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ICC FUKUOKA 2024 スタートアップ・カタパルトに登壇いただき5位に入賞した、森未来 浅野 純平さんのプレゼンテーション動画【「森未来」は国産材のサプライチェーンを再構築し、持続可能な森林を目指す】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。
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【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 1A
STARTUP CATAPULT スタートアップの登竜門
Sponsored by エッグフォワード
浅野 純平
森未来
代表取締役
HP | X(旧Twitter)
1981年千葉県生まれ。IT業界から林業で起業するために転身。東京都の秋川木材協同組合で事務局長を務める。2016年株式会社森未来を設立。2021年よりインターネット木材市場「eTREE」を提供。
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浅野 純平さん これからの木材流通を再構築する、木材プラットフォーム「eTREE」について説明します。
改めまして、株式会社 森未来、代表の浅野です。
森に未来と書いて「しんみらい」と読みますので、ぜひ、覚えていただければと思います。
当社のミッションは、「Sustainable Forest」です。
森林を持続可能な状態にして次の世代につないでいく、つまり森林と人類が共生できる社会を目指しております。
6割が輸入木材となった森林国家の背景
皆さま、ご存知でしょうか。
日本の森林率は68%あり、世界でも有数の森林国家なのです。
しかしながら、国産材の自給率は40%程度で、多くを海外からの輸入に頼っている状況です。
これには、歴史的な背景がございます。
こちらは1966年、約50年前の日本の森林の様子ですが、収穫期とされる木材が枯渇していました。
このため、1964年に木材の輸入は完全自由化を果たします。
以降、表のグレーの輸入材が大量に入ってくるようになりました。
日本の高度成長期やバブル経済期は、この大量の輸入材によって支えられたと言っても過言ではありません。
つまり、国産材のサプライチェーンは林業、製材業、流通業、建設業へとまたがっておりますが、その大部分を輸入商社が担うようになったのです。
木材を使うゼネコンやハウスメーカーからすると、非常に便利なサプライチェーンが構築された期間でもあります。
途絶えてしまった国産のサプライチェーン
そして50年が経ち現在、日本の森林は収穫期を迎えています。
そのため政府や林野庁は木材をどんどん使おうとキャンペーンを行い、SDGsへの流れもあり、国産材を扱う機運が日に日に高まっている状況です。
しかしながら、この50年間で地盤沈下した木材業界は、サプライチェーンが途絶えてしまったため、国産材を使おうと思っても、誰に聞けばいいか分からない状況が生まれています。
木材調達のマッチングプラットフォーム
これをインターネットの力でつなぎ合わせたのが、eTREEです。
木材業界をDX化し、建設業界とマッチングさせる、新しい形のマッチングプラットフォームです。
これまで、設計者が木材を使おうとすると、どこで木材を調達し、どこで加工し、どう塗装するかについて、1社ごとに調整する必要がありました。
しかしeTREEを通すことで、最適なサプライチェーンをワンストップで提供することが可能になります。
なぜ当社にこれができるのか、全国100社以上の木材事業者と連携しているからです。
木材事業者から、最新の木材価格や在庫状況を常にアップデートしてもらえるシステムが出来上がっています。
これら事業者の開拓は、1社1社、足を使って行いました。
今では日々eTREEに問い合わせが来て、データベースがアップデートされています。
プラットフォームで全国の国産材を検索、見積もり
こちらが、実際の問い合わせ内容です。
「奈良県産ヒノキのフローリングを116平米分ください」というような問い合わせが来ます。
当社のデータベースは全てSalesforceに集約しています。
こちらで奈良県のヒノキのフローリングを検索すると、対象商品がヒットします。
クリックすることで、即時見積ができます。
オプション入力することで見積書が作成され、それをメールで送信できます。
これまで当社では、相談を頂いてから供給者に価格を聞いていましたが、それに比べて生産性は約5倍に改善されました。
国産材のデータベースを持っているのは、当社だけです。
このように、寿司屋のカウンターを作りたい、キャンプ施設に白樺を使いたい、木材でトレーラーハウスを作りたい、などの相談を多くいただけるようになってきました。
今後はこのデーターベースをeTREEのフロントと連携させ、設計者が検索できるシステムを構築する予定です。
eTREEはB to Bのプラットフォームで、ターゲットは建設業界です。
中でも、右上の非住宅内装業界をメインターゲットにしています。
オフィスやホテル、商業施設などに木材を使いませんかという提案は、非常に好評を頂いています。
法改正で、民間の建築も木造ビルが増加
そして今、注目されているのが左上の、非住宅木造市場です。
皆さん、最近、木造建築が増えていると思いませんか。
今急ピッチで作っている大阪万博の木製リングや、大手町に作られる東京海上の本社ビルは、世界一の木造建築になります。
渋谷のマルイも木造ビルへと生まれ変わります。
なぜこのように、木造ビルが増えているのか。
それは、法改正があるからです。
これまで公共建築では木材使用を奨励されていましたが、民間建築においてもその法が適用されるようになりました。
これにより、今後本社ビルなどを作る会社は、基本的には木造で作るようになると思います。
この流れを受け、山本一太群馬県知事の就任記者会見では、「群馬県が作る建築物は、今後原則、県産材を使用します」という発言がありました。
民間でも同様の動きがあります。
良品計画と1万㎥、日本マクドナルドと5,550㎥、日本生命と4,800㎥の木材利用を、農林水産省は締結済みです。
1万㎥と聞いてもあまりピンと来ないかもしれませんが、何と国立競技場5個分に相当する量です。
結構な量の木材を使っていることが分かると思います。
当社にも、非住宅木造への問い合わせが増えています。
特徴は、何と言っても単価が高いところです。
1件あたり3~5,000万円の仕事も頂けるようになってきました。
今期の売上は2億円ほどで着地予定ですが、来期は既に5億円の見込みがあり、以降、7億円、15億円と倍にしていく計画です。
利用しながら再造林する、持続可能な森林へ
このように国内市場は非常に順調ですが、世界での課題は森林破壊です。
森林破壊を止めることが、今のグローバルイシューとなっています。
先ほど日本の森林は豊かだと説明しましたが、世界の森林面積は年々減少し続けています。
そのため、COP15モントリオール会議では、生物多様性保全条約が合意されました。
▶生物多様性条約(外務省)
今、木材利用は新たなステージを迎えています。
これまでの、木を使ってCO2を固定していればいい時代から、生物多様性の保全や森林保全が問われる時代になってきました。
あまり知られていませんが、日本の再造林率はたった30%しかありません。
伐採された山のほとんどで、新しい木が植えられていないという状況です。
このように、大量に木材を使うことが果たしてサステナブルと言えるのでしょうか。
社会の動向も変わりつつあります。
2025年にクリーンウッド法が改正され、産地証明の義務化と罰則規定が制定されます。
▶クリーンウッド法の概要(林野庁)
温室効果ガス-46%達成の期日は2030年ですが、大きく未達となる見込みです。
今、我々が開発しているのはeTREE Due Delligence Systemです。
木材データベースをアップデートし、さらなるサプライチェーンを構築します。
このシステムにより、使っている木材がどこから来たのか、全て分かるようになります。
東京農工大学と研究しており、各デベロッパーと責任ある木材利用コンソーシアムを締結予定です。
私たちと一緒に、持続可能な森林を実現しましょう。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成