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ICC FUKUOKA 2021 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただいた、三星グループ 岩田 真吾さんのプレゼンテーション動画【技術の伝承とサステナブルなものづくりで、産業観光クラフトツーリズムに挑む「三星グループ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プラチナ・スポンサーのセールスフォース・ドットコム様にサポート頂きました。
▶【速報】福祉を起点に寛容な社会を提案する「へラルボニー」が ソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICCサミット FUKUOKA 2021)
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【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 13A
ソーシャルグッド・カタパルト&ラウンドテーブル
Supported by セールスフォース・ドットコム
岩田 真吾
三星グループ
代表取締役社長
ひつじ好きな39歳。1887 年に木曽川のほとりに創業した三星毛糸(みつぼしけいと)の五代目。持続可能な素材創りを目指し、国内外で天然繊維・再生繊維の可能性を追求している。自社ブランドMITSUBOSHI 1887にて「23時間を快適にするメリノTシャツ」を開発し、LEXUS Meets…hibiyaや東京・恵比寿のショールームなどで発信。2021年は地域の食や文化と産業を楽しむクラフト・ツーリズムを展開予定。2004年、慶應大学法学部卒業。三菱商事、ボストン・コンサルティング・グループを経て2009年に三星毛糸に入社し、10ヶ月後に社長就任。2015年、エルメネジルド・ゼニアのMade in Japanコレクションに選出。2019年、ジャパン・テキスタイル・コンテストにてグランプリ(経済産業大臣賞)を受賞。個人として、認定NPO法人Homedoor理事、フィンランド・サウナ・アンバサダーなどを務める。
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岩田 真吾さん(以下、岩田) 皆さん、こんにちは。三星グループの岩田真吾です。
本日は、100年企業のサステナビリティ経営について、お話しさせていただきます。
天然繊維を使った高品質な製品を製造
まず初めに、自己紹介をさせてください。
三星グループは、木曽三川の傍ら、水の豊かな尾州産地で、134年前に創業しました。
創業以来、時代の変化に対応しながら、一貫して天然繊維を使った高品質な布地やアパレル製品を製造してきました。
50年前には、産地を代表する企業として、若かりし平成天皇(現在の上皇、上皇后両陛下)にもご来社いただいたことがあります。
現在は、日本国内にとどまらず、世界のトップブランドと直接取り引きをしています。
繊維・ファッション産業が抱える課題とは
三星グループでは、サステナビリティ経営を3層に分けて捉えています。
1番下の土台が繊維・ファッション産業、その上に自分たちが位置している尾州産地、その2つの土台に自社は支えていただいている、というふうに理解しています。
仮に、現在、自社の利益が出ていたとしても、産地や産業が崩壊してはサステナブルではないと考えています。
しかしながら、繊維・ファッション産業はサステナビリティの問題児だと言われることが多くあります。
その中で、大きく2つの課題があります。
1つ目の課題は、過剰生産大量廃棄による資源の無駄遣いです。
30年前は需給バランスが取れていたのですが、最近では毎年なんと供給量の半分以上である15億点もの衣類が消費者の手に渡らず余っています。
▶余剰在庫、年間15億点(日本経済新聞 2020年11月18日)
日本では、年間60万t以上の衣類が、焼却や埋め立て処分されているのです。
2つ目の課題は、化学繊維による海洋汚染です。
鼻にストローが刺さったウミガメを救助したという動画が話題となり、多くのプラスチックストローは姿を消しましたが、海洋汚染問題は全く解決していません。
▶【動画】鼻にストローが刺さったウミガメを救助(NATIONAL GIOGRAPHIC)
それもそのはずで、マイクロプラスチックによる海洋汚染の35%は化学繊維由来だからです。
今、私たちが化学繊維の服を着るということは、言い換えれば子どもたちにマイクロプラスチックを飲ませているのと同じことなのです。
技術伝承ができないままエコシステム崩壊の危機
また、地域レイヤーにおいて、尾州産地では高齢化と担い手不足によりエコシステムが崩壊の危機に瀕しています。
元々、繊維業の事業所数は減少傾向にあったのですが、コロナ禍を機にその廃業スピードがさらに加速し、このままでは多様なものづくりができなくなると危惧しています。
尾州産地では、4,000社以上あった生地メーカーが、数年以内に100社未満になると予測されています。
この3つの土台の課題に対し、私たち三星グループは、いったい何をしてきたかについて、お話します。
サステナブルなものづくりのための取り組み
まず、資源の無駄遣いに対しては、必要な時に必要な分だけを作るという適時適量生産を進めています。
実際に羊牧場まで足を運び、レスポンシブル・ウール・スタンダード(※)というトレーサビリティの国際認証も取得して、「顔の見えるバリューチェーン」の構築を進めています。
▶編集注:レスポンシブル・ウール・スタンダードとは、信頼できる羊毛の調達を証明するグローバル基準。畜産業者が一般社会にブランドや消費者が、購入および販売する羊毛製品が価値に合っていることを確認する手段を提供することを目的とする。
ファストファッションのように価格は安くないかもしれませんが、サステナブルなものづくりを目指しています。
また、海洋汚染問題に対しては、ウールを中心とする生分解性繊維(※)の用途開発を進めています。
編集注:微生物によって分解される繊維の総称で、天然繊維と再生繊維、植物由来原料を使ったポリエステルなどの合成繊維が該当する(日本化学繊維協会)。
23時間を快適にするTシャツのように、これまでウールがあまり用いられなかったアイテムにも使えるよう、素材から開発しています。
皆さんのクローゼットにおける生分解性繊維の比率を少しでも高めたい、そういう思いで頑張っています。
そして、担い手不足に対しては、廃業を検討している産地企業へ自社の社員を派遣して技術伝承を進めています。
こちらの動画をご覧ください。
「ひつじサミット尾州」で使い手と作り手を繋げる
ただ、小さな地方企業1社だけでは、このような取り組みにも限界があります。
このままでは多様で上質なファッションを皆さんにお届けできなくなるのではないかと、私はコロナ禍において心の中で悩み苦しんでいました。
そのような時、ふと横を見ると、同じ悩みを持つ跡継ぎ仲間が多くいたのです。
そして、顔を上げると、共感してくださるお客さまも大勢いらっしゃったのです。
三星グループだけで頑張る必要はない、皆さんの力を借りればいいのだと感じ、その第一歩として、使い手と作り手を繋げる産業観光クラフトツーリズムを立ち上げることにいたしました。
その名も「ひつじサミット尾州」です。
「ひつじサミット尾州」では、紡績、織り・編み、染色、縫製など繊維企業の現場をご覧いただけるだけではなく、その元となる羊や羊飼い、文化を支えてきた喫茶店・料亭といった産地企業が全て結集し、五感でウールのサステナビリティを感じていただけるようになっています。
現在、すでに30社以上が参画してくださり、1万人との交流を目指して準備を進めています。
開催日は、2021年6⽉5⽇(⼟)〜6⽇(⽇)です。
ちなみに、6月6日は、「ひつじの日」です。ひつじの角が数字の6に見えるということで制定された日で、覚えやすくて良いなと思っています。
ぜひ皆さん、カレンダーに「ひつじの日」を登録してください。
産地や産業にポジティブな影響を与え、共に歩む
最後になりますが、本日は、100年企業のサステナビリティ経営という、ひとつの事例をご紹介しました。
私たちのような古くて小さな地方企業でも、皆さんの力をお借りすることで、産地や産業といった大きな世界にポジティブな影響を与えられると信じています。
IT産業にシリコンバレーという産地があるように、どの会社も産地や産業に支えられています。
そして、どのような会社でも、産地や産業に対してポジティブな影響を与えることができるのです。
このICCという場で、共に持続可能な産業を作っていきたい、そういうふうに思っています。
本日は、ご清聴をありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/中村 瑠李子
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