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トップ経営者が、尊敬する偉人の業績を思い入れたっぷりに語る「世界の偉人伝シリーズもついにシーズン3! 全8回シリーズの③は、北川 拓也さんがお気に入りの偉人を紹介します。その名もエドワード・ウィッテン。ここでピンと来た人は、すでにその功績をご存知でしょう。超級の頭脳を持つこの偉人の、普通でない学歴の紹介からプレゼンはスタートします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティングにサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 10E
世界の偉人伝 (シーズン3)
Supported by リブ・コンサルティング
(スピーカー)
北川 拓也
楽天グループ株式会社
常務執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) グローバルデータ統括部 ディレクター
(登壇当時)
山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役
(モデレーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー
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1.シーズン3、最初に紹介する偉人は“最強のベンチャーキャピタリスト”北条政子
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2.東京があるのは北条政子のおかげ? 公家と戦い、800年続く武家社会を作る
本編
【北川 拓也さん選】理論物理学者、エドワード・ウィッテン
北川 北条政子ときたら、ウィッテンでしょうと。
(一同笑)
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北川 拓也
楽天グループ株式会社
常務執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) グローバルデータ統括部 ディレクター
(登壇当時)
ハーバード大学数学・物理学専攻、同大学院物理学科博士課程を修了。物性物理の理論物理学者として、非平衡のトポロジカル相の導出理論を提案し、『Science』などの学術雑誌へ20本以上の論文を発表。楽天ではCDO(チーフデータオフィサー)としてグループ全体のAI・データ戦略の構築と実行を担っており、日本を含む、アメリカやインド、フランス、シンガポールを含む海外5拠点の組織を統括している。楽天技術研究所の所長、楽天データマーケティング株式会社取締役を兼任。データ基盤作りからプロダクト開発、AIとデータを使ったDXコンサル事業を立ち上げ、データによるビジネスイノベーションを推進している。Well-being for planet earthの共同創設者、理事。
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井上 会場の方は誰も知らなかったんですよね。ぜひ解説をお願いします。
北川 ぜひ、覚えて帰ってほしい偉人ですね。
結構、特徴的な顔をしているので、ぜひ皆さん覚えて帰ってくださいね。
エドワード・ウィッテン(Edward Witten 1951~)です。
世界の物理統一理論「超ひも理論」を提唱
まず誰なのかをお話ししないと、ピンと来ないと思います。
僕は理論物理を研究していて、彼は理論物理学者です。
聞いたことがあるか分かりませんが、「超ひも理論」(※)という理論があって、いわゆる世界の全物理理論の統一理論として提案されているものです。
▶21世紀の宇宙の数学、超弦理論(リクルートワークス研究所)
皆さんあまりピンと来ないかもしれませんが、今は実は理論物理の理論は完全に矛盾を起こしているのです。
矛盾している理論が2つあって、1つが「量子力学」と言われる理論です。
量子力学はもうすでに正しいものだと証明されていて、超電導物質など、今我々が使っている色々なテクノロジー、半導体もそうですが、それらに使われている理論です。
この量子力学と、「重力理論」も使われていますよね。
アインシュタインの重力計算を使って、今の我々の通信やGPSが全部成り立っていますので、我々の時間や距離の計算の仕方は、全部重力理論に基づいています。
石川 重力理論がないと、GPSが動かないもんね。
北川 これがないと全く動きません。
つまり、2つとも我々の生活に必須中の必須の理論なのにもかかわらず、実はこの2つが全く一緒に説明できないのです。
それをもって全理論物理学者が、これを統合しようという努力をしています。
その一つの提案が、「超ひも理論」で、スーパー・ストリング・セオリー(superstring theory)とも呼ばれるものです。
その究極の統合理論の創始者の1人がエドワード・ウィッテンで、その中でも最も貢献の大きい人間と言われています。
すごい人なんです。
物理学者として初めてフィールズ・メダルを受賞
北川 彼は理論物理学者ですが、4年に1回の数学のノーベル賞と言われるフィールズ・メダル(※)を物理学者として初めて受賞しました。
▶編集注:フィールズ賞は「数学のために著しい貢献をした数学者」「世界の数学者を対象とし、過去の業績に対する表彰ばかりでなく、それ以後の研究に対する奨励」を表彰するために設けられ、受賞者の年齢は原則として40歳までとされる。Fields Medal(International Mathematical Union)
物理学者なんだけれども、なぜか数学の賞をもらってしまいました。
なぜなら、この究極理論は実験するのが非常に難しかったので、先に数学の賞を獲ってしまったわけです。
よく言われるのが、アインシュタイン以降の最大の天才は誰かと聞かれたときに、多くの理論物理学者は、エドワード・ウィッテンだと言う人が多いということです。
山内 生きているんですか?
北川 生きています。
あまりにも難しいので、たぶんあまり皆さんの耳に届いていないのですが、すごい人です。
エドワード・ウィッテンの功績が多すぎて、彼の名前が入っている理論が多すぎるのです。
今回も触れますが、「ウィッテン・サイバーグ・セオリー」とか。
一番右側の、論文を色々研究して、どの物理学者が最も歴史上大きなインパクトを持っていたかというのが、ポール・ディラックが量子力学を作った人で…。
▶ディラック方程式(weblio辞書)
石川 アインシュタインが、5位じゃないですか。
北川 これはまあ、計算の仕方次第ですが。
計算の仕方によっては、2番にエドワード・ウィッテン、3番にスティーヴン・ワインバーグ(アメリカの物理学者)、ワインバーグも量子力学への貢献者ですね。
▶【訃報】電弱統一理論でノーベル賞、スティーブン・ワインバーグさん(AstroArts)
ヘーラルト・トホーフト(オランダの理論物理学者)も量子力学への貢献者です。
▶トホーフト(コトバンク)
それぐらいの順位にくる人なので、ちょっとだけすごさが伝わったと思います。
あとは僕の声の大きさで伝わったでしょうか(笑)。
(一同笑)
大事なのが、僕はハーバード時代に、エドワード・ウィッテンと会っています。
石川 ハーバードの先生なんですか?
北川 ハーバードのジュニアフェローをやっていて、その後プリンストン大学の教授になって、今、プリンストンにいます。
ときどきハーバードにも遊びに来ます。
この写真を見れば、すごく頭が大きくて、頭が良さそうだなというと分かると思います。
最高峰の理論物理学者が専攻した学問は?
北川 先ほどの北条政子の例(Part.1〜2参照)にならって、生い立ちを振り返りたいと思います。
北川 ウィッテンは、1951年8月26日にアメリカのボルチモアで生まれた、ユダヤ系アメリカ人です。
父親(ルイス・ウィッテン)は一般相対性理論の理論物理学者なので、やはり血は争えないというか、エリートなんだなと思います。
天才ですので、当然のように20歳で大学を卒業。速いですね。
北川 当然、学位は「歴史」と「言語学」です。
(一同笑)
山内 何でですか? 片手間に物理をやってたみたいな話なんですか?
北川 いや、もう当然、歴史ですよ。
だって僕らは、歴史の話が好きでしていますから(笑)。
深井 龍之介さん(以下、深井) (笑)すごいびっくり。
石川 歴史を学ぶには、色々な言語を知らないといけない。だから言語学とか(笑)。
北川 まあまあ、まあまあ、もうそろそろ物理をやっておかないと、さすがにどうやって大成するのか。
当然次は、政治とジャーナリズムを志し(一同失笑)、1972年に大統領選(ジョージ・マクガヴァンの選挙運動)のお手伝いをしています。
山内 物理はいつ出てくるんですか?
北川 もう本気で、この人は政治学をやりたがっています。
山内 へえ。
北川 やっぱりちょっと右往左往しているんですね。
プリンストン大学で理論物理の博士号を3年で取得
北川 ようやく1973年にプリンストン大学で、博士課程に入ります。
ここまで物理をやっていなかったのだから、「大器晩成型かな?」「僕らも安心するな」と思うわけじゃないですか。「まあ、そういう人いるよね」と。
「遅く始めても大成できるという例だな」と思いきや、3年後に博士課程を修了します。
深井 へえー。
北川 テーマは、「ゲージ理論における短距離のいくつかの問題について」。
「いくつか」と付いていますが、なんやねんそれ?みたいな。
(一同笑)
プリンストン大学で理論物理の博士号を3年で取得します。
山内 普通は倍ぐらいかかるんですか?
北川 普通でも倍ですが、だってこの人は直前まで政治をやっていますからね(笑)。
山内 そうですよね。
北川 普通はやっぱり15年ぐらいこのタイミングで物理をやっていて、博士号を取ったりするので。
ちょっとよく分からないですよね。
深井 歴史学と言語学も、よく考えたら、普通2つやりませんからね。
北川 (笑)そうですよね、歴史学と言語学は、ボストンにあるユダヤ系の大学(ブランダイス大学)で専攻しています。
プリンストン大学で博士号を取得した後は、ハーバード大学に行きます。
そして、博士取得の5年後に、フィールズ・メダルの獲得につながる論文を書きます。
天才過ぎてぐうの音も出ない、偉人過ぎて何の参考にもならない人です(笑)。
こういう人が世の中にいるんだということを、肌で感じていただければと思います。
これがたぶん理論物理の最高峰の天才系です。
話しかけたら、今でも熱く歴史学や大統領選について語ってくれるそうですよ(笑)。
山内 1回登壇していただいて。
北川 そうですね、このセッションでね(笑)。
びっくりするぐらいの天才ですね。
ここまでは概念として、「エドワード・ウィッテンってすごいんだな」「世の中に天才っているんだな」ぐらいに思ってもらったと思いますが、せっかくなので、彼の理論の何がすごいか、分かりやすく、説明を試みてみたいと思います。
(続)
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続きは 4. 物理の直感を使い、数学の定理を証明したエドワード・ウィッテンの凄さ をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/戸田 秀成/小林 弘美
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