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2. 富裕層インバウンドを熱狂させる「10万円超の体験」とは

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訪日富裕層が求めるのは、作り物ではない日本の本物の文化と深い専門性のある体験です。J-CAT飯倉さんは、数百万を費やして日本の精神性を学ぶ顧客事例を挙げ、貸切空間と徹底したブランディングの重要性を指摘。事前予約による安定したオペレーションが、工芸の新たな収益基盤を生み出す構造を紹介します。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 12C
日本の工芸・アートの価値を高めるには?
Supported by EVeM

(スピーカー)

飯倉 竜
J-CAT
代表取締役CEO

石上 賢
丹青社
B-OWND プロデューサー

上町 達也
secca
代表取締役

松田 文登
ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO

(モデレーター)

各務 亮
電通
クリエイティブ プロジェクト ディレクター

『日本の工芸・アートの価値を高めるには?』の配信済み記事一覧


富裕層インバウンドが日本の文化体験に求めるものとは

飯倉 我々は毎月のように、経営陣も参加して、インバウンドの富裕層の方にユーザーインタビューをしています。

まず、我々がすごく強く感じている、求められる要素は2つあり、質の高い学びが本物であることと、専門的であることです。

詳しく言うと、地域の歴史や文化、人々の暮らしに深く根ざした、作り物ではない本物の体験であること、特定の分野に深い知見を持つ専門家から学べることです。

我々は、「この流派が良い」などと選んでいるわけではなく、「真剣に向き合っている、思いがある」ことを本物だと考えています。

ですので、茶道や書道には流派がありますが、特定の流派を贔屓しているわけではなく、思いを評価し、キュレートして掲載させていただいています。

スライドにはお客様がどういう目的で来ているのか、印象に残ったところなどのご意見を記載しましたが、長いので各自で読んでいただければと思います。

やはり本物であること、専門的であることが重要だと思っています。

80万円かけて日本のクラフトを体験した米国人親子

飯倉 事例をご紹介します。

アメリカの50代のお客様のケースで、13歳の息子と来日し、1週間東京、1週間金沢に滞在しました。

日本を選んだきっかけは、「言語、食、人、全てが自国とは違う体験を息子にさせてあげたかったから」で、また、テキスタイルデザイナーでアーティストなので学習意欲が高く、日本のクラフトを深掘りし、刺激を受けて勉強したかったとのことです。

面白いのは、彼らはお金を出し惜しみせず、日本の工芸に携わる人の思いを勉強するところです。

実際、体験に80万円ほど使い、宿泊には20万円しか使いませんでした。

金沢を選んだのも、国立工芸館や着物のミュージアムがあり、クラフトの街として興味を持たれたからです。

友人からも「京都は混みすぎているから、あまりゆっくり見られないよ」と言われたようで(笑)、それも金沢を選んだ理由の一つのようです。

各務 ざっくりでいいので、80万円の内訳は分かりますか?

飯倉 加賀友禅の染め物体験、職人の作業体験、工芸体験など、2、3プランにお申し込みいただいたと思います。

食事代は入っていません。

各務 相当、高単価ということですね。

飯倉 そうですね、お伝えし忘れていましたが、Wabunkaの体験はほぼ10万円以上のプランです。

1組10万円で、持って帰れるものや食事はついておらず、シンプルに体験のみです。

各務 Wabunkaの体験は10万円が平均単価ということですね。

飯倉 はい。

各務 すごい。

飯倉 先ほどお話しした花火作りは1組20万円、着物友禅体験も20~30万円ですね。

通訳ガイドの費用は含まれます。

また、我々は全てプライベート、つまり1組のみの貸切でサービスを提供しているのも面白いところだと思います。

これが、富裕層向けに価格を上げられる理由です。

プライベートツアーであること、一流講師、質の高い通訳ガイドによって高い価格を付けられて、安定的に事業が回るようになっています。

このアメリカのお客様は、「次にまたこの工芸の街に訪問するとしたら、何日間かにわたって、数百万円払ってもいいから、このアーティストからまた学びたい」と言ってくれました。

今みたいにコメントを入れていただけると、話しやすいですし、嬉しいです。

熊野古道で日本の精神を探求した元大学教授

飯倉 2つ目の事例は、こちらもアメリカの方で、元大学教授でパートナーと一緒に初来日し3週間滞在されました。

ハワイ在住の友人から熊野古道の話を聞いて来日を決意し、体験に200万円、宿泊に200万円使われた方です。

元大学教授のためか、学習意欲が高く、熊野古道は日本人の価値観や精神文化を深く学べるエリアだと思って場所を決めたようです。

先ほどの方と違う点は、明確に何かを学びたいというよりも、日本の精神性や文化を学びたいと考えて、この予算とこの期間を使っている点です。

旅行は暮らすように滞在して、文化や人との接点を大事にしたいと考えており、熊野古道周辺では、旅館や古民家に泊まっています。

一方、東京や京都にも寄ってはいますが、そこではすごくラグジュアリーなホテルに滞在しました。

金継ぎ体験をしていただきましたが、見た目の美しさやきれいさというよりも、金継ぎをして修復をすることで再生し、また使える、循環していくその美しさに惹かれ、この体験を選んだとのことです。

背景としては、直近で家族を失われたようで、この金継ぎ体験に何か重なるものを感じたようです。

日本の精神性や美意識に、すごくお金を払っていただいた事例ですね。

各務 これらの方々は旅の前に体験予約をされると思うのですが、その時から日本への関心が強い状態だと思います。

それを育んでいる土台は何なのでしょうか?

例えば、韓国ドラマを見て韓国が好きになるとか、定性的でも構いませんので、感じていらっしゃることはありますか。

飯倉 やはり寿司やラーメンなどがアメリカですごく流行っているので、食文化を入り口にして日本に興味を持っていて、日本への憧れはすごく強いです。

寿司やラーメンがどのような思いで作られているかなど、そして地域のことなど、いろんな情報を知り、いざ訪れようと思った時、より深い理解をしたいと思われるようです。

日本での「旅の終わりの体験」が再訪につながる

飯倉 あと、外国から日本に来る観光客の半数以上は、リピーターなのです。

一度目で、東京の浅草や京都の清水寺に行っているので、より深く知るため、日本の各地域に行きたい人が増えているという傾向もあると思います。

松田 北欧、北米、南米などありますが、割合として、どの地域からのお客様が多いのでしょうか?

また、どの国の、どういう人に刺さっているかという傾向はありますか?

飯倉 ありがたい質問です。中華圏にはアプローチしていません。

松田 それは効果がないからですか?

飯倉 はい。サイトが英語のみしか対応していないという理由もありますが、欧米、オーストラリア、ヨーロッパがメインです。

一部、シンガポールや香港などのアジア地域からのお客様もいますが、文化や精神性を学びたいという方は欧米にすごく多いのです。

傾向として、日本に来る中国や韓国の方は、買い物や食事などを目的にしている方が多いと感じます。

アメリカの歴史は日本よりも短いですし、日本の食べ物や美意識に加え、例えば、「日本人はなぜスポーツでチームのためにこんなに頑張れるのか」という違和感もポジティブに捉えているのではないかと思います。

アメリカには物質的、経済的な豊かさはありますが、それに疑問を持つ人がすごく増えているのではないかと思っています。

上町 達也さん(以下、上町) 何度か日本に来ている経験がつながっているのでしょうか?

飯倉 それもあると思います。

日本に興味を持ち、浅草や清水寺に行ったとしても、何かまだ満たされない、でもその旅の最後に何らかの体験をすると、これが日本の精神であり良さだと理解するので、もう一度日本に行きたいと思うケースが多いです。

ですので、2回目の訪問は体験がメインになるというケースです。

上町 理解が深まっていくプロセスにもヒントがありそうですね。

高価格体験の価格設定の原則

各務 料金10万円の内訳というか……、職人や文化に関わる方への支払い、そしてサービスとして運営していくには、オペレーションコストと人件費も必要だと思います。

それが、こういうサービスを考えている皆さんが結構困る点だと思いますので、具体的でなくても構わないので、価格設定の考え方などがあれば是非お願いします。

飯倉 マーケットとの価格差が大きい時には下げてもらうよう依頼しますが、そもそも付加価値をつけて売ることを大事にしています。

その代わり、事業者に独占契約を依頼する、つまり、事業者と一緒に商品を作るようにしています。

僕らが責任を持ってブランディングと集客をするので、僕ら以外の販路には売らないでほしい、その代わり比較的高い利益を頂くという仕組みにしています。

僕らがサイトに掲載する写真を撮り、紹介文も全て書いています。

中間業者として商品の見せ方やブランディングをしっかり行っていることが、マーケットで成功している要因かなと思っています。

松田 もしかしたら、さらにプロダクトが購入されるかもしれないですよね。

飯倉 おっしゃる通りです。

松田 それもセットでとなると、職人は積極的に参加すると思います。

飯倉 体験をした人は、製品もめちゃくちゃ買います。

こちらが頂く物販のフィーは、相談しています。

地域やプロダクトのファンになっていただくと、帰国後に商品を越境ECで買っていただいたり、再訪していただいたりすることもできますので、業界全体に大きな効果があるのではないかと思っています。

体験のオペレーションを安定化させる仕組み 

各務 また込み入った質問なのですが……。

松田 各務さん、めちゃくちゃ質問しますね(笑)。

各務 (笑)

京都のコンシェルジュから相談されていつも困るのは、ゲストの希望はがイレギュラーで来るので、ご案内する職人のスケジュールをピンポイントで押さえることを約束できないことです。

こういうオペレーション上の難しさはどう解決していらっしゃるのでしょうか。

飯倉 リクエストベースのケースと、事前にシステムを作って在庫を登録してもらうケースがあります。

各務 そうですよね、それで安定的に送客できればシステムとして機能していくと思いますが、この「安定的に」というのが難しいのですよね。

単体事業者やホテルで、ランダムになってしまうので。

上町 僕らも、体験を申し込まれることが多いです。

「富裕層」と一括りにして悪く言うわけではないですが、やはりわがままな要求が多い傾向があります。

直前になってキャンセルとか……、でも旅行会社はそれを補償してくれないので、結構難しいです。

受けたいけど、難しい側面を感じています。

飯倉 僕らは今、直前の予約はあまり取らないようにしています。

日本に来てから予約するお客様ではなく、日本に来る前のお客様にリーチできています。

松田 すごい、では念入りにスケジュール管理されている状態ですね。

飯倉 そうです。

各務 2、3カ月前からコントロールできるので、歩留が安定しているのですね。

キャンセルのガイドラインもあるのでしょうか?

飯倉 あるにはありますが、事業者と相談しながら商品によって決めています。

松田 上町さんは、飯倉さんとは協働していないのですか?

上町 まだ声はかかっていません(笑)。

松田 うちもお願いします!

飯倉 ありがとうございます(笑)。

各務 もう明日から使えるような情報でしたね。

今日の議論の前提条件として飯倉さんが、我々が狙うべきターゲットの属性やペルソナ、インサイトを共有くださいました。

ではこの流れを引き継いで、石上さん、お願いいたします。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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