。

井上 ありがとうございます。

では、AnyMindの十河さん、お願いします。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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