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ICC FUKUOKA 2025 クラフテッド・カタパルトに登壇した、中田工芸 中田 修平さんのプレゼンテーション動画【「ふくをかける」職人の手による木製ハンガーで、世界一のブランドを目指す「中田工芸」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。
▶【速報】能登の酒を止めるな!全国の酒蔵との絆で能登の復活を誓う「鶴野酒造店」がクラフテッド・カタパルト優勝(ICC FUKUOKA 2025)
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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング
中田 修平
中田工芸
代表取締役社長
公式HP
1978年生まれ。兵庫県出身。アリゾナ大学ビジネス学部を卒業後、ニューヨークにて就職。2007年中田工芸に入社。同年に自社ブランド「NAKATA HANGER」を立ち上げ、東京青山にショールームを開設。従来のアパレル・ホテル向けのみに留まらずギフトや記念品等、木製ハンガーの新たな市場を切り拓く。2017年に事業承継してからは「世界一のハンガーブランドを目指す」と宣言し、ニューヨークやロンドン・香港でイベントを開催するなど海外進出も積極的に行っている。女性活躍を推進し、働きがいのある組織づくりに注力。2021年にAmazonのCMで紹介される。2023年より東京都の「女性従業員のキャリアアップ応援事業」で講師を務める。
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中田 修平さん こんにちは。中田工芸の中田です。
私たちは、兵庫県の日本海側、豊岡市にある木製ハンガーを作る会社です。

豊岡市は、城崎温泉やかばんの町としても有名です。
▶まちの姿|豊岡市公式ウェブサイト(豊岡市)

一本一本が職人の手による木製ハンガー
ただ、ハンガー屋は当社だけで、以前から、たびたびこのように言われてきました。
「ハンガーだけで食べていけるの??」

確かにプラスチック製と異なり、木製ハンガーは職人が一本一本手作業で作るため、費用も時間もかかり、1日に作れる本数も限られています。

▶世界一のハンガーを作る | 成型編 | 塗装編 | 組立編(NAKATA HANGER)
当社のハンガーは70年以上前から、主に百貨店やアパレルショップで、洋服を販売するためのディスプレイ用として使われてきました。

しかし、先代である父が社長になった90年代に入るとバブルが崩壊し、中国製の安価なハンガーに多くが取って代わられ、売上が大きく減少しました。

20年前の経営課題として、激しい価格競争に加え、繁閑の差が大きく、景気に左右され、長時間労働の上、職人の給料も上げられないなどの課題が山積していました。
突き詰めていえば、低い利益率と付加価値の低さが原因です。

自社ブランド「NAKATA HANGER」を立ち上げ
そこで父と私は、新たなチャレンジを決意しました。
BtoCへの挑戦です。

しかも、安いものを提供するのではなく、高級ハンガーという、それまで存在していなかった市場、それ自体を創るという挑戦です。

2007年、東京・青山に初のショールームを開設したタイミングで、私たちのブランドNAKATA HANGERを立ち上げました。


それまでは、メーカーとして社名を出すこともなく、単なるハンガーという物を売っていましたが、「ハンガーではなく、NAKATA HANGERを売るんだ」という思いを持つようになりました。

自分や職人たちが誇りを持って、ハンガーを届けていこうという決意の表れです。
知られていないのは、存在しないのと同じ
しかし、ブランドやショールームを作っても、何かが突然変わるわけではありませんでした。
誰にも知られていないのです。
「知られていないのは、存在していないのと同じ」という言葉があるように、知ってもらわないと存在価値がないと痛感しました。

私は、必死に考えました。

どのようにしたら、職人が丹精込めて作るハンガーを、世の人々に知ってもらえるだろうか、手に取ってもらえるだろうかと、会社の歴史にも遡り、ヒントを探しました。

どこかに答えがないだろうかと。
そこで、たどり着いたのが、私の祖父である創業者のある言葉でした。
「ふくをかける」

祖父がよく「ハンガーは洋服だけではなくて、幸福もかけるんや」と口癖のように言っていたのを思い出し、これだと思いました。
ハンガーで幸福を生み出す。
ハンガーで幸せや笑顔を増やしたい。

ハレの日に贈られるハンガー
目をつけたのは、ブライダルギフト、結婚式の引き出物です。
「福をかけるハンガーって、縁起がいいね」と評判になり、多くのカップルにご利用いただけるようになりました。
▶NAKATA HANGER Bridal 引出物・内祝いハンガー(NAKATA HANGER)

その後、さらに別の形で広げられないだろうかと考え、始めたのが、学校の卒業記念品としての提案です。
▶福(服)をかける卒業記念品ハンガーのNAKATA HANGER(NAKATA HANGER)

学校の校章をプリントしたハンガーに制服をかけるたび、楽しかった母校や友達との思い出が蘇るという記念品です。

卒業の時期に、木製のハンガーを手に取った子供たちの笑顔を見た時、ものすごく感動しました。

ハンガーは、いつしか卒業や就職、結婚というお客様のハレの日に、たくさんご利用いただける状態になりました。

「福(服)をかける」が、単に言葉だけではなく、景色として形になっていきました。
お客様の心に響くものづくりを
ブランドの売上は、立ち上げ以降、順調に成長し、今では全体の半分を占めるまでになりました。

こうして、新たな市場を創造できたのは、製品の価値を品質や機能で売るのではなく、ハンガーがお客様にとって、一体どのような意味があるのかということを突き詰めたからです。

NAKATA HANGERを使う人が幸福になってもらいたいという意味を情緒価値として、お客様の心に響くものづくりをしようというのが、私たちのコンセプトです。

世界一のブランドを目指す挑戦
私たちの思いは、さらに海外へと広がります。
8年前、父から経営を受け継いだ私は、「どうせやるからには、世界一のブランドを目指そう」と、職人に伝えました。

新たなビジョンを掲げ、自らトップセールスとして、アジアや欧米を駆け回りました。

しかし、年間数百万円程度の売上は作れましたが、それ以上なかなか伸ばせません。
そこに新型コロナウイルス感染症が発生し、渡航もできなくなりました。

国内の売上も、どんどん落ちていきます。
若手女性チームが活躍
私は諦めるわけにはいかず、リアルがダメならばデジタルだと思って、英語の自社サイトを立ち上げ、越境ECと情報発信を強化しました。
そして、20〜30代の若手女性メンバーを中心とした海外チームを結成し、思い切って彼女たちに任せてみることにしました。


すると、そこから売上がぐんぐんと伸び、昨年(2024年)は、海外だけで5,000万円を突破するまでに成長し、4年間で売上は10倍になりました。

納品した国の数は54カ国に上り、新たな成長の原動力となっています。

反響を呼んだロンドンのイベント
『ニューヨーク・タイムズ』でも、紹介していただくまでになりました。

2023年、イギリス・ロンドンで、初の自社イベントを開催しました。

有名テーラーが軒を連ねるサヴィル・ロウの、ある場所を貸し切り、現地のファッション関係者を招待し、お酒を片手にメイド・イン・ジャパンのハンガーを見て語り合ってもらうという企画です。
▶海外展示のお知らせ 「NAKATA Art Display in London」 2023/01/24(NAKATA HANGER)



イベントは大きな反響を呼び、新たな取引が生まれ、2024年はイギリス王室に献上することもできました。

こちらが、そのハンガーです。

これは自社で作った木製ハンガーに、輪島の職人に漆塗りと蒔絵を施してもらった世界で唯一無二のハンガーです。

▶輪島漆ハンガー(NAKATA HANGER)
私たちの活動には、輪島の職人に仕事を届けるという役目と、震災の復興を少しでも支援したいという思いがあります。
たかがハンガー、されどハンガー
「ハンガーだけで食べていけるの??」という言葉に、悔し涙を飲んだ昔。
現在の光景を、亡き祖父に見せてあげたいです。

父は、「たかがハンガー、されどハンガー」と言っていました。

そうです。
たかがハンガーでさえも、アイデアと工夫と挑戦さえあれば、自分たちの想像を超えた出会いや出来事を生み出すことができています。

日本から世界一のブランドを
世界に通用するハンガーを作りたいという先代たちの夢を形にしていくのが、3代目である私の使命です。
世界一というのは、唯一無二という意味でもあり、自信と誇りを取り戻すための合言葉です。

そのための挑戦に、終わりはありません。
皆様の力をお借りしながら、共にチャレンジし、成長してまいりたいです。
日本から世界最高のブランドやサービスをたくさん創っていきましょう。
どうもありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成