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偉大な経営者のレガシーが若き経営者たちを鼓舞する! 「損得で判断するな、善悪が大事」京セラ 稲盛ライブラリー スタディツアー

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9月5日~8日の4日間にわたって開催されたICCサミット KYOTO 2022。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、8月24日に逝去した偉大な経営者、稲盛 和夫さんとその経営を学ぶ「本では学べない!  ヒストリアンが解説する京セラ 稲盛ライブラリー スタディツアー」の模様をお伝えします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回300名以上が登壇し、総勢1,000名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。


京セラのご協力をいただき、過去にも何回か開催してきた稲盛ライブラリーのスタディツアー。創業者である稲盛 和夫さんと長い時間を過ごしたヒストリアンによる解説をいただきながらライブラリーを見学するもので、稲盛さんを経営の師とあおぐICCサミットに参加する若き経営者たちの好評を得てきた。

今年はコロナ下のICCサミットも3回目となり、さまざまな制約が緩まったところでの開催。参加者数も過去最大となり、今回参加するのは29名。毎回満席となる人気プログラムのため、過去に申し込んで今回初めて参加することになった方もいる。

開催が翌週に迫り、準備も本当に終盤となるところで、8月30日に飛び込んできたのがこのニュースである。

京セラ 稲盛和夫名誉会長が死去 90歳 一代で世界的な企業に(NHK)

3年前に聞いたときには、すでに会社に姿を見せることはほぼなくなっていると聞いていたが、2019年のICCサミットの人気セッションで、レジェンド経営者に話を聞くシリーズ(シーズン1 / シーズン2)があり、登壇とは言わなくてもいつかは来ていただけないか……と思っていた。

それは不可能となってしまったが、今回のICC KYOTO 2022のスタートを飾るプログラムは9月5日、予定どおり開催となった。

稲盛ライブラリーの正面まで来ると、外からも見える場所にこのメッセージが、写真とともに掲げられている。以前からあったものかもしれないが、死去から1週間たたないこの日は、とくに強く語りかけてくるように思われた。

映像視聴からスタディツアーがスタート

定刻ぴったりに全員が集まると、稲盛さんの半生をたどるドキュメンタリーの上映が始まった。これは新入社員も全員見るというもので創業者である稲盛さんと京セラ創業の原点がわかる映像だ。29名はこの映像を視聴したあと、2つのグループに分かれてライブラリーの見学に向かった。

「心を高める、経営を伸ばす」稲盛 和夫の思想に触れる

この日、一行をガイドしてくださったのは、盛和塾で17年に渡って、稲盛さんを傍で支えた盛和塾事務局の池田 成男さん。ICCサミットに参加する若き経営者たちに、京セラや稲盛さんについて、さまざまなエピソードをお話しいただいた。

このグループは3階の「稲盛和夫の思想」から見学をスタート。一行は著作の前で足を止めた。

池田さん「『心を高める、経営を伸ばす』は、松下 幸之助さんが帯に推薦の言葉を書いてくださっています(※ハードカバー版)。出版の1カ月後ぐらいに松下さんは亡くなられているのですが、稲盛自身も非常に尊敬しておりましたので、本人はこれは大変嬉しかったんじゃないかと思います。

経営とは、戦略や管理の部分が多くを占めるようなイメージがありますが、稲盛自身は、それはもちろん大事ですが、最終的に行き着くところはリーダー、経営者、トップの人の器、人格が、結局企業の死命を制する、その企業そのものが大きくなるかならないかも、その人の器次第だということを言っています。

ボランティアで関わった盛和塾においても、テクニックの話よりもどちらかと言うと努めて心を高めることを語っていました。そういう意味で『心を高める、経営を伸ばす』、この言葉自体も稲盛を代表する言葉の1つと覚えていただいたらと思います」

続いて一行が足を止めたのが「フィロソフィ」の展示。「京セラフィロソフィ」として知られるこの社員のための行動規範は、創業当時から稲盛さんが考えに考えたものがまとめられている。

当時30歳前半だった稲盛さんが社長就任直後にまとめた直筆メモの展示もあり、そこには原点となるような決意の言葉が並んでいる。

「京セラは世界的課題に立って世界の京セラへ前進する」
「創造は仕事に徹し行き詰まったときに 一切物事にとらわれないでケンキョな心境のときに生まれる物なり」
「京セラマンは情熱の人、感激の人であらねばならぬ」
「京セラマンは仕事に徹しその結果、仕事に喜びと楽しみ位を見出し、ホコリを持つものたり仕事が楽しみになれば責任は自然にはたせる」
「京セラマンは人一倍苦労し、人並みの事が出来ると思い、苦なくして栄光を望むな」
「京セラマンは苦難から逃れてはならぬ ヒキョウは恥と知れ」

稲盛さん直筆のメモに見入る

池田さん「フィロソフィは、どこかの偉い学者先生から教わったものではありません。稲盛自身が会社を経営するようになり、一つひとつの判断に非常に迷いました。そこで経営のプロではない人として、”人間として悩んだとき”という部分に判断を置こうと決めました。

田舎のおじいちゃんとおばあちゃん、両親や学校の先生、そういった方が、やっていいことといけないと教えてくれたことを判断の拠り所に置きました。転じてフィロソフィ自体も、人として何が正しいのかを判断基準にするという考え方になっています。

よく稲盛が『損得で判断するな』『善悪が大事』というようなことを言いました。ある事象が起きたときに、『これや!』と言って手を出したときのそのときの判断は、利己的な心のものもあるので、そういうときは『一呼吸置きなさい』と。そういったことも、方法として教えてくれています」

続いて池田さんは、フィロソフィの4つの要素を解説。経営者が中心の参加者たちは熱心に耳を傾け、メモをとっていた。

稲盛財団による社会活動「京都賞」と「盛和塾」

4階のフロアは、稲盛さんが私財で設立した稲盛財団による社会活動を紹介。ノーベル賞に先んじる受賞者を7名も輩出した「京都賞」は、上の写真のメッセージにあるように「人類の未来は、科学の発展と人類の精神的深化のバランスがとれて、初めて安定したものになる」という理念から、科学の部門だけでなく、思想・芸術の部門も充実させている。

芸術部門の受賞者の幅広さに驚く参加者たち

近年は、研究者や子どものサポートにも力を入れており、研究者を10年間継続的にサポートする仕組み(稲盛科学研究機構)や、子どもが科学に興味を持ち、探求する心を育むこども科学博など多岐に渡っている。

池田さん「母校愛が炸裂していて、鹿児島大学には京セラの株100万株を寄付したのには、我々も驚きました(笑)」

2017/11/22 母校 鹿児島大学に京セラ株100万株を寄付(稲盛和夫OFFICIAL SITE)

メモをとり、展示に見入っていた参加者たちから池田さんに質問が始まった。

「そこまでするのは、利他の精神といっても難しいと思います。ご自身は質素な生活をしていたんですよね?」

池田さん「はい、普通の生活でしたね。食べ物も贅沢なものはあまり好まれなくて。中国のテレビ局の記者からインタビューを受けたときに、どんなものを食べているかと聞かれて、好物はチキンラーメンと答えたことがありました。そうしたら記者が驚いてしまって(笑)」

「お亡くなりになられたタイミングで、いろいろニュースを拝見していたら、吉野家さんとか、ラーメンとかをよく食べていたみたいにコメンテーターの方がおっしゃっていました」

池田さん「牛丼なんか、もう大好きでしたね」

追悼・稲盛和夫氏、大事な接待に「牛丼の吉野家」を選んだ経営の神様の真意(ダイヤモンド・オンライン)

フィロソフィは、稲盛さん自らが経営判断をしたときの知恵

最終的には15,000名を超える塾生がいた盛和塾(1983〜2019)についてはご存知の方も多いかもしれない。地元の若い経営者たちから請われたものの、当時多忙を極めていた稲盛さんは何度も断っていたという。

京セラ稲盛氏の盛和塾、19年で活動を終了(日本経済新聞)

池田さん「東京からソニーの盛田さんが来られたときなど、経営談義をしながら飲むのが好きだったんですが、そこで若手の経営者たちにつかまって、ぜひ勉強会をやってくださいと言われて。『そんな暇がない』と言っていたら『ここで飲んでいる時間があるじゃないですか』と言われて、ぐうの音も出なかったと。

(一同笑)

飲んでいるときにするような話であればいいんじゃないかということと、親分ということで慕っていたワコールの創業者の塚本(幸一)さんに『稲盛君、京都に世話になってるのだから、そのぐらいやったらどうだい?』と言われたのもあると聞いています。

それで始まった盛和塾なんですが、稲盛自身は片手間とか中途半端が大嫌いな人間なので、一度始めたら全力投球です。ですので、ものすごく厳しくてですね、本当に精魂込めて盛和塾活動に関わっていきました。

盛和塾でお話ししているときとか、また各地の経営者の方が交流しているときに本当に嬉しそうな顔をしておりました。

自分も中小企業で、零細企業のときに本当に苦しかったんです。苦しくって一つひとつの経営の判断が怖かったといいます。そういった中でこういう考え方でやったらちゃんとできたよっていうことの積み重ねが、フィロソフィなのです。

だから経営者の塾生たちに、あなたたち、これは知ってる? 早く知って使ってくださいというような、そういった気持ちが盛和塾活動の原点にあります。だから、京セラにとっては本来は宝と言われる京セラフィロソフィというものが、最終的には一般書店に並んでしまうような形になっています。

稲盛は目の前にいる人が幸せになってくれるのが本当に嬉しい人間だったので、自分の考え方を使って、良くなってくれたらそれでいいと思っていました。やめていく方々もいますが、ほんの一瞬、その方の人生でそこにいたという事実だけでも何か役に立っているのなら、それでいいじゃないかと聞いたことがあります」

楽観的に構想、悲観的に計画し、楽観的に実行して生まれたau

最後まで「我々中小企業経営者は…」という言い方をしていた稲盛さん。28人で始まった京セラの現在の社員数は約8万3,000人

最後に訪れた京セラの創業からの歩みをたどる2階の展示は知られているエピソードも多いが、京セラは松風工業からのスピンアウトベンチャーだったこと、技術者として独立したつもりだったのが、従業員たちに団体交渉をされて初めて経営者としての悩みに直面したこと、創業を後悔したことさえあったことなどなど、参加者も共感するところがあったのではないだろうか。

第二電電創業のストーリーは、稲盛さんとともに創業した千本さんの以下のセッションでも語られている。外野から見ると敵対関係と思われた当時NTTの真藤 恒総裁は、稲盛さんをよく理解していて、実はいろいろと協力してくれていたそうだ。

3. 連続起業家・千本倖生さんが明かす、既得権益との付き合い方――第二電電(現KDDI)の創業前夜

フィロソフィの1つである「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」。これを説明するときに、稲盛さんがよく語っていた事例があるという。

池田さん「京セラの現預金1,000億を使って第二電電を創業したばかりの頃、稲盛は1人1台携帯電話を持つ時代が来ると確信して、現在のauにあたる携帯電話事業に手を挙げたものの取締役会では総スカンにあいました。

そのときによく事情を知らない取締役が1人だけ、『会長、それ面白いかもしれません』と賛成し、それを稲盛が本当に嬉しくなって、『お前、いいこと言うな、俺とお前の2人でやろう』と言って決めちゃったというんですよね。これは企業としてどうなんだろうなと思うんですけど」

”経営の神様”の意外なエピソードに、一同大笑い。駆け足の見学だったが、膨大な資料とヒストリアンによる舞台裏の話に、稲盛さんの思想にどっぷりと浸かった時間となった。

社員から見た稲盛さんの印象は?

ライブラリーの見学を終えて会議室に戻ってくると質疑応答タイム。アックスヤマザキの山﨑 一史さんは、稲盛さんの講話音声を聞きながら毎朝通勤しているそうだ。

山﨑さん「京セラから見て、よその会社も絶対これをすべき、というものを教えてもらえませんか?」

仲川さん「私が好きなのは、「誰にも負けない努力をする」です。うまくいかないときは、いろんなことがあるんですけど、でもそこに理由を求めてしまうとブレイクスルーもできないし、そこから先に進まないわけですね。だから常に自分の中に理由があるとして、努力が足りないと思うようにはしています。

あとはこれですね、『楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する』。もう一つ、「常に明るく」かな。やっぱり心が明るくないとダメだと思うんです。

執行役員研究開発本部長の仲川彰一さん

私が思うに、京セラって非常に真面目なんです。他の企業さんも当然そういうところもおありですが、それにも増して愚直に真面目かなと思いますね」

Co-Growth株式会社小村 麻衣さん「社員の皆さんからは、稲盛さんはどういうふうに見えていますか?」
研究開発部門 副本部長の福島 勝さん

福島さん「褒められたこともありましたが、どちらかというと怒られた印象のほうが強いですね。すごく真面目に結果を残せるとか残そうとしている姿勢が見えると褒めてくださるんですけれども。

(出来が)イケてないということを自分が気づいていないと叱られます。それはとても大切で、怒られることで気づけることが1つひとつありがたかったです。ぶっちゃけその場はめちゃくちゃ怖いですが(笑)」

ライブラリーを案内いただいた盛和塾事務局の池田さん

池田さん「2002年から2019年まで盛和塾で一緒に仕事をさせていただきました。印象的なのは、きれいな心ということです。魂からというのは変ですけれども、本当に心底相手のことを思っていました。

ですから、褒めるときはめちゃくちゃ褒めますし、叱るときは本当に立っていられないほど叱るんです。これは本当に愛で、相手のことを本当に大事に思うからこそ、そういった形に表れてくるのかなと思います。本当に些細なときにでも、常に相手のことを見ています。

例えば、盛和塾の勉強会などが終わった後に、勉強会2時間やって懇親会を2時間やって、80を過ぎた老人がもうヘロヘロになって、ホテルの部屋にお送りするエレベーターの中でも、何を言うかというと、『お前たち食べたか?』と言うんです。

我々スタッフがちゃんと食事をしたかということを聞くのです。そんな状態になってまでスタッフの人間のことを気にかける言葉が自然に出てくる。そのときに本当に、ああ、この人は本当に心が優しいというか、人として本当に優しい、有難い方だなと、私は感じたことがございます」

株式会社ニューズピックス 渥美 奈津子さん「社員のベクトルを揃えるというような表現(「ベクトルを合わせる」)がありますが、会社が大きくなっていくと、なかなかそれが揃わなくなってくるときがあるかと思います。数万人を超える企業になっても、ベクトルを揃えるために皆さんはどういったことをされていますか?」

人材開発部 HRイノベーション課責任者の伊藤 研作さん

伊藤さんアメーバ経営では、ある程度の集団の中でみんな一緒の方向を向くようになっていきます。やっぱり組織長が愚直に言い続ける、想いを伝える、熱を伝えるところが大事かなと思います。

会社の方針があってそれに向かって事業本部、その縦割り組織があって、その中にいっぱい部や課、係があり、そこにリーダーがいます。そのリーダーがどれだけ言い続けられるか、みんなの心を引っ張る、その気にさせるというところじゃないかと思います。

だから諦めちゃいけないんだと思うんですね。最初はなかなか揃わないですが、1つの目標に向かってやっていこうとしていく中で、あるポイントでピッとそろってくるときがあるんです。それが私は『誰にも負けない努力をする』っていうことなんだと思います」

理事の稲垣  正祥さん。好きなフィロソフィは「製品の語りかける声に耳を傾ける」。研究開発をしていると実際にそういうことが起こるのだそう

稲垣さん「全く別の角度での話をします。京セラって月次生産なんですね。月末締め日、最終日の昼までに生産計上したぶんがその次の実績になるんですね。そうすると、とにかく目標を達成するぞってみんな一致団結するわけですよ。その締めが終わるとその日の夕方には社内放送で発表されるんですね。

そうするとあそこのアメーバは目標を達成したとか、自分のところはそこに勝ったとか、そういうことがわかります。ある意味ちょっとゲーム感覚って言うんですかね、そういう競争心が刺激される。ここ数年はコロナでできていないですが、全事業所で必ず毎年運動会をやってるんですね。分団対抗なんですよ。それで、分団長になったら、もう仕事そっちのけですよね。

運動会の話に一同大笑い。稲盛さんも各事業所の運動会に多忙な中、顔を出していたという

もう2カ月ぐらい前からムカデ競争の練習をしていたり、面白かったのは、ある人が応援団長に任命されたあと、職場異動の話があった。それでちょっと待てと声がかかって、あいつは応援団長だ、今抜けたら大変なことになると、異動が運動会の後になったことがありました。日々の業務だけでなくイベントごとに一致団結するような機会が作られていたなと、私は思いますね」

コーポレート経営推進本部経営企画部企画推進部責任者 守山 和之さん

守山さん「私は3年前まで子会社の京セラコミュニケーションシステムというところにいました。そこの社長と稲盛さんでJALの再生チームだったんですね。

人と企業を成長発展に導くもの ―日本航空再建の真の要因と日本経済の再生について―(稲盛和夫 OFFICAIL SITE)

そこでベクトルを合わせるときによく言われたのは、レコードってもうあまりご存じないかもしれませんが『守山な、レコードの針が壊れたように、同じことをずーっと繰り返してたらいい。それを言わないと逆に通じない。伝わらない』と。

もう1つ言われたのは、『前にも言ったけど、というのは、絶対言うな』と。『あたかも初めて言ったように、壊れたように同じことを言ったらいい』というふうに言われました」

笑いあり学びありの質疑応答が和気あいあいと続いたが、江端浩人事務所代表の江端 浩人さんが挙手し、参加者一同の気持ちを代弁するような言葉を述べてくださる場面もあった。

江端さん「質問というより、本当にこの大変なときに我々を受け入れてくれてありがとうございました。本来だったら皆さん、大変な時期だとと思いますので、我々のために時間をとっていただいて本当にありがとうございました」

参加者からの最後の質問は、核心的な質問。京セラの現在の最大の経営課題と、稲盛さん亡き後の中長期的な経方針営について。

質問したO ltd.大畑 慎治さん

仲川さん「非常に難しく、大事な質問です。今、来期は2兆円はとらえる方向にあり、さらにザ・カンパニーと言われるように、上を目指していこうといったときに、いろんな事業が成熟していっています。

京セラが伸びているときは、新しい事業を伸びていっているときで、我々も技術が核になって、他ではなかなかできないというところで伸ばしてきました。これから先、そのまま延長線上でいけるかというと、世の中の環境も変わっていますし、技術進歩もある。そこで、新しい事業を創っていくというのが、ひとつ課題点ですね。

京セラは情報通信、環境エネルギー、モビリティ、医療・ヘルスケアの4つを重点的に事業展開しているのですが、その事業領域の中でも、伸ばしていかないといけないところがあり、それぞれ浮き沈みがあってもそうやって多角化していることで安定させています。その上で、もう1本の柱、2本目の柱というのを作っていくことが課題です。

2つ目は名誉会長が他界して、それがどういう影響があるかですね。我々の精神的支柱ではあるのですが、経営自体はもうだいぶ前から京セラのほうは直接は関与されていませんでした。名誉会長の志を継いで、今の経営体制になっています。

フィロソフィも残してもらっていますし、大きいところでは、経営の理念である『全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する』、これは昔を見ても今を見ても全部ぶれない。こういう貴重な理念を持たせてもらっていて、それを大切にしながらしっかりと経営して行くというスタンスは今後も変わらないだろうと思います」

京セラ社内ベンチャーの3事業によるプレゼン

仲川さんの発言の最後にあったように、京セラ社内では「京セラ新規事業アイデアスタートアッププログラム」というものがあり、新しい事業を生み出すためのトライアルを続けている。質疑応答のあとは、以前もICCサミットに参加いただいた2事業を含め、3事業のプレゼンが行われた。

京セラ初、新規事業アイデアスタートアッププログラム 食物アレルギー対応サービス「matoil(マトイル)」の事業検証開始(京セラ)

Possi商品紹介シリーズ「ポッシと電動歯ブラシの違い」編(京セラ)

買った商品を瞬時に会計する無人レジシステムをプレゼンした船津陽平さん。現在実証実験中

独自の物体認識AI技術を搭載 画像認識型「スマート無人レジシステム」を開発(京セラ)

今度は参加者側が、プレゼンした3人に鋭い質問や提案、アドバイスを投げかけた。活発な質疑応答はICCのコミュニティに特徴的な「ともに学ぶ」というもの。同じ時代に課題を解決する事業を作ろうとしている仲間として、時間いっぱいまで議論が続いた。

最後は、ライブラリーの1階にある稲盛さんの等身大パネルとともに記念撮影をしてライブラリーのツアーは終了した。カタパルト登壇者を除く参加者の大半は、この後、南禅寺「八千代」に場所を移し、鍋を囲んで忌憚ない意見を交わす京セラ伝統の”コンパ”へ赴き、そこでも熱い議論を戦わせたそうである。

▶過去開催の模様
【京セラ×ICC特別企画】スタートアップの原点がここに。京セラフィロソフィを学び、伝統のコンパを体験!【ICC KYOTO 2019レポート#13】

現在もなお経営者たちが憧れ、経営理念を学ぶ人が止まない稲盛 和夫さん。その足跡と築き上げた功績はあまりに大きいが、スタート地点では素人であり、そこからの道程での思考、学びを社内に限らず、続くすべての人たちのために遺してくれている。

このレガシーは生き続け、京セラがさらに上を目指すための礎となり、今は何者でもない経営者であっても悩みや思考に寄り添い、支えてくれるものとなる。強く説得力のある理念は、時代や肉体を超えて生き続け、永遠のCo-Creationが可能になる。

30代で記した京セラマンとしての心得を体現した人生に想いを馳せながら、未来を創る産業人として我々は何が出来るのか、何が遺せるのか。思考と学びと議論の4日間、ICC KYOTO 2022が始まった。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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