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【最終回】「ソフトバンク孫正義は圧倒的なお客様目線」 – 経営者こそがユーザーの代表者であれ【K16-6A #7】

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「ユーザー・エクスペリエンスのベストプラクティス」【K16-6A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その7)は、ユーザー・エクスペリエンスを向上するための本質的な課題について議論しました。ヤフー村上さんが語るソフトバンク孫さんのエピソードにも注目です。ぜひ御覧ください。

ビジネス最適化プラットフォームを提供するドーモ株式会社(Domo)はICCカンファレンス KYOTO 2016のゴールド・スポンサーとして本セッションをサポート頂きました。ビジネスデータの集約とリアルタイムの意思決定が可能なDomoの詳細はこちらからご覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 6A
「ユーザー・エクスペリエンスのベストプラクティス」
Supported by Domo

(スピーカー)
石川 敬三
株式会社UNCOVER TRUTH
代表取締役CEO

倉橋 健太
株式会社プレイド
代表取締役社長

村上 臣
ヤフー株式会社
執行役員CMO

(モデレーター)
須藤 憲司
Kaizen Platform, Inc.
Co-founder & CEO

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【本編】

UX設計における本質的な課題はどこか?

須藤 すごく本質に迫ってきていると思っているのですが、結局ユーザー・エクスペリエンスを良くするというのが当たり前にならないのはどうしてなのでしょうか?

要は、本質的な課題が何かを考えるというのが今の話にあったと思いますが、モバイルのサービスは選択を迫られているのだと思います。

あれもやりたい、これもやりたい、と色々やりたいと思っていても、ほとんどはユーザーに届かないときに、1番インパクトを出すための打ち手を事業者側が決め切らないといけないということがありますよね。

石川さんは、実際コンサルティングをされていて、そういう点はどうでしょうか?

石川 そうですね。1番みんなそれが出来ていないと思います。

UIの話でも減らすというのは本当にそうで、スマートフォンの場合は、ほぼ減らします。

その本質が何かというのをKPI設計するときにクライアントと話をしても、「うーん」となってしまって、結局申込数やKGI(重要目標達成指数)の話しかしません。

それをちゃんと決めきっている会社はとても少ないなと感じています。

須藤 倉橋さんから見て、UXを良くするというのは当たり前な話ながら、先ほどの漢方の話ではないですが、なかなか出来ないことでもあります。

これは何に課題があると考えていますか?

倉橋 自分たちのサービスの視点で見ても、UXに対して直接的にコミットメントするのは、本来は上の方の人間が動かせるはずが、現状は現場の方がUXに対するタッチポイントが多いですよね。結果として、UI寄りの考え方が占めています。

サービスを提供されるときに、上流から下流までバリューチェーンがあって、本来その共通言語がUXとして担保出来ていないと全体のUXを実現するのは難しいと思うのですが、それがものすごく断片的になっているのが今つらいところなのかなと思います。

須藤 なるほど。村上さんは、その辺のジレンマは実際にサービスを抱える中で感じられていますか?

経営者がユーザーになり切れているか?

村上 そうですね。事業責任者や経営陣の方で、実際にアプリのサービスを運営していて、本当に毎日ユーザーの立場で使いこなしているかをまず問いたいですね。

須藤 経営者がユーザーになっていますか、ということですね。

村上 もしくはユーザーの気持ちでどれくらい触っていますか、ですね。月に1回なのか、毎週なのか、毎日なのか、という点です。

お客さんに毎週使ってほしい、毎日使ってほしいと思うのであれば、それと同じリズムで自身が見ているのかどうかというのが、基本的な問いだと思っています。

なぜかというと、リアルなコーヒーショップを経営している方は、ミステリーカスタマーではないですが、たまに店舗に行って、接客を観察したり、コーヒーの品質を確かめたりしますよね。それと同じ話です。

顧客体験と言うならば、スマホを使うお客さんの気持ちになって、自身が体験していますか、と思います。

ここに課題意識を持つことが、UXの課題を理解することに必要だと思います。

なので、組織内でUXの考え方が浸透しないというのであれば、まずここがチェックポイントだと思います。

須藤 村上さんは触っていますか?

村上 僕はかなり触っていますし、新しいアプリが出ると全部触ります。

アプリストアのランキングはいつも見て、見慣れないものがあるととりあえずダウンロードするというのが毎日の習慣になっています。

あとは、App Annie(アップアニー:アプリに関する市場データと分析ツールを提供している米国企業)みたいなツールで、海外のものもチェックしています。

韓国のランキングは日本に近いものがあって、すごく面白いです。

韓国で流行ったゲームが日本に来て流行ることがよくあるので、アジア圏の中国・韓国・インドネシアのアプリランキングのトップ10はいつも見ていますね。x

石川 村上さんの話はすごく共感します。僕らはメディア愛と呼んでいます。自分たちのサービスに愛があるかどうかです。

僕らが携わっていて1番あり得ないと思う多いケースは、通販業者ですね。ECも窓口としてある通販業者はほとんどの社員がウェブを触っていないことが多いです。

なぜかと言うと、社内販売を通販で買っているからです。なので、ウェブ担当者の何人かがウェブを触っているわけです。それで良くなるわけないよね、と思います。

事業責任者はUXを理解し、こだわってほしい

村上 そうですね。当たり前の話ですよね。結局、業者に任せようという話になってしまっていますよね。

自分たちにとって、お客さんが電話の前ではなくて、スマホの前にしかいない時代になってきたときに、これまで電話にこだわってきたのに、スマホの画面にこだわらなくていいのか、やらなくていいのか、という話です。

あとは、事業責任者の方は、KPIに一喜一憂しないで、UXの話をまず理解して、そこにこだわってほしいです。

最終的なUXは事業そのものなので、事業責任者しか責任がとれないですよね。

なので、それぞれの分野に担当をつけるのはいいのですが、最終的な意思決定は、事業責任者の仕事ですし、それに対してどういう目標を持たせるのかも事業責任者の仕事だということです。それはやっぱり理解してほしいです。

あとは解に魔法のツールはなくて、すごく地味な筋トレであるということですね。

コンサルタントの方を呼んで、「すぐにバーンと上がる提案をしてよ」と言っても、「いや、ないです」という話になるわけです。

須藤 あったら、やっていますよね。

村上 あったら、みんなやっていますし、やったらそれが普通になるので、全体のスタンダードが上がるだけですよね。

なので、基本的には失点をしないためのツールや施策であって、それをやらないと、とりあえず(サッカーの)J1にはいけないわけです。1部リーグで戦うためには、基本的には失点をしない、防御率が高いというのが必須条件です。

そうすると、「まずはそのために、今回の登壇者の方の会社のツールを入れておきましょう」という営業が出来るわけです(笑)。

須藤 有難うございます(笑)。

経営者がサービスを使っていますか?というのは、ここにいらしてくれた方への重要なメッセージだと思っています。

僕自身も、自分のサービスのツールをたくさん使います。嫌味のように、「なんでこうなっているの?」と担当者に聞いているのですが、嫌味にとられません(笑)。

村上 少し知っている人だと、すごく細かいUIにこだわったりしますが、それはやめて頂きたいですね。

それは任してもらって、重要なのは、顧客の代表者として、1番ニュートラルに接することをトップが出来るかですよね。

ソフトバンク孫さんの圧倒的お客様目線

村上 例えば、ボーダフォンジャパンをソフトバンクが買収したときに、私ヤフーから一番最初に出向した人間で、ヤフーボタンが付いたヤフー携帯を作っていました。

あのときに、孫正義さんは携帯を全然知らなかったのですが、最初にやったのが、世の中に出ている全ての携帯を自分の部屋に設置しました。

ヨドバシカメラにあるような、ボーダフォンだけではなくて、ドコモとauが飾られている棚を作りました。

200台くらい並んでいたのですが、暇な時にいつも触っていて、「日本で1番携帯に詳しいやつは誰だ」と言われて困りました。

TVチャンピオンで携帯王選手権というのがあって、担当者が「この人が1番詳しいです」と報告したら、「連れてこい」と言われて連れてきたのですが、いまその人はソフトバンクの社員になっています(笑)。

須藤 (笑)。すごいですね。

村上 その人はいきなり呼ばれて、別の会社に働いていたのですが、「明日からお前はソフトバンクにいて、携帯について俺に教えろ」と伝えて、情熱にほだされて転職してきました。

ずっと棚の横に座っていて、孫さんが「これはどうなっているんだ、このボタンを押すとどうなるんだ」という質問に答えていました。

面白かったのが、僕はガラケーの中身のソフトウェアで、ブラウザの部分を作ったのですが、文字が3行並んでいて行間があったときに、孫さんに「行間をもっと詰めたらあと1行入るよね。そしたらもっと見られるでしょ」と言われました。

それはエンジニアとしては「ROMに焼いてあるので無理です」と思うわけです。そこで、「そういう仕様なので無理です」と答えたら、すごい勢いで怒られて「アホか、お前は」と言われました。

「何をどうしたらそれが実現出来るのかという案を出せ。ROMだとか何だとか知らん。分からないんだったら、シャープを呼んでこい」と言われて、僕は走って聞きに行ったら、「ROMを焼き直して全部で50億円くらいあったら出来るのでは」と言われました。

帰って孫さんに「50億円くらいかかると言っています」と伝えたら、「そうか、やめよう」と言われました(笑)。

つまり、圧倒的なお客目線なんですよね。少し行間を詰めたら、より短い時間で、より多くの情報が見られるわけです。これはブラウザの世界において便利に感じますよね。

「担当者は、『仕様なので出来ません』ではなくて、『これをやるといくらかかります』という案を出すのがお前の仕事だ」と言われて、それは確かにその通りだなと思いました。

お金が思ったよりも高くてやっぱりやめたという結果にはなりましたが、それは経営者の意思決定ですよね。

なので、トップの人が本質的に顧客の代表として、声を上げられるかですよね。

細かいところはどうでもよくて、真をおさえた顧客体験の向上につながるような目線でサービスを見られるかという話だと思います。

須藤 すごいですね。その人がいまやチップの会社を買収しているということですよね。衝撃ですよ。

村上 スマホのCPUの99%のシェアを抑えているARM社を買うというね。

俺も、「買えるんだ、売っているんだ」とびっくりしました(笑)。たしかに売っていたら買うよね、という気がします。

UXに魔法はなく、日々の筋トレである

須藤 時間になってきたので、まとめに入りたいと思います。UXを改善することを生業にしている、あるいは、UXを良くしてサービスを提供するためのビジネスをしている方々なので、最後に意気込みや皆さんにメッセージがあれば、お願いします。

では、石川さんからお願いします。

石川 僕は、今日はむしろ勉強になったのですが、キーワードは負のKPIですね。

須藤 負のUXですね。

石川 これは僕らのメニューにしようかと思います(笑)。

村上 ライセンス料をあとで頂いてもよろしいでしょうか(笑)。

須藤 (笑)。これはいいですよね。負のKPIを設定している会社はほぼないと思います。

村上 負のKPIはやっぱり重要ですよね。

石川 商品のメニューにします。有難うございました。

須藤 今日この場で発明が生まれたということですね。有難うございました。それでは、村上さんよろしくお願いします。

村上 負のKPIというのは新しいキーワードですね。あとは、「ガッカリ」、「失点を減らす」という辺りがキーワードになるかなと思います。

あとは、「魔法はない」ということですね。日々の筋トレであって、そして、「筋トレは裏切らない、必ず結果が出ます」ということですね。

須藤 有難うございます。それでは、倉橋さんお願いします。

倉橋 そうですね、その筋トレをやりやすくするような、データの検知からそれぞれの会社のバリューチェーンに対して提供していけるように、サービス開発を頑張ってやりたいなと思っています。

須藤 有難うございます。

今日この場のUXはどうだったのかというのは、聞きたくない気持ちでいっぱいですが、もしご質問等ございましたら、登壇者の皆さんにお声掛け頂けたらと思います。今日はどうも有難うございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/藤田 温乃

【編集部コメント】

最後までお読みいただきありがとうございます!書き起こしをこれまで長く担当した藤田 温乃さんが今作で編集チームを離れることとなりました。今まで本当にありがとうございました!

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