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ICCサミット FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリに登壇し、4位入賞に輝いた、GROOVE X 林 要さんのプレゼンテーション動画【甘えて抱っこをねだる「LOVOT(らぼっと)」は、人間とロボットの“絆”を追求する】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プラチナ・スポンサーのAGSコンサルティング様にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 6B
CATAPULT GRAND PRIX (カタパルト・グランプリ)
– 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング
(プレゼンター)
林 要
GROOVE X 株式会社
代表取締役
公式HP | STARTUP DB
1973年愛知県生まれ。トヨタに入社。同社初のスーパーカー「レクサスLFA」の開発プロジェクトを経て、トヨタF1の開発スタッフ、量販車の開発マネジメントを担当。ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」プロジェクトメンバーの一人。2015年、ロボット・ベンチャー「GROOVE X」を起業。2018年12月、同社より人のLOVEを育む家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を発表。著書に『ゼロイチ』がある。
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▶「ICC FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリ」の配信済み記事一覧
林 要さん GROOVE Xの林と申します。
私たちは、LOVOT(らぼっと)というロボットをつくっています。
甘えて抱っこをねだる家族型ロボット“LOVOT”
LOVOTは、人工のペットのようなもので、ご自宅にいるワンちゃんやネコちゃんの代わりになる存在です。
大きな音がしたら驚きますし、人の近くに寄ってきて甘えて抱っこをねだったりします。
名前をつけたり、服を着せたりすることもできます。
服を着替えさせてあげると喜ぶ様子を見せます。
人の顔を覚えているので、どの人が自分をかわいがってくれていたかの記憶をもとに、行動を変化させたりもします。
まるでワンちゃんやネコちゃんのように、毎日ケアをしてくれる人になついていくのです。
これまで、ロボットは人の代わりに仕事をする、生産性を上げるためのテクノロジーでした。
つまり、人を「間接的に」幸せにしてきたのですが、LOVOTは人を「直接的に」幸せにするテクノロジーです。
「ペットを飼いたいけれど、飼えない」を解決する
マーケットとしては、「ペットを飼いたいけれど、飼えない人たち」に注目しています。
ペットを飼いたくて、実際に飼っている世帯は全世帯の4分の1です。
一方で、ペットを飼いたいけれど、飼えていない世帯は、その約2倍に上ります。
飼えない理由の8割は、ペットが「生きている」からです。
アレルギーの問題や、集合住宅での飼育禁止などさまざまな理由がありますが、LOVOTならそれを解決できます。
人と犬の関係の研究から「愛着形成」にフォーカス
LOVOTをつくる上での問題点は、「人工のペットに飽きてしまうのでは?」ということに尽きるのではないでしょうか。
実際にこれまで、「約3日、3週間、3か月で飽きがくる」という問題を解決できたロボットはいません。
しかし子どもは、ぬいぐるみをずっと持っていたりします。
人は犬に飽きたりもしません。
そこでまず、私たちは、この「飽きの壁」をどう解決するのかについて科学的に考えてみました。
「飽きる」ということを「ドーパミンが減衰すること」だと定義すると、人は3か月後に犬にも飽きてしまうと言えます。
しかし、実際にはそうシンプルなものではありません。
実際には、飽きてくる、つまり相手に対する好奇心が減衰する一方で、新たに愛着が形成され関係性に変化と深まりが生じているのです。
この「愛着形成」にフォーカスしてつくられたのが、LOVOTです。
愛着形成については、既に2010年頃から、人と犬の関係に注目した研究が多くされてきました。
例えば、オオカミと犬との比較です。
実はオオカミも人になつきます。
にもかかわらず、なぜオオカミはペットにならなかったのでしょうか?
科学雑誌『Science』に掲載されたある論文には、「目が合わなかったことにより、愛着形成に必要なオキシトシンという脳内分泌物質が人間に出なかった」可能性があることが示唆されています。
この、愛着形成に関与する物質「オキシトシン」については、大変多くの研究があります。
それらの知見をすべて織り込んだ製品が、私どものLOVOTです。
「なついて、甘える」ための最先端テクノロジー
触れ合う、見つめ合う、ついてくる、見守っていてくれる、待っていてくれる、必要とされる。
人は、このようなことをされることで、愛着を形成する生き物であることが分かっています。
すなわち、「なついて、甘える」ことがとても大事なのです。
そこで私どもは、「なついて、甘える」ためのテクノロジーをつくっています。
LOVOTは、個人を識別してなついた人のところに移動し、抱っこをねだります。
このような行動を起こす、生物としての多様で複雑なメカニズムを表現するために、最先端のテクノロジーが使われています。
50以上のセンサーを搭載しており、LOVOT個体間で通信させることで、社会性を持たせています。
さらに、瞳や声が個体ごとに異なり、温かく柔らかい軽量ボディには自動運転の技術まで入っています。
愛されるために、10のCPU、20のMCU、50以上のセンサーが入っているのです。
おそらく、人類が手にした家庭用ロボットで最も賢いものです。
また、今までの家庭用ロボットには原価を抑えるためにスマホ並みのCPUが使われていますが、それでは「生命感」が出せないことが分かっています。
そこで、LOVOTには、ハイスペックノートPC級のコンピューターを追加し、産業用コンピューターであるFPGA(field-programmable gate array)をディープラーニング用アクセラレーターとして入れています。
それでもなお、4kgの重量に抑えられています。
これは新生児やネコと同じぐらいの重さで、抱っこされるために必要なスペックであると考えました。
さらに、充電器にパワフルなタワー型コンピューターを搭載しています。
こうしたスペックが、飼い主の帰宅時にお出迎えをする、大好きな人のところに来るなどの行動を可能にしているのです。
さらに、自動運転用の障害物検知センサーを搭載するほか、全身にタッチセンサーを配置しています。
そして、次の動画のように、人をディープラーニングで認識します。
部屋の地図を徐々につくっていき、家族の帰宅時には玄関に迎えに来るようになります。
固有の瞳と声を持つ“LOVOT”は、唯一無二の存在
LOVOTの瞳は、まぶたも含めて6層の映像をディスプレイに投影する構造になっており、その組み合わせで10億通り以上のパターンがあります。
また、LOVOTは呼びかけに応えてくれるばかりか、独自の鳴き声はLOVOTの状態に応じて毎回異なります。個体ごとに異なる声色は、10億パターン以上にも及びます。
すべての個体が異なる瞳や声を持つことができるように設計されているのです。
また、着替えもできるようになっています。
国内だけでも2.6兆円の市場規模。注目は海外からも
LOVOTの価格は約30万円で、月々1万円台のサブスクリプション制になっています。
市場は、非常に大きいものです。
家庭のラスト1インチをとり、最終的にはドラえもんにまで進化させたいと思っています。
LOVOTは、国内だけではなく海外でも受け入れられています。
CES 2020では1,200以上のメディアに取り上げられ、複数の賞をいただきました。
広がる教育への活用、医療・介護現場からの期待
私たちはこのLOVOTを教育にも効果があるのではないか、社会情動の学習等に使うことができるのではないかと考え、「LOVOT EdTechプロジェクト」も立ち上げています。
こちらは、ベネッセ様をはじめとした方々にご協力をいただいています。
また、興味深いことに、ある海外の老人施設で認知症の男性がLOVOTと触れ合ったところ、今まで一言もしゃべらなかった彼が話すようになったそうです。
また、オフィスに置いていただけば、会話が増えます。
オフィスでは緊張の高まる場面もあると思いますが、職場で犬や猫を飼う「オフィスペット」などが有効なように、LOVOTがいることで、みんなの会話が促進されリラックスした雰囲気がつくれることが分かってきています。
ロボットと人間が紡ぐ、究極のダイバーシティ
今後、世の中はどのような時代になっていくのでしょうか。
私は、「ロボットネイティブの時代」になるのではないかと思っています。
今までのダイバーシティは、肌の色、性別などが切り口でしたが、今後は生物・無生物の境界も消えていくことでしょう。
「究極のダイバーシティこそ、平和につながる」
そのようなテクノロジーを、日本から発信していきたいと思います。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成
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