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司法で社会をより良い場所に変える“公共訴訟”の専門家集団「LEDGE」(ICC FUKUOKA 2025)

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ICC FUKUOKA 2025 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき、見事優勝に輝いた、LEDGE 亀石 倫子さんのプレゼンテーション動画【司法で社会をより良い場所に変える“公共訴訟”の専門家集団「LEDGE」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】司法で社会の不合理を変える!“公共訴訟”に取り組む専門家集団「LEDGE」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2025)


【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

亀石 倫子
一般社団法人LEDGE
代表理事
公式HP | 公式X① | 公式X② | 公式X③

2009 年弁護士登録。刑事事件を中心に経験を積み、2016 年に大阪のクラブが風営法のダンス規制によって摘発された事件において無罪判決(最高裁)を、2017 年には裁判所の令状がないにもかかわらず警察がGPS 端末を使って行った監視捜査は違法とする判決(最高裁)を、さらに2020年にはタトゥー彫師が医師免許なく「医業」を行ったとして摘発された医師法違反事件において無罪判決(最高裁)を弁護人として導いた。著書に『刑事弁護人』 (講談社現代新書)。2023年、日本初の公共訴訟専門家集団「LEDGE」代表理事就任。


2014年、クラブ風営法ダンス規制事件で無罪を勝ち取る

亀石 司法には、「変えられない、を変える」力がある、私は、これまで、刑事事件専門の弁護士として、働いてきました。

2012年、大阪で、ある事件が起きました。

音楽好きが集まるクラブが、突然、次々と摘発されたのです。

このときに摘発の根拠として使われたのは、昭和23年にできた、風営法の条文でした。

戦後の混乱期に、売春の温床となっていたダンスホールを取り締まるための法律でした。

私たちは、弁護団を結成して、検察側が主張するダンスの解釈を争い、無罪を主張しました。

古い文献を集めて、法律ができた当時の社会や性風俗、ダンスホールが摘発された実態を調べ、法律の制定に向けて、どのような議論が国会で行われたのかを調べました。

クラブの経営者やお客さん、DJなど、多くの関係者から聞き取りを行い、憲法・刑法・社会学など、様々な法分野の研究者に、法廷で証言をしていただきました。

大阪地裁での裁判は、2年間続き、2014年に無罪を勝ち取りました。

検察官は控訴しましたが、大阪高裁も無罪判決を下しました。

こちらの裁判は、音楽やダンス、クラブカルチャーを愛する多くの人に注目され、法改正を求める署名が、全国から16万筆も集まりました。

DJやアーティストもロビイング(※)に参加し、超党派の議員連盟ができました。

※編集注:ロビイングとは、圧力団体の利益のために、議会で立法の促進や阻止にあたり、かつ、それに役立つ影響力を行使する院外活動のこと。ロビー活動。(コトバンク

そして、2016年、最高裁で無罪が確定し、時代遅れの法律(風営法)が改正されることになりました。

全国のクラブが廃業を免れ、お客さんたちは安心して朝まで遊べるようになりました。

▶︎「クラブ」は風営法違反にあたらず 経営者の無罪確定へ(産経新聞 2016年6月9日)

国民のために法律を変える“公共訴訟”とは

私たちは、こういった訴訟を“公共訴訟”と呼んでいます。

1つの裁判の結果が、法律を変え、その効果を、すべての国民が享受する、まさに公共のための訴訟です。

摘発から4年以上もの膨大な時間を、こちらの裁判に費やし、罪のない人を救い、法律を変え、クラブカルチャーを守ることができました。

ところで、私たち弁護士は、こちらの裁判で、どれほどの報酬を得たと思われますか。

答えは、0円です。

お金の賠償を求める裁判ではないからです。

私たちは、完全にボランティアでした。

日本では、裁判所が憲法違反と判断するようなケースは、圧倒的に少ないのが実情です。

なぜかと言いますと、そうした訴訟の担い手がいないからです。

ボランティアだからです。

▶︎知っておきたい!”公共訴訟”のキホン(CALL 4)

アメリカでは大統領も“公共訴訟”の対象に

アメリカには、「ACLU」という、公共訴訟専門の団体があります。

ACLUとは、アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union)の略称で、直訳で「アメリカ市民自由連合」。主に、米国権利章典で保証されている言論の自由を守ることを目的とした、1920年設立のアメリカ合衆国のNGO団体。

年間予算は約588億円、その大半は、市民による寄付です。

フルタイムで働く500人の弁護士と、数千人のボランティア弁護士やリサーチャー、キャンペーナーを抱え、アメリカ全土に支部があります。

ある法令が不合理であるとき、彼らは、“公共訴訟”によって、社会に変革をもたらしています。

2025年1月、ACLUは、トランプ大統領が就任初日に出した大統領令について、憲法違反であると提訴しました。

アメリカで生まれた子どもには市民権を与えるという、出生地主義の原則を変更(廃止)する大統領令です。

提訴から、わずか3日後、裁判所は、大統領令の効力を止めました。

強大な権力・権限を持つ、大統領の命令であっても、司法は止めることができます。

ACLUに巨額の寄付が集まるのは、アメリカ市民の司法への期待があるからです。

不合理な法律をスピーディーに解決できる手段

同じことを、日本でもできないだろうか、フルタイムで“公共訴訟”に取り組むプロフェッショナルと、それを支える資金力・組織力があれば、社会を変えることができる――2023年、私たちは、LEDGE(レッジ)を立ち上げました。

戦略的に“公共訴訟”を行う、日本で初めての専門家集団です。

多数決で物事が決まる立法府と違い、司法は、たとえ1人の声であっても、救い上げることができます。

そして、裁判所が訴えを認めれば、国は、不合理を変えなければなりません。

例えば、政治の場では、30年間、議論してきた「夫婦別姓」について、未だに結論が出ていません。

国会議員1人当たり、年間で、どれほどの経費がかかると思われますか。

約7,500万円です。

国会議員の数は、700名を超えます。

政治の場で、30年かけても変えられない問題を、訴訟であれば、もっと早く解決することができます。

私たちが訴える相手は、常に、国や自治体です。

潤沢なリソースを持つ相手に勝つためには、弁護士だけでなく、リサーチャーやキャンペーナーといった、専門家を集めることが、不可欠です。

社会課題を見つけ、原告とコミュニケーションを重ね、専門家を集めて、世論喚起し、訴訟を軸としたアドボカシーも行います。

アドボカシー(advocacy)とは、「擁護」「支持」を意味し、個人の権利をなんらかの理由で行使できない人に代わり、実現を支援する仕組みやその活動のこと。

こうした戦略的なプロセスによって、勝つことのできる訴訟にしていきます。

1年半で5つの“公共訴訟”をサポート

私たちは、LEDGEの立ち上げから、1年半で、すでに5つの“公共訴訟”をサポートしました。

公職選挙法を改正して、18歳から立候補できるようにするための訴訟、外国人風の見た目を理由とした、人種差別的な職務質問を止めさせるための訴訟、不妊手術を原則禁止にしている母体保護法を改正するための訴訟などです。

▶︎被選挙権年齢引き下げ訴訟第2回弁論 国「年齢制限は裁量の範囲内」(朝日新聞 2023年12月25日)

▶︎“繰り返し職務質問は差別”外国出身者が国など訴えた裁判開始(NHK)

▶︎「『わたしの体は“母体”じゃない』訴訟」(法学館憲法研究所)

来週には、子育て中で共働きの個人事業主が、保育料を必要経費として計上できるようにするための税務訴訟を提起します。

▶︎【保育料が経費にならないの、なんで?】共働き世帯が考えたい税制のこと(VERY)

私たちは、「5年間で30件」の訴訟を提起することを、目標としています。

司法によって社会は変えられる

一般社団法人LEDGEのメンバーは、実際に“公共訴訟”によって、社会に変革をもたらした実績があります。

ともに弁護士の谷口 太規と事務局長の井桁 大介は、2022年に、最高裁で歴史上11件目の「法令違憲」判決、つまり、法律自体が憲法違反であるという、画期的な判決を勝ち取りました。

それまで、国外で暮らす日本人は、最高裁裁判官の「国民審査」には投票できませんでした。

“公共訴訟”によって、約100万人と言われる在外日本人の憲法上の権利が、回復したのです。

▶︎国民審査 海外在住日本人の投票認めないのは憲法違反か 2022年5月25日判決 大法廷(NHK)

司法によって社会を変える、こういったことは、けっして夢物語ではないのです。

市民の寄付が社会を変える原動力に

投票に行ったり、ロビイングをしても、結局は何も変わらないと、諦めていませんか。

諦める前に、まだ、司法があります。

どうせ変わらない、変えられないという、マインドセット自体を、変えていきましょう。

LEDGEが必要としている予算は、現時点では、年間5,000万円、議員一人当たりの年間経費の2/3です。

訴える相手は、常に国や自治体ですので、そちらからの支援は、あり得ません。

市民の寄付によってしか、この活動は成り立ちません。

私たちは、皆様からの寄付のすべてを、この社会を少しでも良い場所にするために使います。

そして、きっと、変化を勝ち取るでしょう。

自分らしく、公正な社会を生きたいと思う、すべての人とともに、これは私たちの戦いです。

ともに頑張りましょう。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成

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