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ICC FUKUOKA 2022 スタートアップ・カタパルトに登壇いただいた、haccoba 佐藤 太亮さんのプレゼンテーション動画【自由な酒造りで多様性を取り戻す! 福島県南相馬市から日本酒の持続可能な文化をつくる「haccoba」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 ダイヤモンド・スポンサーの ノバセル にサポート頂きました。
▶【速報】コーヒー生産者と価格の透明性を確保した小ロットからのダイレクトトレードを実現する「TYPICA」がスタートアップ・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2022)
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【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICC FUKUOKA 2022
Session 1A
STARTUP CATAPULT
スタートアップの登竜門
Supported by ノバセル
佐藤 太亮
haccoba, Inc.
代表取締役
「酒づくりをもっと自由に」という思いのもと、ジャンルの垣根を超えた自由な酒づくりを行う酒蔵「haccoba -Craft Sake Brewery-」を福島県の小高というまちで営む。かつて東北でつくられていた自家醸造酒のレシピを受け継ぎ、日本酒にクラフトビールの製法をかけ合わせたお酒をメインで展開。福島浜通りで酒蔵を営みはじめたら、気候変動というグローバルな課題がいつしか自分ごととなり、電力事業も始めている。慶應経済学部卒。楽天やWantedlyを経て独立。酒づくりの修行先は、世界一美味しいと思っている新潟県の酒蔵「阿部酒造」。
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佐藤 太亮さん こんにちは、haccoba -Craft Sake Brewery-の佐藤 太亮です。
朝っぱらからお酒を配って(※)、すみません(笑) 。
▶編集注:本セッション(STARTUP CATAPULT)は午前9時から開始された。カタパルトでは、必要に応じてサンプルを審査員に配布している。
民家をリノベーションした酒蔵で新しい日本酒づくり
僕たちは、福島県南相馬市の小高というまちで、酒蔵を営んでいます。
▶南相馬から1000年続く日本酒ブランドを生み出したい。コミュニティとしての酒蔵を生み出す haccoba の挑戦(フック)
酒蔵と言っても、民家をリノベーションした小さな酒蔵です。
そして、右下の写真にあるピンク色をしたお酒のように、少し変わったお酒をつくっています。
この謎の液体のつくり方については、後ほどお話しします。
垣根を超えた酒づくりで日本酒の未来を切り拓く
なぜ、僕たちは酒蔵を営んでいるのか。
それは、「垣根を超えた酒づくりで、日本酒のフロンティアを切り拓く。」ことを考えているからです。
背景には、僕たちが拠点を置く、福島県の小高というまちのストーリーがあります。
福島の小高というまちは、東日本大震災により、一時、人口がゼロになりました。
ゼロから暮らしや文化を再構築している、いわばフロンティアなまちの地域文化を表現したいと思い、同時に、日本酒の未来を切り拓く新しい酒蔵をつくろうと決意したのです。
そんな時に出会ったのが、いつしか「密造」と呼ばれるようになってしまった、かつての酒づくりです。
今は一部の酒好きの方にしか知られていないことかもしれませんが、日本にはかつて、各家庭において多様な原材料で酒づくりをしていた時代がありました。
ところが、明治時代より酒づくりが免許で規制され、自分の手で、自由な酒づくりを行うことはできなくなりました。
▶どぶろく(Wikipedia)
僕たちは、こういった、“古くて新しい”ジャンルにとらわれない酒づくりこそが発酵文化の源流だと捉え、それを取り戻すための酒づくりをしたいと考えています。
現代的な視点で日本酒を再編集
では、どんな酒づくりをしているのか。
一言で言うと、「クラフトビールのカルチャーで日本酒を捉え直す」ことにチャレンジしています。
もう少し詳しく言うと、ビールの原料であるホップを一緒に発酵させた日本酒をつくっています。
一見、日本酒とビールをかけ合わせるというのは新しいつくり方に見えますが、僕たちが拠点を置く東北でかつて行われていた製法に基づいたものです。
花酛(はなもと)という、日本の山に自生した東洋のホップを使った、どぶろくづくりです。
途絶えてしまった製法、土地の文脈をしっかり受け継ぎながら、現代的な視点で日本酒を再編集していく、そんなポテンシャルを秘めた製法です。
図式化すると、このような感じです。
日本酒の製法に、ビアスタイルと呼ばれる多様なビールの製法をかけ合わせて、プロダクトを開発しています。
製法や材料をかけ合わせてつくる自由な酒
お待たせしました、本日はお手元に2つのお酒をご用意しています。
朝ですが、是非テイスティングしながら聞いて頂ければと思います。
1つ目は、僕たちのメインプロダクトである、「はなうたホップス」というお酒です。
▶人気投票で誕生!haccoba -Craft Sake Brewery- がビールの原料ホップを使った新感覚の Sake「はなうたホップス」を6月14日より発売(PR TIMES)
「ペールエール」というビールの製法をモチーフに、日本の山に自生している東洋のホップと柑橘系の香りがするホップを使うことで、まるでグレープフルーツのような香りや苦みをまとった、新しい味わいのお酒です。
2つ目は、「おこめとカカオのスタウト」です。
スタウトという黒ビールの製法をモチーフに、ローストした麹とカカオ豆の皮であるカカオハスクを一緒に発酵させることで、フルーティーな香りが乗った、コクのある味わいのお酒に仕上げました。
いかがでしょうか?
このようなお酒をつくることで、日本酒だけではなく世界のクラフトビールマーケットにも届けることを目指しています。
お酒を「つくる」体験の楽しさを分かち合う
そんな酒づくりをしている僕たちは、これまでどのように歩んできたのでしょうか?
昨年(2021年)2月に立ち上げた、まだまだ新しい酒蔵ですが、立ち上げ時に大事にしていたのは、お酒を「飲む」という体験だけではなく、お酒を「つくる」という体験の楽しさを分かち合うことです。
酒蔵のリノベーションを一緒に行ったり、オンラインコミュニティで立ち上げの悩み相談をしたりしました。
そんな取り組みに共感頂き、昨年実施したMakuakeでのクラウドファンディングでは多くの応援を集め、アワードも受賞しました。
▶福島・南相馬にあたらしく酒蔵をオープン。ホップを使ったCRAFT SAKEの挑戦(Makuake)
▶2021年2月に誕生した酒蔵「haccoba」が、Makuake Award 2021にて「Business Impact賞」を受賞。(PR TIMES)
酒のカテゴリーを超えたコラボレーションに挑戦
そうして立ち上げてからの1年で特に大事にしていたのは、コラボレーションによる酒づくりです。
お酒というカテゴリーすら飛び越えて、様々な酒づくりに挑戦しています。
例えばICCサミットでもおなじみのヘラルボニーと一緒に、障害のあるアーティストのアートをまとったお酒をつくりました。
▶ヘラルボニー×haccobaによる初のコラボレーション、障害のある作家のアートを起用したSakeを9月26日より発売。(PR TIMES)
また、世界で活躍する写真家、Miho Kajiokaさんと一緒に、写真集を表現するお酒をつくってフランスでお披露目しました。
▶アーティスト Miho Kajiokaさんとのコラボで生まれたSake「十 -je-」を11月30日より発売。世界最大の写真フェア「パリ・フォト」にて先行披露。(PR TIMES)
D2Cをメインとし共感してくれる仲間を増やす
1年目は、これら8種類のプロダクトを一般発売してきました。
販売戦略は、酒蔵にしては珍しく、D2Cメインで展開しています。
写真にあるように、酒蔵に併設しているパブ(Brew Pub – haccoba -Craft Sake Brewery-)で飲んで頂く体験を提供したり、オンラインで商品を販売したりしています。
オンラインストアでは、直近数商品が1、2時間で完売するなど、徐々に共感してくれる仲間が増えています。
ジャンルの壁を溶かし、“Sake”の自由なつくり手を増やす
最後に、これからの未来についてお話しします。
これからは、「Sakeをカイホウする」というキーワードで展開していきます。
1つ目の「カイホウ」は、「解き放つ」という意味の解放です。
これまで取り組んできた、日本酒やビールといった既存のジャンルの壁を溶かす酒づくりを加速させていきます。
大手ビールメーカーとの共同開発や、その他のブルワリーやワイナリーとのコラボレーションも計画しています。
「流行」ではなく持続可能な「文化」をつくる
もう1つの「カイホウ」は、「よりオープンに開いていく」という意味の開放です。
僕たちのような自由な酒づくりをする酒蔵を、地球上にたくさん増殖させていきたいと考えています。
自分たちでも今年、2軒目の酒蔵を国内につくり、2年後には、土着の多様なビール文化の残るベルギーで酒づくりをすることを目指しています。
ここまで話を聞いて頂いた審査員の皆さん、「これは急拡大するビジネスではなさそうだな」「スタートアップなの?」などと、うっすら思っていないでしょうか?
率直に、その通りだと思っています(笑)。
僕たちは、言わば「増殖戦略」とでもいうような、長期的な成長戦略を選択しています。
なぜなら、短期的な急拡大による流行をつくるのではなく、長期的な増殖による、持続可能な「文化」をつくることが大事だと考えているからです。
ともに美しい日本の発酵文化をつなごう
僕たちのような自由な酒づくりによって多様性を取り戻す活動は、年々小さくなる日本酒市場において、あったらいいなというレベルではなく、必ずなくてはならないものになっていくだろうと確信しています。
▶日本酒業界の現状と課題 2018.03.16(SPEEDA)
是非、ともに、美しい日本の発酵文化を創っていきましょう。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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