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一流ファッションブランドを生産する各工場の持つこだわりをECサイトを通して世界に発信し、工場直結で届けるファクトリエ。日本の一流のものづくりを世界に届ける取り組みを、ファクトリエの山田さんが解説します。
ICCカンファレンス KYOTO 2017「オムニバス・ライブ」プレゼンテーションの書き起こし記事です。ぜひご覧ください。
本記事で特集しております8分間のプレゼンテーションを行う「CATAPULT(カタパルト)」のプレゼンターを募集しております。「スタートアップ」「IoT/ハードウエア」「リアルテック」「カタパルト・グランプリ」の4カテゴリーで募集しております。ぜひ募集ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
オムニバス・ライブ
(プレゼンター)
山田 敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役
ファクトリエ 代表
1982年熊本県生まれ。大学在学中、フランスへ留学しグッチ・パリ店で勤務。卒業後、ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社へ入社。2010年に東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する株式会社ファッションウォーカー(現:株式会社ファッション・コ・ラボ)へ転職し、社長直轄の事業開発部にて、最先端のファッションビジネスを経験。2012年、ライフスタイルアクセント株式会社を設立。2014年中小企業基盤整備機構と日経BP社との連携事業「新ジャパンメイド企画」審査員に就任。2015年経済産業省「平成26年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国繊維産地企業の商品開発・販路開拓の在り方に関する調査事業)」を受託。年間訪れるモノづくりの現場は100を超える。
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山田 敏夫氏(以下、山田)よろしくお願いします。ファクトリエの山田です。
簡単に自己紹介をしますと、私は、九州にある創業100年の婦人服屋で生まれ育ちました。
本当に商店街によくあるお店で、お店の上に住んでいまして、部活のない日には店番をしていました。
これはどちらが私かというと、可愛いほうが私ですので、すぐにおわかりいただけたかなと思います。
私の人生に転機がおとずれたのは、20歳のときです。フランスに留学して、グッチのパリ店で働きました。
そのとき、今まで学んできたブランド論とかマーケティングというのは真逆だったということを知りました。
何が真逆だったのかと言いますと、要はエルメスにしてもグッチにしてもヴィトンにしても、全て物づくりから生まれている、工房からスタートしているのです。
「日本はなぜ400年から500年も織りや染めの歴史があるのに、全てメイドインチャイナなのだ?」と、同僚に言われました。「なぜ日本には本物のブランドがないのだ」と。
今までそんなことは考えたこともありませんでした。
有名な人がブログに書くとか、SNSで発信されているとか、カッコいい雑誌に載るとか。コミュニケーションさえうまくやれば、ブランドというのはつくられてくると思っていたのです。
でも実際はコミュニケーションではなく、物づくりそのものが一番重要なのだと言われて、日本から本物を、何か一流の物を作りたいと思って帰国して、ファクトリエというものをずっと考えていました。
アパレルの国産比率は25年で50%から3%に
日本におけるメイドインジャパンの服はどういう状況になっているかと言いますと、今日いらっしゃっている皆さんで、「日本製の服を、今着ているよ」という方はどのぐらいいらっしゃいますか?
恐らくどこ製なのかというのは、はっきり言ってどうでもいいのではないでしょうか。
デザインと価格がちゃんと折り合えばいいのです。
ただ、本場では違いました。
エルメスはフランス国内に3,000人職人がいて、1人の職人がバックを丸縫いしていきます。
ご存知かもしれませんが、日本ではもともと100%あった国産比率が、3%を切るところまで落ちています。
これは服だけの話ではありません。
イメージがつかないかもしれませんが、この20年の間に日本の物づくり全てで国産比率が50%あったものが3%になり、この20年で、日本の物づくり産業では800万人もの人が仕事を失いました。
「それは資本主義上しょうがない。競争というのはそういうものだ」と言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は日本の物づくりに関しては、「それは違うのではないか」「もっと可能性があるのではないか」と思ってファクトリエをやっています。
ただ現実は、服に限らず、下請けで、赤字になって、高齢化が進んで、なかなかモチベーションが上がらないという負のサイクルに、日本の物づくりは覆われています。
この負のサイクルを断ち切り、工場が笑顔で、若手が採用されて、なおかつ生き生きとなっているというのが、今、僕が会社をつくって5年間でやっていることです。
50工場直結のファッションEC「Factelier(ファクトリエ)」
ファクトリエは全てオンラインで販売しているECです。
工場直結のファッションECです。
今まであった中間流通を全てなくして、工場から直接販売するということで、お客さんは通常のだいたい半分くらいの値段で買えて、工場はこれまでよりも適切な利益が得られるという仕組みになっています。
この5年で私が訪問した工場数は、全て私が回っているのですが、北海道から沖縄まで600です。
工場というのは今までBtoCをやっていないので、ホームページを持っていません。
ホームページを持っていないので、どうするかというと、近くの駅に行って、タウンページの上から電話をするのです。
嘘みたいな本当の話なのですが、放送してもらったこちらの映像を、タウンページの会社の方が見て、僕の会社に山ほどタウンページを送ってきてくださったということがありました。
これ、実はすごいシンプルですが、イノベーションのジレンマだと思うのです。
世の中、Googleやヤフーで調べるのが当たり前のときに、工場情報には誰もアクセスしませんでした
このように、半世紀前のことというのは誰もしないのですが、それをやるからこそ、僕らの資産に600工場の技術が全て蓄積されているのです。
この中から世界一流ブランドを作っているところだけを厳選して、今、50工場と一緒に物づくりをしています。
ご購入いただく場合は、下のようなECの画面から買っていただきますと、物が届くようになっております。
ITを活用しつつも「感性」を大事にして製造している
今日、僕が皆さんにお話したいのは、感性と共感の輪というお話です。短い時間ですが、お話させていただきたいと思います。
これからは物づくりも工場も、どんどんAI化、機械化が進んで行き、いずれ機械が服を作る時代がやってきます。
今年の春にユニクロさんが、島精機という会社の機械を導入し、これからは24時間365日、機械がニットを作っていくということを発表しています。
ただ、唯一AIが浸食できないところがあると思います。
それはどこかと言いますと、感性です。
感性という場所だけは、AIがどう努力しても浸食できないのではないでしょうか。
その点を僕ら、ファクトリエがやっています。
感性という部分で日本人は可能性があるのでしょうか。
皆さんご存知かもしれませんが、日本語というのは語彙が5万語あります。英語は1万語です。
語彙と感性とか感覚というのは、それぞれが非常に密接に結びついていると言われています。
私は提携工場50工場に関しては、作業自体のIT化を進めています。
iPadを導入し、機械化できるところは機械化が進んでいます。
ただ、人間でなければできないということに関しては、徹底的に手作業を入れています。
どういうところに手作業を入れているかというと、動画があるので、こちらをご覧ください。
僕らは旧式の織り機、織機を使っていまして、だいたい1時間に5メートルぐらいしか織れません。最新の機械は、1時間に20メートルも50メートルも織ることができます。
効率的には倍以上、ある意味5倍ぐらい効率が悪いのですが、そうだからこそ機械ではできない織りや、質感というものが出せるのです。
僕らはこれら全てをサイトでオープンにして、人間の手と機械の手を組み合わせています。
ファクトリエの工場は、かなりiPadの導入も進んでいて、機械化も進んでいるのですが、手のところは徹底的にこだわっています。
工場の持つ「こだわり」をHPを通し伝えていく
ある日私は、貿易の港にある大阪の倉庫に行ってきました。
この、アメリカから届いた綿を、1個1個僕が検品します。原綿と言われています。
この綿から、このように紡績して糸ができて、
その糸を生地にして、
縫い合わせていきます。
このようなこだわりが、サイト上に、英語や中国語表記も含めて書かれています。
さきほど50工場と言いましたけど、50工場分、ここに全部ここに書かれています。
工場はホームページを持っていませんので、僕らは彼らのホームページの代わりも含めて、圧倒的なこだわりと、感性がどこに宿っているのかというのを徹底的に書いています。
共感の輪を世界へ、地方へ、企業へ、広げていく
もう一つのテーマである共感の輪を、どのように広げていくのか。
服というのは、マスマーケティング型に行くと、日本ではユニクロ、ファーストリテイリングが圧倒的です。
ただ、僕らはどちらかというと感性で、いくつか共感した人たちが隣に伝えていくことや、シェアしていくということが非常に重要だと考えています。
共感の輪という話をいくつかお話させていただきます。
流通も非常に重要です。作った商品をどう売るのか。
今までのように、百貨店とかセレクトショップで売りたくない。
せっかくの工場直販なので、僕らの感覚がちゃんと委ねられる、生きるところで売っていきたいと思いました。
なのでファクトリエは、お客さんの層は同じですが、流通の形が違うところとも組んでいます。
例えば、僕らの服が本屋さんで売られています。
本屋で服が売れるのかという、はじめてのチャレンジだったのですが、売れ行きは好調です。
蔦屋書店のT-SITE全店で僕らは展開しております。
にっぽん丸という、大きな船でも僕らの服は売られています。
また、10万人の医師のデータを持っているメドピアというところと、高性能のドクターコートを作っています。
今日、僕が着ている服ですが、ONE PEACEという漫画の作者である尾田先生が、同じ熊本県出身ということもあり、尾田先生と組んで、大人向けONE PEACEのシャツをオーダーで作っています。
あと、パタゴニアジャパンが、初めて違うブランドとコラボするということで、ファクトリエが選ばれました。
ファクトリエは、日本では知らない人のほうが多いのですが、実は海外での認知度が上がっております。
月100カ国以上からアクセスしていただいています。
「Made in Japan ファッション」と検索すると、1位に出てくるのはファクトリエです。
先ほどお伝えしたように、「本物」なのです。
私も600以上の工場を回って、Made in Japanという名前だけの、そんなにクオリティが高くないものも、残念ながらありました。
そうではなく、本当にいい物を作っていきたいということでやっていますので、海外にいらっしゃる多くの方々に、100カ国以上に毎月送っています。
今年の1月には、台湾に進出しまして、
非常にありがたいことに、大行列ができました。
地方でも生き残りをかけています。
地方の地域一番店、小さなブティックに、僕らの物をタダでお貸しして、売れたら彼らに手数料を払うということを始めました。
店を閉めると言っていた静岡のテーラーが、これによって売り上げが倍増しました。
このようなかたちが少しずつできています。
最近では、出張ファクトリエという、実際に企業さんに行って感性を伝えるということをやっていて、2カ月で100社ぐらいからいろいろとお声がけいただきました。
実際に、感性の宿る良いものはなんだろうということを、体験してもらうということもやっています。
ビジネスを通してMade in Japanを伝えて行く
最近はありがたいことに、売り上げは倍々でずっと推移しています。
2017年の4月には、提携工場に100人、新卒採用できました。
ただ、もともと300万人いたのが50万人ぐらいに減っていますので、僕らは100万人まで増やしたいと思っています。
僕らはビジネスでこれをやっています。
ビジネスでやるときの一番いいインパクトは、模倣です。
模倣とは何かと言いますと、ファクトリエを始めて5年、ファッション業界で一番成長してきたのが多分、僕らだと思うのです。
それはなぜか。
僕らはECだけではなく、いろいろなネットワークを使って、蔦屋書店とか、ホテルとか、いろいろなところにファクトリエを展開しています。
それらを合わせると40カ所から50カ所になります。
そうすると「Made in Japanって売れるらしいな、儲かるらしいな」ということで、フォロワーが出てきます。
今、百貨店とかセレクトショップでMade in Japanが非常に増えてきたのは、もちろん東京オリンピックの影響もありますが、僕も少なからず貢献できているのではないかなと思います。
これからも、ビジネスを通して社会を良くしていく担い手になれればと思っています。
ファクトリエの夢:「日本のものづくりの復興」
私たちの夢を最後に少しお話すると、日本から世界ブランドをつくる、物づくりの復興なのです。
僕個人の夢は、オリンピックの選手団ユニフォームをファクトリエで作ることです。
全国各地から集まる仲間たちが、選手たちが熱戦を繰り広げるのであれば、全国各地の素晴らしい工場のものを着てもらって、世界に日本の物づくりをPRできたらなと思っています。
ご清聴いただきありがとうございました。以上です。
(終)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/平井 裕/本田 隼輝/浅郷 浩子
【編集部コメント】
漠然と日本の技術力は高いと思っていても、iPodの背面を鏡面加工していたのは日本の業者など、具体的な商品名やブランド名が出てこないと、なかなかピンとこないことがあります。このプレゼンテーションを読んで初めて、世界一流のブランドを作る技術のある工場が、日本にたくさんあることを知りました。これだけの質と技が組み合わされたジーンズは、かなりお値打ちなのでは?と思います(浅郷)
最後までお読みいただきありがとうございます!他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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