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ICC FUKUOKA 2024 リアルテック・カタパルトに登壇いただき2位に入賞した、iXgene 水野 篤志さんのプレゼンテーション動画【ゲノム編集×iPS細胞で、悪性脳腫瘍など解決手段のない疾患の治療に取り組む「iXgene(アイエックスジーン)」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターは 慶應イノベーション・イニシアティブ です。
▶【速報】廃プラ活用の3Dプリント型枠で、持続可能な建設業界をつくる「DigitalArchi」がリアルテック・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2024)
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【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 7A
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by 慶應イノベーション・イニシアティブ
水野 篤志
iXgene
取締役COO
HP
2003年東京工業大学生命理工学研究科生命情報専攻修了(工学博士)。ライフサイエンス系スタートアップを中心に、大学等の高度な研究成果・技術の事業化を進めるポジションにおいてキャリアを重ねた。計3社のライフサイエンス系スタートアップにおいて研究開発、事業開発、経営・事業マネジメントを歴任。1社に関してはM&AでのEXITを実現した。この他にベンチャーキャピタル2社、ライフサイエンス系新規事業コンサルティング等を経て当社創業期に参画し最高執行責任者(COO)に着任。
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水野 篤志さん 皆さん、こんにちは。iXgene(アイエックスジーン)COOの水野です。
私たちiXgeneは、ゲノム編集とiPS細胞技術を掛け合わせて、世界中の難治性疾患に苦しんでいる患者の皆さんに革新的な治療を届けることを目指しています。
悪性脳腫瘍は誰もが発症リスクのある難治性がん
我々の最初のターゲットは、悪性脳腫瘍です。
悪性脳腫瘍は、脳腫瘍の約半数を占めています。
また、この悪性脳腫瘍は非常に治療が困難ながんでもあります。
他のがんと比較して5年生存率は極めて低く5%未満であり、治療後に再発した際にはほとんど治療法が存在せず、治癒が望めない疾患です。
抗がん剤の到達を阻む脳内バリア
では、なぜ悪性脳腫瘍はこのように難治性であるのでしょうか。
その理由はこちらのMRI画像に示されています。このように、悪性脳腫瘍は脳内の奥深くに浸潤していきます。
そのため、手術で取り切ることが難しく、残った腫瘍を抗がん剤で叩こうにも、脳内にはバリアが存在するため薬物が届かず、薬物治療の大きな障害になっています。
そこでいかにして脳内バリアを通過して残存腫瘍に抗がん剤を届けるか、これが悪性脳腫瘍治療の鍵となってきます。
私たちは脳内に抗がん剤を届けるために、iPS細胞にゲノム編集で「治療用遺伝子」を導入した治療用細胞を作製しました。
では、この「治療用遺伝子」は何かと申し上げますと、先ほどご説明したように、抗がん剤は脳内バリアで脳内には入っていけません。
けれども、この抗がん剤の前の物質、「プロドラッグ(※) 」は脳内に入っていきますので、脳内に入ったプロドラッグを、治療用遺伝子が抗がん剤に変換します。
▶編集注:プロドラッグとは、体内に入ってから疾患部位(患部)に到達するまでの間に、薬効成分が分解されないように化学構造を変換した薬。投与前はほとんど活性化していない状態、もしくは不活性の状態だが、投与後に体内で起こる代謝によって本来の薬効を示すようになる(製薬業界 用語辞典 | Answers)。
治療用細胞とプロドラッグを使用した残存腫瘍死滅のメカニズム
実際の治療についてご説明します。
脳腫瘍の患者さんの腫瘍をできる限り切除した後に、この治療用細胞を投与します。
治療用細胞は腫瘍に集まる性質をもっていますので、投与した細胞は残存腫瘍に向かって移動していきます。
この治療用細胞が腫瘍に集まったところで、先ほどのプロドラッグを投与しますと、このように脳内全体にプロドラッグが広がっていきます。
十分に広がった段階で、治療用細胞が脳腫瘍周辺だけで大量の抗がん剤にプロドラッグを変換し、残存した悪性脳腫瘍を全て死滅させることができます。
脳腫瘍移植マウスの33%が完全に治癒
実際にマウスモデルを用いた試験では、マウスに腫瘍を植えますと、どんどん腫瘍が増えてマウスは亡くなってしまいますが、我々の治療を施したマウスについては、ご覧頂けますように、全ての腫瘍を消滅させることができました。
さらに、生存期間に関しても、腫瘍を植えたマウスは100日程度でほとんど亡くなってしまいます。
しかし我々の治療を施したマウスは2倍、3倍に生存期間が延長し、さらにこの試験においては33%のマウスは全く再発することがなく寿命を全うしました。
すなわち、私たちの治療用細胞は、悪性脳腫瘍を根治できる可能性があると考えています。
2027年に期限条件付き承認で国内販売を目指す
我々は、このゲノム編集とiPS細胞の技術を使って、極めて治療困難な悪性脳腫瘍の根治のために、できるだけ早く臨床応用を進めていくことを目指しています。
我々のビジネスモデルとしては、慶應義塾大学から技術移転を受けて、現在非臨床開発、また臨床試験を進め、国内ではいち早くこの技術を届けるように開発を進めてまいります。
グローバルの開発については、グローバル製薬企業にライセンスアウトをしてまいります。
現状は安全性を動物で見ている段階で、2025年には臨床試験を開始、2027年には期限条件付き承認を得て販売を目指しています。
また、悪性脳腫瘍だけでなく、より多くの患者さんが存在する外傷性脳損傷や脳梗塞といった脳の疾患に対しても治療を広げていく予定です。
難治性疾患に苦しむ患者さんが医療をあきらめない社会を
メンバーをご紹介します。
全てのメンバーが博士の学位を有しているだけでなく、ベンチャーのスタートアップの創業から失敗さらにはIPOまで、様々な経験を有するメンバーで取り組んでいます。
最後に、繰り返しになりますが、悪性脳腫瘍は現在解決手段のない疾患です。
私たちはゲノム編集とiPS細胞の技術の組み合わせで、このような難治性疾患に苦しむ患者さんが決して医療をあきらめない社会を実現することを目指しています。
ぜひこの技術を世界に届けるために、応援をよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/正能 由佳/小林 弘美/戸田 秀成