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ICC KYOTO 2024 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき2位に入賞した、リディラバ/Ridilover 安部 敏樹さんのプレゼンテーション動画【増加する社会課題に対して、解決の新しい仕組み作りを目指す「リディラバ」(ICC KYOTO 2024)】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
▶【速報】アフォーダブルハウジング市場をつくり、母子家庭の暮らしを支える「LivEQuality大家さん」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2024)
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【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
安部 敏樹
一般社団法人リディラバ/Ridilover代表
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1987年生まれ。2009年、東京大学在学中に社会問題をツアーにして共有するプラットフォーム「リディラバ」を設立。2012-2015年、東京大学教養学部にて1・2年生向けに社会起業の授業を教える。 現在では、中学・高校の修学旅行・研修にスタディツアーを提供する教育旅行事業、企業の人材育成研修などで社会課題の現場へ越境体験を提供する企業研修事業などを展開。2018年から社会問題の構造を伝える調査報道Webメディア「リディラバジャーナル」をメディア事業として開始した。2020年から企業や省庁・自治体と連携し、社会課題解決に向けた資源投入を行なう事業開発・政策立案も手掛ける。設立以来14年間、400種類以上の社会課題を各事業の中で扱う。 2017年、米誌Forbesが選ぶアジアを代表するU-30に選出。 2024年、世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ」に社会起業家として選出。
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7年ぶりの登壇
安部 皆さん、こんにちは。
「社会課題を、みんなのものに」――一般社団法人リディラバ/株式会社Ridilover代表 安部 敏樹です。
まず一言、「ただいまICC!!!」ということで、初めに、今回の再登壇についてお話しさせてください。
7年ぶりに、ICCに、チャレンジャーとして再登壇させていただいております。
当時はまだ、「ソーシャルグッド・カタパルト」というカタパルトは、ありませんでした。
7年前のICC、カタパルト・グランプリで、僕は社会課題をテーマにお伝えして、企業の皆さんやスタートアップの皆さんに対して、「企業やあらゆる関係者の方々を巻き込んで、社会課題を解決してきます」ということを宣言して、7年間、頑張ってきました。
Tシャツは、赤色から緑色に変わって、今は、社会包摂の緑色となっています。
毎年1万人以上の中高生が、社会問題の現場へ
7年間、頑張ってまいりました。
現在、毎年1万人以上の中高生が、実際に社会問題の現場へ行っています。
これは、この世代の国民の1%が、毎年、実際に社会課題の現場へ行っているということです。
この経験をきっかけに進路を変えたり、起業する子もいます。
投票行動も、この体験によって変わっています。
社会課題解決の49の政策を実現
100社以上の大企業が、社会課題の現場へ行き、越境学習をして、事業づくりをしています。
この社会問題と真剣に向き合った幹部たちが、きっと未来の大企業の社長になっていきます。
これまで、49件の政策を推進し、実現してきました。
あらゆるパブリックセクターと、しっかり共同して、政策をつくることができています。
メディア「リディラバジャーナル」も立ち上げ、日本最大の社会課題のデータベースを運営しています。
メディア連携を通じて、毎週、数百~数千万人に、情報を届けられています。
恵方巻ロス(恵方巻の食品ロス)という言葉を、耳にされた方もいらっしゃると思います。
食品ロスというテーマを、国家的な課題に昇華させて、政策にもできました。
▶食品ロスの削減にご協力ください 恵方巻き | 食品ロスの削減の推進に関する法律 (消費者庁)
教育環境のデジタル化に寄与
GIGAスクールという構想も、構想の出発点である経済産業省における「未来の教室」立ち上げ当初から関わり実現させていただきました。
▶GIGAスクール構想の実現について(文部科学省)
2,000億円以上の予算を使って、1,200万人のすべての児童・生徒に1人1台の端末支給を実現しています。
これによって、この国は、コロナ禍も乗り越えることができました。
教育環境がデジタル化していくという、大きな変化も作ることができたと思っています。
インパクトファンドで企業が課題解決する流れを作る
現在、かんぽ生命保険・コモンズ投信とともに、130億円のインパクトファンド(財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な、社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資)を運用させていただいております。
これにより、大企業が社会問題を解決していくという流れを、直近2年間で、随分と加速させて進められてきたと思っています。
死ぬ気でやってきました。
おそらく、誰よりも、この国で、社会課題に多くの人を巻き込むことができてきたと、自負しています。
社会課題が増える一方、担い手・財源が減る現状
それでも、この国の状況は、僕らが思っているよりも、はるかに速いスピードで、厳しさを増しています。
7年前の2017年、僕らがICC登壇した時は、NPO法人数は5万団体を超えており、その数は伸び続けていました。
ピークは、まさにその7年前でした。
その後、NPO法人数は、減少に転じています。
では、社会の課題が減っているのかと言いますと、そんなことはありません。NPO法人数は伸び悩み、ピークアウトしているのですが、社会課題は次々と増えてきています。
例えば、こちらのグラフが表している数字は、児童虐待の通報件数です。
30年で200倍に増加しています。
これまで、財源や担い手など、行政や地域住民がNPOとともに、社会課題を解決してきました。
しかしながら、そういった時代から、現在は、社会課題に関わるすべてのプレイヤーが減少傾向です。
信じられないほどのスピードで、今後さらに減っていく見込みです。
増える社会課題に対して、減る財源と担い手――ここからは、皆さん、もう総力戦です。
30年で200倍になった児童虐待をいかに防ぐか
これまでと同じやり方では、追いつきません。
7年前の2017年までは、社会問題の解決モデルというのは、国や自治体、NPOにアウトソースして、寄付やCSRによって、企業がバックアップをしながら、社会問題を解決してきました。
しかし、これからは、アウトソーシングしていたら、課題解決が間に合いません。
皆さん、すべての現場に来てください。
一緒に、共創して問題解決をするしかありません。
「でも、どうやるの?」と、思われるかもしれません。
例えば、先ほど紹介した児童虐待の通報件数は、現在、20万件を超えました。
この数字は、最終的には、毎年60~70件の虐待死件数に、つながっています。
毎週1人以上の子どもたちが、大人の、言い換えれば僕や皆さんの、不作為で亡くなっています。
実際は親が殺してしまっているのですが、これを見過ごしている状態のままでいいのでしょうか。
例えば、この報道のように、実の母親が、熊本県にある「赤ちゃんポスト」に子どもを預けたあと、諸事情があり、結局、自宅で育てることになったところ、殺してしまったという事件がありました。
▶「赤ちゃんポスト」から乳児院を経て実の母親の元に戻った後『暴行を受け死亡』三重県の【女児暴行死事件】 熊本(RKK)
なぜ、防げないのでしょうか。
実は、きちんと対応すれば、防げるのです。
そしてその手法の一つが、特別養子縁組を筆頭にした、親元に住めない子供達の環境を、家庭養護に転換していくことです。
もちろん、児童養護施設などの施設にも素晴らしい点が多くありますが、施設養護から家庭養護に変えていくことによって、多数の虐待死を防ぐことができるのです。
実際に、虐待死を防ぐだけではなく、施設養護から家庭養護に変えることによって、例えば、
若年ホームレスになる確率が減るといったことも、すでにわかっています。
しかし、すでに、政府もパブリックセクターも、NPOも、精一杯で、リソースが限界なのです。手法はあるのに、資源が足らず、救えていません。
実際、この国は未だに、特別養子縁組の成立件数1,000件という政府の目標を、一度も達成できていません。
サーチファンドの仕組みの応用で、特別養子縁組を推進
では、その足りない資源に対して、どうすればよいのかと思われるかもしれません。
諦める必要はありません。
まだまだ、資源を投入していくための方法を生み出していけるのです。
例えば、僕らは、今、サーチファンドの仕組みを応用して、起業家や事業家の皆さんに、財団(一般社団法人ミダス財団)に入っていただき、お金やあらゆる経営資本を投入して、この特別養子縁組のマッチング数を増やすための活動を始めました。
※サーチファンドとは、経営者を目指す個人が、投資家の支援を受けながら、企業のM&A/事業承継を主導して、自ら承継先の経営に携わる、投資の仕組みのこと。
民間あっせん団体の経営力がボトルネックになって、特別養子縁組の成立件数が上がっていないのならば、お金も人も、全部つぎ込めばよいのではないでしょうか。
それほどはかかりません。
1億~10億円をかければ、毎年、子どもの命を毎年、何百人も救える計算です。
それならば、やったほうがいいと思いませんか?
現在(のままで)は、1団体の成立件数は40~50件で頭打ちになってしまいますが、手法をしっかりと磨けば、間違いなく件数を増やせます。
ともに新しい課題解決の仕組みを作ろう
僕らは、しっかりと社会問題の調査をし、会場にいらっしゃる皆さんのようなリソースを注ぎ込むことで、これから新しく課題解決をする仕組みを作っていけると、確信しています。
実際に、活動資金を提供し、人材育成や採用の支援をして、ウェブマーケティングも行うなど、あらゆる場面で介入していくことで、元々、ソーシャルセクターやパブリックセクターが持っている、社会問題を解決する現場の力は、大きく伸びるのです。
そして、この力を、皆さんがともに現場に入って共創する形で変えていくことができれば、まだまだ厳しい状況の中でも、新しいソリューションは作れるし、問題解決へと進みます。
実際に、児童虐待や特別養子組の問題のみならず、体験格差解消プロジェクトや沖縄の子どもたちがスポーツに触れる機会を持てない問題といった、いろんな課題でも同様に企業が主体となった共創が起こっています。
子どもに関する課題に限らず、あらゆる社会課題に対して、僕らは、アウトソーシングから共創へという形で、問題解決を進めています。
みなさん、出番です。
繰り返しになりますが、この国は、誰かに代わって社会問題を解決してもらうのでは、間に合わないのです。
人口が減る一方で、社会問題は増えていき、あらゆるリソースは足りていませんが、それでも、解決する術はまだまだあって、これから作っていくことができます。
僕は、今日、ここから、みんなで、新しい社会インフラを作るためのムーブメントを起こしたい。
7年前と現在を、比較してみてください。
「社会課題をビジネスで解決する」という言葉を、誰もが耳にしたことがあると思います。
7年前、あるいは、僕が活動を始めた15年前、そのようなことを言う人は、誰もいませんでした。
社会問題を事業で解決できる、様々な人が共創しながら解決できるといったことは、誰も信じていませんでした。
ソーシャルセクターの僕らが100億円もの資金を預かり、ファンド運営をしながら、上場企業とともに、資本主義も使いながら問題解決といった考えは、誰も持っていませんでした。
しかし、7年、あるいは15年が経った現在、実現できているではありませんか。
ですから、僕は、改めて、皆さんに、お手伝いをお願いしたいと思います。
今後、5年・10年・15年と、この国は非常に厳しい状況になります。
しかしながら、ソーシャルセクターやパブリックセクターだけではなく、皆さんと共創していくことができれば、世界で最も厳しいと言われるかもしれない、この国の状況は、必ず解決できます。
ぜひ、皆さん、これからともに、新しい社会インフラづくりを手伝っていただけたらと思います。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成